展示会でOdooの新しいAI機能を見て、「これは使えそうだ」と感じた。ところが社内に戻ると、別の不安が出てきます。毎年のように新しい版が出るなら、うちは付いていけるのか。
その不安は、見方を変えれば期待にもなります。毎年の更新は、新しい機能が早く届くということでもあるからです。
Odooのこれからは、3つの軸で見ると読み解けます。年1回のメジャー更新が続く「バージョン」。Odoo 19から業務データに直接触れ始めた「AI」。そして、領域ごとに進み方が違う「日本対応」です。最新の版は、2026年9月に公開されたOdoo 20です。19系で入ったAIの機能が、中間の版を使っていなかった会社にも届きました(いまのOdooは、どこにいるか)。
3つの軸を押さえると、たとえば次のことが分かります。
- 版を上げる時期を、作り込みの量と繁忙期から決められる
- AIへの投資の前に、データを一つにする順番が見える
- 日本の制度で足りない部分を、回避策とセットで判断できる
- 選ぶ製品を、3〜5年後の会社の姿から逆算できる
ただし、3つの軸は進む速さがそろっていません。まとめて「Odooの未来」と語ると、判断を誤ります。製品の未来が明るいことと、自社の導入がうまくいくことも別の話です(メリットとデメリット)。
では、「付いていけるのか」という不安には、どう答えればよいのか。答えは製品側ではなく、自社の体制の側にあります(自社で確かめること)。
CommunityとEnterpriseの区別について
この記事で扱うAI関連の機能は、Enterprise版(有償)が対象です。無料のCommunity版でも中核の業務機能は使えますが、AI関連の機能や公式サポート、バージョンアップの支援は含まれません。両者の違いはOdoo Community版とEnterprise版の違いをご覧ください。
いまのOdooは、どこにいるか|最新バージョンはOdoo 20(2026年9月24日時点)
最新のメジャーバージョンは、2026年9月に公開されたOdoo 20です(出典:Odoo 20 Release Notes、2026年9月確認)。前の版のOdoo 19は2025年9月に公開され、19.3、19.4と更新が重ねられてきました。
公開の時期は、Odoo公式の年次イベント「Odoo Experience 2026」に合わせたものです。会期は2026年9月24日から26日。会場はベルギーのブリュッセルExpoです(出典:Odoo公式イベントページ、2026年9月確認)。
Odoo 20の変更点そのものは、Odoo 20の新機能まとめに一覧があります。
バージョンの軸:年1回のメジャー更新とサポート期間
Odooは原則として年1回、メジャーバージョン(大きな区切りの版)を更新します。この製品と付き合うなら、まず頭に入れておく性格です。
新機能は早く届きます。その代わり、使い続けるには版を上げていく必要があります。理由は、標準サポートが公開から3年間に限られることです(出典:Odoo公式ドキュメント「標準・延長サポート」、2026年10月確認)。
ここから、経営として決めておく論点が2つ出てきます。
論点1:作り込みが多いほど、バージョンアップが重くなる
標準機能から離れるほど、更新のたびに確認と修正が要ります。カスタマイズの範囲をどこまでにするかは、将来のコストを決める判断です。詳しくはOdooのカスタマイズはどこまでやるべきかで扱っています。
論点2:版によって、バージョンアップの手間が変わる
Enterprise版の契約には、バージョンアップグレードが含まれます。Community版では、更新作業を自社または支援先が担います(出典:Odoo公式「エディション比較」、2026年9月確認)。
サポート期間と更新の進め方はOdooのバージョンアップとサポート期間に書きました。Odoo 19で入った内容はOdoo 19の新機能まとめにあります。
Odoo 20が出たからといって、すぐに移る必要はありません。Odoo 19の標準サポートは2028年9月まで(予定)です。移る時期は、作り込みの量と業務の繁忙期を見て決めます。
AIの軸:OdooのAIエージェントが業務に入ってくる
ここ1年でいちばん動いたのが、AIの領域です。
Odoo 19では、AI関連の機能がまとめて導入されました。AIエージェント(指示を受けて作業を代行するAI)との対話、社内データへの自然言語での問い合わせ、項目の入力補助などです。自然言語から検索条件を組み立てる機能も加わりました(出典:Odoo公式リリースノート、2026年9月確認)。
続く19.3では、アップロードしたファイルの指示をもとに、AIエージェントがレコードを作れるようになりました。Webサイトの編集を対話で行う仕組みも加わっています。
19.4では、エージェントの振る舞いを定義する「トピック」が「スキル」に改称されました(出典:Odoo公式ドキュメント「AIエージェント」、2026年10月確認)。エージェントとの会話は、最後のメッセージから一定期間保存されます。
