セミナーや展示会を開いたあと、こうなっていないでしょうか。
申込はWebフォーム、名簿はExcelに書き写し、受付リストは前日に印刷。参加費の請求は経理に別途頼む。終わったあと、参加者リストはフォルダの中で眠ります。
数か月後、営業に「あのセミナーに来ていた人ですよね」と聞かれても、すぐには答えられません。
この分断は、Odoo(オドゥー)でひとつにつなげられます。Odooは、オープンソース由来の統合業務アプリ群です。そのイベント管理(Events)アプリは、申込・名簿・受付・請求を1か所で扱い、参加者を顧客データとして残します。Odooには無料のCommunity版と有償のEnterprise版があり、イベント管理そのものは両版で使えるとされています。
有料イベントのチケットは「商品」として扱われ、通常の受注と同じ形で請求と会計につながります(イベント管理でできること)。
イベント管理をOdooに移すと、たとえば次のことが変わります。
- 申込がそのまま参加者として記録され、名簿を書き写さなくてよい
- 当日の受付も、同じ仕組みで参加者を確かめて入場を記録できる
- 問い合わせの相手が、どのイベントに来ていたかが分かる
- テンプレートで設定を使い回し、過去の参加者を横断して見られる
ただし、年に1回・数十名の開催なら、入れる必要はありません。集客や会場・配信の運営も、Odooの外の仕事です(イベント管理のメリットとデメリット)。
では、この機能の価値はどこに出るのか。当日の運営ではありません。答えは終わったあとの3つの時点にあります。
分断されているのは「申込・名簿・請求・その後」
申込、名簿、受付、請求。多くの会社では、この4つが別々の道具で動いています。
分断の本当の損失は、当日の手間ではありません。
終わったあとに追いかけられないことです。成果が出る数か月後には、名簿がどこにあるか分からなくなっています。
Odooのイベント管理(Events)でできること
次の機能は、Odoo公式ドキュメントの記載にもとづいています(出典:Odoo公式ドキュメント、2026年10月確認)。
イベントの作成
- 対面のイベントとオンラインのイベントを作成できる
- テンプレートから作れるので、毎回同じ設定を繰り返さなくてよい
- 会場、日程、責任者などを設定する
- 申込数の上限を決められる
チケットと申込
- チケットの種類(料金区分)を複数作れる
- 申込者の情報は、参加者として記録される
- 参加者向けのバッジ(名札)を出力できる。用紙の形式も選べる
当日の運営
- 受付の機能で、参加者を確認して入場を記録する
- 講演(トラック)やブース、スポンサーといった要素も設定できる
販売との接続
公式ドキュメントでは、設定で次の3つの販売経路を有効にでき、チケットを売れると説明されています。
| 設定 | 内容 |
|---|---|
| 受注書での販売 | 販売管理アプリの通常の受注として、チケットを売る |
| POSでの販売 | 店舗のレジでチケットを売る |
| オンライン販売 | 自社サイトからチケットを売る |
有料イベントのチケットは、「商品」として扱われます。請求と会計にも、通常の受注と同じ形でつながる仕組みです。
価値が出るのは、終わったあと|参加者を顧客データに残す
参加者が顧客データに残ると、終わったあとの追いかけが3つの時点でつながります。
直後の数日以内には、記憶が新しいうちにお礼のメールとアンケートを送ります。数週間後には、関心を示した人へ個別に案内し、案件として記録します。そして数か月後、問い合わせが来たときに参加履歴が見えます。
数か月後にいちばん役立つ
問い合わせが来たとき、その相手が半年前のセミナーに来ていたと分かる。実務上、ここにいちばん価値があります。
「以前ご参加いただいた件ですね」と言えるかどうかで、最初の会話が変わります。
Excelの名簿では、この照会が起きません。問い合わせのたびに名簿を見に行く人は、まずいないからです。
顧客データを1か所にまとめる考え方は、NetSuiteのCRMとは?「顧客データ一元化」で何が変わるかでも扱っています。規模が大きく、営業・販売・会計まで一つの仕組みで見たい会社の参考になります。
当日の受付とバッジ(名札)の準備
受付は、イベントで最も混雑が起きる場所です。開始15分前に人が集中します。
決めておくこと
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 確認の方法 | 名前で探すのか、申込番号や二次元コードで照らし合わせるのか |
| 通信環境 | 会場の回線が不安定な場合にどうするか |
| 当日申込 | 受け付けるのか。受け付けるなら誰が入力するのか |
| 予備の手段 | 印刷した名簿を用意しておくか |
4つ目を軽く見ないでください。会場の通信が不安定な例は、実際にあります。
紙の名簿を予備に持つのは、後ろ向きな判断ではありません。
