AS/400(IBM i)とは?特徴・サポート状況・将来の選択肢を中立的に解説

目次

導入文

「AS/400」というキーワードを検索された方は、おそらく次のような状況にあるのではないでしょうか。

  • 自社で長年使ってきた基幹システムがAS/400だが、最近サポート終了の話を耳にした
  • 後任のエンジニアが見つからず、このまま使い続けてよいか不安になっている
  • 「2026年でサポート終了」と聞いたが、本当に移行を急ぐべきかわからない

実は、AS/400をめぐっては、業界の中でも情報が錯綜しています。「もうすぐなくなる」「2026年で終わる」といった表現を目にする一方で、IBMは2035年までのロードマップを公開しています。どちらが正しいのか、迷う方も多いはずです。

本記事では、AS/400(IBM i)について次の観点から整理しています。

  • AS/400とIBM iの正確な関係
  • 長年支持されてきた理由と独自のアーキテクチャ
  • 主要機能と現代的な拡張性
  • サポート終了の話の正確な意味
  • 使い続ける選択肢/移行を検討する選択肢
  • 移行先ERPの主な選択肢

ベンチャーネットは、Oracle NetSuite認定パートナーとして基幹システムのリプレース支援を行っています。ただし本記事は「移行を勧める」ためのものではありません。AS/400について調べる方が、正確な情報をもとに自社の状況を整理できるよう、中立的な立場で情報をお届けします。

AS/400(IBM i)とは何か

AS/400(エーエスよんひゃく)とは、IBMが1988年に発表した中型コンピュータシステムです。会計、販売管理、在庫管理、生産管理といった企業の基幹業務を支える用途で、長年にわたって多くの企業に採用されてきました。

ただし、現在「AS/400」という名前の製品は存在しません。製品名としてのAS/400は2000年に終了しており、その後は名称を変えながら継続しています。

AS/400とIBM iの関係

混乱しやすい点なので、最初に整理しておきます。

「AS/400」「IBM i」「iSeries」「System i」は、いずれも同じ系統のプラットフォームを指しています。時期によって名前が変わっただけで、技術的な系譜はつながっています。

時期製品名
1988年〜2000年AS/400
2000年〜2006年eServer iSeries
2006年〜2008年System i
2008年〜現在IBM i(Power Systems上で稼働)

つまり、現在AS/400と呼ばれているシステムの多くは、技術的には IBM i と呼ぶのが正確です。ただし現場では今も「AS/400」「AS400」という呼び方が広く使われています。

本記事でも、検索される方になじみのある「AS/400」と、正確な名称である「IBM i」を、文脈に応じて使い分けます。

なぜ今、AS/400が話題になっているのか

近年、AS/400についての検索や問い合わせが増えています。背景には3つの要因があります。

  1. IBM i 7.3の延長サポートが2026年9月30日に終了予定(後述)
  2. AS/400を扱える技術者の高齢化(RPG・COBOLエンジニアの市場縮小)
  3. DX推進やクラウド移行の機運の高まり

これらが重なり、「自社のAS/400をこれからどうするか」を考え始める企業が増えています。

本記事の後半では、これらのテーマについて、使い続ける選択肢と移行する選択肢の両面から整理していきます。

AS/400が長年支持されてきた理由

AS/400は1988年の登場から30年以上にわたって、世界中の企業で使われ続けてきました。これは情報システムの世界では極めて異例です。長期にわたって支持された理由は、主に4つあります。

圧倒的な堅牢性と安定稼働

AS/400(IBM i)は、業務システム専用に設計されたOS・データベース・ミドルウェアの統合環境です。汎用OSとは異なり、最初から「企業の基幹業務を止めない」ことを最優先に設計されています。

そのため、ハードウェア障害が発生してもサービスを継続できる仕組みが、OSレベルで組み込まれています。「動き続けている」という事実そのものが、AS/400の最大の価値とされてきました。

