NetSuiteのライセンスは高い?TCOで比べる「見えないコスト」と導入費用の実例

「NetSuiteの見積もりを見て、正直、高いと感じた」

そう話す社長の手元には、たいてい2枚の紙があります。

NetSuiteのライセンスの見積もりと、いまのシステムの保守料の請求書です。

この2枚を並べれば、NetSuiteは高く見えます。

TCO(総保有コスト)とは、システムを持つことで一定の期間にかかる、直接と間接の費用の合計です。

いまのシステムには、サーバーの更新や情シスの時間など、請求書に載らない費用があります。

NetSuiteのライセンスには、その多くが含まれています。

逆に、導入費用や社内の管理の役割は、ライセンスの外に残ります。

同じ範囲、同じ期間でそろえると、「高い」の中身は変わります。

では、そろえた後に残る差は、何で決まるのか。

目次

この記事で分かること

  • ライセンスに含まれている6つの「見えない費用」
  • ライセンスに含まれない費用と、導入費用の4事例
  • 年2回の更新を受け取り続ける会社と、更新を止めた会社の10年後
  • 小さく始めて、少しずつ広げる考え方

「高い」と感じる正体|比べる範囲がずれている

いまのシステムで経営者に見えている費用は、多くの場合2つです。

  • 保守ベンダーへの月額の保守料
  • 数年に一度のハードウェアの更新の費用

日常の運用に埋もれて、見えにくい費用もあります。

  • サーバーや機器の維持・電気代・設置の場所
  • セキュリティの修正の適用と、その検証の工数
  • システムのお守りをする情シスの人件費
  • 障害の対応・バックアップの運用の時間
  • 法改正や新しい技術に合わせる改修の費用
「高い」と感じる正体:見えにくい費用 経営者に見えている費用は保守料とハードウェアの更新費。その下に、サーバーの維持、セキュリティの修正、情シスの人件費、障害とバックアップの対応、改修の費用が埋もれている。 「高い」と感じる正体見えている費用月額の保守料数年に一度のハードウェアの更新日常の運用に埋もれる見えにくい費用・サーバーや機器の維持・電気代・設置の場所・セキュリティの修正の適用と、その検証・システムのお守りをする情シスの人件費・障害の対応・バックアップの運用の時間・法改正や新しい技術に合わせる改修比べるなら、見えにくい費用まで並べる
「高い」と感じる正体:見えにくい費用

Oracle NetSuiteの公式の解説でも、TCOは購入の費用に加え、導入と運用の費用まで含めて捉えるとしています。

導入時の社内の人件費や研修、将来の更新も、含める項目です(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

計算の方法は、クラウドERPの費用・料金相場で扱っています。

ライセンスに含まれる6つの「見えない費用」

同じ公式の解説によると、クラウドERPは提供元の基盤でシステムを動かし、その費用を利用料に含めます(出典:同上)。

自社で持てば別々に払う費用が、はじめから組み込まれているわけです。

費用の項目自社運用(オンプレミス等)NetSuite
① サーバー・基盤購入・更新・電気代・場所を自社で負担利用料に含まれる
② セキュリティの更新適用の判断・作業・検証を自社で提供元が対応
③ 情シスの運用の人件費お守り役を確保し続ける基盤の運用の負荷が減る
④ 新しい技術への対応AIなどは個別に投資・改修更新で順次提供
⑤ 新しい機能追加のたびに開発費年2回の大きなリリースで提供
⑥ バックアップ・災害対策設計と運用を自社で提供元の運用に含まれる

オンプレミスとは、自社でサーバーを持ってシステムを動かす形です。

サーバーとセキュリティ

自社で持つと、数年ごとに更新の費用と稟議が繰り返されます。

NetSuiteでは、ハードウェアを買う必要がありません。

セキュリティの修正は、当てて終わりではありません。

適用の判断、作業、業務への影響の検証が、そのたびに発生します。

「当てる人がいないので先送り」の状態から抜け出せることも、見えない価値です。

情シスの時間

サーバーの監視、障害の一次対応、バックアップの確認。

どれも、担当者の時間を静かに使い続けます。

一人情シスの会社では、この負担が新しい取り組みの時間を奪いがちです。

NetSuiteに移ると、情シスの時間を「守り」から「攻め」に振り向けやすくなります。

新しい技術と新しい機能

自社のシステムでは、機能を足すたびに要件の定義と開発費がかかります。

「欲しいが見送り」の積み重ねが、システムを古くしていきます。

公式ヘルプによると、NetSuiteの大きなリリースは年2回です。

更新は数か月かけて段階的に行われます。

事前にRelease Preview(新しい版を試す環境)も依頼できます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

