SAP Business One・ByDesign と NetSuite を徹底比較【2026年版】─ 選び方と移行の論点を解説

「Business Oneのままでいいのか。NetSuiteに替えるべきか」

B1を使う会社からも、これからERPを選ぶ会社からも、よく出る問いです。

SAP Business Oneとは、SAPが小規模企業と中堅の下位層向けに提供しているERPです。

NetSuiteは、Oracleが提供するクラウド専用のERPです。

ERPは、会計・販売・在庫・購買などの基幹業務を、一つのシステムで管理する仕組みを指します。

どちらが上か、という答えはありません。

分かれ目は、次の3つです。

  • オンプレミスで持ちたい、1ユーザーから小さく始めたいなら、Business One
  • 会計から販売・在庫・ECまでクラウドで一つにしたい、海外の子会社を持つなら、NetSuite
  • SAPの大きな製品群へ広げる見込みがあるなら、SAPのGROW with SAPも候補

SAP Business ByDesignを使う会社は、今後の提供方針と保守の期限をSAPに聞くことが先です。

では、いまB1を使っている会社は、何を合図に「替える」を考えればよいのか。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、SAPの導入は行っていません。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応する立場から、SAPの長所もそのまま書きます。

SAP全般(S/4HANAなど)とNetSuiteの比較は、SAPとNetSuiteを徹底比較をご覧ください。

目次

この記事で分かること

  • Business One・ByDesign・NetSuiteの基本と、得意な領域の違い
  • AIとの親和性を含む、3製品の比較表
  • どの製品が合う会社かを決める3つの問い
  • Business One・ByDesignを使っている会社の、残す・広げる・替えるの考え方
  • アドオンを仕分ける2つの型と、移行でよく起きる失敗

SAP Business One・ByDesignとは

SAPは、ドイツに本社を置く世界的なソフトウェア企業です。

中堅・中小企業向けには、Business OneとBusiness ByDesignの2製品を提供してきました。

会社と製品の全体像は、SAPとはで扱っています。

SAP Business One

SAP Business One(以下、B1)は、2002年に提供が始まった、小さな会社向けのERPです。

20年以上の歴史があります。

項目中身
対象小規模企業と中堅の下位層。1ユーザーから始められる
提供の形オンプレミスとクラウドの両方を選べる
利用83,000社以上・170か国以上
言語・国別の対応28言語・50の国別の対応
主な機能会計・販売・購買・在庫・顧客管理(CRM)

利用・言語などの数値は、SAPの発表によります(出典:SAP News Center、2025年12月、2026年9月確認)。

オンプレミスは、自社にサーバーを置いてシステムを動かす形です。

業種別の追加の機能(アドオン)が多く、日本の製造業の商習慣に合わせた拡張もあります。

「オンプレミスも選べる柔軟さ」と「導入の費用を抑えやすいこと」が、B1の伝統的な強みです。

SAP Business ByDesign

SAP Business ByDesign(以下、ByDesign)は、2007年に提供が始まったクラウド型のERPです。

中堅企業や、大企業の海外子会社向けに作られました。

項目中身
対象中堅企業、大企業の子会社
提供の形クラウド(SaaS)のみ
主な機能財務会計・販売・人事・プロジェクト管理
今後の扱い提供方針と保守の期限は、SAPまたは販売パートナーに確認

SaaSは、ソフトをインターネット経由のサービスとして使う形です。

本社にSAP S/4HANA、海外子会社にByDesignという「2層ERP」の構成も見られました。

プロジェクト型の事業や人事の管理に強みがあり、コンサルティング業界での採用が多くありました。

NetSuiteとは

NetSuiteは、クラウド専用に作られたERPです。

1998年に米国で設立され、2016年にOracleに買収されました。

項目中身
対象中堅・中小企業
提供の形クラウド(SaaS)。全顧客が同じ基盤を共有する形
利用世界220地域・44,000社以上
言語・通貨27言語・190通貨
主な機能会計・販売・在庫・購買・生産・CRM・EC・分析

利用の数値は、Oracle NetSuite公式サイトによります(2026年9月時点)。

NetSuiteは自らを「#1 AI Cloud ERP」と位置づけています。

全顧客が同じ基盤を使うため、バージョンアップは自動で届きます。

販売・在庫・購買・会計が一つにつながり、部門ごとに別のシステムを使う状態から抜け出せます。

SuiteSuccessは、業種ごとの標準の設定と手順をまとめた、NetSuiteの導入の型です(NetSuite SuiteSuccessとは)。

OneWorldは、複数の会社・通貨・国の制度をまとめて扱う機能です(NetSuiteのグローバル展開機能)。

基本はNetSuiteとはで解説しています。

3製品の基本の比較

比較の軸SAP Business OneSAP Business ByDesignNetSuite
提供の形オンプレミス+クラウドクラウド(SaaS)クラウド(SaaS)
主な対象小規模企業と中堅の下位層中堅企業、大企業の子会社中堅・中小企業
海外対応170か国以上・28言語海外子会社での利用の実績220地域・27言語・190通貨
利用83,000社以上―44,000社以上
提供開始2002年2007年1998年(設立)
強みの出やすい業務会計・販売・在庫・購買プロジェクト・人事会計から販売・在庫・ECまでの一気通貫

