Odooの人事管理(Employees)でできること|メリットとデメリット・権限設計の要点

「あの人の入社日、いつだったか」。社長にそう聞かれて、管理部門の担当者が書類をめくり始める。

雇用契約書はキャビネットの中。緊急連絡先は人事担当のExcel。保有資格は本人の申告メールで、有給の残日数はまた別の表。従業員の情報が社内のあちこちに散らばっているのは、多くの会社で見かける姿です。

この情報は、1か所に集められます。Odoo(オドゥー:オープンソース由来の統合業務アプリ群)の人事管理アプリ(Employees)は、従業員の情報をまとめる「従業員マスタ」です。休暇も勤怠も評価も採用も、ここにぶら下がります。

地味でも、中小企業ほど効くのがスキルの記録です。「誰が何をできるか」が、経営者や一部の管理職の頭の中にあるからです。

人事管理アプリを入れると、たとえば次のことが変わります。

  • 「あの人の入社日」を探す場所が1つに決まる
  • 資格の更新期限を、記録から確かめられる
  • 組織図を、手作業で更新し直さずに済む

ただし、日本の給与計算や社会保険の手続きまで、Odooで済むわけではありません。ここは既存のソフトや社労士に任せる前提で考えます(日本の労務実務で確かめること)。良い点と注意点は、人事管理のメリットとデメリットにまとめました。

なお、Odooには無料のCommunity版と有償のEnterprise版があり、使える機能が一部異なります(版の違い)。

では、人事管理アプリを入れる前に何を決めればよいのか。機能より先に決めることが1つあります。答えは個人情報の権限設計にあります。

目次

Odooの人事管理(Employees)でできること

Odoo公式サイトによれば、次のようなことができるとされています(出典:Odoo公式サイト、2026年8月確認)。

分野できること
従業員の情報従業員ごとのスキルを記録(例:特定の言語や技術に対応できる人をすぐ探せる)
従業員の情報従業員プロフィール上で、チームを組織階層として表示
従業員の情報契約書をアップロードし、署名を依頼し、1か所に保管
休暇・勤怠との連携休暇の申請状況を、統合された休暇管理で把握
休暇・勤怠との連携在席レポートを使って勤怠を確認し、休暇申請を承認
休暇・勤怠との連携従業員の勤怠を追跡し、分析
評価・採用人事評価をスケジュールし、スキルの伸びを測定
評価・採用求人を作成し、応募を管理
評価・採用新しく入社した従業員に、対応すべきアクティビティを割り当て

Odooの人事管理のメリットとデメリット

人事管理アプリの良い点と注意点は、次のとおりです。使える版が分かっているものは、版も添えています。

メリット

  • 従業員情報を1か所に集められる:契約書・連絡先・スキル・休暇の残日数を、従業員マスタにまとめられる。人事管理の基本的な機能は、Community版でも利用できるとされている
  • 必要な人をスキルで探せる:従業員ごとのスキルを記録し、必要な能力を持つ人をすぐに探せる。資格の有効期限の管理にも効く
  • 契約書がプロフィールに紐づく:アップロード・署名依頼・保管までを1か所で扱える。書類は文書管理(Documents)、署名は電子署名(Sign)のアプリで扱う
  • 工数・経費・案件と人がつながる:従業員が、工数・経費・プロジェクトの担当者として同じデータベース上でつながる
  • 課金は操作するユーザーが対象:Enterprise版は全アプリ一律のユーザー単価が公開されている。課金対象は、システムを操作するユーザーで、従業員全員ではない

デメリット・注意点

  • 日本の給与・労務手続きは別に残す:日本の給与計算、年末調整、社会保険・雇用保険の電子申請は、既存のソフトや社労士に残す前提になる
  • 書類様式と有給ルールは確かめる:日本の労務書類の様式を標準では持っていない。有給の付与ルールも、標準の設定だけで満たせるとは限らない
  • 一部の機能はEnterprise版が対象:部門別のダッシュボードなどはEnterprise版が対象と案内されている。版の区分はバージョンで変わる
  • 権限設計を先に決める必要がある:社内でもっとも機微な情報を扱うため、誰に何を見せるかを設定の前に決める

