「保守が切れても、いまちゃんと動いているなら、使い続けていいのでは」
保守切れの相談で、経営者からよく出る問いです。
動いている間は、たしかに困りません。
困るのは、止まったときに誰も直せないことです。
基幹システムの保守切れとは、メーカーがシステムのサポートを終え、修理や修正を受けられなくなる状態です。
対応は、延長・第三者保守・乗り換えの3つしかありません。
前の2つは、時間を稼ぐ手です。
どれを選ぶかは、「このシステムで、あと何年戦うか」から逆算して決めます。
では、何年を境に、選ぶ手が変わるのか。
この記事で分かること
- 保守切れで何が起き、なぜ今それが経営課題なのか
- 放置した場合の4つのリスクと、現場で起きていること
- 延長・第三者保守・乗り換えの比べ方と、年数での選び方
- 乗り換え先の物差しと、よくある失敗3つ
- 自社で1時間でできる保守期限の棚卸し
基幹システムの保守切れとは
保守切れになると、次のサービスが受けられなくなります。
- ハードウェアの修理・部品交換
- ソフトウェアの不具合修正・パッチ(修正プログラム)の提供
- セキュリティ更新プログラムの配布
- 技術的な問い合わせへの対応
保守切れは、「ハードウェア」と「ソフトウェア」に分けて考えます。
どこで保守が切れるかを図にすると、次のとおりです。
ハードウェアの保守切れ
サーバーやPC、専用端末には、メーカーが決めた保守の期間があります。
メーカーが後継機を出し、利用する会社が入れ替えて保守を続けるのが普通の流れです。
ところが、後継機が出なくなったり、メーカーが事業から撤退したりすると、保守切れが現実になります。
大型の汎用機(メインフレーム)でも、製造や保守の終了の時期はメーカーの発表で決まります。
自社の機種の予定は、メーカーか保守会社に聞いてください。
ソフトウェアの保守切れ
ソフトウェアの保守切れには、主に2種類あります。
1つは、OS・データベース・ミドルウェア(OSとアプリの間にある基盤ソフト)の版のサポート終了です。
たとえばIBMの「IBM i 7.3」は、2023年9月30日に標準サポートを終えました。
いまは有償の延長サポートの期間で、それも2028年9月30日までです。
次の版の「IBM i 7.4」も、2026年9月30日に標準サポートを終える予定です。
2026年10月1日から延長サポートに入り、その期限は2029年9月30日とされています(出典:IBM公式サイト、2026年9月確認)。
IBMの公式の版の一覧は、1988年の最初の版から始まっています(出典:IBM公式サイト、2026年9月確認)。
その流れをくむIBM i(旧称AS/400)は、多くの中堅・中小企業で今も動いています。
もう1つは、業務システム本体のサポート終了です。
ベンダーが事業を畳んだり、保守の要員を確保できなくなったりすると、突然打ち切られることもあります。
AS/400(IBM i)の詳しい状況は、AS/400(IBM i)とはで扱っています。
なぜ今、保守切れが経営課題なのか
古いシステムを放置するほど、移行は重くなる
レガシーシステムは、長年の改修で複雑になり、中身が分かりにくくなった古いシステムです。
放置するほど、データの移行や業務の見直しにかかる手間は増えます。
期限が近づくほど、選べる手も時間も少なくなります。
IT人材の不足
古いシステムを扱える技術者は高齢化が進み、若手への引き継ぎも進んでいません。
「あと数年で対応できる人がいなくなる」。そんな会社は珍しくありません。
キーマンに頼る危うさは、キーマンが辞めても会社が止まらない仕組みでも扱っています。
サイバー攻撃の高度化
生成AIを悪用した攻撃も登場し、手口は急速に変わっています。
セキュリティパッチが届かないシステムは、攻撃者にとって格好の標的です。
備え方は、中小企業のランサムウェア対策をご覧ください。
放置すると起きる4つのリスク
| リスク | 何が起きるか |
|---|---|
| システム停止・業務の停滞 | 故障しても部品が手に入らず、生産管理や出荷が止まる |
| セキュリティ | 新しく見つかる脆弱性に無防備になり、情報漏えいや停止が起きる |
| 法令・コンプライアンス | 業界の基準や個人情報保護の要件に追いつけなくなる |
| 機能の陳腐化 | 法改正や新しい商習慣に追従できず、競合との差が開く |
保守切れのシステムを使い続けるのは、鍵の壊れたオフィスをそのまま使い続けるようなものです。
失うのは、復旧の費用だけではありません。
取引先からの信頼、現場の時間、経営者の意思決定の余白まで奪われます。
