月末の営業会議。「今月の着地はどうなりそう?」と聞くと、担当者が手元のExcelを開いて集計を始める。数字がそろうのは翌月の半ば。そこで初めて「先月は足りなかった」と分かる。
この順番は変えられます。会計の指標は締めを待たなければ確定しませんが、販売の指標はいま動いているデータから作れます。受注は、入った時点でデータになるからです。
経営判断に直結する販売の数字は3つ。売上より先に動く「受注高の推移」、月次を待たずに見る「売上のリアルタイム管理」、力を割く先を決める「ABC分析」です。Odooでは、どれも販売アプリの中の集計で作れます(受注高の推移の見方と計算式)。
3指標を重ねて見ると、たとえば次のことが変わります。
- 残り10日で何割まで来ているかを見て、残りの日数ですることを決められる
- 受注が鈍った月の影響を、売上に出る前に知ることができる
- 受注は伸びているのに売上が伸びない、納品の詰まりに気づける
- 伸びの大半がCグループで、手間だけが増えている状態を見分けられる
まず無料のCommunity版で始められるテーマです。ただし、販売の数字を会計や在庫と横断して1枚にまとめるなら、有償のEnterprise版のスプレッドシート機能が前提です。拠点や通貨が増える見込みなら、NetSuiteも含めて比べます。
合計が増えていれば「好調」で終わる会議で、何が見落とされているのか。答えは3指標を一緒に見ると、何が分かるかにあります。
CommunityとEnterpriseの区別について
この3指標は、いずれも販売アプリの中の集計で作れるため、無料のCommunity版でも始められます。ただし販売のデータを会計や在庫と横断して1枚にまとめたい場合は、有償のEnterprise版のスプレッドシート機能が前提です。粗利をもとにしたABC分析には、製品ごとの原価の登録と、販売アプリの「マージン」設定が要ります。この設定の版の区分は、エディション比較で確かめてください。
なぜ「販売」だけを切り出して見るのか
社長のコックピットに並べる計器のうち、販売の3指標には共通の性質があります。「手を打つ余地が残っているうちに見える」という性質です。
会計の指標は、終わったことの通信簿です。販売の指標は、これから起きることの予報にあたります。予報であれば、傘を持って出るかどうかをまだ選べます。締めを待たずに数字を見る経営は、受注した瞬間から、採算は見えているでも扱っています。
指標1:受注高の推移の見方と計算式
定義
受注高とは、一定の期間に確定した受注金額の合計です。
この時点で、売上はまだ立っていません。納品や検収を経て、はじめて売上になります。受注高は、これから売上になる約束の積み上がりです。
売上より先に動くため、先行指標(結果より前に変化が表れる指標)として使えます。受注が鈍った月の影響は、数か月遅れて売上に出てきます。
計算式
期間内に確定した受注の金額を合計し、月ごとや四半期ごとに区切って並べたものです。伸びは「当月の受注高 ÷ 前年同月の受注高」で見ます。
見るときの考え方
受注高に「いくらあれば安心」という共通の目安はありません。商材の単価も、受注から納品までの長さも、会社ごとにまったく違うからです。
比べる相手は2つ。自社の過去3期分の推移と、同業種の公表統計です。後者は、中小企業庁などが業種別に出しています。単月の水準より、上を向いているか下を向いているかを見てください。
Odooのどのデータから作るか
見積と受注を記録する販売アプリのデータが元になります。商談の段階から追うなら、CRMに残る案件の情報も合わせて見ます。
表示手段(C/E別)
販売アプリの中で完結する集計なので、Community版とEnterprise版のどちらでも作成が可能です。一覧やピボット、グラフで期間別に集計します。
指標2:売上のリアルタイム管理と着地の見当
定義
月次の締めを待たず、いま時点の売上がいくらかを把握することです。
これは指標というより、「見る頻度」の話です。売上そのものは、どの会社も見ています。違いが出るのは、それをいつ見るかです。
計算式
当月の初日から今日までに計上した売上の合計です。着地を推し量るなら、「今日までの売上 ÷ 経過日数 × 当月の日数」という単純な引き伸ばしでも見当はつきます。
見るときの考え方
見るのは、金額の大小より予定との差です。残り10日で何割まで来ているかが分かれば、残りの日数で何をするかを決められます。
Odooのどのデータから作るか
販売アプリの受注データと、請求書発行の記録が元になります。どの時点を売上とするかは会社ごとに違うため、まず自社の計上基準を決めます。
表示手段(C/E別)
販売アプリの中の集計であれば、両版で可能です。ただし売上と原価、在庫の動きを1枚に並べたい場合は、Enterprise版のスプレッドシート機能が前提になります。
指標3:ABC分析のやり方と線の引き方
定義
ABC分析とは、商品や顧客を金額の大きい順に並べ、A・B・Cのグループに分けて重点を決める手法です。
背景にあるのは、パレートの法則(少数の要素が全体の大半を占めやすいという傾向)です。ただし、どの程度偏るかは業種や商材で大きく変わります。
計算式
