「Odooは自社サーバーでも動くそうです」と、担当者から報告を受けた。自由度が高いなら、そのほうが良い気もする。
ただ、社内でサーバーを見られるのは一人だけ。その人が休んだら、誰が止まったシステムを直すのか。
迷うのは、選べるからです。多くのクラウドERPと違い、Odooには動かす場所の選択肢が3つあります。Odooのクラウドで使う「Odoo Online」、公式の開発基盤「Odoo.sh」、自社のサーバーで動かす「オンプレミス」です。
サーバーを見る人がいなくても、Odoo Onlineなら始められます。保守もバックアップもバージョンアップも、Odooが担うからです(3つの形態の違い)。
この記事で、たとえば次のことが分かります。
- 契約するプランごとに、選べる導入形態の範囲
- サーバー管理・作り込み・データの置き場所の違いと、それぞれが合う会社
- 自社環境の要件、作り込みの要否、運用体制の3ステップで選ぶ方法
- 形態ごとに変わる、バージョンアップの責任
なお、無料のCommunity版はOdoo Onlineの対象外です。有償のEnterprise版とは、選べる形態が異なります。
自社サーバーを選べるのは強みです。ただし、運用の責任も同時に引き受けることになります。
では、何から決めればよいのか。ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、3段階の順番で絞ります。外部クラウドの制約、作り込みの要否、そして最後が「その一人が休んだらどうするか」です(判断の3ステップ)。
Odooの導入形態は3つ
Odooを動かす場所は、次の3つから選べます。
| 形態 | 概要 |
|---|---|
| Odoo Online | Odooが提供するクラウドで使う |
| Odoo.sh | Odoo公式のクラウド開発基盤で使う |
| オンプレミス | 自社が用意したサーバーで使う |
ただし、どれでも自由に選べるわけではありません。契約するプランで、選べる範囲が決まります。
Odoo公式によれば、スタンダードプランはOdoo Onlineでの提供です。カスタムプランでは、Odoo Online・自社ホスティング・Odoo.shの3つから選べます(出典:Odoo公式料金ページ、2026年8月確認)。
つまり、Odoo.shやオンプレミスを使うなら、カスタムプランが前提です。
Community版を選ぶ場合は、自社でサーバーを用意し、保守も自社で担います。詳しくはCommunity版とEnterprise版の違いの記事をご覧ください。
Odoo Online・Odoo.sh・オンプレミスの違いと、合う会社
比較表
| 比較軸 | Odoo Online | Odoo.sh | オンプレミス |
|---|---|---|---|
| サーバーの管理 | Odooが担う | 一部を自社が担う | 自社の責任 |
| カスタムモジュール | 使えない | 使える | 使える |
| 開発・テスト環境 | 用意されない | 用意できる | 自社で構築 |
| バージョンアップ | Odooが実施 | 自社の判断で実施 | 自社で実施 |
| 必要な技術力 | 低い | 中〜高 | 高い |
| データを置く場所 | Odooのクラウド | Odooのクラウド | 自社が指定 |
カスタムモジュールとは、標準にない機能を足すために独自に開発するプログラムのことです。
Odoo Online:もっとも手軽な形
Odooのクラウド上で、そのまま使う形です。
サーバーの準備も保守もバックアップも、Odooが担います。利用する側は、業務の設定に集中できます。
合うのは、標準機能と設定で業務が回り、社内にサーバーを見る技術者がいない会社です。バージョンアップもOdooが実施します。19.1〜19.4の新機能も、Odoo Onlineで先に提供されました(バージョンアップの責任)。
一方で、独自のモジュールは入れられません。標準機能と設定の範囲で運用することになります。
Odoo.sh:開発を伴う場合の選択肢
Odoo公式が提供する、開発向けのクラウド基盤です。
Odoo公式によれば、Odoo.shは開発・テスト(ステージング)・本番の環境をホスティングするプラットフォームです。カスタムモジュールの開発や活用が可能になります(出典:Odoo公式料金ページ、2026年8月確認)。