バックアップと災害対策

公式サイトでは、データは継続的に複製・バックアップされると説明されています。

災害復旧の訓練は年2回。顧客の依頼による復元のための保管は60日とされています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

「バックアップは取っているが、戻せるか試したことがない」。その状態から卒業できます。

ライセンスに含まれない費用

公平に比べるなら、NetSuite側で別にかかる費用も並べます。

費用中身見落とすと起きること
導入の費用要件の整理・設定・データの移行初年度の総額が想定を超える
作り込みと連携の保守独自の開発や外部との連携の手入れ更新のたびに確認の費用がかかる
パートナーの保守・伴走稼働後の問い合わせや改善の支援社内で抱え、活用が止まる
社内の管理担当と研修ユーザーや権限の設定、更新の確認、操作の習得「情シスがゼロになる」と誤解する

基盤の運用はなくなっても、業務とデータの管理の役割は社内に残ります。

価格の決まり方と見積書の読み方は、NetSuiteの料金・費用・ライセンス体系で扱っています。

導入費用の4事例|差を決めるのは導入の中身

冒頭の問いに戻ります。

範囲と期間をそろえた後に残る差の多くは、この表の1行目、導入の費用です。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用を並べます。

事例1事例2事例3事例4
ユーザー数100名程度30名程度20名程度3名程度
機能範囲購買・販売・在庫・会計購買・販売・プロジェクト管理購買・販売・在庫・会計購買・販売
外部システム連携開発あり(他社SaaS・顧客独自システム)あり(助言・QAのみ、開発は顧客側)なしなし
アドオン開発ありありありなし
期間1.5年1年2年1.5か月
顧客側体制情シスあり情シス・開発会社あり情シスなし情シスなし
導入費用2億円程度(うち開発約7割)2,000万円程度3,000万円程度150万円程度
NetSuite導入費用の4事例(ベンチャーネットの支援例) 3名・1.5か月で150万円程度、30名・1年で2000万円程度、20名・2年で3000万円程度、100名・1.5年で2億円程度。 NetSuite導入費用の4事例事例4|3名程度150万円程度購買・販売開発なし・期間1.5か月事例2|30名程度2,000万円程度購買・販売・PJ管理連携・開発あり・期間1年事例3|20名程度3,000万円程度購買・販売・在庫・会計開発あり/情シスなし・期間2年事例1|100名程度2億円程度購買・販売・在庫・会計連携・開発あり・期間1.5年ベンチャーネットの支援事例事例1は約7割が開発費
NetSuite導入費用の4事例(ベンチャーネットの支援例)

同じNetSuiteで、150万円程度から2億円程度まで開きがあります。

差を決めた要因は4つです。

  • 機能範囲:購買・販売だけか、在庫・会計やプロジェクト管理までか
  • 開発:とくに外部システムとの連携。事例1では費用の約7割を占めた
  • 社内の体制:情シスが少ないとサポートを厚くするため、期間も延びやすい
  • ユーザー数:受入テストと教育の工数が増え、社内の調整で長くなりがち

事例3は20名程度なのに、30名程度の事例2より高くつきました。

情シスがいない分、ベンチャーネットが担う作業が増え、期間も2年と最も長くなっています。

TCOの表には、この導入費用を1年目に入れます。

2年目以降はライセンスと保守が中心です。

開発を増やすほど、2年目以降の保守の手間も増えます。

10年後の分岐|更新を受け取り続けるか、止めるか

世界の標準に追いつき続ける会社

NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上が使う基盤です(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