そしてOdoo 20で、こうした機能は中間の版を使っていなかった会社にも届きました。決まった処理からAIを呼び出す仕組みや、外部のAIからOdooにつなぐ仕組み(MCP)も含まれます。同時に、すべてのAI機能にクレジット(アプリ内課金)が必要になりました(出典:Odoo 20 Release Notes、2026年9月確認)。
機能の数を追っても、方向性は見えません。見えてくるのは、AIが業務データに直接触れる形になってきていることです。
この形では、効果がデータの整い方に左右されます。受注も在庫も会計も同じ場所にある会社なら、AIの答えを元データまでたどれる。データが散らばっている会社では、答えが正しいかどうかを検証できません。データの整え方そのものは、AI導入の成否は「データの整い方」で決まるで製品を問わず扱っています。
AIを入れるかどうかより先に、データを一つにするかどうかの判断がある。ベンチャーネットはそう考えています。
機能の詳細はOdooのAI機能まとめとOdooのAIエージェントをご覧ください。AIと融合したERPで経営がどう変わるかは、未来型ERPとは?で考え方からまとめています。
日本対応の軸:領域によって進み方が違う
日本での利用は、一括りにすると見誤ります。領域ごとに状況が違うためです。
会計まわりには、日本向けのローカライズ(国ごとの制度や慣習に合わせた調整)が提供されています。Odoo 20では、決算書が「中小会計要領」に沿った形になりました。勘定科目表も、国税の電子申告(e-Tax)の科目コードに合わせて更新されています。消費税の申告書の項目も追加されました(出典:Odoo 20 Release Notes、2026年9月確認)。
ただし、実際の決算や申告にそのまま使えるかは、実機と税理士の目で見る必要があります。インボイス制度や電子帳簿保存法も、制度側の要求とシステム側の機能を分けて考えます。
人事・給与まわりの事情は、会計とは別です。給与計算の日本向け対応は、検討する時点での状況を必ず確認してください。現状はOdooの給与計算(Payroll)と日本対応の現実にまとめています。
領域ごとの最新状況は、Odooの日本対応状況|会計・インボイス・給与のいまを正直に解説にあります。こちらは四半期ごとに見直している記事です。
未対応の領域があること自体は、判断の材料にすぎません。それだけで結論は出ない。回避策はあるのか、どれくらいの手間か、他の製品ではどうか。そこまで見て初めて比較できます。
※ この節も四半期ごとに更新します(2026年9月24日時点の内容)。
Odooのロードマップに乗る前に、自社で確かめること
製品の未来が明るいことと、自社の導入がうまくいくことは、別の話です。
次の4項目は、社内会議でそのまま使える問いの形にしました。1つでも「いいえ」があれば、そこが導入前に手当てする場所です。
- □ 更新の体制:年1回の版の更新を、誰がいつ確認・検証するか決まっているか
- □ 作り込みの量:いま欲しい作り込みが、数年後に版の更新を止める理由にならないか
- □ データの順番:AIの前に、受注・在庫・会計のデータが一か所にそろう計画があるか
- □ 未対応領域の担い手:日本固有の要件で足りない部分を、誰がどんな運用で埋めるか決まっているか
作り込みは、標準に寄せられる部分を寄せておくほど、結果として身軽になります。AI機能は整ったデータの上で効くので、順番を逆にすると投資を回収しにくい。未対応領域の担い手が曖昧なまま進めば、稼働後の負担は現場に寄ります。
4項目とも、製品の未来ではなく自社の体制を問うています。更新を誰が受け持ち、作り込みをどこで止めるか。それが決まっていれば、年1回の更新は怖いものではなくなります。
Odooのこれからに乗るメリットとデメリット
3つの軸には、良い面と気をつける面の両方があります。版によって当てはまり方が変わる点もあります。メリットは、次の5つです。
- 新機能が早く届く:原則として年1回、メジャーバージョンが更新される
- 版の更新が契約に含まれる:Enterprise版の契約には、バージョンアップグレードが含まれる
- AIが業務データに直接触れる:Enterprise版では、AIエージェントとの対話や、社内データへの自然言語での問い合わせが使える
- AIの答えを確かめられる:受注も在庫も会計も同じ場所にあれば、AIの答えを元データまでたどれる
- 日本向けの会計が前に進んでいる:Odoo 20で、決算書が「中小会計要領」に沿った形になり、消費税の申告書の項目も加わった
デメリットと注意点は、次の4つです。
- 版を上げ続ける必要がある:標準サポートは公開から3年間。作り込みが多いほど、更新のたびに確認と修正が要る
- Community版は更新を自社で担う:更新作業は、自社または支援先の受け持ち。AI関連の機能も含まれない
- AI機能にはクレジットが要る:Odoo 20から、すべてのAI機能にクレジット(アプリ内課金)が必要になった