バッジ(名札)について
参加者向けのバッジを出力でき、用紙の形式も選べます。
ただし、印刷の運用は事前に試してください。当日の朝に初めて印刷したら、形式が合わなかった。そうした失敗は起こり得ます。
有料イベント(チケット販売)の注意点
チケットを有料にした時点で、販売と会計の領域に入ります。
確認すべきこと
- キャンセルと返金の扱いをどうするか
- 請求書の発行を、いつ、誰が行うか
- 適格請求書(インボイス)の要件を満たす形になっているか
- 当日の現地払いを受け付けるか
とくに3つ目は、税務に関わる領域です。
考え方は Odooのインボイス制度対応 にまとめています。公開前に、税理士など専門家に確認してください。
無料イベントなら、これらの検討は要りません。まず無料イベントで運用を確かめる進め方を、ベンチャーネットはおすすめしています。
イベント管理のCommunity版とEnterprise版の違い
Odooには、無料のCommunity版と有償のEnterprise版があります。
Community版は、オープンソースとして無料で使えます。ただし、サーバーの用意・アップデート・障害対応は自社の責任です。公式サポートの対象外でもあります。
イベント管理アプリは、Community版でも利用できるとされています。ただ、組み合わせるアプリによってはEnterprise版が必要です。
| 組み合わせたい機能 | 版 |
|---|---|
| イベント管理そのもの | Community版で利用可 |
| Eメールでの案内(基本機能) | Community版で利用可 |
| 反応に応じた自動フォロー | Enterprise版 |
| SNSでの告知 | Enterprise版 |
「イベント管理はCommunity版で足りるが、周辺まで含めるとEnterprise版が要る」。この領域では、そう判断することが多くなります。
どの機能がどちらの版で使えるかは、バージョンによって変わります。検討時には、必ず対象バージョンで確認してください。
詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。
Odooのイベント管理のメリットとデメリット
イベントを開く側から見ると、良い点と注意点は次のとおりです。使える版は、機能ごとに添えています。
メリット
- 申込から請求まで1か所で扱える:申込・名簿・受付・請求を同じアプリで管理する。イベント管理そのものはCommunity版でも利用できるとされている
- 参加者が顧客データに残る:CRMと組み合わせると、問い合わせが来たときに相手の参加履歴を参照できる
- 有料チケットが会計までつながる:チケットは「商品」として扱われ、設定で受注書・POS・自社サイトの販売経路を有効にできる。請求と会計にも通常の受注と同じ形でつながる
- 繰り返し開催に向く:テンプレートで設定を使い回せ、過去の参加者を横断して見られる
- 参加者数で課金されない:Enterprise版は全アプリ一律のユーザー課金で、チケットの販売額や参加者数による課金はない
デメリット・注意点
- 周辺の機能はEnterprise版が要る:反応に応じた自動フォローとSNSでの告知は、Enterprise版が必要。Eメールでの案内(基本機能)はCommunity版で利用できる
- 集客の仕組みではない:自社サイトに申込ページを持つ仕組みで、会員基盤から新しい参加者を連れてくることはしない
- 会場・配信・進行はOdooの外:大規模イベントの運営そのものが主目的なら、専用のサービスのほうが向いている
- 有料にすると検討が増える:キャンセルと返金、請求書の発行、適格請求書(インボイス)の要件を詰める必要がある。税務の部分は専門家に確認する
両方を並べると、次の図のとおりです。
注意点の多くは、入れる範囲と始め方で負担を小さくできます。判断の目安は入れるべきかの判断表に、始め方は商談につなげるまでの進め方にあります。
他のアプリとのつながり
| アプリ | つながり方 |
|---|---|
| Eメールマーケティング | 案内の配信と、参加後のフォロー |
| CRM | 参加者を案件として記録する。問い合わせ時に参加履歴を参照する |
| アンケート | 参加後の感想を集める |
| 販売管理・会計 | 有料チケットの受注と請求 |
アプリごとの詳細は、次の記事にあります。
Odooのイベント管理を入れるべきか、入れないほうがよいか
社内で検討するときは、次の表に自社を当てはめてください。
| 自社の状況 | 判断 |
|---|---|
| イベントは年に1回。参加者も数十名 | 入れる必要はありません。Excelと紙の名簿で十分です |
| 大規模な展示会の運営そのものが主目的 | 専用のイベント管理サービスを検討 |
| 集客をイベントプラットフォームの会員基盤に頼っている | 置き換えより併用を検討 |
