「新しいOdooにはAIが入ったらしい」。展示会でそう聞いて担当者に尋ねると、「うちの環境で使えるかは分からない」と返ってくる。
Odoo 19では、ふだんの画面のままAIに質問し、定型の作業を任せられるようになりました。
Odoo 19は、2025年9月にリリースされたメジャーバージョンです。もっとも大きく変わったのは、AIの扱いでした。AIがアプリ全体に組み込まれ、「質問する」「タスクを任せる」「項目を埋める」の3つの形で使えます。
その後も19.1〜19.4が追加され、19.4では外部のAIエージェントとのMCP接続が加わりました(19.1〜19.4で追加されたもの)。
Odoo 19の新機能で、たとえば次のことが変わります。
- 「あの画面はどこだったか」を、自然な言葉で聞ける
- 検索やリードの作成を、AIエージェントに任せられる
- 見積書や請求書に、セクションを設けられる
Odooには、無料・オープンソースのCommunity版と、有償サブスクリプションのEnterprise版があります。標準のAI機能は、有償版で使う前提のものです。
では、担当者の「分からない」はどこから来るのか。新機能が届くかどうかを分けるのは、Odooをどこで動かしているかです。
答えはマイナー版はOdooオンライン専用に、良い点と注意点はOdoo 19の新機能のメリットと注意点にまとめました。
なお、次のOdoo 20は2026年9月に公開されました。変更点はOdoo 20の新機能まとめにあります。
※2026年9月時点の情報です。Odooは毎年更新されるため、検討時には最新版の情報をご確認ください。
Odoo 19の新機能で最大の変化:AIの全面統合
AIが「別の機能」ではなくなった
これまで多くの業務システムでは、AIは追加のオプションという扱いでした。
Odoo 19では、AIがアプリ全体に組み込まれています。Odoo公式は、AIが状況に応じて支援し、すべてのアプリで生産性を高めると説明しています(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント、2026年10月確認)。
実務で効くのは、慣れた画面の中でAIを使えることです。別の画面に移る必要も、外部のサービスを開く必要もありません。
3つの形でAIが提供される
Odoo 19のAIは、大きく3つの形で使えます。
| 機能 | 何ができるか |
|---|---|
| AIに質問 | データベース内のどこからでも、自然な言葉で質問できる |
| AIエージェント | 指示にもとづいて、タスクを実行する |
| AIフィールド | 項目の内容を、AIが自動で入力する |
Odoo 19のAIに質問する機能
どこからでも呼び出せる
Odoo公式によれば、「AIに質問」機能はデータベース内のどこからでも使えます。自然言語を理解し、質問への回答、ビューの表示、コンテンツの改善などを行います(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント、2026年10月確認)。
呼び出し方は簡単です。キーボードでコマンドパレットを開き、プロンプト(AIへの指示文)を入力します。画面右上のAIボタンからも開けます。
実務でどう効くか
いちばん効くのは、操作を覚える負担が下がることです。
ERPは機能が多く、「あの画面はどこだったか」で手が止まりがちです。自然な言葉で聞ければ、マニュアルを探す時間が減ります。
新しく入った人が使い始めるまでの時間も、短くなると期待できます。導入後の定着の負担を軽くする部分です。
Odoo 19のAIエージェント
指示を受けて動くアシスタント
AIエージェントは、自然な言葉を理解してタスクを実行する仕組みです。
Odoo公式の説明では、エージェントは「トピック」と「ソース」で構成されます。トピックはエージェントが担う役割を示し、ツールがタスクの実行手段を提供します。ソースは、タスクに必要な情報を与えます(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント、2026年10月確認)。
あらかじめ用意されたトピックには、自然言語での検索、情報の取得、リード(見込み客)の作成などがあります。リードの作成は、CRMアプリが入っている場合に使えます。
実務でどう効くか
定型的な作業を任せられます。
ただし、AIエージェントは「何でも自動でやってくれる存在」ではありません。何をさせるかを設計し、必要な情報を与えて、はじめて動きます。
業務を整理する作業は、いまも人の側に残っています。
どこまでをAIに任せ、どこを人が握るかの考え方は、AIエージェントに「任せる範囲」と、経営者が「握る範囲」で詳しく扱っています。
AIフィールドとその他の改善
AIフィールド
項目の値を、AIがレコードの内容などをもとに生成・提案する仕組みです。
長い説明文の要約や、定型的な文章の作成といった用途が考えられます。
データ入力まわりの改善
