Odooのマーケティングオートメーション|「反応した人」を取りこぼさない仕組み

一斉メールを送ったあと、こうなっていないでしょうか。

開封率とクリック率は分かる。しかし、実際にクリックした人が誰だったかは、追いかけられていない。

反応があった相手には、本来すぐ連絡すべきです。関心が高いタイミングだからです。ところが現実には、次の配信の準備に追われ、そのまま数週間が過ぎます。

送ることはできている。拾うことができていない。 これが一斉配信だけで止まっている状態です。

この記事では、Odoo(オドゥー:オープンソース由来の統合業務アプリ群)のマーケティングオートメーションを、機能の各論として整理します。

⚠️ このアプリはEnterprise版限定です

Odooのマーケティングオートメーションは、有償の Enterprise版 が対象と案内されています。無料の Community版では利用できません。この記事はEnterprise版を前提に書いています。

専門用語の整理:マーケティングオートメーション(MA)とは、相手の反応に応じて次の連絡を自動で変える仕組みのことです。全員に同じものを送る一斉配信とは、考え方が異なります。

目次

一斉配信との違いは「枝分かれ」

構造の違いから見てください。

一斉配信と、反応に応じて枝分かれする自動化の違いを示した図 左側は全員に同じメールを一度送って終わる一斉配信。右側は最初のメールのあと、開いてクリックした人には次の案内を送り、開かなかった人には件名を変えて再送するというように、反応に応じて次の手が分かれる流れを示しています。 一斉配信 反応で枝分かれする 全員に同じメールを送る 開封率とクリック率が出る そこで終わる 誰が反応したかを追えない 関心が高い時期を逃す 最初のメールを送る クリックした 関心が高い 開かなかった 届いていない場合も 詳しい案内を送る 営業に知らせる 日を置いて 件名を変えて再送 関心が高いうちに次の手が届く

違いは1点です。反応した人と、しなかった人に、違うことが起きます。

一斉配信では、この分岐を人が手作業でやることになります。そして、たいてい追いつきません。

マーケティングオートメーションでできること

Odoo公式ドキュメントによれば、次のような構成になっているとされています(2026年8月確認)。

キャンペーンとワークフロー

  • キャンペーンを作り、対象となる相手を条件で絞り込む
  • キャンペーンの中に、ワークフロー(一連の流れ)を定義する
  • ワークフローは複数のアクティビティ(実行される動作)で構成される

アクティビティの種類

公式ドキュメントによれば、実行できる動作は3種類とされています。

種類内容
メール対象者へメールを送る
SMS対象者へショートメッセージを送る
サーバーアクションデータベース内部の処理を実行する

3つ目の「サーバーアクション」があることで、メールを送るだけでなく、社内側の処理も自動化できます。 例えば、条件を満たした相手をCRMの案件として作る、といった動作です。

トリガーと待ち時間

  • 各アクティビティに、実行のきっかけ(トリガー)を設定する
  • きっかけからの待ち時間を、時間・日・週・月の単位で設定できる
  • 「メールが開かれなかったら」といった条件で、続きの動作をつなげられる

テストと計測

  • 本番の前に、特定の相手を指定してテスト実行できる
  • 実行中のキャンペーンは、途中で停止できる
  • アクティビティごとに、送信数やクリック率などの実績が表示される

導入時の注意(公式の記載)

Odoo公式ドキュメントは、このアプリを導入するとEメールマーケティングも同時にインストールされると案内しています。さらに、すべての機能を使うにはCRMとSMSマーケティングも必要と記載しています。

つまり、このアプリだけを単独で使う想定にはなっていません。

設計は「1本の短いシナリオ」から始める

ここが実務上いちばん大事な点です。

複雑なシナリオと短いシナリオの運用結果を比較した図 左側は分岐が多く長いシナリオで、どこで何が起きているか分からず、誤りに気づけない状態。右側は3段階程度の短いシナリオで、結果を確認しながら少しずつ伸ばせる状態を示しています。 最初から作り込む 短く始めて伸ばす 分岐が12個あるシナリオ どこで何が起きたか分からない 誤りに気づけない 直せないので止めることになる 3段階のシナリオ 1. 資料請求のお礼を送る 2. 3日後に事例を送る 3. クリックした人を営業へ渡す 結果を1つずつ確認できる 効いた部分だけ伸ばせる 運用が続く

なぜ作り込みすぎるとうまくいかないのか

分岐が増えるほど、どの経路を何人が通ったかが分からなくなります。

そして、うまくいかなかったときに原因を特定できません。原因が分からないと直せず、直せないと止めることになります。

まずは3段階程度の短いシナリオを1本作り、結果を見てから伸ばしてください。

最初の1本に向いているもの

用途内容
資料請求への対応お礼 → 関連情報 → 反応した人を営業へ
問い合わせ後のフォロー受付の連絡 → 数日後に補足情報
失注案件の掘り起こし一定期間が過ぎた案件に、再度の案内

Odoo公式ドキュメントにも、失注した見込み客への再アプローチを扱う項目があります。すでにある名簿を使うため、新しく集める必要がありません。

設定してからが本番です

自動化の機能で、最も多い失敗がここです。

設定した時点で終わりだと思うと、逆効果になります。

起きること

  • 条件の設定が広すぎて、対象外の相手にも届く
  • 待ち時間が短すぎて、しつこく感じられる
  • 停止し忘れたキャンペーンが、季節外れの案内を送り続ける
  • 担当者が代わり、誰も中身を把握していない状態になる