単一レベル記憶という独自アーキテクチャ

AS/400には「単一レベル記憶(Single Level Storage)」という独自の設計思想があります。

通常のシステムでは、メモリとディスクは別の領域として扱われます。プログラムはメモリとディスクを意識して動作を切り替えなければなりません。

一方、AS/400では、メモリとディスクをひとつの仮想記憶空間として扱います。プログラムから見ると、データがメモリにあるかディスクにあるかを意識する必要がありません。これが、AS/400の高速性と安定性を支える基盤になっています。

TIMI(Technology Independent Machine Interface)

もうひとつの特徴がTIMI(タイミー)と呼ばれる独自の仮想マシン技術です。

通常、OSやアプリケーションは、特定のCPUアーキテクチャに依存します。CPUが変わると、プログラムも作り直す必要があります。

AS/400ではTIMIという中間層を挟むことで、ハードウェアの世代交代があってもアプリケーションを作り直さずに動かせます。これにより、20年以上前のRPGプログラムが、現在のPower10ハードウェア上でもそのまま動作するケースが珍しくありません。

リレーショナルデータベースの統合

AS/400には、Db2 for iと呼ばれるリレーショナルデータベースが、OSと一体化した形で組み込まれています。

別途データベース製品を導入する必要がなく、運用負荷を大幅に下げられます。アプリケーションサーバーとデータベースサーバーが一体になっているため、レスポンスが速いことでも知られています。

これら4つの特徴が組み合わさって、AS/400は「30年間動き続ける基幹システム」という評価を得てきました。

AS/400 / IBM i の主要機能と特徴

AS/400(IBM i)が「古いシステム」というイメージを持たれることがありますが、実際には現代的な機能も継続的に強化されています。ここでは、主要な機能と特徴を整理します。

開発言語の対応範囲

AS/400で歴史的に使われてきた開発言語は次の2つです。

  • RPG(Report Program Generator):AS/400用に進化した言語。現在のRPG(フリーフォーマットRPG)は、現代的な記法をサポート
  • COBOL:金融業界などで広く使われた言語。AS/400上でも長く利用

これらに加え、現在のIBM iは現代的な言語にも対応しています。

  • Java
  • Python
  • Node.js
  • PHP
  • Ruby
  • Perl

つまり、既存のRPGアプリケーション資産を活かしながら、新しい業務にはJavaやPythonを使う、といったハイブリッドな運用が可能です。

データベース:Db2 for i

前述の通り、IBM iにはDb2 for iというリレーショナルデータベースがOSと統合された形で組み込まれています。

  • SQLによる標準的なアクセスが可能
  • 既存の物理ファイルとSQLテーブルを混在させて運用できる
  • データ自体は、OS・ハードウェアの世代を超えて互換性が保たれる

長期にわたって蓄積されたデータ資産を、世代交代の影響を受けずに活用できる点が大きな強みです。

オープン環境との接続

IBM iは、外部システムとの連携にも対応しています。

  • Web API(REST、SOAP)
  • データベース連携(ODBC、JDBC)
  • ファイル連携(CSV、XML、JSON)
  • メッセージング(MQ)

これにより、IBM iを基幹システムとして残しつつ、フロント側に新しいWebアプリケーションや業務システムを構築するというハイブリッドな構成も実現できます。

セキュリティ機能

IBM iは、エンタープライズ向けに設計されているため、セキュリティ機能も継続的に強化されています。

  • オブジェクトレベルのアクセス制御
  • 監査ログ機能
  • 暗号化
  • 統合された権限管理

ただし、これらの機能が活きるのは、サポート対象のOSバージョンを利用している場合です。古いバージョンを使い続けている場合は、新しい脆弱性への対応が受けられないため、注意が必要です。

サポートの状況については、次の4章で詳しく見ていきます。

「AS/400のサポート終了」の正確な意味

AS/400について検索すると、「2026年にサポート終了」「もうすぐなくなる」といった表現に出会うことがあります。しかし、これらの表現には正確でない部分があります。

実際に何が起きているのかを、正確に整理しておきましょう。

プラットフォーム全体が終了するわけではない

まず押さえておきたいのは、AS/400(IBM i)というプラットフォーム自体は終了しません。

IBMは、IBM iの長期的なロードマップを公開しています。2025年4月には最新版である IBM i 7.6 が発表され、IBMは2035年までの継続方針を明言しています。

