「AS/400は、2026年で終わるらしい」
そう聞いて、移行の見積もりを急ぐ会社があります。
けれども、2026年に終わるのは、AS/400そのものではありません。
AS/400とは、IBMが1988年に発表した、企業の基幹業務向けの中型コンピューターです。
製品名としてのAS/400は2000年に終わり、いまはIBM iという名前で続いています。
期限があるのは、IBM iのバージョンごとのサポートです。
2026年9月30日は、IBM i 7.4の標準サポートの最終日です。
7.3の延長サポートの、1つ目の区切りも同じ日に来ます。
そのうえで取れる道は、使い続ける・延長する・残して周りを新しくする・移行する、の4つです。
では、自社はどの道を選べばよいのか。
答えを分けるのは、OSの期限よりも先に来る「別の期限」です。
この記事で分かること
- AS/400とIBM iの関係と、長く使われてきた理由
- IBM i 7.3・7.4のサポート期限の正しい読み方
- 使い続ける・延長する・モダナイズ・移行の4つの選択肢と、合う条件
- バージョン・サーバー・人の「3つの期限」から道を絞る考え方
- 移行を選ぶ場合に、費用と期間を左右する4つの要因
替えると決めた後の段取り(棚卸し・データ移行・並行稼働)は、AS400リプレイスのポイントで扱っています。
AS/400(IBM i)とは
AS/400は、会計・販売管理・在庫管理・生産管理などの基幹業務を支えてきました。
多くの企業で、いまも毎日動いています。
AS/400とIBM iの関係
「AS/400」「iSeries」「System i」「IBM i」は、同じ系統のプラットフォームです。
時期によって名前が変わっただけで、技術はつながっています。
| 時期 | 製品名 |
|---|---|
| 1988年〜2000年 | AS/400 |
| 2000年〜2006年 | eServer iSeries |
| 2006年〜2008年 | System i |
| 2008年〜現在 | IBM i(Power Systems上で動く) |
いま「AS/400」と呼ばれているシステムの多くは、正確にはIBM iです。
現場では、いまもAS/400やAS400という呼び方が広く通じます。
この記事でも、文脈に応じて両方を使います。
なぜ今、話題になっているのか
背景には、3つの動きが重なっています。
- 2026年9月30日に、IBM i 7.3と7.4のサポートの区切りが重なる(第4章)
- RPG・COBOL(AS/400で使われてきた開発言語)を扱える技術者の高齢化
- DX(デジタル技術による業務と経営の変革)やクラウド移行の機運
「自社のAS/400を、これからどうするか」。
この問いに向き合い始める会社が増えているのは、そのためです。
AS/400が長く使われてきた理由
AS/400は、登場から30年以上、企業の基幹業務で使われてきました。
情報システムの世界では、珍しい長さです。
理由は主に4つあります。
| 特徴 | 中身 | 企業にとっての意味 |
|---|---|---|
| 止まりにくい設計 | OS・データベース・ミドルウェアを一体で設計。障害が起きても業務を続ける仕組みをOSに組み込んでいる | 「動き続けている」こと自体が価値になってきた |
| 単一レベル記憶 | メモリとディスクを1つの記憶の空間として扱う | プログラムが記憶の場所を意識せずに済み、速さと安定を支える |
| TIMI | ハードウェアとプログラムの間に挟む中間の層 | サーバーの世代が替わっても、プログラムを作り直さずに動かせる |
| Db2 for i | OSと一体になったデータベース | 別のデータベース製品が要らず、運用の手間が少ない |
TIMI(Technology Independent Machine Interface)は、CPUが変わってもプログラムをそのまま動かすための仕組みです。
20年以上前のRPGのプログラムが、いまのPower10のサーバーで動く例も珍しくありません。
単一レベル記憶(Single Level Storage)も、少し補足します。
通常のシステムは、メモリとディスクを別の領域として扱います。
プログラムは、データがどちらにあるかを意識して動きを切り替えます。
AS/400は両方を1つの仮想の記憶の空間として扱うため、その切り替えが要りません。
こうして、AS/400は「30年動き続ける基幹システム」と評価されてきました。
裏を返すと、長く動き続けたからこそ中身を知る人が減っている。
これが、いまの課題の出発点です。
IBM iの主な機能|「古いシステム」とは限らない