4つ目が実際にいちばん多い問題です。

決めておくこと

  1. 停止条件:いつまで走らせるのか。終わりを決めていないキャンペーンは作らない
  2. 点検の頻度:月に1回は、動いているキャンペーンの一覧を確認する
  3. 管理する人:担当が代わるときに、何を引き継ぐのかを決める

テスト実行を必ず使ってください

Odoo公式は、本番の前に特定の相手を指定してテスト実行できると案内しています。

自動送信の事故は、取り返せません。 送ってしまったメールは戻せず、宛先違いの案内は信頼に直接ひびきます。

必ずテストしてから開始してください。

日本の法令について

この記事では、法令の解釈には踏み込みません。

自動化した場合も、送るのは広告や宣伝を目的とするメールです。同意の取得、送信者の表示、配信停止の受付といった要件は、一斉配信と同じように関わります。

自動化しているぶん、間違えたときに止めにくいという点だけ、先にお伝えしておきます。

考え方は OdooのEメールマーケティング にまとめています。判断に迷う場合は、必ず専門家に確認してください。

Community版とEnterprise版の違い

Odooには、無料の Community版 と有償の Enterprise版 があります。

Community版はオープンソースとして無料で使えます。ただし、サーバの用意・アップデート・障害対応は自社の責任になり、公式サポートの対象外です。

マーケティングオートメーションは、Enterprise版が対象です。Community版では利用できないと案内されています。

一方、Eメールマーケティングの基本機能はCommunity版でも利用できるとされています。

つまり、一斉配信までならCommunity版、反応に応じた自動化まで求めるならEnterprise版という分かれ方になります。

どの機能がどちらの版で使えるかはバージョンによって変わります。 検討時には必ず対象バージョンで確認してください。

詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。

他のアプリとのつながり

アプリつながり方
Eメールマーケティング送信の土台。同時にインストールされると案内されている
CRM反応した相手を案件として渡す。商談の状況を条件に使う
イベント管理申込者へのフォローを自動化する
アンケート回答内容を次の連絡の条件にする

詳細はそれぞれの記事にまとめています。

入れないほうがよい場合

正直に書きます。

状況判断
見込み客の数が月に数件入れる必要はありません。手で連絡したほうが早い
送るコンテンツがまだ用意できていない先にコンテンツです。仕組みは後
営業が反応を受け取る体制がない渡す先がないと意味がありません
問い合わせが継続的にあり、追いかけきれていない効果が出やすい領域です

2行目を強調します。シナリオを動かすには、送る中身が必要です。

「自動化すれば成果が出る」のではありません。送る価値のある情報があって初めて、自動化が効きます。 中身がないまま回数だけ増やすと、配信停止が増えます。

専用のMAツールという選択肢

MA専業の製品は、この領域で長く作り込まれています。分岐の設計画面、スコアリング、外部サービスとの連携では、専用ツールのほうが優れている部分があります。

Odooに意味があるのは、受注や請求まで同じ場所にある場合です。「メールに反応した人が、実際にいくら買ったか」まで1つのデータでたどれます。

この点に価値を感じるかどうかで判断してください。

よくある質問

Q1. スコアリング(見込み度合いの点数化)はできますか?

CRM側に、案件の優先度を扱う仕組みがあります。ただし、細かなスコア設計を求める場合は専用ツールのほうが向いています。

対象バージョンでの確認をおすすめします。

Q2. どのくらいの期間で効果が出ますか?

この記事では期間を示しません。 送る中身、対象者の数、商材の検討期間によって大きく変わるためです。

ただし、最初の1本は数週間で結果が見えます。 短いシナリオから始める理由の1つです。

Q3. SMSも自動で送れますか?

公式ドキュメントによれば、アクティビティの種類にSMSが含まれています。

ただし日本国内での利用可否と費用は、提供事業者との連携によって変わります。 実機での確認をおすすめします。

Q4. 誤ったキャンペーンを止められますか?

実行中のキャンペーンは停止できるとされています。

ただし、すでに送信されたメールは戻せません。 テスト実行を必ず経てから開始してください。

Q5. 担当者が辞めた後、誰も分からなくなりませんか?

これは実際に起きます。 対策は仕組みではなく運用です。

キャンペーンごとに、目的・停止条件・担当者を記録してください。月1回の一覧確認を運用に組み込むことをおすすめします。

まとめ

Odooのマーケティングオートメーションと一斉配信の違いは、1点です。

反応した人と、しなかった人に、違うことが起きること。

一斉配信では、この分岐を人が手作業でやることになります。そして、たいてい追いつきません。関心が高いタイミングを逃します。

ただし、この機能は設定してからが本番です。

条件が広すぎれば対象外に届き、待ち時間が短すぎればしつこく感じられ、停止し忘れたキャンペーンは季節外れの案内を送り続けます。担当者が代わって誰も中身を知らない状態が、実際にはいちばん多い問題です。

設計の勧めは1つです。3段階程度の短いシナリオを1本作り、結果を見てから伸ばしてください。

分岐を増やすほど、どの経路を何人が通ったか分からなくなります。原因が分からなければ直せず、直せなければ止めることになります。

そして、順序を間違えないでください。送る価値のある情報があって初めて、自動化が効きます。 中身がないまま回数だけ増やすと、配信停止が増えます。

最後に。分岐の設計や外部連携では、MA専業の製品が優れている部分があります。 Odooに意味が出るのは、受注や請求まで同じ場所にあり、反応から売上までを1つのデータでたどれる場合です。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「まず1本、短いシナリオから試す」という進め方からご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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