「AS/400がなくなる」という表現は、25年前の話と現在の話が混ざってしまっています。製品名としてのAS/400は2000年に終了しましたが、プラットフォームは IBM i として現在も継続中です。

2026年9月に終わるのは「IBM i 7.3 の延長サポート」

では、なぜ「2026年でサポート終了」という話が出てくるのでしょうか。

これは、IBM i 7.3 という特定のバージョンの延長サポートが、2026年9月30日に終了する という意味です。

バージョン標準サポート延長サポート
IBM i 7.3終了済み(2023年9月)〜2026年9月30日
IBM i 7.4継続中未定
IBM i 7.5継続中未定
IBM i 7.6継続中(2025年4月発表)未定

※サポート期限は変更される可能性があります。最新情報はIBM公式サイトをご確認ください。

つまり、IBM i 7.3 を使い続けている企業は、2026年9月以降、新機能の提供やセキュリティ修正プログラムを受けられなくなります。一方で、7.4 以降のバージョンにアップグレードすれば、サポートは継続します。

ハードウェアの保守期限も合わせて確認が必要

見落とされがちなのが、ハードウェア(Power Systems)の保守期限です。OSのサポートが続いていても、稼働しているサーバーが古い世代の場合、ハードウェアの純正保守がすでに終了しているケースがあります。

ハードウェア状況
Power7IBM純正保守は終了済み
Power8IBM純正保守は2024年10月までに全モデル終了
Power9IBM保守継続中、IBM i 7.5まで対応
Power10 以降IBM保守継続中、IBM i 7.6まで対応

※2025年時点の情報。詳細はIBM公式サイトをご確認ください。

特にPower7・Power8世代でIBM i 7.3 を動かしている場合は、サードパーティ保守や中古部品に依存している状況になっている可能性があります。OSよりも先にハードウェアの寿命を迎えるケースが多く見られます。

「サポート終了 = 即移行」ではない

ここまで読まれて、「結局、どうすればいいのか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ベンチャーネットは、Oracle NetSuiteの認定パートナーとして、これまで多くの基幹システムのリプレースをご支援してきました。その経験から申し上げると、「サポート終了 = 即移行」とは限らない というのが実情です。

判断材料は次のような要素の組み合わせです。

  • 現在使用している IBM i のバージョン
  • 稼働しているハードウェアの世代
  • 社内のRPG・COBOL技術者の人員状況
  • 業務上、AS/400で運用している機能の特性
  • 経営戦略上、ITに求める方向性

これらを踏まえて、「使い続ける」「アップグレードする」「移行する」のどれが自社にとって妥当か、丁寧に判断していくことが大切です。

次のセクションから、それぞれの選択肢を整理していきます。

AS/400を使い続けるという選択肢

まず、「使い続ける」選択肢から見ていきます。

世間では「サポート終了が迫っているのだから移行すべきだ」という論調も多く見られます。しかし、ベンチャーネットは、すべての企業に移行をおすすめしているわけではありません。AS/400(IBM i)を使い続けることが合理的なケースも、確かに存在します。

使い続けることが合理的なケース

次のような状況の企業は、AS/400を使い続けることが合理的な選択肢となりえます。

  • 既存の業務システムがIBM i 上で安定して稼働している
  • RPG・COBOL技術者が社内にいる、または安定的に確保できる見通しがある
  • 稼働中のハードウェアがPower9以降で、まだ保守期限に余裕がある
  • 業務上、AS/400の高速レスポンスや堅牢性が極めて重要
  • 短〜中期的に、システム全体の方向性を大きく変える予定がない

これらに該当する場合、慌てて移行するよりも、IBM i のバージョンアップで対応する方が合理的な場合があります。具体的には、IBM i 7.3 から 7.5、あるいは 7.6 へのアップグレードです。

ただし、7.3 から最新の 7.6 へは直接アップグレードできず、7.4 または 7.5 を経由した2段階のアップグレードが必要です。また、7.6 は Power10 以降のハードウェアでしか動作しないため、古い機器を使っている場合はハードウェア更改も同時に検討する必要があります。