保守切れの現場で起きている4つの典型
保守切れが近い会社では、次の4つがよく重なって見られます。
| 典型 | 症状 | なぜ起きるか | 放置すると |
|---|---|---|---|
| ① ブラックボックス化 | 誰も全体の仕様を把握していない | 10〜20年の間に担当者が替わり、設計書が更新されない | 障害の原因が分からず、改修も移行の要件定義も進まない |
| ② 業務の属人化 | 特定のベテランしか正しく操作できない | 自社独自のやり方を作り込みすぎた | その人が辞めた瞬間に業務が止まる |
| ③ 二重入力 | ExcelやAccessの手作業で補っている | 足りない機能を現場が補っている | データがずれ、月次決算が遅れ、優秀な人から辞める |
| ④ 経営判断の遅れ | 最新の数字がすぐに出ない | 部門ごとに仕組みが分かれ、手で集計している | 自社の状況が見えないまま判断することになる |
②から抜け出す第一歩は、「業務を整理してからシステムを入れる」発想への転換です。
進め方は、『業務属人化』がDXを止めるで扱っています。
③と④は、現場と経営者の時間を静かに奪います。
人がやらなくていい作業を減らし、本来の仕事に時間を戻す。
基幹システムを新しくする価値は、そこにあります。
1つでも心当たりがあれば、リスクはもう表に出始めています。
保守切れに直面したときの3つの対応方法
比較表で見る3つの対応方法
| 判断軸 | ① サポート延長 | ② 第三者保守 | ③ システム乗り換え |
|---|---|---|---|
| 初期コスト | 中(延長料金) | 低 | 高(導入費用) |
| 継続コスト | 高(年々上がりやすい) | 中 | 低〜中(クラウド型は月額) |
| つなげる期間 | 提供元が決めた延長の期間まで | 保守会社との契約しだい | 次の基盤として長く使う前提 |
| セキュリティ | △(最低限) | △(脆弱性は残る) | ◎(提供元が更新) |
| 業務改善の余地 | ✕(現状維持) | ✕(現状維持) | ◎(再設計できる) |
| データ・AIの活用 | ✕(古い構造のまま) | ✕(古い構造のまま) | ◎(データを1か所にそろえやすい) |
①②は「時間稼ぎ」、③は「経営基盤の立て直し」です。
① サポート期間の延長
メーカーに追加料金を払い、一定期間だけ保守を続けてもらう方法です。
MicrosoftのESU(拡張セキュリティ更新プログラム)や、IBM iの延長サポートがこれに当たります。
Microsoftも、ESUは新しい環境へ移るまでの暫定的な措置と位置づけています(出典:Microsoft公式、2026年9月確認)。
延長は費用が高く、年々上がることも多い。提供されない製品もあります。
次の手を考える時間は稼げますが、根本の解決にはなりません。
② 第三者保守
メーカーではない保守会社と契約し、サポートを続ける方法です。
メーカーより費用を抑えやすく、メーカーの保守が終わった後も対応してもらえます。
リユース部品での修理にも対応するため、古いハードウェアの延命に向いています。
ただし、システムそのものは古いままです。
契約の前に、次の4点は必ず聞いてください。延長を選ぶ場合も同じです。
- 対象の範囲:ハード・OS・業務ソフトのどこまでが保守の対象か
- セキュリティ:新しい脆弱性への修正は含まれるか
- 期間と費用の推移:何年まで延ばせ、年ごとに費用がどう変わるか
- 障害時の対応:部品の在庫と、復旧までの目安の時間
第三者保守はハードの修理が中心で、ソフトの脆弱性は残ることが多い点に注意が要ります。
つないだ期間の出口(いつ、何に移るか)も、同時に決めておきます。
③ システムの乗り換え
新しいシステム、特にクラウドERPに乗り換える方法です。
初期投資は要りますが、長い目で見ると次の利点があります。
- セキュリティの更新を提供元が行う
- ハードウェアの保守切れの心配が原則ない
- 業務の流れを再設計できる
- スマートフォンや在宅勤務の環境からも使える
乗り換えの費用と期間は、4つの要因で大きく変わります。
業務の範囲、開発の量(特に外部システムとの連携)、社内の体制、ユーザー数です。
情報システムの担当が少ない会社では、支援を厚くする分、期間も延びやすくなります。
手順は、基幹システムのリプレイスとはで扱っています。
あと何年使うかで、選ぶ手が変わる
冒頭の問いに戻ります。
境目は、「このシステムで、あと何年戦うつもりか」です。
2〜3年で次に移るつもりの会社