| セミナーを毎月・毎四半期など定期的に開いている | 効果が出やすい領域です |
| 参加者を問い合わせや商談につなげたい | 統合の価値が出ます |
この機能が役立つのは、繰り返し開催する場合です。テンプレートで設定を使い回せ、過去の参加者を横断して見られます。
会場・配信・進行はOdooの外
Odooのイベント管理が受け持つのは、申込・名簿・受付・請求の管理です。
会場の手配、配信の技術、当日の進行は、Odooの領域ではありません。大規模イベントの運営が主目的なら、専用のサービスのほうが向いています。
セミナー参加者を商談につなげるまでの進め方
イベント管理の相談を受けたとき、ベンチャーネットは製品の話より先に、次の順で確かめます。
- 過去1年のイベントを並べる。 開催回数、参加者のその後、名簿の置き場所を確認します。年1回なら、この時点で「入れなくてよい」とお伝えします
- 参加者を顧客データのどこに残すかを決める。 CRMの連絡先や案件とどう結ぶか、配信の同意をどう記録するかを先に決めます
- 無料イベント1回を、標準機能のまま回す。 申込から受付、お礼の案内までを通します。業務を標準機能に合わせる、Fit to Standardの考え方です
- 有料化は最後に回す。 返金の扱いと請求書の要件は、税理士の確認を経てから決めます
- 合わない部分は正直に切り分ける。 集客はPeatixなどとの併用、大規模運営は専用サービスに任せます
イベントを「開いて終わり」にするか、営業の資産にするか。これはITの話というより、営業の進め方の話です。イベントを含む顧客接点のつなぎ方は、バラバラの施策をやめる|顧客接点を1本の流れにつなぐにまとめています。
このアプリに対応する有名SaaS(Peatix・EventHub)
すでにイベント管理のサービスを使っているなら、Odooのイベント管理はその置き換え候補になります。主なサービスとの対応は次のとおりです。
Odooのイベント管理は、Community版でも利用できます。ただし、自動フォローやSNS告知まで含めるとEnterprise版が必要です(Community版とEnterprise版の違い)。
| 使っているSaaS | Odooでの対応 | 一言で言うと |
|---|---|---|
| Peatix | イベント管理(Community版でも可) | 一部重なる。申込と参加者管理は重なるが、会員基盤からの集客はPeatixにしかない |
| EventHub | イベント管理(Community版でも可) | 一部重なる。申込と受付は重なるが、参加者同士のマッチングや行動データの分析はEventHubが厚い |
機能の違い
- Odooにあってイベント管理SaaSにないもの:参加者がそのまま顧客データの一部になること。有料チケットが通常の受注として請求・会計につながり、数か月後の問い合わせ時に参加履歴を参照できる
- イベント管理SaaSにあってOdooにないもの:集客そのもの。Peatixは自社の会員基盤からイベントを見つけてもらえます。EventHubは参加者同士のマッチングや、行動データにもとづく分析を備えています
集客の差は大きいです。Odooのイベント機能は、自社サイトに申込ページを持つ仕組みです。新しい参加者を連れてくる仕組みではありません。
課金構造の違い
2社は、課金の型が異なります。Peatixは、売れたチケットの従量課金です。初期費用・月額費用はかかりません。有料チケットの販売額と売れた枚数に応じて、決済処理費用がかかります。無料チケットと告知だけの利用なら、手数料はかかりません(売上の振込時の振込手数料は主催者負担)。
EventHubは年間契約で、公式サイトに金額の掲載はありません。イベント数や利用機能に応じた見積もりになります。
(※課金の型は、2026年9月時点の各社公式サイトの情報にもとづきます。金額や条件は改定されることがあるため、検討時に各社の公式ページでご確認ください)
Odoo Enterprise版は、全アプリ一律のユーザー課金です。イベント管理だけ使っても、他のアプリまで使っても、1ユーザーの単価は変わりません。チケットの販売額や参加者数による課金もありません。金額の詳細は Odooの料金体系を解説 を参照してください。
従量課金の相手と比べるなら、有料チケットの販売額が大きいほど従量分が積み上がります。逆に、無料セミナーが中心で、集客をPeatixの会員基盤に頼っているとします。その場合は手数料がかからず、置き換える理由も弱くなります。
置き換えのメリット
- 参加者が顧客データに残り、数か月後の問い合わせ時に参加履歴を参照できる
- 有料チケットが通常の受注として請求・会計につながり、経理への別依頼がなくなる
置き換えのデメリット・向かないケース
- 集客をイベントプラットフォームの会員基盤に頼っているなら、置き換えると集客力が落ちる。併用が現実的