Odoo 19では、日常業務の細かい部分も改善されました。公式のリリースノートから、代表的なものを挙げます(出典:Odoo公式リリースノート、2026年8月確認)。
- HTML形式のプロパティ項目を作成し、AIで内容を自動入力できる
- 商品のインポート時に、バリエーション(色・サイズなど)ごとのデータもあわせて設定できる
- 連絡先、リード、販売オーダ、購買オーダ、会計仕訳、タスク、作業時間などに、新しいインポートテンプレートが追加された
- 顧客向けの見積書・販売オーダ・顧客請求書に、セクションとサブセクションを追加できるようになった
派手さはなくても、日々の入力作業に効く改善です。
Odoo 19.1〜19.4で追加されたもの
Odoo 19は、19.0で止まっていない
Odoo 19は2025年9月のリリース後も、19.1から19.4というマイナー版が公開されています。
公式のリリースノートに記載がある範囲で、版ごとの主な内容は次のとおりです。
| 版 | 時期 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 19.0 | 2025年9月 | 新規アプリ2本(Equity/ESG)、AI(エージェント・チャットボット)、50以上の業種パッケージ |
| 19.1 | 2026年1月 | カレンダーの改善、社内向けプッシュ通知、AIへのファイルについての質問 |
| 19.2 | 2026年3月 | 作業指図のカンバン、Field ServiceのPlanningへの統合、外貨換算レートの表示 |
| 19.3 | 2026年5月 | AIエージェントによるレコードの作成・更新、オフライン編集、勘定科目グループの「Parent accounts」への置換 |
| 19.4 | 2026年7月 | AIエージェントのMCP接続、ウェブサイトビルダーの刷新、説明のみの受注明細 |
※出典:Odoo公式 リリースノートおよびドキュメント(2026年9月確認)
表の項目は、リリースノートに載っているものです。それぞれが実務でどこまで使えるかは、記載からは読み取れません。
19.0で追加された2つのアプリ
19.0では、新しいアプリが2本加わりました。
- Equity:株式・株主・企業価値を追跡するアプリ
- ESG:カーボン分析、排出係数、社会指標を扱うアプリ
会計面では、フィスカルポジション(税の適用ルール)の決め方が変わっています。
AIエージェントは、少しずつ範囲が広がっている
版ごとの内容を並べると、AIまわりの動きが見えてきます。
- 19.1:AIにファイルについて質問できるようになった
- 19.3:AIエージェントがレコードを作成・更新できるようになった
- 19.4:外部のAIエージェントとのMCP接続が加わった
MCP(Model Context Protocol)は、AIモデルが外部のデータやツールとやりとりするための規格です。
外部のAIエージェントが、公開されたツールを通じてデータを読み書きする仕組みです。19.4のドキュメントに説明があります(出典:Odoo saas-19.4公式ドキュメント「AI MCP server」、2026年10月確認)。実務でどこまで任せられるかは、ERP導入支援を手がけるベンチャーネットも記載を超えて説明しません。
そして、この表には大きな前提が隠れています。
【重要】マイナー版はOdooオンライン専用
導入形態によって、届く更新の範囲が違う
19.1〜19.4の新機能は、どの導入形態にも届くわけではありません。
公式のサポート表では、マイナー版の提供はOdooオンラインのみです。Odoo.shとオンプレミスの欄には、N/A(対象外)と書かれています。
| 導入形態 | メジャー版(19.0) | マイナー版(19.1〜19.4) |
|---|---|---|
| Odooオンライン | 提供される | 提供される |
| Odoo.sh | 提供される | 提供されない(N/A) |
| オンプレミス | 提供される | 提供されない(N/A) |
※出典:Odoo公式 ドキュメント(2026年10月確認)
「Odoo 19の新機能」として紹介されている機能でも、自社の環境では使えないことがあります。19.1〜19.4で追加されたものの表でいえば、19.1以降の行がそれに当たります。
これはEnterprise版・Odooオンラインが前提の話
マイナー版は、有償のEnterprise版をOdooオンラインで使う場合の話です。
無料のCommunity版は、自社またはパートナー側での運用が前提です。そのため、この自動的な更新の流れには乗りません。
新機能の記事や資料を見たら、まず次の3点を確かめてください。
- □ 自社はCommunity版か、Enterprise版か
- □ 導入形態はOdooオンライン、Odoo.sh、オンプレミスのどれか
- □ いま動いているのは19.0か、19.1以降のマイナー版か
1つ目がCommunity版、または2つ目がOdooオンライン以外なら、19.1〜19.4の新機能はOdoo 19のままでは届きません。
どちらが優れているという話ではない