構成比は「各項目の売上金額 ÷ 全体の売上金額 × 100」です。それを大きい順に並べて累計し、途中で線を引いてA・B・Cに分けます。
見るときの考え方
「上位何割がAグループ」という一般的な区切りには頼りません。業種によって、売上の偏り方がまるで違うからです。
線は自社で引きます。手をかけられる商品数や取引先数から逆算するのが現実的です。一度引いたら、毎期その線で見比べてください。
Odooのどのデータから作るか
元になるのは、販売アプリの受注明細です。商品別に見るか顧客別に見るかで、切り口を変えます。顧客別の見方は、顧客の4指標とも重なります。
表示手段(C/E別)
売上金額をもとにしたABC分析は、販売アプリの集計だけで作れるため両版で可能です。粗利をもとに分析したい場合は、製品に原価を登録し、販売アプリの「マージン」設定を有効にします。受注ごとの粗利を、ピボットで集計できます(出典:Odoo公式ドキュメント19.0「Margins」、2026年10月確認)。ここでの粗利は、販売価格から製品に登録した原価を引いた受注時点の値です。損益計算書の粗利とは分けて扱います。ドキュメントには版の区分が書かれていないため、エディション比較で確かめます。
3指標を一緒に見ると、何が分かるか
3つを並べると、単体では見えない動きが浮かび上がります。
| 並べたときの見え方 | 読み取れること |
|---|---|
| 受注高は伸びているのに、売上が伸びていない | 納品や検収が滞っている可能性。受注は取れても、現場が追いついていない |
| 売上は横ばいなのに、ABC分析の構成が変わっている | 主力商品の入れ替わりが起きている。合計だけを見ていては気づけない |
| 受注高の伸びを、ABC分析の切り口で見る | どのグループの伸びかが分かる。Cグループばかりなら、手間の割に儲からない状態に近づいている |
3行目は、とくに見落とされがちです。合計が増えていれば、多くの会議では「好調」で話が終わってしまいます。
よくある2つの失敗
失敗1:受注高と売上を、同じ数字として扱う
受注の数字を見て「今月は良かった」と判断し、資金の見通しまで立ててしまうケースです。
受注は、まだ入金の約束ですらありません。納品と検収、請求を経て、ようやく現金に近づきます。2つは別の数字として並べてください。
失敗2:ABC分析を一度やって、そのままにする
ABC分析は、一度作ると立派な資料になります。それで満足してしまうのが、いちばん多い失敗です。
価値が出るのは、同じ線で引き直して前回と見比べたときです。AがBに落ちた、CがBに上がった。その動きが、次の一手の材料になります。
対応範囲(C/E別)と、自社の出発点
| 指標 | Community版 | Enterprise版 |
|---|---|---|
| 受注高の推移 | 販売アプリの集計で作れる | 他アプリのデータと並べて見られる |
| 売上のリアルタイム管理 | 販売アプリの範囲で把握できる | 会計や在庫と並べて1枚にまとめられる |
| ABC分析(売上金額ベース) | 販売アプリの集計で作れる | 同じことができる |
| ABC分析(粗利ベース) | 製品に原価を登録し、販売アプリの「マージン」設定で集計する(※) | 同じ設定で集計する(※) |
※マージン設定は、公式ドキュメントに版の区分の記載がありません。版ごとの対応範囲は、改定されることがあります。導入を検討する段階で、Odoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。
この3指標は、Community版でもかなりの部分が実用になります。まず無料の範囲で始め、横断的な分析が要る段階でEnterprise版を検討する。その順番が取りやすいテーマです。
どちらから始めるかは、次の問いで見当がつきます。社内の会議で、そのまま読み上げてみてください。
- □ 受注と請求の記録が、同じ仕組みの中に残っている
- □ 「どの時点で売上とするか」が社内で1つに決まっている
- □ 商品や取引先の名称が、担当者ごとにばらばらになっていない
- □ 売上だけでなく、粗利で力の配分を決めたいと考えている
- □ 販売の数字を、会計や在庫の数字と同じ画面で見比べたい
上の3つが埋まらなければ、まず記録の整え方から手をつけます。4つ目に当てはまるなら、製品ごとの原価の登録から始めます。5つ目に当てはまるなら、Enterprise版を前提に考える段階です。
販売の数字を「予報」に変えるまでの段取り
ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。この3指標の相談を受けたとき、最初に確かめるのは製品の機能ではありません。次の順番で進めます。
- いまの会議で使っている数字の出どころを聞く:誰が、どのファイルから、何日かけて集めているか。ここに手間の大半が隠れています
- 売上の計上基準と、受注の「確定」の意味をそろえる:出荷日か検収日か。ここが決まらないと、受注高と売上の差を読めません
- Odooの標準の集計に、業務の記録の仕方を合わせる:Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で、作り込みを増やさずに3指標を出します
