バラバラの施策をやめる——顧客接点を1本の流れにつなぐ

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やっているのに、効かない

広告も出している。SNSも更新している。メールマガジンも送っている。展示会にも出た。やることは、やっている。なのに、どうも手応えがない。

そんな感覚を持つ中小企業の経営者は、少なくありません。施策の数は年々増えました。担当者も、使うツールも増えました。それでも、売上の伸びにつながった実感が薄い。むしろ、何が効いて何が効いていないのか、前より分からなくなった気さえする。

もし心当たりがあるなら、問題は「施策が足りないこと」ではないのかもしれません。施策がバラバラのまま置かれていること。そこに、効かない本当の原因があります。

なぜ効かないのか——施策が「孤立」する構造

施策が効かない会社には、共通する形があります。施策ごとに、担当も、使うツールも、見ている数字も、別々になっているのです。

広告は広告の担当が、広告の管理画面で、クリック数を見ている。SNSはSNSの担当が、別のツールで、フォロワー数を見ている。メールはメールで、展示会は展示会で。それぞれが一生懸命でも、互いにはつながっていません。

この、部署や施策が孤立して情報が共有されない状態を「サイロ」と呼びます。サイロとは、もともと農場で穀物を別々に貯蔵する縦長の倉庫のこと。隣と中身が混ざらない様子が、孤立した組織のたとえに使われます。

施策ごとに、担当・ツール・数字がバラバラ=サイロ 広告 クリック数 SNS フォロワー数 メール 開封率 展示会 名刺の数 お客様には「ひとつの体験」なのに、会社側だけがバラバラに扱っている

施策ごとに担当・ツール・数字が分かれ、互いにつながっていない状態(サイロ)。

困るのは、ここからです。お客様は、こちらの「施策の区分け」を知りません。広告で会社を知り、SNSで雰囲気を感じ、サイトで調べ、メールで思い出し、最後に問い合わせる。お客様の頭の中では、これらはひとつのつながった体験です。会社側だけが、それをバラバラに扱っている。

データが分断されていると、もうひとつ厄介なことが起きます。「どの接点が効いたのか」が、見えなくなるのです。海外のある調査では、企業の業務時間のうち約4割が、価値の低い作業や、バラバラのシステムに散ったデータの突き合わせに費やされている、と報告されています(マッキンゼーの2026年調査)。これは大企業に限った話ではありません。中小企業はむしろ平均して5つほどのツールを併用し、そのツールの複雑さ自体が最大の悩みになっている、という指摘もあります。

施策を足すほど、サイロは増える。これが「やっているのに効かない」の正体です。

解決の方向——接点を「1本の流れ」につなぐ

では、どうするか。答えは「もっと施策を足す」ことではありません。むしろ逆です。いまある接点を、1本の流れにつなぎ直す。ここから始めます。

考え方はシンプルです。お客様が会社と出会ってから、検討し、買って、また買ってくれるまで。その動きの順番を、1本の線で描きます。お客様がたどるこの道のりを「カスタマージャーニー(顧客の旅)」と呼びます。そして、いまやっている広告・SNS・メール・展示会を、その線のどこを担うのか、置き直していくのです。

顧客接点を1本の流れ(カスタマージャーニー)につなぐ 認知 検討 購入 継続 広告 SNS サイト メール 商談 見積 フォロー リピート いまの施策を「足す」のでなく、流れの上に「置き直す」

お客様の動き(認知→検討→購入→継続)を1本の線にし、各接点をその線上に置き直す。

『実践的カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント』(今西良光・須藤勇人)が説くように、顧客接点は「点」ではなく、つながった「体験」として設計するものです。線が引けると、抜けや重複が見えてきます。「認知はできているのに、検討の段階で離脱している」「買ったあとのフォローが一切ない」。こうした穴が、地図の上にはっきり現れます。

世界の潮流も、この方向に動いています。Think with Googleは、2026年を「統合の年」と表現しました。米国の中小企業支援機関も、成長は連結したシステムから生まれるのであって、孤立した施策の寄せ集めからは生まれない、と中小企業に呼びかけています。実際、施策を統合して運用したほうが、個別に回すよりも投資対効果(ROI=かけたお金に対して返ってくる成果)が高い、という調査結果も出ています。

ここで大事なのは、いきなり全部をつなごうとしないことです。中小企業の強みは、小回りのよさです。まずは売上に直結する2〜3の接点から、流れをつなぐ。全社のあらゆるデータをひとつにまとめる話は、その次の段階で考えれば十分です。

つながると、見えてくる

接点が1本につながると、思わぬ副産物が生まれます。経営が「見える」ようになるのです。

どこでお客様が離れたのか。どの接点が、次の段階につながったのか。これまで勘で語っていたことが、流れの上で見えてきます。先ほどの米国の中小企業支援機関も、こうした穴が見えるようになると、改善が場当たりでなく戦略的になる、と指摘しています。

ベンチャーネットは、この「見える化」を経営の出発点だと考えています。顧客接点をつなぐことは、単なるマーケティングの効率化ではありません。自社が、どこで価値を生み、どこで取りこぼしているのかが見えるようになること。見えれば、手の打ちどころが分かります。これは「見える化 → わかる化 → 儲かる化」という、経営を立て直す一連の流れの、その入口でもあります。

つなぐ「器」としては、顧客情報や受注を1か所に集める仕組み(CRMやERPといった経営システム)も役に立ちます。ただし、ツールはあくまで道具です。どの接点に重心を置き、どこを思い切って捨てるか。その判断は、経営者にしかできません。AIは流れの分析やパターンの発見を助けてくれますが、最後に「自社はこう戦う」と決めるのは、人の仕事です。

よくある質問

Q. まずツールを統合すればいいですか?
順番が逆です。ツールを入れる前に、お客様の流れ(カスタマージャーニー)を紙1枚に描くのが先です。流れが決まれば、必要な道具も自然に絞れます。道具から入ると、サイロがもう一つ増えるだけになりがちです。

Q. 小さい会社でも必要ですか?
むしろ中小企業のほうが向いています。施策の数が少ないぶん、1本の線につなぎ直すのが簡単だからです。大企業ほど部署の壁が厚く、つなぎ直しに時間がかかります。

Q. 全部を一気にやるべきですか?
いいえ。まずは売上に効く2〜3の接点から始めます。全社のデータ統合まで踏み込むのは、流れが回り始めてからで十分です。

まとめ——足すより、つなぐ

施策が効かないとき、つい「何かを足そう」とします。新しい広告、新しいSNS、新しいツール。けれど、足すほどサイロは増え、見えなくなっていきます。

これからの打ち手は、足すことではなくつなぐことです。バラバラの接点を、お客様の流れに沿って1本に整える。つなぐと見えて、見えると、どこで儲けを取りこぼしているかが分かる。

とはいえ、自社の接点をすべて棚卸しし、1本の流れに描き直す作業は、社内だけで進めると意外に難しいものです。日々の運用に追われ、全体を俯瞰する時間が取りにくいからです。ベンチャーネットは、その全体像を一緒に描き、つなぐところから伴走しています。「うちの施策、つながっているだろうか」。そう感じたら、それが見直しの始まりです。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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