両方を並べると、次の図のとおりです。

Odooの人事管理のメリットとデメリット 良い点は、従業員情報を1か所に集められる(基本機能はC版でも利用可)、スキルと資格を記録して必要な人を探せる、契約書の保管と署名依頼がプロフィールに紐づく、工数・経費・プロジェクトと人がつながる、課金対象は操作するユーザーであること。注意点は、日本の給与計算・年末調整・社会保険手続きは別に残す、労務書類の様式と有給の付与ルールは要確認、部門別のダッシュボードなど一部はE版、権限設計を先に決める必要があること。 Odooの人事管理のメリットとデメリット 良い点 従業員情報を1か所に集められる 基本機能はC版でも利用可 必要な人をスキルで探せる 資格の有効期限も記録できる 契約書がプロフィールに紐づく 保管と署名依頼を1か所で 工数・経費・案件と人がつながる 同じデータベース上で担当者になる 課金対象は操作するユーザー E版は全アプリ一律の単価を公開 注意点 日本の給与・労務手続きは別に残す 年末調整・社会保険の電子申請など 書類様式・有給ルールは要確認 社会保険労務士への確認が前提 一部の機能はE版が対象 部門別のダッシュボードなど 権限設計を先に決める必要 設定より前に紙で3段階を合意 C版=Community版(無料)/E版=Enterprise版(有償)
Odooの人事管理のメリットとデメリット

注意点の多くは、進め方で避けられます。避け方は日本の労務実務で確かめることと個人情報の権限設計、最初に確かめることで説明しています。

人事管理は従業員マスタという「土台」

機能を一つずつ見る前に、情報がどこに置かれているかを比べてください。

従業員情報が散らばっている状態と、従業員マスタが土台になった状態 上は、雇用契約書(紙)、緊急連絡先の表、メールで申告された資格、別Excelの有給残がばらばらにあり、探すのに時間がかかり、更新されているかも分からず、担当者が代わると引き継げない状態。下は、従業員マスタ(氏名・所属・契約・スキル・連絡先)を土台に、休暇管理・勤怠・人事評価・採用・経費が乗り、1か所を見れば分かる状態。 情報が散らばっている 雇用契約書(紙) 緊急連絡先の表 資格はメール申告 有給残は別Excel 探すのに時間がかかる 更新されているかも分からない 担当者が代わると引き継げない 従業員マスタが土台になる 休暇管理 勤怠 人事評価 採用 経費 従業員マスタ 氏名・所属・契約・スキル・連絡先 1か所を見れば分かる状態になる 上に乗る機能は、すべて土台の情報を使う
従業員情報が散らばっている状態と、従業員マスタが土台になった状態

下の形にすると、次のことが変わります。

  • 「あの人の入社日」を探す場所が1つに決まる
  • 休暇の残日数が、従業員情報とつながって表示される
  • 契約書が本人のプロフィールに紐づいて保管される
  • 組織図が、誰かが手で更新する図ではなくなる

土台なので、単体では派手な効果は出ません。その代わり、上に乗る機能すべての前提になります。

スキル・資格の記録は、思ったより効く

地味でも、中小企業ほど効果が出る機能があります。スキルの記録です。

Odoo公式は、従業員ごとのスキルを記録しておくことで、必要な能力を持つ人をすぐに探せると案内しています。

なぜ効くのか

中小企業では、「誰が何をできるか」が経営者や一部の管理職の頭の中にあります。

  • 英語で対応できるのは誰か
  • あの機械を扱える人は、何人いるか
  • その資格を持っているのは、どの部署の誰か

この記憶があやしくなるのは、人数が30人を超えたあたりからです。

本当に困るのは、資格の有効期限です。更新を忘れると業務が止まる資格もあります。記録がなければ、期限が来たことに気づけません。

「誰が何をできるか」が特定の人の記憶にしかない状態は、その人が抜けたときの備えの問題でもあります。考え方はあの人が明日、来なくなったらで扱っています。

契約書と署名

契約書は、アップロード・署名依頼・保管までを1か所で扱えると公式に案内されています。書類は文書管理(Documents)、署名は電子署名(Sign)のアプリで扱う形です(出典:Odoo公式ドキュメント(Contracts)、2026年10月確認)。

雇用契約書、誓約書、各種同意書。これらが従業員のプロフィールに紐づいていれば、「あの書類、もらったっけ」がなくなります。

【最優先】個人情報の権限設計(誰に何を見せるか)