IBM iは、古いシステムと見られがちです。
実際には、現代的な機能も強化され続けています。
| 領域 | できること | AIとの親和性 |
|---|---|---|
| 開発言語 | RPG(いまはフリーフォーマットの書き方に対応)、COBOLに加え、Java・Python・Node.js・PHP・Ruby・Perl | 中。新しい言語でAI関連の処理を書けるが、既存のRPG資産との橋渡しが要る |
| データベース | Db2 for iにSQLでアクセスできる。既存の物理ファイルとSQLのテーブルを混在できる | 中。SQLで取り出せるため、分析やAIに渡す入口は作れる |
| 外との接続 | Web API(REST・SOAP)、ODBC・JDBC、CSV・XML・JSONのファイル、MQ(メッセージの受け渡し) | 中〜高。つなぐ仕組みはそろう。ただし、つなぐ開発は自社か外部で要る |
| セキュリティ | オブジェクト単位のアクセスの制御、監査のログ、暗号化、権限の一元管理 | ― |
AIとの親和性は、基幹システムのデータを、AIに読ませて点検や分析に使いやすいかどうかです。
既存のRPGの資産を生かしながら、新しい業務はJavaやPythonで作る。
IBM iを基幹として残し、手前に新しいWebの画面を作る。
どちらの構成も取れます。
ただし、セキュリティの機能が生きるのは、サポート対象のバージョンを使っている場合です。
サポートが切れたバージョンでは、新しい脆弱性への対応を受けられません。
「AS/400のサポート終了」の正確な意味
プラットフォーム全体が終わるわけではない
AS/400(IBM i)というプラットフォーム自体は、終わりません。
IBMはIBM iの長期のロードマップを公開しています。
2025年4月には、最新版のIBM i 7.6の提供が始まりました。
「AS/400がなくなる」という話は、25年前の製品名の終了と、いまのバージョン別のサポートが混ざったものです。
かといって、「まだ続くから心配ない」とも言えません。
プラットフォームが続くことと、自社のバージョンやサーバーを使い続けられることは、別の話です。
期限はバージョンごと
IBMのサポートには、2つの段階があります。
- 標準サポート:通常の保守契約の範囲で受けるサポート
- 延長サポート(Service Extension):標準サポートの後に、有償で受けるサポート
2026年9月30日は、2つのバージョンで区切りが重なる日です。
| バージョン | 標準サポート | 延長サポート(有償) |
|---|---|---|
| IBM i 7.3 | 2023年9月30日で終了 | 2023年10月1日〜2026年9月30日。その先の延長は2026年10月1日〜2028年9月30日 |
| IBM i 7.4 | 2026年9月30日まで | 2026年10月1日〜2029年9月30日 |
| IBM i 7.5 | 継続中(終了日は未定) | 未定 |
| IBM i 7.6 | 継続中(終了日は未定) | 未定 |
出典:IBM公式「Release life cycle」(2026年3月3日更新、2026年9月確認)
7.5と7.6の終了日は、少なくとも12か月前に告知されるとIBMは案内しています(出典:同上)。
期限は変わることもあるため、最新の情報はIBM公式サイトで確かめてください。
表から読めることは3つです。
- 7.3を使う会社は、すでに有償の延長サポートでしか支援を受けられない
- 7.4も、2026年10月1日からは延長サポートの期間に入る
- 標準サポートの範囲で使い続けるなら、7.5以降が対象になる
延長サポートで受けられる範囲と費用は、契約先に問い合わせます。
サーバーの保守期限も並べて見る
見落とされがちなのが、IBM iを動かすサーバー(Power Systems)の保守です。
OSのサポートが続いていても、サーバーの保守が先に切れていることがあります。
| サーバーの世代 | IBMの保守 | 動かせるIBM iの目安 |
|---|---|---|
| Power7 | 機種ごとにIBMで確認(標準の保守を終えた機種がある) | 7.5・7.6は動かない |
| Power8 | 2024年3月〜10月に全モデルで終了 | 7.5・7.6は動かない |
| Power9 | 機種ごとにIBMで確認 | 7.5まで(一部の機種)。7.6は動かない |
| Power10 | 機種ごとにIBMで確認 | 7.6まで(ファームウェアの条件あり) |
| Power11 | 機種ごとにIBMで確認 | 7.5・7.6 |
出典(いずれもIBM公式、2026年9月確認):