その基盤の上で、年2回の大きなリリースが届きます。

10年で20回。

一つひとつは小さくても、積み重なればシステムの姿は大きく変わります。

「動いているから触らない」を続けた会社

動いているから触らない。触れる人が減る。気づけば、変えたくても変えられない。

古い基幹システムを使い続けるリスクは、この流れから生まれます。

更新の見送りは、「何もしていない」ように見えます。

実際には、将来の改修の費用と、競争力の低下を積み増しています。

現状維持は無料ではありません。

10年後の分岐:更新を受け取り続けるか、止めるか 年2回の大きなリリースを受け取り続けると、10年で20回分が積み重なり、システムの姿が大きく変わる。動いているから触らないを続けると、触れる人が減り、変えられなくなり、将来の改修費と競争力の低下を積み増す。 10年後の分岐年2回の大きなリリース受け取り続ける10年で20回動いているから触らない一つひとつは小さくても積み重なれば、姿が大きく変わる触れる人が減る変えたくても変えられない将来の改修費と競争力の低下を積み増す現状維持は無料ではない
10年後の分岐:更新を受け取り続けるか、止めるか

ベンチャーネットの持田は、この分岐をこう捉えています。

経営者の仕事は、目の前のコストを比べることではなく、未来を作ることだ。

ライセンスの「高い・安い」は、この問いの中で初めて意味を持ちます。

判断の物差し|自社に合う選択肢

選択肢合う条件TCOで見落としやすい点
A. 現行を続ける保守の期限まで余裕があり、担当者もいる更新を見送った分の将来の改修費
B. NetSuiteに移る複数の拠点・事業があり、更新を自社で抱えたくない導入費用と、社内に残る管理の役割
C. 国産ERP・Odooに移る国内の商習慣に寄せたい、費用の形を変えたい更新と保守を誰がどう担うか
D. AIスクラッチ開発で作る独自の業務が競争力の源作った後の保守と更新の担い手

AIスクラッチ開発は、AIを使って自社専用の仕組みを作る開発です。

NetSuiteが向くのは、複数の拠点・事業・通貨を一つで管理したい会社です。

一人情シスで基盤の運用が重い会社にも合います。

一方、利用者が少なく会計と販売が単純な会社は、いまの仕組みで足りることがあります。

保守の期限まで余裕があるなら、先に業務の整理から始める手もあります。

製品ごとの比べ方は、OdooとNetSuiteを徹底比較で扱っています。

これから選ぶ会社と、いま使っている会社

これから選ぶ会社

TCOの表は、いまの費用の棚卸しから埋めます。

第2章の6つの費用を、現行の側の欄に書き込む。

そのうえで、第3章の費用をNetSuiteの側に足します。

期間は5年か10年で、両方をそろえてください。

いまNetSuiteを使っていて、更新の費用を見直したい会社

  • 使っていないモジュールやユーザーはないか:利用の実態と契約を照らし合わせる
  • ユーザーの種類が業務に合っているか:タスク専用ライセンスも候補にする
  • 作り込みの保守がふくらんでいないか:標準に戻せるものを探す

現行システムの保守の期限が近い会社は、保守切れのリスクもあわせてご覧ください。

小さく始めて、少しずつ負荷を上げる

「未来のためとはいえ、最初から大きな投資は難しい」

そう感じる方もいるはずです。

ベンチャーネットの持田は、ERPの導入を筋トレにたとえます。

「筋トレと同じです。少しずつ負荷を増やして、気がついたら高みにいる。そういう状況を作ることをお勧めします」

最初から全機能・全部門で使おうとすると、現場がついてこられません。

まずは会計や販売管理など、効果の出やすい領域から始めます。

定着したら次の機能を足し、半年〜1年単位で広げます。

第3章の事例4は、購買・販売だけで始めた形です。

小さく始めて、少しずつ広げる まず会計や販売管理など効果の出やすい領域から始め、定着したら次の機能を足し、半年〜1年単位で広げる。最初から全機能・全部門で使おうとすると、現場がついてこられない。 小さく始めて、少しずつ広げる1. 効果の出やすい領域から会計や販売管理など2. 定着したら次の機能を足す少しずつ負荷を増やす3. 半年〜1年単位で広げるモジュールやユーザーを追加最初から全機能・全部門では、現場がついてこられない
小さく始めて、少しずつ広げる

