社内でOdooの検討を持ち出したら、役員から「聞き慣れない名前だけど、どこの製品で、いつからあるのか」と聞かれた。
調べてみると、「OpenERP」という別の名前で書かれた古い記事やフォーラムの投稿まで出てくる。同じものなのか、まったく違うものなのか。
同じ製品です。Odooは2002年にベルギーで「TinyERP」として開発が始まり、2008年に「OpenERP」、2014年に今の「Odoo」へと名前を変えてきました。
名前は変わっても、開発は途切れていません。原則として年1回のメジャーバージョンアップが、20年以上続いてきました(歴史を知ると、何が見えるか)。
歴史を押さえると、たとえば次のことが変わります。
- 「OpenERP」と書かれた記事を、2014年より前の情報を含むものとして見分けられる
- 1つのアプリから始めて、必要に応じて足していける理由が分かる
- 無料版と有償版が分かれている理由を、オープンコアという形から説明できる
- 毎年のバージョンアップを、宿題として先に予定へ組み込める
ただし、世界での歴史が長くても、日本市場での蓄積はまだ途中です(日本での歩み)。良い点と注意点は、歴史から見える、Odooの良い点と気をつけることに並べました。
いまのOdooには、無料でオープンソースのCommunity版と、有償サブスクリプションのEnterprise版があります。この2つの版の違いも、歴史の流れの中で生まれたものです。
では、なぜ名前から「ERP」が消えたのか。その理由を知ると、いまの製品の形が理解しやすくなります(名前から「ERP」を外した理由)。
TinyERP・OpenERP・Odoo:3つの名前と、その変遷
TinyERP(2002年〜)
Odoo公式サイトの創業者略歴によれば、TinyERPは2002年に始まったとされています。開発したのは、ベルギーの Fabien Pinckaers 氏です。
2005年には、オープンソースのソフトウェアとしてリリースされました。
「Tiny(小さい)」という名前のとおり、目指したのは軽くて扱いやすいERPでした。当時のERPは、大企業向けの重いものが中心。中小企業には手が届きにくい状況がありました。
OpenERP(2008年〜)
2008年、名前はOpenERPに変わります。
「Tiny(小さい)」から「Open(開かれた)」へ。小ささを売りにする段階から、オープンソースであることを前面に出す段階へ移ったと読み取れます。
この時期に資金調達が行われ、開発体制が広がっていきました。
Odoo(2014年〜)
そして2014年、名前はOdooに変わりました。3つの名前のうち、いちばん大きな転換点です。
なぜOdooは名前から「ERP」を外したのか
製品の性格が変わったからです
ERPとは、会社の基幹業務を1つのシステムで管理する仕組みです。従来のERPが統合していたのは、会計、在庫、購買、販売、製造といった基幹業務でした。
ところがOdooは、その外側まで扱うようになります。
- ウェブサイトの作成
- eコマース
- マーケティング
- ヘルプデスク
- 人事、採用
- プロジェクト管理
どれも、従来のERPの定義には収まりません。「ERP」を名前に残したままでは、製品の実態を説明できなくなっていたわけです。
ERPという考え方そのものの成り立ちは、ERPのルーツは会計700年の歴史にある(NBE)で扱っています。
この経緯が、いまの構造につながっています
Odooが「アプリの集合体」という形をとっているのは、この歴史の結果です。
必要なアプリだけを選んで使い、あとから足す。この設計は、扱う範囲が広がる過程で自然に生まれたものと、ベンチャーネットは見ています。
現在の構成は Odooとは?中小企業の経営者が知っておきたいオープンソースERP入門 にまとめています。
オープンソースの位置づけも変わってきた(オープンコアへ)
歴史の中で変わったものが、もうひとつあります。オープンソースとの向き合い方です。
最初は「全部オープン」でした
TinyERPは、オープンソースのソフトウェアとして公開されました。大企業向けの高価なERPに代わるもの、という位置づけです。
現在はオープンコアです
いまのOdooは、中核部分をオープンソースで公開し、その外側に有償版を持つ形です。
- Community版:無料。オープンソースとして公開
- Enterprise版:有償。追加のアプリと公式サポート
この形を「オープンコア」と呼びます。
なぜこの形になったのか
開発と保守を続けるには、原資が必要です。有償版の収益が、その原資になります。
