「NetSuiteの見積もりを見て、正直、高いと感じた」
そう話す社長の手元には、たいてい2枚の紙があります。
NetSuiteのライセンスの見積もりと、いまのシステムの保守料の請求書です。
この2枚を並べれば、NetSuiteは高く見えます。
TCO(総保有コスト)とは、システムを持つことで一定の期間にかかる、直接と間接の費用の合計です。
いまのシステムには、サーバーの更新や情シスの時間など、請求書に載らない費用があります。
NetSuiteのライセンスには、その多くが含まれています。
逆に、導入費用や社内の管理の役割は、ライセンスの外に残ります。
同じ範囲、同じ期間でそろえると、「高い」の中身は変わります。
では、そろえた後に残る差は、何で決まるのか。
この記事で分かること
- ライセンスに含まれている6つの「見えない費用」
- ライセンスに含まれない費用と、導入費用の4事例
- 年2回の更新を受け取り続ける会社と、更新を止めた会社の10年後
- 小さく始めて、少しずつ広げる考え方
「高い」と感じる正体|比べる範囲がずれている
いまのシステムで経営者に見えている費用は、多くの場合2つです。
- 保守ベンダーへの月額の保守料
- 数年に一度のハードウェアの更新の費用
日常の運用に埋もれて、見えにくい費用もあります。
- サーバーや機器の維持・電気代・設置の場所
- セキュリティの修正の適用と、その検証の工数
- システムのお守りをする情シスの人件費
- 障害の対応・バックアップの運用の時間
- 法改正や新しい技術に合わせる改修の費用
Oracle NetSuiteの公式の解説でも、TCOは購入の費用に加え、導入と運用の費用まで含めて捉えるとしています。
導入時の社内の人件費や研修、将来の更新も、含める項目です(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。
計算の方法は、クラウドERPの費用・料金相場で扱っています。
ライセンスに含まれる6つの「見えない費用」
同じ公式の解説によると、クラウドERPは提供元の基盤でシステムを動かし、その費用を利用料に含めます(出典:同上)。
自社で持てば別々に払う費用が、はじめから組み込まれているわけです。
| 費用の項目 | 自社運用(オンプレミス等) | NetSuite |
|---|---|---|
| ① サーバー・基盤 | 購入・更新・電気代・場所を自社で負担 | 利用料に含まれる |
| ② セキュリティの更新 | 適用の判断・作業・検証を自社で | 提供元が対応 |
| ③ 情シスの運用の人件費 | お守り役を確保し続ける | 基盤の運用の負荷が減る |
| ④ 新しい技術への対応 | AIなどは個別に投資・改修 | 更新で順次提供 |
| ⑤ 新しい機能 | 追加のたびに開発費 | 年2回の大きなリリースで提供 |
| ⑥ バックアップ・災害対策 | 設計と運用を自社で | 提供元の運用に含まれる |
オンプレミスとは、自社でサーバーを持ってシステムを動かす形です。
サーバーとセキュリティ
自社で持つと、数年ごとに更新の費用と稟議が繰り返されます。
NetSuiteでは、ハードウェアを買う必要がありません。
セキュリティの修正は、当てて終わりではありません。
適用の判断、作業、業務への影響の検証が、そのたびに発生します。
「当てる人がいないので先送り」の状態から抜け出せることも、見えない価値です。
情シスの時間
サーバーの監視、障害の一次対応、バックアップの確認。
どれも、担当者の時間を静かに使い続けます。
一人情シスの会社では、この負担が新しい取り組みの時間を奪いがちです。
NetSuiteに移ると、情シスの時間を「守り」から「攻め」に振り向けやすくなります。
新しい技術と新しい機能
自社のシステムでは、機能を足すたびに要件の定義と開発費がかかります。
「欲しいが見送り」の積み重ねが、システムを古くしていきます。
公式ヘルプによると、NetSuiteの大きなリリースは年2回です。
更新は数か月かけて段階的に行われます。
事前にRelease Preview(新しい版を試す環境)も依頼できます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。
バックアップと災害対策
公式サイトでは、データは継続的に複製・バックアップされると説明されています。
災害復旧の訓練は年2回。顧客の依頼による復元のための保管は60日とされています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。
「バックアップは取っているが、戻せるか試したことがない」。その状態から卒業できます。
ライセンスに含まれない費用
公平に比べるなら、NetSuite側で別にかかる費用も並べます。
| 費用 | 中身 | 見落とすと起きること |
|---|---|---|
| 導入の費用 | 要件の整理・設定・データの移行 | 初年度の総額が想定を超える |
| 作り込みと連携の保守 | 独自の開発や外部との連携の手入れ | 更新のたびに確認の費用がかかる |
| パートナーの保守・伴走 | 稼働後の問い合わせや改善の支援 | 社内で抱え、活用が止まる |
| 社内の管理担当と研修 | ユーザーや権限の設定、更新の確認、操作の習得 | 「情シスがゼロになる」と誤解する |
基盤の運用はなくなっても、業務とデータの管理の役割は社内に残ります。
価格の決まり方と見積書の読み方は、NetSuiteの料金・費用・ライセンス体系で扱っています。
