打ち手はいろいろ試したのに、成果が積み上がらない
新しいツールを入れた。会議体を変えた。研修もやった。それなのに、成果がいまひとつ積み上がらない。経営の現場で、こうした手応えのなさを感じたことはないでしょうか。
担当者に話を聞くと、多くの場合こう返ってきます。「課題はたくさんあります」「むしろ課題だらけです」。やる気がないわけではありません。むしろ動きは速い。それでも空回りしてしまう。
この記事では、打ち手を増やす前に立ち止まり、「いま解くべき課題は何か」を決める方法を整理します。儲かる会社づくりの、いちばん最初の一歩です。
そもそも「課題」とは何か
まず言葉を揃えます。ここでいう「課題」とは、理想の姿(To Be)と、いまの現状(As Is)との差分のことです。To Be は「こうありたい」という目標、As Is は「いま実際にこうなっている」という現実を指します。
図1 課題は、理想(To Be)と現状(As Is)の差分。この差を言葉にして初めて、埋めるための打ち手を当てられる。
たとえば「商談数を週次で把握したい」が理想で、「いまは月末までわからない」が現状なら、その差が課題です。差が言葉になって初めて、埋めるための打ち手を考えられます。
ここでよくある混同が、「問題」と「課題」の取り違えです。問題は「困っている状態」そのもの、課題は「その差を埋めるために解くべきこと」です。整理されていない問題の山は、解くことも、数字で測ることもできません。
大事なのは順番です。「これから何をしましょうか」と打ち手から入るのではなく、「いま解くべき課題は何か」から入る。課題設定が明確であれば、対策もしっかりしたものになります。
なぜ打ち手が空回りするのか
打ち手が積み上がらない理由は、大きく2つあります。
1つ目は、課題が曖昧なまま施策に飛んでしまうことです。「課題だらけ」の正体を一つずつ書き出してみると、同じことの言い換えだったり、ぼんやりした印象にすぎなかったりします。輪郭のない課題に、効く打ち手は当てられません。
2つ目は、実行が「やりっぱなし」になることです。中小企業は動きが速いぶん、実行した結果を振り返らないまま次へ進みがちです。試したことが成果につながったのか検証されないので、施策が積み上がらず、「やったけれど、よくわからなかった」という感触だけが残ります。
この2つは別々の問題に見えて、根は同じです。どちらも「何を解こうとしているのか」がはっきりしていない。だから打ち手の良し悪しを判断できないのです。
課題を「設定し、選ぶ」
ここからが本題です。やることは2つ。課題を設定することと、その中から解くべきものを選ぶことです。
設定する:差分を一枚の表にする
課題を頭の中だけで扱うと、いつまでも輪郭がぼやけます。おすすめは、次の6つの欄を一枚の表に並べることです。
| 種別 | 現状(As Is) | 理想(To Be) | 課題(差分) | 原因 | 打ち手と指標 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業 | 月の商談数が月末までわからない | 商談数を週次で把握する | 商談状況が可視化できていない | 案件情報が個人管理になっている | 案件管理を一元化/週次の商談件数 |
部署をまたいで一枚に集まると、それぞれの役割がはっきりします。広報の動きも営業の数字につながり、課題を解くこと自体が共通の目標になります。
考え方の筋道はシンプルです。何をめざすかを決め、そのためにどんな手段・方法が要るかを考え、実際に行動を起こす。この三段の順番を崩さないことが、地に足のついた打ち手につながります。
図2 めざす姿 → 手段・方法 → 行動の順番。この三段を崩さないことが、地に足のついた打ち手につながる。
選ぶ:全部はできない、だから優先順位をつける
課題は、たいてい複数出てきます。そして、すべてを同時に解くことはできません。ここで「どれを、なぜ解くか」を決めることが、儲かる会社づくりの分かれ目になります。
選ぶときに陥りやすい罠が2つあります。
- 流行や成功事例に飛びつくこと。「あの会社がうまくいった」という話は、生き残った例だけが目立つように見えているだけのことが多い。よその正解が自社の正解とは限りません。外の流行ではなく、自社の課題から選びます。
- 目標を広げすぎること。売上や顧客数のような「結果の数字」をそのまま目標に置くと、打ち手が散らかります。本質的な一点に絞るほうが、力は集まります。
そのうえで、課題に優先度をつけます。ベンチャーネットがおすすめするのは、金・銀・銅の3段階で重要度を見る方法です。基準は次の3つです。