- 大規模カンファレンスでのマッチングや行動分析が中心なら、専用SaaSのほうが深い
- Odooのイベント管理は、申込・名簿・受付・請求の管理。集客や当日の運営そのものを担う製品ではない
判断の分かれ目は、参加者を自社の顧客データとして持ちたいかどうかです。
他のアプリの対応表は Odooで置き換えられるSaaS対応表 にまとめています。
バージョンと機能の更新について
Odoo 19.0は、2025年9月にリリースされました。標準サポートの終了は2028年9月(予定)と、公式に記載があります。
その後、19.1(2026年1月)・19.2(2026年3月)・19.3(2026年5月)・19.4(2026年7月)が順に提供されています。
19.1〜19.4は、Odooオンラインで先に提供されました。Odoo.shとオンプレミスは対象外でした(公式のサポート表にN/Aと明記)。
2026年9月には、次のメジャー版のOdoo 20が公開されました。Odoo.shやオンプレミスの会社も、Odoo 20に上げれば、19.1〜19.4の新機能をまとめて受け取れます。
違うのは、新機能を受け取る時期です。早く使いたいならOdooオンライン。自社で管理したいなら、Odoo.shかオンプレミスで年1回のメジャー版に合わせます。Odoo 20の変更点はOdoo 20の新機能まとめで整理しています。
イベント管理アプリに直接かかわる変更は、19.1〜19.4の公式リリースノートに記載が見つかりませんでした。
この更新の流れは、Enterprise版の話です。無料のCommunity版は、この提供サイクルの対象外です。
※出典:Odoo公式のリリースノートおよびドキュメント(2026年9月確認)
よくある質問
Q1. オンラインセミナーにも使えますか?
オンラインのイベントも、対面のイベントと同じように作成できます。
ただし、配信は別のサービスで行うのが一般的です。Odooが扱うのは、申込と参加者の管理だと考えてください。
Q2. 申込フォームは自社サイトに置けますか?
置けるとされています。Odooのサイト作成機能と組み合わせると、自社サイト上に申込ページを持てます。
サイト作成機能の詳細は OdooのWebサイトビルダー で解説しています。実際の挙動は、対象バージョンでの確認をおすすめします。
Q3. 参加者に一斉連絡できますか?
できます。イベントごとの参加者に、案内を送る運用ができます。
開催前のリマインドは、当日の欠席を減らすうえで効果があります。送るタイミングを、事前に決めておいてください。
Q4. 過去のイベントの参加者リストを取り込めますか?
連絡先として取り込むことは可能です。
ただし、配信の同意をどう扱うかを先に確認してください。過去の参加者に案内を送ってよいかは、申込時の説明によって変わります。
Q5. 当日のキャンセルはどう扱いますか?
運用として決めておく必要があります。
無料イベントなら、記録の修正だけで済みます。有料の場合は、返金の扱いを事前に定めてください。
Q6. Odooのイベント管理のメリットとデメリットは何ですか?
参加者を顧客データに残せる利点と集客や周辺機能の制約があります。
申込・名簿・受付・請求を1か所で扱い、参加者が顧客データとして残ります。有料チケットは、通常の受注と同じ形で請求と会計につながります。
一方、自動フォローやSNS告知はEnterprise版が必要です。集客や会場・配信の運営は、Odooの外の仕事です(メリットとデメリット)。
まとめ
Odooのイベント管理の価値は、当日の運営ではなく、終わったあとに追いかけられることにあります。
申込がそのまま参加者として記録され、顧客データの一部として残る。だから、数か月後の問い合わせに「以前ご参加いただいた件ですね」と返せます。成果が出る頃まで記録が生きているかどうかが、分かれ目です。
当日に向けては、受付の混雑への備えを決めておきます。確認の方法、通信環境、当日申込の扱い、予備の紙の名簿の4つです。
有料にするなら、キャンセルと返金、請求書の発行、適格請求書の要件を詰めます。税務の部分は専門家に確認し、まず無料イベントから始めてください。
年に1回の開催なら、入れる必要はありません。役立つのは、繰り返し開催し、参加者を商談につなげたい場合です。
1年後、問い合わせの電話を受けた営業が、相手の参加履歴を確かめてから折り返している。「春のセミナーでお会いしましたね」で始まる商談が、次の開催を決める根拠になっています。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「まず無料セミナーで運用を確かめる」「参加者の名簿を営業に活かしたい」といった段階からご相談を承っています。
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