延長や第三者保守でつなぐのが現実的です。
ただし「とりあえず延長」は、判断を先送りしているだけのこともあります。
延長を決める日に、次を決める日付も書き込みます。
それより長く使うつもりの会社
乗り換えのほうが、長い目で見て合理的です。
期限まで2年以上あるなら、選ぶ時間は十分にあります。
最初に、次の3つを書き出してください。
- 乗り換えで変えたいこと(数字が早く見える、手作業が減る、など)を3つまで
- 5年後の事業の形(海外・新事業・M&A)
- データ移行で持っていく範囲(何年分の取引か)
データ移行の計画は、基幹システムのデータ移行ガイドで扱っています。
期限が迫っている、または過ぎている会社
期限まで1年を切っているなら、まず延長か第三者保守で安全を確保します。
そのうえで、延ばした期間を「次の判断までの準備期間」として使います。
- 延長・第三者保守の見積りと、使える期間を聞く
- 仕様と例外処理を文書にし始める
- 乗り換え先の比較を並行して進める
使い続けるか乗り換えるかの全体の判断は、基幹システムは「更新」か「乗り換え」かで扱っています。
乗り換える場合の物差し|NetSuite以外が合う場合も
| 自社の状況 | 合いやすい行き先 |
|---|---|
| 会計・販売・在庫を1つにし、海外や子会社も見たい | NetSuiteなど統合型クラウドERP |
| 小規模で、費用を抑えて段階的に始めたい | Odoo |
| 業種特有の業務(製番・生産方式など)が中心 | 業種に特化した国産ERP |
| 独自の業務が強みで、パッケージに合わない | AIを使ったスクラッチ開発 |
| 期限まで余裕があり、業務がまだ整理できていない | いまは替えず、延長でつなぎながら業務を整理 |
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
費用は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。
OdooはOdooとは、スクラッチ開発との比べ方はAIでスクラッチ開発とERP、どちらを選ぶべきかで扱っています。
AS/400からの移行は、AS400リプレイスのポイントをご覧ください。
よくある失敗3つ
失敗1:延長を繰り返し、判断を先送りする
起きること:延長の費用が年々上がり、気づけば乗り換えの費用を上回る。
原因:延長を「解決」と捉え、次の判断の期限を決めていなかった。
避け方:延長を決めるときに、「いつまでに次を決めるか」の日付を同時に決めます。
失敗2:期限の直前に動き、選定を急ぐ
起きること:比較や業務の整理が足りないまま決め、導入後に手戻りが起きる。
原因:保守期限を把握していなかった。または通知が来てから動いた。
避け方:OS・データベース・業務ソフトの期限を一覧にし、最も早い期限から逆算します。
相談の始めどきは、期限の2年前が理想、遅くとも1年前です。
失敗3:ハードウェアだけ替えて安心する
起きること:サーバーは新しくなったが、OSや業務ソフトの期限がすぐに来る。
原因:ハードとソフトの期限を分けて見ていなかった。
避け方:ハード・OS・データベース・業務ソフトの期限を、同じ表に並べます。
ベンチャーネットならこう見る
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場を取っています。
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
仕事の多くは、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎや、ほかのシステムとの連携です。
保守切れの古いシステムを前に、よく次の2つの型を使います。
型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap
乗り換え先が決まっていても、いまの業務の見える化からやり直します。
保守切れのシステムには、使われていない帳票や、ExcelやAccessで補っている業務が混ざっているからです。
第4章の「ブラックボックス化」を、そのまま新しいシステムに運ばないための手順です。
型2:標準に合わせる/開発する/残す
Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。
- 標準に合わせる:業務のほうを、新しいシステムの標準機能に寄せる
- 開発する:追加の開発や外部の仕組みとの連携で補う
- 残す:新しいシステムには載せず、いまの仕組みや運用で続ける