一方で、中核が公開されていることにも意味があります。ソースコードを確認でき、特定の事業者にしか触れない状態になりにくい。この性質は、いまも残っています。
「全部無料が良い」という見方も、「有償の裏付けがあるほうが安心」という見方も成り立ちます。どちらが優れているかではなく、どちらを重く見るかの問題です。
詳しくは Odooのライセンスを解説 と Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。
Odooの歴史を知ると、何が見えるか
「歴史を知って何になるのか」と思われるかもしれません。実務の上では、3つの使い道があります。
(1) 古い情報を見分けられる
いまもインターネット上に残るのが、OpenERP時代の情報です。
- 画面の見た目が違う
- 機能の名前が違う
- ライセンスの説明が現在と異なる
「OpenERP」という単語が出てくる記事は、少なくとも2014年より前の情報を含んでいます。情報を読むときの、分かりやすい目安です。
社内会議に資料を出す前に、次の点を確かめておくと安心です。
- □ 記事に「OpenERP」「TinyERP」の名前が出てこないか
- □ どのバージョンの話か、記事の中に書かれているか
- □ その機能がCommunity版とEnterprise版のどちらの前提か、区別されているか
- □ ライセンスや課金の説明が、Odoo公式の現在の情報と食い違っていないか
(2) 変化の速さが分かる
Odooは原則として、年1回メジャーバージョンが上がります。
この開発ペースが、20年以上続いてきました。製品として活発に更新されていることは、選定時の安心材料のひとつです。
裏返せば、「バージョンアップへの追随が毎年の宿題になる」ということでもあります。考え方は Odooのバージョンアップとサポート期間 にまとめています。
(3) 「なぜアプリ単位なのか」が分かる
ほかのERPと比べると、Odooのアプリ単位という構成は特徴的です。
この形は、扱う範囲が広がる歴史の中で生まれました。最初から設計されたというより、必要に応じて増えてきた結果と見るほうが自然です。
だから、1つのアプリから始めて、必要に応じて足していく使い方ができます。考え方は Odoo One App Freeとは? をご覧ください。
歴史から見える、Odooの良い点と気をつけること
ここまでの歴史を、製品の良い点と注意点として並べ直すと次のとおりです。
良い点は、次の5つです。
- 更新が続いている:原則年1回のメジャーバージョンアップが、20年以上続いてきた
- 必要なアプリから始められる:アプリの集合体という形なので、1つのアプリから始めて足していける
- ERPの外側まで扱える:基幹業務に加え、ウェブサイト・EC・マーケティング・ヘルプデスク・人事・プロジェクト管理まで扱う
- 中身を確認できる:中核がオープンソースで公開され、特定の事業者にしか触れない状態になりにくい
- 開発の原資がある:有償のEnterprise版の収益が、開発と保守を続ける原資になる
気をつけることは、次の4つです。
- 毎年の追随が宿題になる:年1回のメジャーバージョンアップに、誰が追随するかを先に決めておく
- 古い情報が混ざる:OpenERP時代の情報は、画面・機能の名前・ライセンスの説明が現在と違う
- 版で使える範囲が違う:Community版は無料・オープンソース。Enterprise版は有償で、追加のアプリと公式サポートが付く
- 日本での歴史はまだ浅い:日本語の情報、公開事例、支援できる事業者は、まだ限られている
両方を1枚の図に並べました。
古い情報は古い情報を見分けるチェックで、更新への追随と版の切り分けはベンチャーネットが確かめることで、避け方を書いています。
Odooの日本での歩みについて
Odooの日本での歴史は、まだ浅いのが実情です。
- 日本語の情報は限られている
- 導入事例の公開も多くない
- 支援できる事業者も限られる
世界では長い歴史を持つ製品でも、日本市場での蓄積はまだ途中です。検討時のリスクとして、正直に見ておくべき点だと考えています。
一方で、公式ドキュメントには、言語切り替えで日本語版を選べるページもあります。学習の環境は Odooの学習リソースまとめ にまとめました。
ベンチャーネットが「歴史の長さ」より先に確かめること
製品の歴史が長いことは、安心材料にはなります。ただ、それだけで自社に合うかは決まりません。
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。Odooを検討中の会社と確かめる順番は、次のとおりです。