3製品とも、世界中で導入の実績があるERPです。

違いは、主な対象の規模と、提供の形に出ます。

得意な領域の比較

機能の有無で並べると、3製品とも多くの業務を「できる」と書けてしまいます。

そこで、それぞれが得意とされてきた領域で書き分けます。

業務の領域SAP Business OneSAP Business ByDesignNetSuite
会計・販売・在庫・購買中核の機能。業種別のアドオンが多い標準で持つ中核の機能。一つの基盤でつながる
生産標準の機能に加え、アドオンで補うことが多い標準で持つ標準で持つ。複雑な生産は要件の確認が要る
プロジェクト・人事アドオンで補う得意な領域プロジェクトは標準で持つ。人事は日本の要件の確認が要る
EC・顧客管理外部の仕組みとつなぐことが多い外部の仕組みとつなぐことが多い同じ基盤の上で持てる
海外の子会社各拠点に入れて、つなぐ形が多い2層ERPの子会社側として使われてきたOneWorldで複数の会社をまとめて持つ

どの製品も、得意でない領域はアドオンや別の製品とつないで補えます。

比べるときは「できるか」ではなく、「標準で済む範囲がどこまでか」を見ます。

見極め方は、Fit&Gap分析で解説しています。

それぞれの長所と、選ぶ前に聞いておきたい点

製品長所選ぶ前に聞いておきたい点
SAP Business Oneオンプレミスも選べる。業種別のアドオンが多い。1ユーザーから小さく始められる会社の数や拠点が増えたとき、どこまで一つで持てるか。アドオンの保守を誰が担うか
SAP Business ByDesignクラウドで、プロジェクト・人事までまとめて持てる今後の提供方針と保守の期限
NetSuite会計から販売・在庫・ECまで一つの基盤。複数の会社・通貨をまとめて持てる日本の商習慣に合わせた帳票や、複雑な生産の要件が標準で足りるか。費用の構成

B1の「小さく始められる」ことは、小さな会社にとって大きな利点です。

NetSuiteの「一つの基盤」は、会社の数や拠点が増えるほど効いてきます。

どちらが自社に効くかは、3年後の姿で変わります。

2つの製品の長所が効く場面を図にすると、次のとおりです。

B1とNetSuite、長所が効く場面 B1はオンプレミスも選べ、業種別のアドオンが多く、1ユーザーから小さく始められるため、小さな会社ほど効く。NetSuiteは会計から販売・在庫・ECまで一つの基盤で、複数の会社・通貨をまとめて持てるため、会社や拠点が増えるほど効く。どちらが効くかは3年後の姿で変わる。 長所が効く場面 SAP Business One ・オンプレミスも選べる ・業種別のアドオンが多い ・1ユーザーから小さく始められる → 小さな会社ほど効く 聞いておく点:会社や拠点が増えたとき、 どこまで一つで持てるか NetSuite ・会計から販売・在庫・ECまで ・一つの基盤でつながる ・複数の会社・通貨をまとめて持てる → 会社や拠点が増えるほど効く 聞いておく点:日本の帳票や複雑な 生産の要件が、標準で足りるか どちらが効くかは、3年後の姿で変わる
B1とNetSuite、長所が効く場面

AIとの親和性

ERPの役割は、「記録する」から「データをAIで使う」へ広がっています。

AIの取り入れ方SAP Business OneSAP Business ByDesignNetSuite
組込型のAI予測などの機能を段階的に広げてきた機械学習・RPAの一部組込型のAI機能を持つ
外部のAIとのつなぎ方SAP BTPを通じて作るSAP BTPを通じて作るAI Connector Service(MCP対応)
データのまとまりアドオンや外部の仕組みに散らばりやすい既存ユーザーの範囲一つの基盤に集まりやすい

SAP BTP(Business Technology Platform)は、SAPの製品とつなぐ仕組みを作るための開発・連携の基盤です。

MCPは、生成AIと業務システムをつなぐための共通の約束事です。

NetSuiteは、ChatGPTやClaudeなど、自社で使うAIをつなぐ形を取っています。

詳しくはNetSuite AI Connector Service(MCP)とはで解説しています。

ただし、NetSuiteの一部の新しいAI機能(NetSuite Nextなど)は、現時点で日本では提供されていません。

AIの機能の差より先に効くのは、データが一つの場所にそろっているかです。

判断の物差し|3つの問いで候補を絞る

「どれが優れているか」ではなく、「どんな条件の会社に合うか」で見ます。

これからERPを選ぶ会社は、次の3つの問いに答えるところから始めてください。

  1. オンプレミスが要るか:要るならB1が候補に残る
  2. 3年後に会社の数や海外の拠点が増えるか:増えるなら、複数の会社・通貨をまとめる力を重く見る
  3. SAPの大きな製品群へ広げる見込みがあるか:あるならGROW with SAPも比べる
候補を絞る3つの問い オンプレミスが要るならB1、3年後に会社や海外拠点が増えるならNetSuiteの力を重く見る、SAPの大きな製品群へ広げるならGROW with SAPも比べる。 候補を絞る3つの問い 問い1 オンプレミスが要るか 要る → B1が候補に残る 問い2 3年後に会社や海外の 拠点が増えるか 増える → まとめる力を重く見る 問い3 SAPの大きな製品群へ 広げる見込みがあるか ある → GROW with SAPも比べる
候補を絞る3つの問い