長年の作り込みを「全部必要」として持ち込むと、費用が膨らみ、期間も延びます。
1つ目を選べる業務が多いほど、乗り換えたあとの更新も軽くなります。
変わることは、先に伝える
乗り換えれば、帳票の形、締め処理の考え方、画面の操作感が変わります。
ライセンス費用が、いまより上がることもあります。
NetSuiteへ替える場合、給与・人事は対象外です。
こうした点は、比べる段階でお伝えします。
比べた結果が「いまは延長でつなぐ」になることもあります。
今日できること|保守期限の一覧をつくる
社内の仕組みについて、次の表を埋めてみてください。
| 対象 | 製品・版 | 保守期限と延長の可否 | 詳しい人 |
|---|---|---|---|
| (例)基幹サーバーのOS | IBM i 7.4 | 2026年9月30日(標準)・延長あり(2029年9月まで) | 1人 |
※表の例は説明用です。期限は製品ごとに提供元の公式情報で確かめてください。
1時間ほどで埋まるはずです。
最も早い期限と、「詳しい人が1人」の行が、最初に手を打つ場所です。
よくある質問
Q1. 自社のシステムが保守切れに近いか、判断する方法はありますか
次の5つの兆候が目安です。
- ベンダーから「サポート終了」の通知が届いている
- 故障時の部品の調達に時間がかかる
- 障害の復旧に以前より時間がかかる
- セキュリティパッチが提供されなくなった
- 後継機・後継の版の発表が止まっている
1つでも当てはまれば、次の対応を考える時期です。
Q2. サポート延長と乗り換え、どちらを選ぶべきですか
あと何年使うかで決めます。
2〜3年で次に移る前提なら、延長で時間を稼ぐのが現実的です。
それより長く使うなら、乗り換えのほうが長い目で見て合理的です。
延長の費用は年々上がり、乗り換えの費用を上回ることもあります(第6章)。
Q3. 中堅・中小企業でも、クラウドERPに乗り換えられますか
可能です。
サーバーの構築が要らず、月額制で負担が読みやすい仕組みです。
たとえばNetSuiteは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
詳しくはクラウドERPとはをご覧ください。
Q4. 乗り換えにはどれくらいの期間がかかりますか
業務の範囲と開発の量と社内の体制とユーザー数で大きく変わります。
とくに外部システムとの連携開発が多いと、期間も費用も増えます。
情報システムの担当が少ない会社では、支援を厚くする分、期間が延びやすくなります。
業種別の導入の型(NetSuiteの場合は「SuiteSuccess」)を使うと、期間を縮めやすくなります。
自社の条件での期間は、パートナーに見積もってもらいます。
Q5. パートナーへの相談は、いつがよいですか
期限の2年前が理想で遅くとも1年前です。
判断軸の整理、業務の棚卸し、製品の比較にも時間がかかるからです。
「まだ早いかな」と思ったときこそ、相談の好機です。
Q6. IBM i(AS/400)を使っています。何から始めればよいですか
使っている版の保守期限を調べることからです。
IBMの公式では、7.4の標準サポートは2026年9月30日までの予定です。
延長サポートを使うか、乗り換えの準備を始めるかを、期限から逆算して決めてください。
まとめ:保守切れの先にある「経営を前に進める選択」
- 保守切れは、経営者が向き合う課題
- 放置すると、停止・セキュリティ・法令・陳腐化の4つのリスク
- 延長と第三者保守は時間稼ぎ、乗り換えは経営基盤の立て直し
- 決め手は、あと何年使うか。2〜3年ならつなぎ、それより長いなら乗り換えを考える
- 乗り換えるなら、先に業務を見える化し、標準に合わせる・開発する・残すに分ける
「動いているなら使い続けていいのでは」への答えは、あと何年使うかで変わります。
まずは保守期限の一覧を作り、最も早い期限に丸をつけてください。
刷新を考えるなら、基幹システムとERPの違い・移行判断もあわせてご覧ください。
NetSuiteそのものについては、NetSuiteとはで扱っています。
もう少し詳しく知りたい方へ
「まだ早いかな」と感じる段階こそ、判断軸を整理する好機です。
保守切れのご相談を、ベンチャーネットがお受けします。

コメント
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[…] 保守の期限の考え方は基幹システムの保守切れリスクとは?、更新か乗り換えかは基幹システムは「更新」か「乗り換え」かで扱っています。 […]