使い続けることに伴うリスク

一方で、AS/400を使い続けることには、長期的に避けられないリスクもあります。

リスク1:技術者の確保が年々難しくなる

RPGやCOBOLを扱える技術者の高齢化が進んでいます。50代以上の世代に偏っており、若手エンジニアの参入は限定的です。10年後、20年後の保守体制を維持できるかどうかは、業界全体の課題です。

リスク2:ハードウェア世代の保守問題

OSのサポートが続いていても、稼働ハードウェアの保守が先に切れるケースがあります。サードパーティ保守や中古部品への依存度が高まると、障害発生時の対応に時間がかかるリスクが増えます。

リスク3:最新技術との統合に限界がある

クラウド、AI、コンテナ、マイクロサービスといった最新技術との完全な統合は、IBM i では限定的です。デジタルトランスフォーメーション(DX)を本格的に進める場合、IBM i 単独では対応しきれない領域が出てきます。

リスク4:監査・コンプライアンスでの指摘リスク

サポート期限切れのOSバージョンを使い続けていると、セキュリティ監査や内部統制の評価で指摘を受けるリスクがあります。特に上場企業や大企業との取引が多い場合は、注意が必要です。

使い続ける場合の現実的なアプローチ

使い続けることを選択した場合、ベンチャーネットからお伝えしたいのは「放置せず、計画的に運用する」ということです。

  • IBM iのバージョンを継続的にアップグレードする
  • 技術者の継承計画を立てる(外部パートナーの活用を含む)
  • 基幹システム外の領域から、段階的にクラウド連携を進める
  • 5年〜10年スパンの中長期計画を、経営層と情報システム部門で共有する

「使い続ける」と「何もしない」は別物です。長期にわたって安定運用するためには、継続的な投資と計画が必要になります。

AS/400から移行を検討すべきタイミング

ここまでは「使い続ける」選択肢について見てきました。次に、「移行を検討すべきタイミング」を整理します。

繰り返しになりますが、ベンチャーネットは「サポート終了が迫っているから今すぐ移行すべき」とは考えていません。それぞれの企業の状況によって、適切なタイミングは異なります。

その上で、次のようなサインが見えてきたときには、本格的に移行を検討する時期と言えるでしょう。

後任のエンジニアが採用できなくなったとき

社内のRPG・COBOL技術者が退職予定で、後任が採用できない。あるいは、外部の保守ベンダーが事業縮小・撤退を表明した。

このような状況になると、AS/400の運用そのものが立ち行かなくなります。技術者がいなくなる前に、移行プロジェクトを始動させる必要があります。

業務拡大・グローバル展開でシステムの限界を感じたとき

事業が成長し、海外拠点や子会社が増えてきた。複数の通貨・言語・税制への対応が必要になった。

AS/400は単一拠点・単一通貨での運用には強みを発揮しますが、グローバル展開や多通貨対応では、クラウドERPの方が適しているケースが多くなります。

経営陣がデータドリブンな意思決定を求めるようになったとき

経営陣から「リアルタイムで業績データを見たい」「複数システムのデータを統合分析したい」という要望が増えてきた。

AS/400に蓄積された膨大なデータは資産ですが、外部ツールとの連携には一定の開発工数が必要です。最初からデータ統合・分析を前提に設計されたクラウドERPの方が、こうした要望に応えやすい場合があります。

M&A・PMIで急な統合が必要になったとき

M&Aによる事業統合(PMI)の場面では、複数の基幹システムを短期間で統合する必要が生じます。AS/400をベースに統合するか、別のシステムに移行して統合するか、戦略的な判断が必要です。

経営層が「2025年の崖」「2027年問題」を本気で意識し始めたとき

経済産業省のDXレポートで指摘された「2025年の崖」、そしてSAP ERPサポート終了に絡む「2027年問題」。レガシーシステム全体の刷新が経営課題として認識され始めると、AS/400も含めた全体最適の議論が必要になります。

移行を検討する場合は、早めに情報収集を

移行プロジェクトは、検討開始から本番稼働まで、規模にもよりますが1年〜3年程度の期間を要します。「いざ始めよう」と思った時には、すでに時間が足りなくなっているケースも多く見られます。