- 経営にどれだけ効くか
- それが止まると業務が回らないか
- 業務の効率にどれだけ効くか
さらに、それぞれの打ち手を件数 × 手間(工数)× 費用で見積もると、「効果の大きさ」と「かかるコスト」が並びます。ここまで来れば、優先順位は感覚ではなく、経営判断として説明できるものになります。
図3 複数の課題を「経営に効くか/業務が止まるか/効率に効くか」で見て、金・銀・銅に分ける。件数×工数×費用で負担も並べ、経営判断として説明できる優先順位にする。
補足:課題を「見つける」段階(現象の裏にある構造を読む)については、別記事「経営課題の見つけ方」で扱います。この記事はその次の段階、見つけた課題を「設定し、選ぶ」話です。あわせて読むと、流れがつながります。
決めた課題を検証で回す
解く課題を決め、打ち手を始めたら、終わりではありません。「やりっぱなし」を塞ぐ仕組みを、最初から計画に組み込みます。
具体的には、打ち手に着手する前に「何を期待するか」を書き留めておきます。そして一定期間のあと、その期待と実際の結果を照らし合わせます。期待と現実のズレこそが、次の打ち手のヒントになります。
ベンチャーネットでは、「数か月実行したら、いったん振り返る」というリズムを計画に入れることをおすすめしています。実行と振り返りを最初からセットにしておくと、施策が積み上がり、回せば回すほど精度が上がっていきます。
図4 実行しっぱなしだと施策は積み上がらない。計画に振り返りを組み込むと、結果が次の計画に返り、回すほど精度が上がる。
この「振り返りを習慣にする」という考え方は、わかる化を続けるうえでの土台になります。詳しくは「フィードバック分析」の回で扱います。
課題が決まれば、打ち手が効く
解くべき課題がはっきりすると、これまでバラバラに見えていた打ち手が、一本の線でつながって見えてきます。
たとえば、原価変動への対応、稼働の見える化、在庫日数の圧縮、商談パイプラインの管理、受注の予測。これらは、それぞれが独立した施策ではなく、「自社が選んだ課題に対する打ち手」として読めるようになります。具体的な打ち手は、それぞれの記事で扱います。
そして、これらの打ち手は、会社の数字が一つにつながっているほど効果を発揮します。見える化から、わかる化、そして儲かる化へ。その全体像は、集大成の記事「単一のデータベースが3つの段階を貫く」で扱います。
道具は目的ではありません。課題が決まったあとに、それを解くために選ぶものです。
よくある質問・つまずきやすい点
Q. 「問題」と「課題」は、どう違うのですか。
問題は「困っている状態」そのものです。課題は「理想と現状の差を埋めるために解くべきこと」です。問題を並べるだけでは動けません。差分を課題として言葉にして、初めて打ち手を当てられます。
Q. 課題が多すぎて、選べません。
すべてを同時には解けない、という前提に立つことが出発点です。流行ではなく自社の課題から選び、本質的な一点に絞ります。そのうえで金・銀・銅で重要度を、件数・工数・費用で負担を見比べると、順番が決まります。
Q. KPI(成果を測る指標)がうまく立てられません。
多くの場合、指標が立たないのは、その手前の課題が曖昧だからです。先に「理想と現状の差」を決めれば、その差が縮んだかどうかを測る指標は、自然と決まってきます。
つまずきやすい失敗は、だいたい3つに集約されます。課題を曖昧にしたまま施策に飛ぶこと。実行をやりっぱなしにすること。そして、流行や他社事例で打ち手を選んでしまうこと。いずれも「自社の課題から考える」に立ち返れば、避けられます。
まとめ:解く課題が決まれば、経営は動き出す
打ち手の数を増やしても、解く課題が決まっていなければ、成果は積み上がりません。逆に、「いま解くべき課題は何か」がはっきりすれば、限られた人員と時間を、効く一点に集められます。
やることは、シンプルです。理想と現状の差を課題として書き出し、優先順位をつけて選び、振り返りながら回す。この順番を守るだけで、経営は少しずつ前に進み始めます。
課題は、自社でも書き出せます。けれど、難しいのはその先です。たくさんの課題から”いちばん効く一点”を選ぶ判断。そして、「自分では見えていない思い込み」の点検。この2つは、外からのもう一つの目があると進みやすいものです。先ほど触れたとおり、成功例だけを見てしまう偏りは、自分ではなかなか気づけないからです。
ベンチャーネットは、この「課題を設定し、選ぶ」ところから、会社の数字をつなぎ、儲かる仕組みへと育てるお手伝いをしています。一度、ご相談ください。