機能より先に決めることは、誰に、どの情報を見せるかです。設定画面を開く前に、紙の上で決めます。

見せてよい範囲を、先に3段階で決める 従業員情報を3段階に分ける設計例。①全社員が見てよい:氏名・所属・役職・社内連絡先・組織図(誰に聞けばよいかが分かるための情報)。②上長と人事が見る:スキル・評価・休暇の取得状況(配置や育成の判断に必要な情報)。③人事担当のみ:住所・家族構成・給与・契約条件・健康情報(漏れると取り返しがつかない情報)。 見せてよい範囲を、先に3段階で ① 全社員が見てよい 氏名・所属・役職・社内連絡先・ 組織図 誰に聞けばよいかが分かるための情報 ② 上長と人事が見る スキル・評価・休暇の取得状況 配置や育成の判断に必要な情報 ③ 人事担当のみ 住所・家族構成・給与・契約条件・ 健康情報 漏れると取り返しがつかない情報 紙に書いて合意してから、設定を始める
従業員情報の公開範囲を3段階に分けた設計例

なぜ最優先なのか

人事管理アプリが扱うのは、社内でもっとも機微な情報です。

住所、家族構成、給与、契約条件。これらが意図せず見えてしまうと、信頼の問題になります。技術的な不具合ではなく、設計の問題として起きます。

よくある失敗は、次の3つです。

  • 「とりあえず全員が見られる設定」で始めてしまう
  • 上長の範囲を広く取りすぎて、他部署の情報まで見える
  • 退職者のアカウントを残したままにする

進め方

先に3段階を紙に書いてから、設定を始めてください。

順序が逆になると、後から絞る作業になります。そして「見えていた期間があった」という事実は消せません。

権限とセキュリティの考え方は Odooのセキュリティとバックアップの考え方 にまとめています。

日本の労務実務で確認すべきこと(給与・有給・マイナンバー)

人事・労務は、日本の法令と商習慣が濃く出る領域です。導入前に、次の4点を確かめてください。

(1) 労務書類の様式

雇用契約書、労働条件通知書、各種届出。これらには日本固有の記載事項があります。

Odooの標準は、これらの様式をそのままの形では持っていません。 書類の作成は既存の方法を続け、Odooには保管と紐づけだけを任せる。この割り切りも現実的です。

(2) 有給休暇の付与ルール

日本の年次有給休暇には、付与のタイミング・日数・繰越の扱いなど、法令で定められた細かいルールがあります。

この点は、標準の設定だけで満たせるとは限りません。詳しくは Odooの勤怠・休暇管理 で扱っています。社会保険労務士への確認を必ず行ってください。

(3) 給与計算は別問題です

人事情報を管理することと、日本の給与計算を行うことは、まったく別の話です。

社会保険料、所得税、住民税、各種控除。日本の給与計算には固有の要件が多くあります。

人事管理アプリを入れても、給与計算がOdooでできるようになるわけではありません。給与は既存のソフトや社労士に任せる前提で設計するほうが、現実的なケースが多いはずです。

Odooの給与アプリで何ができ、何ができないかは Odooの給与計算(Payroll)と日本対応の現実 で詳しく扱っています。

日本対応の全体像は Odooの日本対応状況 をご覧ください。

(4) マイナンバーの取り扱い

法令で厳格な管理が求められる情報です。そもそもOdooに保管するかどうかを、先に決めてください。

保管しない判断も、十分にあり得ます。

人事管理のCommunity版とEnterprise版の違い

Odooには、無料の Community版 と有償の Enterprise版 があります。

Community版は、オープンソースとして無料で使える版です。ただし、サーバの用意・アップデート・障害対応は自社の責任になり、公式サポートの対象外です。

人事管理の基本的な機能は、Community版でも利用できるとされています。一方で、部門別のダッシュボードなど一部の機能は、Enterprise版が対象と案内されています。

どの機能がどちらの版で使えるかは、バージョンによって変わります。検討時には、必ず対象バージョンで確認してください。

経費精算アプリも同じです。申請・承認・精算の基本機能はCommunity版で使えます。一方、領収書の自動読み取りなど一部はEnterprise版が対象です。人事まわりを広く使うなら、この点も含めて判断してください。

詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。

他のアプリとのつながり

人事管理はほかのアプリの前提になるため、つながる先が多くなります。

アプリつながり方
勤怠・休暇従業員ごとの出退勤と休暇残の管理
経費精算立替経費の申請者として紐づく
工数管理誰がどの案件に時間を使ったかの記録
プロジェクトタスクの担当者として紐づく
採用応募者が入社時に従業員へ変わる

詳細はそれぞれの記事にまとめています。

ベンチャーネットが人事の土台づくりで最初に確かめること

人事は、システムより先に「誰が何を持ち、誰に見せるか」を決める領域です。ベンチャーネットは、次の順番で確かめます。

ステップ1:人事情報が今どこにあるかを書き出す

契約書、連絡先、資格、有給残。それぞれの置き場所と、更新している人を一覧にします。ここで「誰も更新していない表」が見つかることは珍しくありません。

ステップ2:Odooに置く情報と、置かない情報の境界を決める

給与・年末調整・社会保険手続きは、既存のソフトや社労士に残すのが基本線です。Odooには、案件・工数・経費とつながる従業員情報を置きます。マイナンバーを置くかどうかも、ここで決めます。