導入費用の4事例|差を決めるのは導入の中身
冒頭の問いに戻ります。
範囲と期間をそろえた後に残る差の多くは、この表の1行目、導入の費用です。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用を並べます。
| 事例1 | 事例2 | 事例3 | 事例4 | |
|---|---|---|---|---|
| ユーザー数 | 100名程度 | 30名程度 | 20名程度 | 3名程度 |
| 機能範囲 | 購買・販売・在庫・会計 | 購買・販売・プロジェクト管理 | 購買・販売・在庫・会計 | 購買・販売 |
| 外部システム連携開発 | あり(他社SaaS・顧客独自システム) | あり(助言・QAのみ、開発は顧客側) | なし | なし |
| アドオン開発 | あり | あり | あり | なし |
| 期間 | 1.5年 | 1年 | 2年 | 1.5か月 |
| 顧客側体制 | 情シスあり | 情シス・開発会社あり | 情シスなし | 情シスなし |
| 導入費用 | 2億円程度(うち開発約7割) | 2,000万円程度 | 3,000万円程度 | 150万円程度 |
同じNetSuiteで、150万円程度から2億円程度まで開きがあります。
差を決めた要因は4つです。
- 機能範囲:購買・販売だけか、在庫・会計やプロジェクト管理までか
- 開発:とくに外部システムとの連携。事例1では費用の約7割を占めた
- 社内の体制:情シスが少ないとサポートを厚くするため、期間も延びやすい
- ユーザー数:受入テストと教育の工数が増え、社内の調整で長くなりがち
事例3は20名程度なのに、30名程度の事例2より高くつきました。
情シスがいない分、ベンチャーネットが担う作業が増え、期間も2年と最も長くなっています。
TCOの表には、この導入費用を1年目に入れます。
2年目以降はライセンスと保守が中心です。
開発を増やすほど、2年目以降の保守の手間も増えます。
10年後の分岐|更新を受け取り続けるか、止めるか
世界の標準に追いつき続ける会社
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上が使う基盤です(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
その基盤の上で、年2回の大きなリリースが届きます。
10年で20回。
一つひとつは小さくても、積み重なればシステムの姿は大きく変わります。
「動いているから触らない」を続けた会社
動いているから触らない。触れる人が減る。気づけば、変えたくても変えられない。
古い基幹システムを使い続けるリスクは、この流れから生まれます。
更新の見送りは、「何もしていない」ように見えます。
実際には、将来の改修の費用と、競争力の低下を積み増しています。
現状維持は無料ではありません。
ベンチャーネットの持田は、この分岐をこう捉えています。
経営者の仕事は、目の前のコストを比べることではなく、未来を作ることだ。
ライセンスの「高い・安い」は、この問いの中で初めて意味を持ちます。
判断の物差し|自社に合う選択肢
| 選択肢 | 合う条件 | TCOで見落としやすい点 |
|---|---|---|
| A. 現行を続ける | 保守の期限まで余裕があり、担当者もいる | 更新を見送った分の将来の改修費 |
| B. NetSuiteに移る | 複数の拠点・事業があり、更新を自社で抱えたくない | 導入費用と、社内に残る管理の役割 |
| C. 国産ERP・Odooに移る | 国内の商習慣に寄せたい、費用の形を変えたい | 更新と保守を誰がどう担うか |
| D. AIスクラッチ開発で作る | 独自の業務が競争力の源 | 作った後の保守と更新の担い手 |
AIスクラッチ開発は、AIを使って自社専用の仕組みを作る開発です。
NetSuiteが向くのは、複数の拠点・事業・通貨を一つで管理したい会社です。
一人情シスで基盤の運用が重い会社にも合います。
一方、利用者が少なく会計と販売が単純な会社は、いまの仕組みで足りることがあります。
保守の期限まで余裕があるなら、先に業務の整理から始める手もあります。
製品ごとの比べ方は、OdooとNetSuiteを徹底比較で扱っています。
これから選ぶ会社と、いま使っている会社
これから選ぶ会社
TCOの表は、いまの費用の棚卸しから埋めます。
第2章の6つの費用を、現行の側の欄に書き込む。
そのうえで、第3章の費用をNetSuiteの側に足します。
期間は5年か10年で、両方をそろえてください。
いまNetSuiteを使っていて、更新の費用を見直したい会社
- 使っていないモジュールやユーザーはないか:利用の実態と契約を照らし合わせる
- ユーザーの種類が業務に合っているか:タスク専用ライセンスも候補にする
- 作り込みの保守がふくらんでいないか:標準に戻せるものを探す
現行システムの保守の期限が近い会社は、保守切れのリスクもあわせてご覧ください。
小さく始めて、少しずつ負荷を上げる
「未来のためとはいえ、最初から大きな投資は難しい」
そう感じる方もいるはずです。
ベンチャーネットの持田は、ERPの導入を筋トレにたとえます。
「筋トレと同じです。少しずつ負荷を増やして、気がついたら高みにいる。そういう状況を作ることをお勧めします」
最初から全機能・全部門で使おうとすると、現場がついてこられません。
まずは会計や販売管理など、効果の出やすい領域から始めます。