実際に移行プロジェクトを始める前に、情報収集だけでも始めておくことをおすすめします。具体的な移行先の選び方については、別記事「AS400がサポート終了!乗り換え先のERP選定のポイント」で詳しく解説しています。

移行先ERPの主な選択肢

ここでは、AS/400からの移行を検討する場合の主な選択肢を概観します。具体的な選定基準や比較の詳細は「AS400がサポート終了!乗り換え先のERP選定のポイント」に整理していますので、本記事ではあくまで概要にとどめます。

移行先の3つの方向性

AS/400からの移行先は、大きく3つの方向性に分けられます。

方向性A:IBM i を継続しつつ、新環境を構築する

AS/400上の既存資産を活かしながら、フロント側に新しいWebアプリケーションやモバイル対応を構築する方法です。

  • メリット:既存資産を活かせる。段階的な移行が可能
  • デメリット:IBM i の長期的な保守問題は残る

方向性B:クラウドERPに全面移行する

クラウド型のERPに全面的に切り替える方法です。代表的な製品として、Oracle NetSuite、SAP S/4HANA Cloud、Microsoft Dynamics 365 などがあります。

  • メリット:最新の機能・統合・拡張性。サーバー保守の負担がなくなる
  • デメリット:業務フローの見直しが必要。一定の初期投資が必要

方向性C:オンプレミス型ERPに移行する

別のオンプレミス型ERPに移行する方法です。日本国内では富士通のGLOVIA、OBC社のOBIC7、ワークスアプリケーションズのCOMPANYなどがあります。

  • メリット:オンプレミス特有の柔軟性
  • デメリット:クラウドのメリット(運用負荷軽減、自動アップデート)は得られない

中堅・中小企業ではクラウドERPが選択肢に入りやすい

中堅・中小企業の場合、サーバー運用やシステム保守の負担を考えると、クラウドERPが選択肢に入りやすい傾向があります。理由は次の通りです。

  • 自社で大規模なインフラ運用を続けるための人員を確保しにくい
  • 自動アップデートにより、長期にわたる保守の負担を抑えられる
  • 中堅・中小企業向けに設計されたクラウドERP(Oracle NetSuite等)がある

ベンチャーネットでは、Oracle NetSuiteの認定パートナーとして、AS/400からNetSuiteへの移行を支援しています。NetSuiteは、世界220地域・43,000社以上で利用されているクラウドERPで、中堅・中小企業の経営者から多くのお問い合わせをいただいています。

ただし「クラウドERPなら何でもよい」わけではない

ここで注意しておきたいのは、「クラウドERPに移行すれば全て解決」というわけではない、ということです。

  • 移行プロジェクトの進め方を誤ると、コストもスケジュールも大幅に膨らみます
  • 業務フローの見直しを伴わない移行は、新システムでも非効率を引き継ぐだけになります
  • パートナー選びを誤ると、導入後の運用で困ることが起きます

移行先の具体的な選び方、パートナー選定の観点、移行プロジェクトの進め方については、別記事「AS400がサポート終了!乗り換え先のERP選定のポイント」で詳しく解説しています。本格的に移行検討に入る場合は、ぜひ参考にしてください。

AS/400の今後を考えるための判断材料

ここまでで、AS/400(IBM i)の特徴、サポート状況、使い続ける/移行するそれぞれの選択肢を見てきました。

最後に、自社のAS/400の今後を考えるとき、どんな観点で判断材料を整理すればよいかをお伝えします。

判断材料を整理する5つの観点

ベンチャーネットでは、AS/400についてご相談を受けるとき、次の5つの観点で状況を整理することをおすすめしています。

観点1:現在のバージョンとハードウェアの状態

  • 使用中のIBM iのバージョン(7.3/7.4/7.5/7.6)
  • 稼働しているハードウェアの世代(Power7/8/9/10)
  • それぞれの公式保守期限の確認