- Planning to upgrade to IBM i 7.5 (Hardware)
- Planning to upgrade to IBM i 7.6 (Hardware)
- IBM Power8 end of service
- Power7 Server (8492-DW2) の保守終了の案内(Power7の機種の例。2016年9月30日に終了)
Power7・Power8で7.3を動かしているなら、第三者の保守や中古の部品に頼っているかもしれません。
OSより先に、サーバーが寿命を迎える例は多く見られます。
今後の4つの選択肢
AS/400の今後の選択肢は、大きく4つです。
| 選択肢 | 中身 | 合う条件 | 残る課題 |
|---|---|---|---|
| ① 使い続ける(上げる) | IBM iを7.5以降へ上げる | 安定して動いており、中身を分かる人を今後も確保できる | 人の確保は続く課題。サーバーの入れ替えを伴うことがある |
| ② 延長する | いまのバージョンのまま、有償の延長サポートを使う | あと数年で方針を決め、その準備の時間がほしい | 毎年の費用。7.3は2028年9月30日、7.4は2029年9月30日が最終日 |
| ③ 残して周りを新しくする(モダナイズ) | IBM iを基幹に残し、画面・分析・周辺の業務をクラウドやAPIで新しくする | 基幹の処理は安定しているが、見え方や連携に不満がある | IBM iの人と保守の問題は残る |
| ④ 移行する | クラウドERP・国産ERP・Odoo・スクラッチ開発などへ移る | 人やサーバーの期限が近い。事業の広がりに仕組みが合わない | 業務の見直しと、移行の期間の負担 |
モダナイズとは、いまのシステムの資産を生かしながら、使い方や周りの仕組みを新しくすることです。
考え方は、モダナイゼーションとは?で扱っています。
①使い続ける場合は、段数とサーバーを見る
7.3から最新の7.6へは、直接には上げられません。
7.6へ上げられるのは、7.4と7.5からです(出典:IBM公式「Upgrade IBM i Operating System to 7.6」、2026年9月確認)。
しかも7.6は、Power10以降のサーバーでしか動きません。
7.4は2026年9月30日で標準サポートを終えます。
上げる先は、7.5以降を目安に考えるのが現実的です。
上げる前に、次の3点を押さえておくと手戻りが減ります。
- いまのサーバーで動くか:7.5はPower9以降、7.6はPower10以降が前提
- 何段で上げるか:7.3からは、7.4か7.5を経る段取りになる
- 周りのソフト:IBM i上で動く他社ソフトや、つないでいるシステムが対応しているか
上げる作業は、一度では終わりません。
7.5や7.6にも、いずれ標準サポートの終わりが来ます。
数年ごとに上げ続ける前提で、人と費用を見込んでおきます。
上げる段取りを図にすると、次のとおりです。
③残して周りを新しくする場合の形
IBM iを基幹として残す場合も、周りの形はいくつかあります。
- 手前の画面を、Webやスマートフォン向けに作り直す
- データをAPIやファイルで外に出し、分析の仕組みやAIに渡す
- 子会社や海外の拠点だけ別のクラウドERPで動かし、本社の基幹とつなぐ
3つ目は2層ERP(本社と子会社で別のERPを使い分ける形)と呼ばれます。
詳しくは2層ERP(Two-Tier ERP)とは?をご覧ください。
④移行する場合の方向性
移行先は、大きく4つの方向に分かれます。
比べる軸は優劣ではなく、合う条件です。
| 方向性 | 長所 | 注意点 | 合いやすい会社 |
|---|---|---|---|
| クラウドERP(NetSuite、SAP S/4HANA Cloud、Microsoft Dynamics 365など) | サーバーの保守が要らない。機能が自動で更新される。拠点や会社が増えても広げやすい | 業務の流れを標準に寄せる見直しが要る | サーバーを運用する人を確保しにくい。拠点や事業を広げたい |
| オンプレミス型の国産ERP(GLOVIA、OBIC7など) | 日本の商習慣に合わせた機能がそろう。自社の環境で柔軟に運用できる | サーバーの保守は自社に残る | 国内中心で、自社でサーバーを持つ体制がある |
| Odoo | 必要なアプリから小さく始められる。自社で手を入れやすい | 拡張を支える体制が、社内か外部に要る | 費用を抑えて段階的に広げたい |
| AIを使ったスクラッチ開発 | 独自の業務の強みをそのまま形にできる | 作った後の保守を誰が担うかを決めておく | 業務の独自性が競争力の源になっている |
