Odooとデータドリブン経営|データがあることと、使えることは別

「データにもとづいて経営判断をしたい」

この言葉に反対する人はいません。問題は、それが実際にはとても難しいことです。

多くの会社で、データは存在しています。売上も、在庫も、経費も、どこかには記録されています。

それでも判断に使えないのは、なぜか。

この記事では、その理由を構造として整理します。そして、Odooがその中のどこを解決できるのかを、限定して書きます。

目次

データが判断に使えない、3つの理由

データが経営判断に使えない3つの理由を示した図 データが分かれている、揃うのが遅い、基準が違うという3つの理由によって、記録は存在していても経営判断には使えない状態になることを示した図です。 記録はある。でも判断には使えない ① 分かれている 販売は販売システム 在庫はExcel 会計は会計ソフト ② 遅い 締めないと数字が出ない 見えるのは翌月中旬 その時点で手は打てない ③ 基準が違う 部門ごとに集計方法が違う 同じ商品が別名で登録 どれが正しいか分からない 結果:会議のたびに「その数字は何を含んでいるのか」から始まる 議論より前に、数字の説明で時間が終わる ③がいちばん根が深い

③が、実はいちばん厄介です

①と②は、仕組みで解決できます。

しかし③は、仕組みだけでは解決しません。

  • 「売上」に何を含めるか(値引き前か後か、送料は入るか)
  • 「在庫」をいつの時点で数えるか(発注済みは含むか)
  • 「粗利」の計算に何を入れるか(物流費は原価か販管費か)

これらは、会社として決めるべきことです。 システムを入れても、決めるのは人です。

そして、この定義が曖昧なまま数字を並べると、会議は「その数字は何を含んでいるのか」という確認から始まります。

Odooが解決できること、できないこと

ここは限定して書きます。

Odooが構造として解決できる範囲と、人が決める必要がある範囲を分けた図 データが分かれている問題と数字が出るのが遅い問題は同じデータベース上で業務が動くことで構造的に解決できる一方、指標の定義や数字を見る会議体は人が決める必要があることを示した図です。 仕組みが解けるのは、半分だけ 仕組みで解決できる ① データが分かれている → 同じデータベースの上で動く ② 数字が出るのが遅い → 取引の時点で反映される ここはOdooの構造が効く 人が決める必要がある ③ 指標の定義 → 売上・在庫・粗利の数え方 ④ 見る場と、動く判断 → 誰がいつ見て、何を決めるか ここは製品では解決しない