- 3〜5年後の会社の姿を先に聞く:人数・拠点・事業の広がりから逆算し、Odooの規模感に合うかを見ます
- 使いたい業務を、版ごとに切り分ける:Community版の範囲で足りるか、Enterprise版が前提かを、業務単位で見極めます
- 標準機能に業務を合わせられるかを確かめる:Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で、主要業務を1つずつ当てはめます
- 年1回の更新に、誰が追随するかを決める:歴史が示す開発ペースを前提に、社内と外部の役割分担を先に決めます
- 合わなければ、合わないと伝える:規模や要件が大きければNetSuite、パッケージに乗らない固有業務ならAIスクラッチ開発も候補にします。ただし開発費・保守費は別途かかります
ライセンスの有無だけを見るのではなく、課金の仕組みと維持の手間まで並べて比べます。規模や成長の速さでNetSuiteと比べる場合は、OdooとNetSuiteの比較(NetSuiteの教科書)が判断材料になります。
判断の軸をもう少し詳しく知りたい方は、Odooが向いている企業・向いていない企業|自社に合うかを判断する5つの軸【2026年版】 もご覧ください。
Odooの歴史についてよくある質問
Q1. OpenERPとOdooは同じものですか?
同じ製品です。2014年に名前が変わりました。
ただし、その後もバージョンアップが続いているため、OpenERP時代の情報には現在と違う部分があります。
Q2. なぜ「Odoo」という名前なのですか?
Odoo社によれば、当時のインターネット企業の命名の流儀を参考にしたとされています。特定の意味を持つ略語ではありません。
Q3. 開発は今も続いていますか?
続いています。原則として、メジャーバージョンの公開は年1回です。
標準サポートは、各メジャー版のリリースから3年です(出典:Odoo公式ドキュメントのサポート期間のページ、2026年10月確認)。古いバージョンを使い続けると、対象から外れます。詳しくは Odooのバージョンアップとサポート期間 をご覧ください。
Q4. 開発元はどこの会社ですか?
ベルギーで創業した企業です。創業者は Fabien Pinckaers 氏で、現在も経営に関わっています。
Q5. 突然サービスが終わることはありませんか?
その可能性がないとは言い切れません。これは、どのソフトウェアにも当てはまります。
ただし、Odooの中核部分はオープンソースとして公開されています。仮に会社の方針が変わっても、公開されたコードが消えるわけではありません。
ここが、完全に非公開の製品との違いです。考え方は オープンソースERPとは? にまとめています。
Q6. TinyERPとは何ですか?
Odooの最初の名前です。
2002年に開発が始まり、2005年にオープンソースのソフトウェアとしてリリースされました。「Tiny(小さい)」の名のとおり、軽くて扱いやすいERPを目指していました。2008年にOpenERP、2014年にOdooへと名前が変わっています(3つの名前と、その変遷)。
まとめ:3つの名前と、いまのOdoo
Odooには、3つの名前があります。TinyERP、OpenERP、そしてOdoo。
2002年に開発が始まり、2005年にオープンソースとしてリリース。2008年にOpenERPへ、2014年にOdooへと改称されました。
目を向けたいのは、名前から「ERP」が消えたことです。基幹業務だけでなく、ウェブサイト、EC、マーケティング、ヘルプデスクまで扱うようになり、「ERP」という言葉では実態を説明できなくなった。アプリを選んで組み合わせるいまの形は、この過程で生まれました。
オープンソースとの向き合い方も変わり、現在はオープンコアです。開発を続ける原資と、中身を確認できる性質。この2つを両立させる構造といえます。
最後に、日本での歴史はまだ浅いのが実情です。世界での実績と、日本市場での蓄積は分けて見てください。
1年後、社内で「OpenERP時代の記事にはこう書いてあった」という話が出ても、担当者がすぐに古い情報だと見分けられている。次のメジャーバージョンの公開も年間予定に入っていて、慌てずに変更点を確かめてから対応を決めている。そんな姿を目指してください。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
製品の歴史や知名度より、「自社の業務に合うか」が判断の軸だと考えています。役員への説明材料づくりや、その切り分けからご相談を承っています。
あわせて読みたい記事