中堅・中小企業では、サーバーの運用を続ける人を確保しにくいことから、クラウドERPが候補に入りやすくなります。
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
ただ、クラウドERPに移れば全部が片づくわけではありません。
業務を見直さずに移すと、新しいシステムでも非効率をそのまま引き継ぎます。
移行の費用と期間を左右する4つの要因
移行先がどれでも、費用と期間の大半は導入の中身で決まります。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの支援の経験では、差を生む要因は4つです。
- 機能範囲:販売・在庫・会計など、どこまでを新しい仕組みに載せるか
- 開発:とくに、残す周辺システムや外部サービスとの連携の数
- 社内の体制:情報システムの担当が少ないと、支援を厚くする分、期間も延びやすい
- ユーザー数:受入テストと教育の工数、社内調整の時間
AS/400の場合、30年分のRPGのプログラムと周辺システムとの連携が、2つ目の「開発」の重さに直結します。
検討から本番稼働までは、規模によって1年〜3年ほどかかります。
判断の物差し|どの選択肢が合うか
使い続ける(①②③)が合いやすい会社
- IBM i上の業務システムが、安定して動いている
- RPG・COBOLの技術者が社内にいるか、外部で安定して確保できる
- サーバーがPower9以降で、保守の期限に余裕がある
- 業務上、AS/400の速い応答や止まりにくさが欠かせない
- この先数年、事業やシステムの方向を大きく変える予定がない
移行(④)を考えたい会社
- 中身を分かる技術者が退職予定で、後任が見つからない
- 外部の保守の委託先が、事業の縮小や撤退を伝えてきた
- 海外の拠点や子会社が増え、複数の通貨・言語・税制への対応が要る
- 経営陣から「複数のシステムのデータをまとめて見たい」という声が強い
- M&Aで、複数の基幹システムを短い期間でまとめる必要がある
使い続けることに伴う4つのリスク
使い続けるのが合う会社でも、長い目で見ると避けにくいリスクがあります。
| リスク | 起きること | 早めにできる手当て |
|---|---|---|
| 1. 技術者の確保 | RPG・COBOLを扱える技術者の高齢化が進み、若手の参入は限られる | 引き継ぎの計画、外部の支援先の確保 |
| 2. サーバーの保守 | OSのサポートより先に、サーバーの保守が切れる。第三者の保守や中古の部品に頼ると、障害のときの復旧に時間がかかる | サーバーの世代と保守の期限の一覧化 |
| 3. 新しい技術とのつなぎ | クラウドやAIと深く組み合わせるには、つなぐ開発が要る | データを外に出す入口を先に作る |
| 4. 監査と内部統制 | サポートが切れたバージョンを使うと、セキュリティの監査で指摘を受けることがある | 延長サポートの契約と、上げる計画を文書にしておく |
多くのリスクは、毎年少しずつ大きくなります。
外部の委託先の撤退のように、ある日突然伝えられるものもあります。
見直しのきっかけになりやすい場面
- 経営層の危機感:古い基幹システムを使い続けるリスク(担い手の不足・保守の終了・データを生かせないこと)を、経営層が本気で意識し始めたとき
- 2027年問題:SAPのERP(SAP Business Suite 7)の標準保守が2027年末に終わる問題(出典:SAP公式、2026年9月確認)。社内のほかのシステムも含めた見直しの話が出たとき(SAP 2027年問題の解決策)
- M&Aでの統合:AS/400を軸にまとめるか、別のシステムに移すかの判断が要るとき
- 経営のデータの要望:「今月の数字をすぐに見たい」という声が強くなったとき
AS/400にたまったデータは、資産です。
ただ、外のツールとつないで分析するには、開発の手間がかかります。
データの統合と分析を前提に作られたクラウドERPのほうが、この要望には応えやすい場合があります。
読者の二つの立場
担当を引き継いだばかりで、これから方針を決める会社
最初にやることは、製品を調べることではありません。
自社のAS/400の「いま」を、次の順で集めます。
| 順番 | 調べること | 聞く相手 |
|---|---|---|
| 1 | IBM iのバージョンと、サーバーの世代 | 情報システムの担当、保守の委託先 |
| 2 | 保守と延長サポートの契約の中身と期限 | 契約書、保守の委託先 |
| 3 | 中身を分かる人と、その人の今後 | 担当者本人、人事、委託先 |
| 4 | 現場が困っていること、経営が求めていること | 現場の責任者、経営陣 |