- 見える化→わかる化→儲かる化の順で、見る頻度を決める:まず数字が出ること。次に差の理由が分かること。そのうえで、力の配分を変える判断につなげます
- 3〜5年後の規模から、版と製品を逆算する:販売だけで足りるならCommunity版から。拠点や通貨が増える見込みなら、NetSuiteも含めて比べます。NetSuite側の考え方はNetSuiteで自社の販売・売上管理を高度化する方法にあります
販売の流れが業種特有で、パッケージの標準に乗りにくい場合もある。そのときは、合わないと率直にお伝えします。AIスクラッチ開発を選ぶ場合は、ライセンスは不要でも開発費・保守費が別途かかる点を含めて比べます。
販売の3指標を予報に使う良い点と、気をつけること
3指標をいまのデータで見られるようになると、残りの日数で何をするかを、月の途中で決めやすくなります。得られることと、先に知っておきたい負担を並べます。
良い点は、次の5つです。
- 手を打つ余地があるうちに見える:受注は入った時点でデータになるので、締めを待たずに数字を作れる
- 売上の変化を先回りできる:受注高は売上より先に動く。受注が鈍った月の影響は、数か月遅れて売上に出てくる
- 伸びの中身が分かる:受注高の伸びをABC分析の切り口で見ると、どのグループの伸びかが分かる
- 無料の範囲から始められる:売上金額をもとにする範囲なら、3指標ともCommunity版の販売アプリの集計で作れる
- 作り込みを増やさずに出せる:Odooの標準の集計に、業務の記録の仕方を合わせて3指標を出す
気をつけることは、次の4つです。
- 計上基準を先にそろえる:出荷日か検収日かが決まらないと、受注高と売上の差を読めない
- 受注高は売上でも現金でもない:受注は、まだ入金の約束ですらない。2つは別の数字として並べる
- ABC分析の線は毎期引き直す:一般的な区切りには頼らず、自社で引いた同じ線で前回と見比べる
- 横断表示はEnterprise版が前提:会計や在庫と1枚に並べるなら、スプレッドシート機能が要る。粗利で見るマージン設定は、版の区分をエディション比較で確かめる
両方を1枚の図に並べました。
計上基準は、上の段取りの2で先に決められます。版の区分と自社の出発点は、対応範囲(C/E別)と、自社の出発点のチェック項目で確かめてください。
販売の3指標のよくある質問
受注高と売上高は、どちらを先に見るべきですか?
先に見るべきは受注高です。売上より先に動くため、変化に気づける時期が早くなります。
ただし受注高だけでは、現金の動きも納品の遅れも分かりません。2つを並べ、差が開いていないかを見てください。
Community版だけで、この3指標は見られますか?
売上金額をもとにする範囲であれば、3指標とも販売アプリの集計で作れます。
粗利での分析は、販売アプリの「マージン」設定で、製品に登録した原価から受注ごとの粗利を集計して作ります。この設定の版の区分は、エディション比較で確かめてください。会計・在庫との横断表示は、Enterprise版が前提です。
ABC分析のAとBの境目は、どこに引けばよいですか?
手をかけられる件数から逆算して引くのが現実的です。業種や商材で売上の偏り方が大きく異なるため、一律の正解はありません。
丁寧に対応できる取引先が20社なら、上位20社をAとする。それでかまいません。
どのくらいの頻度で見るのが適切ですか?
売上のリアルタイム管理は、日次か週次です。着地を早く読む指標なので、締めを待っては意味がありません。
受注高の推移は月次、ABC分析は四半期から半期に一度で足ります。営業会議のあり方も、この頻度に合わせて見直せます。
受注高の推移やABC分析をOdooで見るメリットは何ですか?
締めを待たずに手を打てることです。
受注は入った時点でデータになるため、販売の3指標は締めを待たずに作れます。受注高の推移は売上より先に動き、ABC分析を重ねれば伸びの中身も分かります。売上金額をもとにする範囲なら、Community版の販売アプリでも作れます。
まとめ:受注高・売上・ABC分析を重ねて読む
販売の3指標は、手を打つ余地が残っているうちに見える指標です。
- 受注高の推移:売上より先に動く。数か月先の売上の予報になる
- 売上のリアルタイム管理:月次を待たず、予定との差を見る
- ABC分析:金額の大きい順に並べ、力を割く先を決める
- 3つを重ねると、伸びの中身と、納品の詰まりが見えてくる
- 売上金額をもとにする範囲なら両版で作れる。粗利は販売アプリのマージン設定で集計し、会計・在庫との横断表示はEnterprise版が前提
1年後の営業会議では、集計を待つ時間がなくなっています。月の半ばに着地の不足を見つけ、Aグループのどの取引先に誰が足を運ぶかを、その場で決めているはずです。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「自社の販売データから、この3指標をどこまで作れるか」という整理から、ご相談を承っています。
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