- 日本対応は領域で差がある:給与計算は、検討する時点の状況を確認する。決算や申告にそのまま使えるかは、実機と税理士の目で見る
両方を並べると、次の図のとおりです。
注意点の多くは、自社の体制を先に決めておけば手当てできます。決める順番は、ロードマップを自社の3〜5年計画に落とす手順にあります。
ロードマップを自社の3〜5年計画に落とす手順
ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。特定の製品に寄せず、規模と要件で選択肢を使い分けるのが基本です。
製品の新機能の話は、最後に回します。ベンチャーネットが最初に確かめるのは、次の順番です。
ステップ1:3〜5年後の会社の姿を聞く
選ぶ基準は、いまの規模ではなく3〜5年後の姿です。拠点や人数がどう増えるか、事業の売却(EXIT)を視野に入れているかを伺います。
- 成長が速い会社が小さく始めると、数年後に乗り換えの手間が二度発生する
- 成長がゆるやかな会社が上の段から始めると、使わない機能の維持に手間がかかる
ステップ2:標準機能で回る範囲を見極める
Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で、業務を標準の流れに当ててみます。作り込みが必要な箇所が多いほど、年1回の更新は重くなります。更新を続けられる形かどうかが見えてくるのも、この段階です。
ステップ3:データを一つにする順番を決める
見える化、わかる化、儲かる化の順で進めます。まず数字を一か所に集め、次に意味が読めるようにし、そのうえで打ち手に使う。AI機能が効いてくるのは、この土台ができてからです。
ステップ4:合わない部分は、合わないと伝える
規模や要件によっては、Odooより適した選択肢があります。拠点や取引が大きく広がる見込みなら、NetSuiteも比較に入れます。パッケージに乗らない固有業務が中心なら、AIスクラッチ開発も候補です。ただし、AIスクラッチ開発はライセンス費がかからない代わりに、開発費と保守費が別途かかります。
逆算する先として、EXITを視野に入れる経営者も増えています。パッケージERPで月次が早く正確に締まる会社は、買い手側の調査に耐えやすい。業務が標準化されていれば、引き継ぎもしやすくなります。
企業価値そのものを押し上げる、と断定できるものではありません。効くのは、買い手が会社を評価しやすくなるという面です。この論点はM&A売却(EXIT)を見据えた基幹システムの整え方で扱っています。
成長段階に応じた入り口の選び方は、成長企業の基幹システムはどこから始めるかにまとめました。
Odooの今後についてよくある質問
Q1. 毎年バージョンを上げないといけませんか?
毎年上げる必要はありません。ただし、放置し続けることもできません。
標準サポートの対象は、直近3つのメジャー版です。対象から外れると、不具合の修正やセキュリティの更新を受けられなくなります。例外は、オンプレミスとOdoo.sh(一部の版のみ)で契約できる有償の延長サポートです。一度に何世代も飛ばすと、移行の負担が大きくなる。数年に一度は上げる前提で計画しておくのが現実的です。詳しくはOdooのバージョンアップとサポート期間をご覧ください。
Q2. AI機能を使うのに、追加の費用はかかりますか?
かかります。
Odoo 20では、すべてのAI機能にクレジットが必要になりました。クレジットは、Odooのアプリ内課金で購入します(出典:Odoo 20 Release Notes、2026年9月確認)。費用は、使う機能と量で変わります。使う場面を先に決めてから予算を見込むのが安全です。
Q3. 日本語で使えれば、日本の業務にも対応していると考えてよいですか?
そうとは限りません。画面の日本語表示には対応していますが、日本の制度や商習慣への対応は別の話です。
たとえば帳票のレイアウト、税区分の扱い、給与計算の要件などは、領域ごとに確認が要ります。詳しくはOdooの日本対応状況に書いています。
Q4. Odoo 20が出たら、すぐに移るべきですか?
すぐに移る必要はありません。
Odoo 19の標準サポートは、2028年9月まで(予定)です。移る時期は、作り込みの量と業務の繁忙期を見て決めます。作り込みが多いほど、更新のたびに確認と修正が要ります(バージョンの軸)。
1年後の姿
受注から入金までが一つのデータベースに載り、AIに聞いた答えを元データまでたどって確かめられる。版の更新の予定は、繁忙期を避けて計画表に入っている。
1年後の秋、次のメジャー版の発表を聞いた経営会議で、話題が「移るべきか」ではなく「どの業務のAIにクレジットを使うか」になっている。未来が開けるというのは、そういう地味な整い方の先にあります。
もう少し詳しく知りたい方へ
3〜5年後を見据えて、いま何を選ぶべきか。成長の見立てと、版の更新を続けられる体制づくりから一緒に考えられます。
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