定着したら次の機能を足し、半年〜1年単位で広げます。
第3章の事例4は、購買・販売だけで始めた形です。
NetSuiteは、モジュールやユーザーを後から追加できる構造です。
進め方の全体像はNetSuite導入の流れ、投資対効果はNetSuite導入のROIで解説しています。
よくある失敗3つ
失敗1:現行の「見えない費用」を入れずに比べる
起きること:ライセンスと現行の保守料だけを並べ、「3倍も高い」と判断する。
原因:第2章の6つの費用が、比較から抜けている。
避け方:人件費・基盤・更新の費用まで棚卸ししてから並べる。
失敗2:「今の機能で十分」と検討を止める
起きること:数年後、保守できる人が減り、変えるときの費用と難しさが上がっている。
原因:「今困っているか」だけで判断した。
避け方:「10年後にどうなっていたいか」で考え、移らない場合の将来の費用も表に入れる。
失敗3:最初から「全部盛り」で契約する
起きること:使いこなせない機能に払い続け、「高いのに活用できていない」となる。
原因:多くのモジュールと全社のユーザーで、初日から契約した。
避け方:効果の出やすい領域から小さく始め、定着に合わせて広げる。
ベンチャーネットならこう見る
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応するベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場です。
費用の相談では、最初に次の3つを聞きます。
- いまのシステムの、保守料以外の費用はいくらか
- 比べる期間は5年か、10年か
- どの領域から始めれば、効果が出やすいか
そのうえで、2つの枠組みで話を進めます。
枠組み1:「変わること・注意が必要なこと」を費用と一緒に渡す
TCOで比べても、安くなるとは限りません。
ライセンス費用は、いまの保守料より上がることがあります。
帳票、締め処理の考え方、画面の操作感も変わります。
給与・人事は導入の対象外で、いまの仕組みを残す前提になります。
これらを見積もりと同じ場で伝え、表に入れてから判断してもらいます。
枠組み2:守り→攻め→次へ
TCOの差額で決めきれない部分は、稼働後に何が変わるかで考えます。
- 守り:業務が回る。基盤の運用とバックアップを手放す
- 攻め:データで打つ。情シスの時間を、分析や改善に振り向ける
- 次へ:経営が変わる。KPI、管理会計、上場に向けた内部統制
守りだけで比べると、ライセンスは費用に見えます。
攻めと次へまで描けると、同じ金額が投資に見えてきます。
今日できること|現行の費用を1枚に書き出す
| 費用 | 年額(記入) | 誰が把握しているか |
|---|---|---|
| 保守料 | ||
| サーバー・機器の更新(年あたり) | ||
| 情シスの人件費(システムに使う割合) | ||
| 障害・バックアップの対応、法改正の改修 |
空欄が多いほど、比べる前の棚卸しが要るということです。
書けた欄の合計が、NetSuiteの見積もりと並べるべき本当の金額になります。
よくある質問
Q1. 結局、NetSuiteのライセンス費用はいくらですか
ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。
料金の全体像は、NetSuiteの料金・費用・ライセンス体系で扱っています。
Q2. 導入費用は、どのくらい見ておけばよいですか
3名程度で150万円程度から100名程度で2億円程度までの例があります。
ベンチャーネットが支援した導入の例です。
差を決めたのは、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数の4つでした(3-1)。
Q3. 今のシステムが動いているのに、乗り換える意味はありますか
「動いている」と「経営に役立っている」は別の問題です。
更新を最小限に留めている間も、技術の差と保守のリスクは広がります。
まずは現行の費用の棚卸しから始めてください。
Q4. NetSuiteにすれば、情シスは要らなくなりますか
基盤の運用はなくなりますが管理の役割は残ります。
ユーザーと権限の設定、更新の確認、データの管理は社内で担います。
パートナーの伴走で、その負担を分ける方法もあります。
Q5. 小さく始めて、本当に後から広げられますか
モジュールやユーザーは後から追加できます。
会計や販売管理から始め、半年〜1年単位で広げる進め方をおすすめしています。
最初の範囲の設計が、後の広げやすさを左右します。
Q6. 年2回の更新で、業務が止まりませんか
事前に試す方法があります。
更新の前にRelease Previewを依頼し、自社のデータで新しい版を試せます。
作り込みが少ないほど、試す範囲は小さくなります。
まとめ
- ライセンスには、サーバー・セキュリティ・情シス・新技術・新機能・バックアップの6つの費用が含まれる
- 逆に、導入・作り込みの保守・伴走・社内の管理は別にかかる
- 導入費用の例は、3名程度で150万円程度から、100名程度で2億円程度まで。差は導入の中身で決まる
- 年2回の更新は、10年で20回。最初から大きく始める必要はない
「NetSuiteは高い」と感じたら、2枚の紙に3枚目を足してください。
いまのシステムの、請求書に載らない費用です。
その1枚を書き出してから、10年後の姿で判断しても遅くはありません。
もう少し詳しく知りたい方へ
現行の費用の棚卸しから、段階導入の設計まで、ご相談をお受けしています。