これにより、技術的なタイムリミットが明確になります。

観点2:人材リスクの状況

  • 社内のRPG・COBOL技術者の年齢構成と退職予定
  • 外部の保守ベンダーの体制と継続性
  • 後任の採用見込み

人材リスクは、技術的な期限よりも先に問題が表面化するケースが多くあります。

観点3:業務要件とシステムの整合性

  • AS/400で稼働している業務の特性(拠点数、通貨、言語、業界特性)
  • 経営戦略上、ITに求める方向性(グローバル展開、データ統合、AI活用など)
  • 現状のシステムで不足している機能、過剰な機能

業務要件とのギャップが大きくなっているほど、移行のメリットが大きくなります。

観点4:経営上の優先度

  • 経営層のIT投資への姿勢
  • 中期経営計画におけるDX・基幹システムの位置づけ
  • 投資できる予算と期間

技術的に必要であっても、経営判断との整合性がないと、プロジェクトは前に進みません。

観点5:移行する場合の現実的な実行可能性

  • 社内に移行プロジェクトを推進できる人材がいるか
  • 信頼できるパートナーを確保できるか
  • 業務を止めずに移行できる進め方を設計できるか

これらの観点を整理することで、「使い続けるか/移行するか」「移行するならどのタイミングか」が見えてきます。

判断を急ぐ必要はない、ただし先送りもしない

ベンチャーネットがお客様にお伝えしているのは、「判断を急ぐ必要はないが、先送りもしない」というスタンスです。

「サポート終了が迫っているから明日にでも移行を決めなければ」と慌てる必要はありません。一方で、「まだ動いているから何もしなくてよい」と先送りにすると、いざ動こうとしたときに選択肢が狭まっていることがあります。

「先送りのコスト」が見えにくい

AS/400に限らず、基幹システムの問題は「先送りのコスト」が見えにくいという特徴があります。

  • 技術者の高齢化は、毎年少しずつ進む
  • ハードウェアの劣化も、徐々に進む
  • 外部パートナーの撤退は、ある日突然伝えられる
  • 業務要件とのギャップは、気づかないうちに広がっていく

これらは、ある時点で一気に問題化することがあります。「あの時から準備しておけばよかった」と振り返るケースを、ベンチャーネットでも何度も目にしてきました。

「情報収集だけ」でも始めておく価値

すぐに移行プロジェクトを始める必要がない場合でも、情報収集だけは始めておくことをおすすめします。

  • 自社のシステムの現状を棚卸しする
  • 移行先の選択肢を整理しておく
  • 信頼できるパートナーを見つけておく
  • 中期経営計画にIT投資の枠を組み込んでおく

こうした準備があると、いざ動き出すときの判断スピードが大きく変わります。

よくある質問(FAQ)

ここでは、AS/400(IBM i)についてよくいただく質問にお答えします。

Q1. AS/400とIBM iは同じものですか?

技術的にはほぼ同じものを指して使われていることが多いです。製品名としての「AS/400」は1988年〜2000年に使われていた名称で、その後「eServer iSeries」「System i」と変遷し、現在は「IBM i」として継続しています。

ただし、現場では今も「AS/400」「AS400」という呼び方が広く使われています。正確に言えば、現在動いているのは IBM i ですが、検索やコミュニケーションの場面では AS/400 という呼称も問題なく通じます。

Q2. AS/400は2026年でサポート終了するのですか?

プラットフォーム全体が終了するわけではありません。

2026年9月30日に終了するのは、IBM i 7.3 という特定のバージョンの延長サポートです。それ以降のバージョン(7.4、7.5、最新の7.6)はサポートが継続しています。

IBMは2035年までのIBM iロードマップを公開しており、プラットフォーム自体は今後も継続する方針です。「AS/400がなくなる」という表現は、25年前の製品名終了と現在のバージョン別サポート問題が混ざった、不正確な理解です。

詳しいバージョン別サポート状況は、IBM公式サイトをご確認ください。

Q3. AS/400を使い続けるのは危険ですか?

