セミナーの後、アンケート用紙を配る。研修の後、感想を集める。顧客に満足度を聞く。
やっている会社は多いと思います。そして、その結果がどうなっているか。
集計担当が入力し、平均点を出し、報告書にまとめる。役員会で共有される。そこで終わります。
「満足度は4.2でした」と分かっても、次に何をすればよいかは分かりません。そして半年後、また同じアンケートを取ります。
測ってはいる。でも、次につながっていない。 この状態には、はっきりした原因があります。
この記事では、Odoo(オドゥー:オープンソース由来の統合業務アプリ群)のアンケート機能を、機能の各論として整理します。
原因は「回答が誰のものか分からない」こと
構造から見てください。
平均点では動けません
「満足度4.2」という数字からは、行動が導けません。
しかし、「Aさんが2点をつけ、理由に納期の遅れを挙げている」と分かれば、やることは明確です。連絡して、話を聞きに行けます。
アンケートが次につながらないのは、集計しすぎているからです。
ただし、これは匿名性とのトレードオフです
回答者が分かる形にすると、率直に書いてもらいにくくなります。
とくに従業員向けのアンケートでは、この影響が大きく出ます。どちらを取るかは、目的しだいです。 第4章で扱います。
アンケート機能でできること
Odoo公式ドキュメントによれば、次のようなことができるとされています(2026年8月確認)。
アンケートの作成
- 質問を作成し、複数のセクションに分けて構成できる
- さまざまな形式の質問を設定できる
- ライブセッション形式のアンケートも作れる(その場で回答を集める用途)
採点と認定
Odoo公式は、アンケートを次の用途にも使えると案内しています。
| 用途 | 内容 |
|---|---|
| 質問票 | 一般的なアンケート |
| 採点付きの評価 | 合格点(必要スコア)を設定できる |
| 認定 | 「認定である」という設定を有効にできる |
つまり、社内テストや資格確認にも使える設計です。 合格点を設定すると、合格率が表示されるとされています。
結果の分析
- 回答の集計を確認できる
- 合格点を設定したアンケートでは、合格した割合が表示される
- 認定として設定したアンケートでは、認定された割合が表示される
使いどころは3つあります
Odooのアンケートは、汎用の質問票としてだけでなく、他のアプリの部品としても使われます。
採用の面接フォームも、この仕組みです
採用管理アプリで使う面接フォームは、このアンケート機能で作ります。
求人ごとに聞くことを決めておくと、応募者を同じ物差しで比べられます。詳しくは Odooの採用管理(Recruitment) をご覧ください。
社内テストとしての使い方
合格点を設定できるため、研修後の理解度確認に使えます。
「研修をやった」ではなく「理解できたか」を確認する。この差は、教育の実効性に直結します。
匿名にするかどうかを、先に決めてください
この記事でいちばん強調したい点です。
回答者が分かる形にするか、匿名にするか。これは設定の話ではなく、目的の話です。
判断の基準
| 目的 | 向いている形 |
|---|---|
| 個別に対応したい(顧客の不満、参加者の質問) | 回答者が分かる形 |
| 全体の傾向を知りたい(従業員の意識、職場の課題) | 匿名 |
| 成績を記録したい(研修テスト、認定) | 回答者が分かる形 |
| 言いにくいことを聞きたい | 匿名 |
従業員向けは、とくに慎重に
上司や職場についての質問を、記名で答えてもらうと、率直な回答は集まりません。
そして、いったん「答えたら分かってしまう」と思われると、次からも本音は出てきません。 信頼は一度失うと戻りにくい領域です。
少人数では、匿名にしても匿名になりません
部署の人数が数名の場合、回答内容から誰かが推測できてしまいます。
匿名だと説明したのに特定できてしまう状態は、記名より悪い結果を招きます。
少人数の組織では、匿名アンケートより1対1で話を聞くほうが有効なこともあります。 機能を入れる前に、この点を考えてください。
測ることと、改善することは別です
もう1つ、正直に書きます。
アンケートを取っても、それだけでは何も変わりません。
よくある失敗
- 毎回同じ質問を取り続けているが、結果を受けて変えたことがない
- 質問が多すぎて、回答率が下がっている
- 集計だけが目的になり、報告書を作って終わっている
1つ目がいちばん深刻です。 答えても何も変わらないと分かると、回答率は下がります。そして数字だけが形式的に残ります。
実務上の勧め
- 質問は少なくする。 5問前後から始めてください
- 回答を受けて何をするかを、取る前に決めておく
- 前回から変えたことを、回答者に伝える
3つ目が効きます。「前回のご意見を受けて、こう変えました」と最初に伝えるだけで、次の回答率が変わります。
Community版とEnterprise版の違い
Odooには、無料の Community版 と有償の Enterprise版 があります。
Community版はオープンソースとして無料で使えます。ただし、サーバの用意・アップデート・障害対応は自社の責任になり、公式サポートの対象外です。
アンケート機能は、Community版でも利用できるとされています。