この4つがそろえば、第9章の考え方でそのまま道を絞れます。
7.3・7.4で、延長サポートの期間に入る会社
延長の期間は、考えるための時間です。
次の3点を、書面と日付で押さえます。
- 延長の中身:受けられる範囲と、年ごとの費用
- 最終日からの逆算:7.3は2028年9月30日、7.4は2029年9月30日までに、次の手を打てるか
- 上げる道:7.5以降へ上げるなら、サーバーの入れ替えが要るか
最終日から1年〜3年の移行期間を引くと、決める時期は思ったより手前に来ます。
更新か乗り換えかの考え方は、基幹システムは「更新」か「乗り換え」かでも扱っています。
よくある3つの失敗
3つの失敗と避け方を並べると、次のとおりです。
失敗1:「2026年で終わる」と聞いて、慌てて移行を決める
起きること:期限に追われて、移行先の比較や業務の棚卸しを省く。移行の後に、業務に合わない部分が次々に見つかる。
原因:バージョンごとの期限と、プラットフォームの終了を取り違えた。
避け方:まず自社のバージョンとサーバーの期限を調べます。
延長サポートで時間を取れるなら、その時間で比較と棚卸しを進めます。
失敗2:「使い続ける」と決めて、何もしない
起きること:数年後、技術者の退職と委託先の撤退が重なる。上げることも移ることも難しい状態で、次の手を探すことになる。
原因:「使い続ける」を「何もしない」と同じ意味で扱った。
避け方:使い続ける場合も、計画を立てて手を入れ続けます。
- IBM iのバージョンを計画的に上げる
- 技術者の引き継ぎの計画を立てる(外部の支援先の活用を含む)
- 基幹の外側から、段階的にクラウドとの連携を進める
- 5年〜10年の見通しを、経営と情報システムの担当で共有しておく
失敗3:OSの期限だけを見て、サーバーと人を見ない
起きること:OSのサポートは続いているのに、サーバーの故障で部品が手に入らない。あるいは、中身を分かる人が先にいなくなる。
原因:期限を「IBM iのバージョン」だけで考えていた。
避け方:バージョン・サーバー・人の3つの期限を並べ、いちばん早いものを基準にします。
人の問題は、技術の期限より先に表に出ることが多くあります。
保守切れ全般のリスクは、基幹システムの保守切れリスクとは?で扱っています。
ベンチャーネットならこう見る|3つの期限から、移す・残す・周りを新しくするを決める
「RPGのプログラムは、全部そのまま移すしかない」
AS/400の相談では、こうした前提から話が始まることがよくあります。
ベンチャーネットは、移行ありきで話を始めません。
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
使い続けるほうが合うと判断すれば、そのままお伝えします。
型1:3つの期限のうち、いちばん早いものから道を絞る
最初に、バージョン・サーバー・人の期限を1枚に並べます。
いちばん早い期限と、いま困っていることの組み合わせで、候補はかなり絞れます。
- バージョンの期限だけが近い:人とサーバーに余裕があるなら、①上げるか、②延長して考える時間を取る
- 困りごとは見え方や連携:基幹の処理が安定しているなら、③残して周りを新しくする
- 人かサーバーの期限が先に来る:④移行を本命として比べ始める
型2:見える化→整理整頓→Fit&Gap、そして「標準に合わせる/開発する/残す」
④を選ぶ場合も、③を選ぶ場合も、いきなりプログラムの一覧を要件にはしません。
一覧には、もう使っていない帳票や、手作業で補っている業務が混ざっているからです。
- 業務の見える化:いまの業務の流れを、現場に聞いて描く
- 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
- Fit&Gap:残った業務を、移る先の標準機能と照らし合わせる
合わなかった業務は、標準に合わせる・開発する・残すのどれかに決めます。
「残す」には、IBM iに残して周りだけ新しくする③の道も含まれます。
Fit&Gapは、業務と機能の合う・合わないを一つずつ見る作業のことです(Fit&Gap分析)。
変わることは、先に伝える
ERPが変われば、帳票の形、締め処理の考え方、画面の操作感も変わります。
長くAS/400の画面に慣れた現場ほど、操作感の違いは大きく感じられます。
NetSuiteへ移る場合、給与・人事は対象外で、別の仕組みが要ります。
ベンチャーネットは、こうした点を見積もりの前にお伝えします。
ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎや、他システムとの連携が多くを占めます。
AS/400を残す周辺とのつなぎも、その延長にあります。