一概には言えません。バージョン、ハードウェア世代、人材状況、業務要件などの組み合わせで、判断が変わります。

たとえば、IBM i 7.5 を Power9 で運用していて、社内に技術者がいる企業であれば、当面は使い続けることに大きなリスクはありません。一方、IBM i 7.3 を Power7・Power8 で運用していて、技術者の引退も近い、という状況であれば、対応を早めに検討する必要があります。

本記事の8章で挙げた5つの観点で整理してみることをおすすめします。

Q4. AS/400から移行する場合、移行先はどう選べばよいですか?

移行先の選定は、自社の業務要件、経営戦略、予算、実行体制によって変わります。一般的な選択肢としては、クラウドERP(Oracle NetSuite、SAP S/4HANA Cloud、Microsoft Dynamics 365 など)、オンプレミス型ERP(GLOVIA、OBIC7、COMPANY など)、IBM i を継続しつつフロント側を刷新するハイブリッド構成、などがあります。

具体的な選定基準や、各製品の比較ポイント、パートナー選びの注意点については、別記事「AS400がサポート終了!乗り換え先のERP選定のポイント」で詳しく解説しています。本格的に検討に入る場合は、ぜひ参考にしてください。

Q5. AS/400を扱える人材が社内にいません。どうすればよいですか?

人材問題は、AS/400ユーザー企業の多くが抱える共通課題です。RPG・COBOL技術者の市場全体が縮小しており、新規採用は年々難しくなっています。

現実的な選択肢は次の3つです。

  1. 社内で抱え続ける:若手への引き継ぎ計画を立て、教育投資を行う
  2. 外部パートナーに委ねる:保守・運用を外部の専門ベンダーに委託する
  3. システム自体を移行する:人材リスクを抜本的に解消するため、別のシステムに移行する

どれが自社にとって妥当かは、業務の特性や経営判断によって変わります。短期的には外部パートナーに委ねつつ、中期的に移行を検討する、というハイブリッドな選択肢を取る企業も多く見られます。

まとめ:AS/400と向き合う第一歩

AS/400(IBM i)は、1988年の登場から30年以上にわたって、多くの企業の基幹業務を支えてきたプラットフォームです。その堅牢性、独自のアーキテクチャ、長期にわたる互換性は、今も色あせていません。

一方で、技術者の高齢化、ハードウェア世代の保守問題、最新技術との統合の限界など、向き合うべき課題があるのも事実です。「2026年でサポート終了」という表現は正確ではありませんが、IBM i 7.3 を使い続けている企業にとっては、何らかの対応が必要な状況であることに変わりはありません。

大切なのは、自社の状況を正しく整理すること

AS/400の今後を考えるうえで、ベンチャーネットがお客様にお伝えしているのは、シンプルなメッセージです。

「自社の状況を正しく整理してから、判断する」

世間では「サポート終了が迫っているから移行すべき」という声もあれば、「まだ動いているから心配ない」という声もあります。しかし、本当に大切なのは、自社の状況を正確に把握することです。バージョン、ハードウェア、人材、業務要件、経営戦略 — これらを丁寧に整理してから、はじめて「使い続ける/アップグレードする/移行する」の判断ができます。

ベンチャーネットは、対等な立場でご一緒します

ベンチャーネットは、Oracle NetSuite認定パートナーとして、基幹システムのリプレースをご支援しています。ただし、私たちのスタンスは「移行を売り込む」ことではありません。

お客様の状況を丁寧にお聞きし、本当に移行が必要なのか、必要だとしてどんな進め方が現実的か、対等な立場でご一緒に考えていく。これがベンチャーネットの基本姿勢です。

「使い続ける方が合理的」と判断した場合は、その判断を尊重します。「移行を検討すべき」となった場合は、Oracle NetSuiteに限らず、お客様にとって最適な選択肢を一緒に探します。

AS/400の今後を考え始めた方は、まず情報収集から始めることをおすすめします。本記事で整理した観点を参考に、自社の状況を棚卸ししてみてください。

そして、もう少し具体的に検討に進みたいと感じたときは、ぜひお気軽にご相談ください。「すぐに移行を決めなければ」というプレッシャーはありません。情報交換から始める、ということでも歓迎します。

もう少し詳しく知りたい方へ

本記事の関連情報として、次のページもあわせてご覧いただけます。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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