Odooの構造的な利点

Odooでは、業務のアプリが同じデータベースの上で動きます。

  • 受注が在庫を引き当てる
  • 出荷が請求になる
  • 案件に工数と経費が積み上がる

この記録が、そのまま集計のもとになります。 別々のシステムから数字を集めて突き合わせる作業が、構造的に減ります。

そして、取引が発生した時点で反映されます。 締めを待たずに、いまの状態が見えます。

ただし、それだけでは判断に使えません

指標の定義が曖昧なままなら、数字は使えません。

Odooを入れても、「売上に値引きを含めるか」は決まりません。それは会社が決めることです。

この点を曖昧にしたまま導入すると、「システムを入れたのに数字が使えない」という結果になります。

数字が使える状態にするための4条件

条件1:定義を決めて、文書にする

主要な指標について、何を含み、何を含まないかを書き出してください。

  • 売上:値引き後か、送料込みか
  • 在庫:どの時点の数量か、引当済みは含むか
  • 粗利:原価に何を入れるか
  • 案件の利益:間接費をどう扱うか

紙1枚で構いません。 決めて、共有することに意味があります。

条件2:入力の粒度を先に決める

見たい数字は、入力の粒度で決まります。

たとえば「案件別の利益」を見たいなら、工数と経費を案件に紐づける入力が必要です。

入力されていないものは、集計にも出てきません。 当たり前ですが、ここを飛ばした計画がよくあります。

条件3:見る場を決める

数字は、見る人と場がなければ活用されません。

  • 誰が見るか
  • いつ見るか(週次か、月次か)
  • 何を判断するか

「ダッシュボードを作ったが、誰も見ていない」 これは実際によくあります。

作るべきは画面ではなく、その数字を見て何かを決める習慣です。

条件4:まず粗くて構わない

最初からすべての指標を設計しようとすると、動き始めません。

主要な3つか4つの数字から始めてください。 動かしてみると、本当に必要なものが分かります。

【正直に】Odooだけで完結しないこと

過度な期待を避けるために書きます。

高度な分析には別の道具が要ることがあります

Odooには標準のレポート機能があります。多くの日常的な集計はこれで足ります。

ただし、複数年にわたる分析や、複雑な予測モデルを扱いたい場合は、専門の分析ツールを併用するほうが適することがあります。

Odooはデータの標準的な仕組みを使っているため、外部のツールへデータを渡すこと自体は難しくありません。

過去のデータは持ち込まれません

導入した時点から記録が始まります。過去の分析をしたいなら、データ移行の設計が必要です。

ただし、過去データをすべて移すのは費用も時間もかかります。「過去はどこまで必要か」を先に決めてください。 考え方は Odooへのデータ移行の進め方 にまとめています。

数字が正しくなるまでには時間がかかります

稼働直後の数字は、たいてい合いません。入力の慣れ、マスタの整備、運用ルールの浸透。これらに数か月かかります。

「入れた翌月から使える」とは考えないでください。

どこから始めるか

小さく始めるなら、この順序をおすすめします。

段階見る数字必要な入力
第1売上と受注の推移受注・請求の記録
第2在庫の状況と回転入出庫の記録
第3案件別・商品別の利益工数・経費・原価の紐づけ
第4予測と計画との差上記の蓄積

第1段階だけでも、経営の会話は変わります。

「先月はどうだったか」ではなく「いまどうなっているか」を見られるようになるからです。

よくある質問

Q1. Odooを入れれば数字が見えるようになりますか?

構造としては近づきます。 ただし、それだけでは足りません。

指標の定義、入力の粒度、見る場。この3つが揃ってはじめて、判断に使える数字になります。

Q2. ダッシュボードは自分で作れますか?

標準のレポート機能で、多くの集計は行えます。画面の調整については Odoo Studioとは? もご覧ください。

ただし、作ることより「誰がいつ見るか」を決めるほうが重要です。

Q3. リアルタイムで見られますか?

取引が記録された時点で反映されます。ただし「記録された時点」です。

現場の入力が翌日にまとめて行われるなら、数字も1日遅れます。リアルタイム性は、入力のタイミングで決まります。

Q4. BIツールと連携できますか?

Odooはデータベースに標準的な仕組みを使っています。外部のツールへデータを渡すこと自体は、難しくありません。

具体的な方法は構成によって変わるため、事前に確認してください。

Q5. 中小企業にデータドリブンは必要ですか?

規模の問題ではありません。

「なんとなく忙しいのに、利益が残らない」という状態が続いているなら、数字が見えていない可能性があります。

その構造は 中小企業のDXとOdoo でも扱っています。

まとめ

データにもとづく経営判断が難しいのは、データがないからではありません。

分かれていて、遅くて、基準が違うからです。

Odooは、このうち前の2つを構造として解決します。業務のアプリが同じデータベースの上で動くため、数字を集めて突き合わせる作業が減ります。そして、締めを待たずに現状が見えます。

しかし、3つ目は仕組みでは解決しません。

「売上に値引きを含めるか」「粗利の原価に物流費を入れるか」。これらは会社として決めることです。

だから、Odooを入れる前に決めておくべきことがあります。

指標の定義を紙1枚に書く。見たい数字から逆算して入力の粒度を決める。そして、誰がいつ見て、何を判断するかを決める。

ダッシュボードを作っても、見る人と場がなければ活用されません。作るべきは画面ではなく、その数字を見て何かを決める習慣です。

最後に、期待値について。稼働直後の数字は、たいてい合いません。 入力の慣れ、マスタの整備、運用の浸透に数か月かかります。

まず主要な3つか4つの数字から始めてください。粗くても、いま見えることに価値があります。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「ダッシュボードを作りましょう」から始める提案はしません。 まず「どの数字を、誰が、いつ見て、何を決めるのか」を一緒に整理するところから承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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