ステップ3:見せる範囲の3段階を紙で合意する

権限設計の図の3段階を、経営者・人事・部門長で確認してから設定に入ります。標準の権限の仕組みに運用を合わせ(Fit to Standard)、独自の作り込みは最小限にします。

ステップ4:3〜5年後の人数と組織から逆算する

拠点や人数が大きく増える見込みなら、NetSuiteが合うこともあります。業務が固有すぎてパッケージに乗らない場合は、AIスクラッチ開発も候補です。ただしライセンス費用がかからない代わりに、開発費と保守費が別途かかります。

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。そのため、Odooが合わないと判断したときは、そうお伝えします。

Odooの人事管理が合わないケースもあります

人事管理では、会社の状況によって答えが変わります。社内の検討では、次の表を目安にしてください。

自社の状況検討したい選択肢
従業員が数名。全員の顔と経歴が頭に入っている無理に入れる必要はない
販売や工数など他の業務でOdooを使い、人事も同じ場所に置きたいOdoo が現実的な選択肢
給与計算・年末調整まで1つのサービスで回したい国内の人事労務クラウドを検討
タレントマネジメントや複雑な等級制度が必要な規模OdooとNetSuiteの違い を参照

Odooの人事管理が活きるのは、他の業務データと同じ場所にあるからです。工数、経費、プロジェクトと従業員がつながることに意味を感じるかどうか。そこで判断してください。

規模が大きく、NetSuiteの人事機能も比べたい場合は、NetSuite SuitePeople(HR)とは(NetSuiteの教科書)をご覧ください。パッケージとスクラッチ開発の判断材料は パッケージERPかスクラッチ開発か にまとめました。

人事管理アプリに対応する有名SaaS(SmartHR・freee人事労務など)

すでに人事労務のSaaSを使っている場合、Odooの人事管理アプリはその置き換え候補になります。ただしこの領域は、置き換えより併用が現実的なことが多くあります。

使っているSaaSOdooでの対応一言で言うと
SmartHR人事管理(Employees)従業員データベースとしては重なる。労務手続きはSmartHRの領域
freee人事労務人事管理(Employees)同上。給与・年末調整はOdooにない
BambooHR人事管理(Employees)従業員マスタとスキル管理という点で近い

機能の違い

  • Odooにあって人事SaaSにないもの:従業員が工数・経費・プロジェクトの担当者として同じデータベース上でつながること
  • 人事SaaSにあってOdooにないもの:社会保険・雇用保険の電子申請、年末調整、日本の労働条件通知書などの様式、法改正への自動追随

課金構造の違い

人事労務SaaSは、従業員数に応じた課金が中心です。ただしこの領域は、価格を公開していないサービスが多くあります。SmartHRの公式料金ページも、要見積もりの案内です(出典:SmartHR公式「料金プラン」、2026年9月確認)。利用する機能とプランで、金額が変わるためです。

Odoo Enterprise版は、全アプリ一律のユーザー単価が公式サイトで公開されています。見積もりを取らないと総額が見えない体系か、単価が先に分かる体系か。いちばん大きな違いは、ここです。金額の詳細は Odooの料金体系を解説 を参照してください。

もう一つ、見落とされやすい点があります。Odooの課金対象は、システムを操作するユーザーです。従業員全員ではありません。

置き換えのメリット

  • 従業員情報が工数・経費・プロジェクトと同じ場所にあり、案件の担当者と人事情報がつながる
  • スキルや資格の記録が、配置の判断と同じ画面で参照できる
  • 契約書の保管と署名依頼が、従業員のプロフィールに紐づく

置き換えのデメリット・向かないケース

  • 社会保険・雇用保険の電子申請と年末調整はOdooにない。ここは人事SaaSを残す前提になる
  • 日本の労働条件通知書などの様式を標準では持っていない
  • 法改正への追随を提供側に任せたいなら、国内の人事労務SaaSのほうが安心して運用できる
  • 給与計算・年末調整・社会保険手続きまで含めて考えるなら、国内の人事労務サービスのほうが適していることが多い