ただし、組み合わせる相手のアプリによって、必要な版が変わります。
| 使い方 | 版 |
|---|---|
| アンケートそのもの | Community版で利用可 |
| 採用の面接フォームとして使う | 採用管理はCommunity版で利用可 |
| 人事評価の評価フォームとして使う | 人事評価はEnterprise版 |
| 回答に応じた自動フォロー | Enterprise版 |
どの機能がどちらの版で使えるかはバージョンによって変わります。 検討時には必ず対象バージョンで確認してください。
詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。
他のアプリとのつながり
| アプリ | つながり方 |
|---|---|
| 採用管理 | 面接フォーム・事前質問として使う |
| 人事管理 | 社内テストの結果を、従業員のスキル記録につなげる |
| イベント管理 | 参加後の感想を集める |
| Eメールマーケティング | 配信したメールから回答を集める |
| CRM | 顧客満足度の回答を、案件の記録として残す |
詳細はそれぞれの記事にまとめています。
- Odooの採用管理(Recruitment)
- Odooの人事管理(Employees)
- Odooのイベント管理(Events)
- OdooのEメールマーケティング
- OdooのCRM(顧客管理)でできること
無料のフォームツールで足りる場合
正直に書きます。
単発のアンケートを取るだけなら、無料のフォームツールで十分です。
- 作るのが速い
- 相手も使い慣れている
- 集計画面も分かりやすい
この点で競うつもりはありません。
Odooのアンケートに意味があるのは、回答が誰のものかと紐づけたい場合です。
顧客の記録、従業員の記録、応募者の記録。そこに回答が残るから、次の行動につながります。 別のツールで集めると、この接続が切れます。
入れないほうがよい場合
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 単発のアンケートを年に数回取るだけ | 無料ツールで十分です |
| 完全に匿名で、集計値だけ分かればよい | 無料ツールで十分です |
| 顧客や参加者の記録と紐づけたい | Odooの価値が出ます |
| 採用や研修で繰り返し使う | 蓄積の価値があります |
よくある質問
Q1. 回答者はOdooのアカウントが必要ですか?
社外の相手にはリンクを共有して回答してもらう運用ができます。アカウントは不要な形で使えるとされています。
ただし設定によって扱いが変わるため、対象バージョンでの確認をおすすめします。
Q2. スマートフォンで回答できますか?
Webブラウザから回答する形式です。ただし、質問が多いと途中で離脱されます。
スマートフォンでの回答を想定するなら、質問数を絞ってください。
Q3. 回答データはどのくらい残しますか?
保存期間は運用として決める必要があります。
とくに従業員向けや応募者向けのアンケートは、個人情報として扱う範囲に入ります。保管と削除のルールを先に決めてください。
Q4. 途中保存はできますか?
長いアンケートでは、途中で中断する回答者が出ます。
扱いは対象バージョンで確認してください。 そもそも途中保存が必要なほど長いアンケートは、短くすることを検討したほうがよい場合が多いはずです。
Q5. 自由記述の回答はどう扱いますか?
自由記述は、もっとも価値が高く、もっとも読まれない項目です。
集計できないため、報告書に載りにくいからです。担当者が全件読み、共有する運用を決めておいてください。 数値より、ここに次の手がかりがあります。
まとめ
Odooのアンケート機能と、無料のフォームツールとの違いは1点です。
回答が「誰のものか」と紐づくこと。
「満足度4.2」という数字からは行動が導けません。しかし「Aさんが2点をつけ、理由に納期の遅れを挙げている」と分かれば、やることは明確です。
アンケートが次につながらないのは、集計しすぎているからです。
同じ仕組みは、3つの場面で使われます。顧客向けの満足度調査、社内向けの理解度テストや認定、採用選考の面接フォーム。 どれも回答が相手の記録に残ります。
一方で、先に決めるべきことがあります。匿名にするかどうかです。
これは設定ではなく目的の話です。個別に対応したいなら記名、率直な意見を集めたいなら匿名。とくに従業員向けは慎重に判断してください。 一度「答えたら分かる」と思われると、次から本音は出ません。
少人数の組織では、匿名にしても匿名になりません。 その場合は、1対1で話を聞くほうが有効なこともあります。
そして最後に。測ることと、改善することは別です。
毎回同じ質問を取り続けているのに、結果を受けて変えたことがない。この状態がいちばん多い失敗です。答えても何も変わらないと分かれば、回答率は下がります。
質問は5問前後に絞る。取る前に、結果を受けて何をするかを決めておく。そして前回から変えたことを、回答者に伝える。 この3つで、アンケートは道具に戻ります。
もう少し詳しく知りたい方へ
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