合うのは、独自の機能を作り込む前提があり、標準機能で試しても足りない業務を具体的に挙げられる会社です。
ただし、扱うには技術的な知識が要ります。標準機能で試す前に「作り込みが必要」と決めるのは、まだ早い判断です(判断の3ステップ)。
オンプレミス:自社環境で動かす
自社が用意したサーバー、または自社が契約したクラウド上で動かす形です。
自由度はもっとも高く、データを置く場所も自社で決められます。
合うのは、社内規程やデータの扱いの制約で、外部のクラウドを使えない会社です。夜間・休日のサーバー障害に対応できる社員か委託先がいることも、前提になります。
その代わり、サーバーの構築・保守・バックアップ・セキュリティ対策・バージョンアップまで、すべて自社の責任です。運用を担う人の名前が決まらないうちは、まだ早い選択です(「選べること」と「運用できること」は違う)。
Odooの導入形態の選び方:判断の3ステップ
3つを横に並べて比べると、迷います。順番に絞っていけば、答えは自然に1つに寄ります。
ステップ1:自社環境での運用が必須かを確認する
最初の分かれ道です。
社内規程やデータの扱いの制約で、外部のクラウドを使えない企業があります。この条件があれば、オンプレミス一択です。制約がなければ、次に進みます。
ステップ2:独自の作り込みが必要かを確認する
標準機能と設定で足りるなら、Odoo Onlineが最も負担の少ない選択です。
独自のモジュールを作る前提なら、Odoo.shが候補になります。ただし、この判断は慎重に。早い段階で「作り込みが必要」と決めると、標準で足りた部分まで開発してしまいがちです。
まず標準機能でどこまで回るかを試し、そのあとで決める。順番を逆にしないでください。
ステップ3:運用を担う体制を確認する
最後に、誰がシステムの面倒を見るのかを決めます。
社内に技術者がいなければ、オンプレミスやOdoo.shの自社運用は現実的ではありません。支援先に任せる前提を作るか、Odoo Onlineを選ぶことになります。サーバーを見られる人が一人だけの会社も、同じ扱いです。その人が休んだ日にも止まらない形を選びます。担当者が一人に偏るリスクそのものは、「あの人が明日、来なくなったら」の記事で扱っています。
自社に当てはまるかのチェックリスト
経営会議で、次の5項目に「はい/いいえ」で答えてみてください。
- □ 社内規程や取引先との契約で、データの保管場所が決められている
- □ 標準機能で試した結果、どうしても足りない業務を具体的に挙げられる
- □ 他のシステムと外部APIでつなぐ予定がある(外部APIはカスタムプランのみ)
- □ 夜間・休日のサーバー障害に対応できる社員か委託先がいる
- □ 年1回のバージョンアップに、検証の担当者と時間を割り当てられる
1つ目が「はい」なら、オンプレミスが前提です。2つ目か3つ目が「はい」なら、カスタムプランで検討します。4つ目と5つ目が「いいえ」の会社には、Odoo Onlineか、運用を外部に任せる形が現実的です。
オンプレミスとクラウドで見落としやすい注意点
「選べること」と「運用できること」は違う
オンプレミスを選べるのは、Odooの構造的な強みです。ただし、選べることと運用できることは別の話です。
自社サーバーでの運用には、次の責任がついてきます。
- サーバーの構築と維持
- バックアップの設計と実行
- セキュリティ対策
- 障害時の復旧
- バージョンアップの実施
体制がないまま選ぶと、運用が止まるリスクを抱えます。サーバー・セキュリティ・情シスの費用まで数える考え方は、NetSuiteの教科書のライセンス以外の「見えないコスト」の記事が参考になります。
途中で形態を変えるのは簡単ではない
導入後に形態を変えることはできます。ただ、負担が伴います。
データの移行、設定の再構築、環境の検証が必要になるためです。最初の選択で、3〜5年後まで見通しておくことをおすすめします。
バージョンアップの責任が変わる
Odoo Onlineでは、バージョンアップをOdooが実施します。オンプレミスでは、自社の仕事です。
Odooのメジャー版は原則年1回出ます。標準サポートは各版3年です。放置すると、サポート対象外の版で使い続けることになり、セキュリティ上のリスクが高まります。
新機能の届き方も違います。19.1〜19.4の新機能は、Odoo Onlineで先に提供されました。Odoo.sh・オンプレミスでは、Odoo 20に上げたときに受け取る形です。