NetSuiteは、モジュールやユーザーを後から追加できる構造です。

進め方の全体像はNetSuite導入の流れ、投資対効果はNetSuite導入のROIで解説しています。

よくある失敗3つ

失敗1:現行の「見えない費用」を入れずに比べる

起きること:ライセンスと現行の保守料だけを並べ、「3倍も高い」と判断する。

原因:第2章の6つの費用が、比較から抜けている。

避け方:人件費・基盤・更新の費用まで棚卸ししてから並べる。

失敗2:「今の機能で十分」と検討を止める

起きること:数年後、保守できる人が減り、変えるときの費用と難しさが上がっている。

原因:「今困っているか」だけで判断した。

避け方:「10年後にどうなっていたいか」で考え、移らない場合の将来の費用も表に入れる。

失敗3:最初から「全部盛り」で契約する

起きること:使いこなせない機能に払い続け、「高いのに活用できていない」となる。

原因:多くのモジュールと全社のユーザーで、初日から契約した。

避け方:効果の出やすい領域から小さく始め、定着に合わせて広げる。

ベンチャーネットならこう見る

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応するベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場です。

費用の相談では、最初に次の3つを聞きます。

  1. いまのシステムの、保守料以外の費用はいくらか
  2. 比べる期間は5年か、10年か
  3. どの領域から始めれば、効果が出やすいか

そのうえで、2つの枠組みで話を進めます。

枠組み1:「変わること・注意が必要なこと」を費用と一緒に渡す

TCOで比べても、安くなるとは限りません。

ライセンス費用は、いまの保守料より上がることがあります。

帳票、締め処理の考え方、画面の操作感も変わります。

給与・人事は導入の対象外で、いまの仕組みを残す前提になります。

これらを見積もりと同じ場で伝え、表に入れてから判断してもらいます。

枠組み2:守り→攻め→次へ

TCOの差額で決めきれない部分は、稼働後に何が変わるかで考えます。

  • 守り:業務が回る。基盤の運用とバックアップを手放す
  • 攻め:データで打つ。情シスの時間を、分析や改善に振り向ける
  • 次へ:経営が変わる。KPI、管理会計、上場に向けた内部統制

守りだけで比べると、ライセンスは費用に見えます。

攻めと次へまで描けると、同じ金額が投資に見えてきます。

今日できること|現行の費用を1枚に書き出す

費用年額(記入)誰が把握しているか
保守料
サーバー・機器の更新(年あたり)
情シスの人件費(システムに使う割合)
障害・バックアップの対応、法改正の改修

空欄が多いほど、比べる前の棚卸しが要るということです。

書けた欄の合計が、NetSuiteの見積もりと並べるべき本当の金額になります。

よくある質問

Q1. 結局、NetSuiteのライセンス費用はいくらですか

ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。

料金の全体像は、NetSuiteの料金・費用・ライセンス体系で扱っています。

Q2. 導入費用は、どのくらい見ておけばよいですか

3名程度で150万円程度から100名程度で2億円程度までの例があります。

ベンチャーネットが支援した導入の例です。

差を決めたのは、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数の4つでした(3-1)。

Q3. 今のシステムが動いているのに、乗り換える意味はありますか

「動いている」と「経営に役立っている」は別の問題です。

更新を最小限に留めている間も、技術の差と保守のリスクは広がります。

まずは現行の費用の棚卸しから始めてください。

Q4. NetSuiteにすれば、情シスは要らなくなりますか

基盤の運用はなくなりますが管理の役割は残ります。

ユーザーと権限の設定、更新の確認、データの管理は社内で担います。

パートナーの伴走で、その負担を分ける方法もあります。

Q5. 小さく始めて、本当に後から広げられますか

モジュールやユーザーは後から追加できます。

会計や販売管理から始め、半年〜1年単位で広げる進め方をおすすめしています。

最初の範囲の設計が、後の広げやすさを左右します。

Q6. 年2回の更新で、業務が止まりませんか

事前に試す方法があります。

更新の前にRelease Previewを依頼し、自社のデータで新しい版を試せます。

作り込みが少ないほど、試す範囲は小さくなります。

まとめ

  • ライセンスには、サーバー・セキュリティ・情シス・新技術・新機能・バックアップの6つの費用が含まれる
  • 逆に、導入・作り込みの保守・伴走・社内の管理は別にかかる
  • 導入費用の例は、3名程度で150万円程度から、100名程度で2億円程度まで。差は導入の中身で決まる
  • 年2回の更新は、10年で20回。最初から大きく始める必要はない

「NetSuiteは高い」と感じたら、2枚の紙に3枚目を足してください。

いまのシステムの、請求書に載らない費用です。

その1枚を書き出してから、10年後の姿で判断しても遅くはありません。

もう少し詳しく知りたい方へ

現行の費用の棚卸しから、段階導入の設計まで、ご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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