現実的には、労務手続きは人事SaaS、案件と人をつなぐ情報はOdooという分担になります。どちらかに寄せるより、境界を決めるほうが早く動き出せます。

他のアプリの対応表は Odooで置き換えられるSaaS対応表 にまとめています。

バージョンと機能の更新について

Odoo 19.0は2025年9月にリリースされました。標準サポートの終了は2028年9月(予定)と公式に記載があります。

その後、19.1(2026年1月)・19.2(2026年3月)・19.3(2026年5月)・19.4(2026年7月)が順に提供されています。

19.1〜19.4は、Odooオンラインで先に提供されました。 Odoo.shとオンプレミスは対象外でした(公式のサポート表にN/Aと明記)。

2026年9月には、次のメジャー版のOdoo 20が公開されました。Odoo.shやオンプレミスの会社も、Odoo 20に上げれば、19.1〜19.4の新機能をまとめて受け取れます。

違うのは新機能を受け取る時期です。早く使いたいならOdooオンライン。自社で管理したいならOdoo.shかオンプレミスで、年1回のメジャー版に合わせます。Odoo 20の変更点はOdoo 20の新機能まとめにあります。

人事管理アプリに直接かかわる変更は、19.1〜19.4の公式リリースノートには見つかりませんでした。

なお、この更新の話はEnterprise版が前提です。Community版は、この19.1〜19.4のような更新の流れには乗りません。

(出典:Odoo公式 リリースノートおよびサポート表、2026年10月確認)

よくある質問

Q1. 給与計算はできますか?

日本の給与計算を、Odooでそのまま行える前提では考えないでください。

社会保険料、所得税、住民税など、日本固有の要件が多くあります。給与は既存のソフトや社労士に任せ、Odooには人事情報の管理を任せる。この構成が現実的なことが多いです。

Q2. 何人くらいの規模から意味がありますか?

人数より、次の4項目で判断します。2つ以上当てはまるなら、検討の価値があります。

  • □ 「誰が何をできるか」が、社長や特定の管理職の記憶に頼っている
  • □ 従業員の書類を探すのに、毎回時間がかかっている
  • □ 有給の残日数を、手作業の表で管理している
  • □ 資格の更新期限を、本人任せにしている

Q3. 従業員本人に見せることはできますか?

できます。権限設定によって、本人が自分の情報を確認できる構成にできます。

ただし、どこまで見せるかは先に決めてください。 評価情報など、慎重に扱うべき項目があります。

Q4. 退職者の情報はどうなりますか?

保存期間と削除のルールを、運用として社内で決めます。

システムの機能の話ではなく、社内規程の話です。法令上の保存義務がある書類もあるため、社労士と相談して決めてください。

Q5. 既存の人事Excelから移行できますか?

できます。氏名・所属・入社日といった基本情報は、移行の対象になります。

ただし、移行の前にデータの整理が必要です。表記のゆれ、退職者の混在、更新されていない項目。ここに時間がかかります。進め方は Odooへのデータ移行の進め方 をご覧ください。

Q6. Odooの人事管理のメリットとデメリットは何ですか?

従業員情報を1か所に集められる一方で労務手続きは別に考えます。

契約書・スキル・休暇の情報が従業員マスタにまとまり、工数・経費・プロジェクトとも同じ場所でつながります。基本的な機能は、Community版でも利用できるとされています。 一方、日本の給与計算・年末調整・社会保険手続きは、既存のソフトや社労士に任せる前提です。部門別のダッシュボードなど一部はEnterprise版が対象です(メリットとデメリット)。

まとめ

Odooの人事管理は、単体で効果を出す機能ではありません。休暇、勤怠、評価、採用、経費、工数がぶら下がる 従業員マスタという土台です。

従業員マスタが整うと、「あの人の情報」を探す場所が1つに決まります。スキルや資格が記録されていれば、誰に頼めばよいかも分かります。

その前に決めるのが、個人情報の権限設計です。全社員が見てよい情報、上長と人事が見る情報、人事担当のみが見る情報。この3段階を先に紙に書いてから、設定を始めてください。

メリットは、従業員の情報が工数・経費・プロジェクトと同じ場所でつながることです。注意点は、労務手続きの切り分けと権限設計にあります。

日本の労務実務は、冷静に見てください。給与計算・年末調整・社会保険手続きは、別の話です。人事情報の置き場所としてのOdooと、労務手続きの実行環境は、切り分けて考えることをおすすめします。

1年後、社長に入社日を聞かれた担当者は、キャビネットを開かずにその場で答えられます。資格の更新期限が近い人も一覧で見え、住所や給与を開ける人は紙で決めた範囲に収まっています。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「人事情報はOdoo、給与は既存のまま」といった切り分けからご相談を承っています。散らばった人事情報の現状を、そのままお聞かせください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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