要件を伺うのは、営業ではなく導入コンサルタントです。
最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。
- 3つの期限のうち、いちばん早いのはどれか
- いまの仕組みで、現場と経営がそれぞれ困っていることは何か
- 延長するなら、その期間の終わりに何を決めるか
今日できること|1時間でつくる「3つの期限」の表
次の表を、社内の情報で埋めてみてください。
| 期限の種類 | 自社の状況 | 期限・見通し | 聞く先 |
|---|---|---|---|
| IBM iのバージョン | (例)7.4 | (例)標準サポートは2026年9月30日まで | 情報システムの担当、保守の委託先 |
| サーバー | (例)Power9 | 保守の期限 | 保守の委託先 |
| 人 | 中身を分かる人の名前 | 退職の予定、委託先の体制 | 人事、委託先 |
いちばん早い期限に、印をつけます。
その期限から逆算して、第5章の①〜④のうち取れる道を残してみてください。
よくある質問
Q1. AS/400とIBM iは同じものですか
同じ系統のプラットフォームでいまの名前がIBM iです。
「AS/400」は1988年〜2000年の製品名です。
その後「eServer iSeries」「System i」と変わり、いまは「IBM i」として続いています。
現場では、いまもAS/400という呼び方が広く通じます。
Q2. AS/400は2026年でサポート終了するのですか
プラットフォームは続きます。区切りがあるのは、バージョンごとのサポートです。
IBM i 7.3の延長サポートの1つ目の期間は2026年9月30日まで、その先の延長は2028年9月30日までです。
IBM i 7.4の標準サポートは2026年9月30日まで、延長サポートは2029年9月30日までです。
7.5と7.6は、標準サポートが続いています(第4章)。
Q3. AS/400を使い続けるのは危険ですか
バージョン・サーバー・人の組み合わせで変わります。
たとえば7.5をPower9で動かし、社内に技術者がいるなら、当面は大きな問題になりにくい状況です。
一方、7.3をPower7・Power8で動かし、技術者の引退も近いなら、早めに手を打つ必要があります。
Q4. IBM iを残したまま、新しくする方法はありますか
画面・分析・周辺の業務だけを新しくする方法があります。
IBM iは、Web APIやSQLなど、外とつなぐ仕組みを備えています。
基幹を残し、手前の画面やデータの活用を新しくする形を取れます(第5章5-2)。
Q5. 移行する場合、移行先はどう選べばよいですか
自社の業務・経営の方向・体制に合うかで選びます。優劣では比べません。
候補は、クラウドERP、国産ERP、Odoo、AIを使ったスクラッチ開発などです。
比べ方と移行の段取りは、AS400リプレイスのポイントで扱っています。
Q6. AS/400を扱える人が社内にいません。どうすればよいですか
社内で育てる・外部に任せる・移行するの3つが現実的な選択肢です。
短い期間は外部に任せ、その間に移行を考える会社も多く見られます。
人の期限がいちばん早いなら、第9章の型1では④を本命として比べる段階です。
Q7. 延長サポートの費用はどのくらいですか
契約の内容で変わるため契約先に問い合わせてください。
延長サポートは、標準サポートとは別の有償の契約です。
範囲と費用を書面で受け取り、上げる費用や替える費用と同じ年数で比べることをおすすめします。
まとめ
- AS/400は、いまはIBM iとして続いているプラットフォーム
- 期限があるのはバージョンごと。7.4の標準サポートは2026年9月30日まで、7.3の延長サポートは2028年9月30日まで
- サーバーの世代も見る。7.6はPower10以降、7.5はPower9以降
- 選択肢は、使い続ける・延長する・残して周りを新しくする・移行するの4つ
- バージョン・サーバー・人の3つの期限のうち、いちばん早いものから道を絞る
- 移すと決めても、見える化から始め「標準に合わせる/開発する/残す」に分ける
「2026年で終わる」と聞いたら、まず3つの期限の表を埋めてください。
いちばん早い期限が分かれば、急ぐべきかどうかも、どの道を比べるかも見えてきます。
もう少し詳しく知りたい方へ
「使い続けるか、移るか」を決める前の整理から、ご相談をお受けしています。
すぐに移行を決める必要はありません。情報交換から始めることも歓迎します。

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