「入れて終わり」にならない体制を、最初から組み込んでおいてください。
ベンチャーネットが導入形態を決める前に確かめる4つのこと
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。どの製品に決めるかより先に、次の順で確かめます。
① 「外部クラウド不可」の根拠を原文で確かめる
社内規程や取引先との契約書の該当箇所を、一緒に読みます。「使えないはず」が思い込みなら、選択肢は広がります。
② 標準機能で業務を一度回してみる
Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で、主要な業務を標準のまま試します。どうしても足りない部分が残ったときに、初めてOdoo.shやオンプレミスを検討します。
③ 3〜5年後の姿から逆算する
拠点や人数の増え方、つなぎたいシステムを聞き取ります。今はOnlineで足りても、数年後に外部API連携が要るなら、最初からカスタムプランを選ぶほうが二度手間を避けられます。
④ 運用を担う人の名前と、年間の予定を決める
「情報システム担当」ではなく、誰が担うかを具体的に決めます。バージョンアップの検証をいつ行うかも、年間の予定に入れます。名前が決まらないなら、自社運用の形は勧めません。
確かめた結果、Odooが合わないこともあります。規模や要件が大きければNetSuiteとOdooの比較も判断材料になります。パッケージに乗らない業務が中心なら、AIスクラッチ開発も選択肢です。パッケージのライセンスは不要ですが、開発費と保守費が別途かかります。合わないときは、合わないとお伝えします。
Odooの導入形態についてよくある質問
あとから形態を変更できますか?
技術的には可能です。
ただし、データ移行・設定の再構築・動作検証が必要になります。負担は小さくないため、最初の選択で数年先まで見通しておくことをおすすめします。
オンプレミスのほうが安く済みますか?
社内に余力のある技術者がいるかどうかで決まります。
ライセンス費用の考え方は変わりますが、サーバー費用と運用の人件費が発生します。余力のある技術者がいれば成り立ちます。いなければ、外部への委託費用がかかります。費用の考え方はOdooの料金体系の記事にまとめています。
Odoo.shは必ず必要ですか?
必要になるのは、独自のモジュールを開発する場合だけです。
標準機能と設定で業務が回るなら、Odoo Onlineで足ります。
データを日本国内に置きたい場合は?
自社が場所を自由に指定できるのは、オンプレミスの形態です。
自社サーバーでも、自社が契約する国内のクラウドでも構いません。ただし、運用の責任は自社側にあります。
Odoo.shも作成時にホスティングの地域を選べますが、Odooが用意する地域からの選択です。要件があるなら、導入の初期段階で明確にしておいてください。
Odoo OnlineとOdoo.shの違いは何ですか?
独自のモジュールを使えるかどうかです。
Odoo Onlineは、標準機能と設定の範囲で使います。サーバーの管理もバージョンアップも、Odooが担います。Odoo.shは開発・テスト(ステージング)・本番の環境を持て、カスタムモジュールを使えます。Odoo.shを使うには、カスタムプランが前提です(3つの形態の違い)。
まとめ:判断の起点は「制約」と「体制」
- Odooの導入形態は3つ。Online・Odoo.sh・オンプレミス
- Odoo.shとオンプレミスを使うには、カスタムプランが前提になる
- 判断は「自社環境の必須要件」から始め、次に作り込みの要否、最後に運用体制で決める
- 自社サーバーを選べるのは強みだが、運用責任も同時に引き受ける
- 途中の変更は負担が大きいため、最初の選択で数年先を見通す
動かす場所の選択は、技術の話に見えます。実際は「どこまでを自社で持つか」を決める、経営の判断です。
1年後、年に一度のバージョンアップの案内が届いた朝。担当者は「今回はうちの作業です。検証は来週から始めます」と答え、経営会議の議題にも上りません。形態を選んだときに、誰が何を持つかまで決めておいたからです。
もう少し詳しく知りたい方へ
「うちの規程と体制なら、どの形態が現実的か」を整理したい方は、今の制約をそのままお聞かせください。
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