これは、何を取って何を手放すかの選択です。
新機能を早く使いたいなら、Odooオンラインが向きます。サーバーや構成を自社で管理したいなら、Odoo.shやオンプレミスが向きます。その代わり、機能の更新はメジャー版の単位になります。
ホスティング形態を選ぶと、受け取れる機能更新の範囲まで決まります。導入形態は、費用や運用体制だけで決める話ではありません。
Odoo 20は2026年9月に公開された
次のメジャー版のOdoo 20は、2026年9月に公開されました(出典:Odoo 20 Release Notes、2026年9月確認)。
Odoo.shやオンプレミスの会社も、Odoo 20に上げれば、19.1〜19.4の新機能をまとめて受け取れます。
ただ、すぐに移る必要はありません。Odoo 19.0の標準サポート終了は、2028年9月(予定)と公式に記載があります。
移る時期は、作り込みの量と、使いたい新機能から考えます。目安は次の表のとおりです。
| 自社の状況 | 考え方 |
|---|---|
| 19.1〜19.4の機能で、すぐ使いたいものがある | Odoo 20への移行を前倒しで検討する |
| 標準機能中心で、作り込みが少ない | 移行の確認作業が軽いので、早めの計画が立てやすい |
| 独自の作り込みや拡張モジュールが多い | 影響範囲の棚卸しを先に行い、サポート期限から逆算する |
| いまの機能で業務が回っている | 2028年9月(予定)を見据え、年度計画に組み込む |
Odoo 20の変更点はOdoo 20の新機能まとめをご覧ください。
※出典:Odoo公式 リリースノートおよびドキュメント(2026年10月確認)
Odoo 19の新機能のメリットと注意点
良い点も注意点も、版(Community版/Enterprise版)と導入形態で当てはまり方が変わります。メリットは、次の5つです。
- 慣れた画面の中でAIを使える:AIがアプリ全体に組み込まれ、別の画面や外部のサービスを開かずに済む(標準のAI機能は有償のEnterprise版)
- 操作を覚える負担が下がる:「AIに質問」で自然な言葉で聞ければ、マニュアルを探す時間が減る
- 定型的な作業を任せられる:AIエージェントが、検索や情報の取得、リードの作成などを担う
- 日々の入力作業が軽くなる:インポートテンプレートが増え、見積書や請求書にセクションを設けられる
- 19.0のあとも機能が増える:Odooオンラインなら、19.1〜19.4の追加機能を受け取れる
注意点は、次の4つです。
- 標準のAI機能は有償版が前提:無料のCommunity版で使える範囲は限られる
- マイナー版はOdooオンラインのみ:Odoo.shとオンプレミスは、Odoo 20に上げたときにまとめて受け取る
- AIエージェントには設計が要る:何をさせるかを決め、必要な情報を与えて、はじめて動く
- 日本の制度対応は変わらない:給与計算と電子帳簿保存法の制約は、版が上がっても残る
両方を並べると、次の図のとおりです。
注意点の多くは、先に確かめれば手を打てます。届く範囲は版と導入形態の確かめ方で、更新の重さは作り込みが多いほど、更新は重くなるで、進め方は新機能の相談を受けたときの4つの手順で説明しています。
Odooのバージョンアップをどう考えるか
サポートの対象は直近のバージョン
Odooは年に1回のペースで更新され、標準サポートの対象は直近3つのメジャー版です。
古いバージョンを使い続けると、サポートの対象から外れます。セキュリティ上のリスクも高まるため、更新の計画が要ります。
エディションと導入形態で負担が変わる
バージョンアップの負担は、選んだ形で変わります。
| 形態 | バージョンアップの実施 |
|---|---|
| 有償版・Odooのクラウド | Odooが実施 |
| 有償版・自社ホスティング | 自社の判断で実施 |
| 無料のCommunity版 | 自社で対応 |
無料版を自社で運用するなら、更新の負担も自社が負います。エディションを選ぶ段階で、ここまで考えておきたいところです。
作り込みが多いほど、更新は重くなる
独自の作り込みや拡張モジュールが多いほど、バージョンアップのときの確認作業は増えます。
「新機能を使いたいのに、更新できない」。この状態を避けるには、Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)が効きます。話は、導入時の設計に戻るのです。どこを標準に合わせ、どこを自社流で残すかは、AIで変わった、ERP実装の線の引き方で整理しています。
新しい版を前に、ベンチャーネットが最初に確かめること
AIは業務設計の代わりにはならない
AIがどれほど優秀でも、「どの業務をどう回すか」を決めるのは人です。業務が整理されていない状態にAIを載せると、混乱が加速しかねません。
業務の整理が先です。次に標準機能に合わせて作り込みを絞り、AIの活用はその後に来ます。
新機能の相談を受けたときの4つの手順
「新しい版のAIを使いたい」。そう相談されたとき、ベンチャーネットは次の順で進めます。
- 届くかどうかを確かめる:版と導入形態を確認し、話題の機能が自社の環境に来るのかを先に切り分けます
- 止まっている業務を1つ選ぶ:AIで何ができるかではなく、いま人手で詰まっている業務を先に特定します
- 標準機能で足りるかを見る:その業務を、作り込みなしで回せるかを見ます。作り込みを増やすと、次の更新が重くなるからです
- 更新の年間予定に組み込む:移行時期をサポート期限から逆算し、毎年の更新を経営の予定表に載せます
順番の考え方は、見える化→わかる化→儲かる化です。まず数字と業務を見えるようにし、次に原因が分かる状態にする。AIが力を出すのは、その後です。3段の全体像は儲かる化とはにまとめています。
日本の制度対応は別の話
AIが進化しても、日本の制度への対応は解決しません。
給与計算に日本向けの標準対応がないこと。電子帳簿保存法への対応が、標準だけでは完結しないこと。どちらも、バージョンが上がっても変わっていません。詳しくはOdooの日本対応状況の記事をご覧ください。
最新版であることは、選定理由の一部にすぎない
「AIが入っているから」という理由だけで製品を選ぶと、判断を誤ります。
自社の業務範囲に合うか。規模に合うか。運用体制を作れるか。この土台のほうが、成否を大きく左右します。
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。「最新機能があるから」という理由で、特定の製品を勧めることはありません。Odooが合わないと判断したときは、そうお伝えします。AIスクラッチ開発はライセンス費がかからない一方、開発費・保守費が別途かかる点も含めてお伝えします。
Odoo 19の新機能についてよくある質問
AI機能は無料版でも使えますか?
Odooが提供する標準のAI機能は、有償版で使う前提のものです。
無料のCommunity版で使える範囲は限られます。AI機能を目的に検討するなら、エディションの確認が欠かせません。詳しくはCommunity版とEnterprise版の違いの記事をご覧ください。
AIエージェントには、どんな作業を任せられますか?
定型的で、手順が決まっている作業です。
検索や情報の取得、決まった形式のレコード作成などが当てはまります。判断が要る業務や、例外処理の多い業務は、人が担う領域として残ります。
いま導入するなら、最新版を選ぶべきですか?
新規で導入するなら、最新版を選ぶのが基本です。
サポート期間が長く、次のバージョンアップまでの猶予も長いからです。ただし、使いたい拡張モジュールが最新版に対応しているかは、事前に確認してください。
すでに旧バージョンを使っています。更新すべきですか?
サポートの対象から外れる前に、更新の計画を立てることをおすすめします。
独自の作り込みが多い場合は、更新の前に影響範囲を確認する作業が要ります。まず、現状の作り込みを棚卸しするところから始めてください。
19.1以降の新機能は、オンプレミスでも使えますか?
Odoo 19のままでは使えません。公式のサポート表では、マイナー版はOdooオンラインのみの提供で、Odoo.shとオンプレミスの欄はN/A(対象外)です。
2026年9月に公開されたOdoo 20に上げれば、まとめて受け取れます。まずは自社の版と導入形態を確かめることをおすすめします。
Odoo 19の新機能のメリットと注意点は何ですか?
慣れた画面でAIを使える一方で届く範囲に条件があります。
AIがアプリ全体に組み込まれ、自然な言葉での質問や定型作業の依頼ができます。一方、標準のAI機能は有償版が前提です。19.1〜19.4の追加機能をOdoo 19のまま受け取れるのも、Odooオンラインだけです(メリットと注意点)。
まとめ:新機能より、土台が成否を決める
- Odoo 19の最大の変化は、AIがアプリ全体に統合されたこと
- AIは「質問する」「タスクを任せる」「項目を埋める」の3つの形で使える
- 標準のAI機能は有償版で提供される
- 19.1〜19.4でも機能は追加され、AIエージェントの範囲が広がっている
- マイナー版はOdooオンライン専用。Odoo.shとオンプレミスは、Odoo 20に上げたときにまとめて受け取る
- 良い点は慣れた画面でAIを使えること。注意点は有償版が前提で、届く範囲が導入形態で変わること
- バージョンアップの負担はエディションと導入形態で変わり、作り込みが多いほど重くなる
新機能は魅力的です。ただ、それだけで導入を決めると危うい。業務が整理されていれば、AIは大きな助けになります。順序は、業務の整理が先です。
1年後、次の版のリリースノートが出た日に、担当者が「この機能はうちの環境にいつ届くか」「作り込みに影響するか」を会議で即答できる。そうなっていれば、新機能に振り回されずに済みます。
もう少し詳しく知りたい方へ
「話題のAI機能が、自社の版と導入形態で使えるのか」を確かめたい段階からご相談いただけます。
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