3つに答えると、合いやすい製品は次のように分かれます。

合いやすい製品合いやすい会社の条件
SAP Business One小規模〜中堅の下位層。オンプレミスで持ちたい。業種に合うアドオンと、付き合いのあるB1のパートナーがいる
SAPのGROW with SAPSAPの製品で、クラウドの標準の型に合わせて始めたい。将来、大きなSAPの製品群へ広げる見込みがある
NetSuite中堅・中小企業で、会計から販売・在庫・ECまでクラウドで一つにしたい。海外子会社を持つ、これから持つ
ByDesign既存ユーザーは第7章の考え方で判断する。新しく選ぶなら、提供方針をSAPに聞く

GROW with SAPは、SAPの説明では中堅中小企業を含む新規の顧客向けです。

S/4HANA Cloud Public Editionを基盤に、必要な機能から始めて広げる形です(出典:SAP公式、2026年9月確認)。

3製品のどれでもない方が合う場合

  • 国産ERP:日本の商習慣に合わせた帳票や、業界に特化した機能を最優先したい
  • Odoo:費用を抑え、必要なアプリから小さく始めたい(OdooとNetSuiteを徹底比較)
  • AIスクラッチ開発:業務が独特で、パッケージに合わせる利点が小さい(AIでスクラッチ開発とERP、どちらを選ぶべきか)
  • いまは入れない:会計ソフトと表計算で回っていて、困りごとがはっきりしない

ERP全般の選び方はERP・クラウドERPを徹底比較、製造業の方は製造業向けERP15選も参考にしてください。

これから選ぶ会社と、いまB1・ByDesignを使っている会社

これからERPを選ぶ会社|デモは自社の取引で

第6章の3つの問いで、B1・NetSuite・GROW・国産ERPから2〜3つに絞ります。

そのうえで、自社の実際の取引を1件、画面の上で最後まで流してもらいます。

場面見るところ
受注から請求まで入力の回数と、途中で表計算を使う場面がないか
月の締め締めの作業の順番と、経営の数字が出るまでの手順
在庫の確認拠点ごと・品目ごとの在庫が、その場で見えるか
帳票自社で使う請求書や納品書の形が出せるか
権限部門ごとに見せる範囲を分けられるか

デモは、売り手が得意な場面から見せがちです。

自社の側から場面を指定すると、製品の差が見えてきます。

いまBusiness Oneを使っている会社

B1は新規販売も続いている製品です。

「期限に追われて替える」状況ではありません。

道中身合いやすい会社
残すB1を使い続け、周りの仕組みを整える規模が大きく変わらず、今の運用で困っていない
SAPの中で広げるGROW with SAPなど、SAPのクラウドの製品へ移るSAPの製品で統一したい。パートナーの体制がある
替えるNetSuiteなど、別の製品へ移る海外の子会社が増えた。アドオンと外部の仕組みが増え、データが散らばった

替えるかどうかの合図になりやすいのは、次のような変化です。

  • 会社の数や海外の拠点が増え、連結の作業が表計算に頼っている
  • アドオンが増え、バージョンアップのたびに確認の手間がかかる
  • ECや顧客管理が別の仕組みにあり、数字をつなぐ作業が毎月発生している

いまByDesignを使っている会社

まず、今後の提供方針と保守の期限を、SAPまたは販売パートナーに聞きます。

期限が分かれば、使い続ける期間と、次の製品を決める時期を逆算できます。

慌てて替えるより、期限から計画を立てるほうが失敗は少なくなります。

道中身気をつける点
使い続ける保守の続く範囲で、いまのByDesignを使う保守の期限と、新しい機能の予定を先に聞く
SAPの中で移るSAPのクラウドERP(S/4HANA Cloud Public Editionなど)へ移るSAPの示す移行の道筋と、パートナーの体制
別の製品へ替えるNetSuiteなど、規模に合う製品へ移るデータ移行と業務の見直しが要る

大企業の子会社でByDesignを使っている場合は、本社の方針も関わります。

本社の基幹システムを残したまま子会社を束ねる考え方は、2層ERPとはで解説しています。

SAPの中に残る道を選ぶ場合は、SAPの認定パートナーに相談してください。

替えるかどうかを決めるチェック表

B1・ByDesignを使う会社は、次の項目に「はい」がいくつあるかを数えてみてください。

項目はい/いいえ
3年以内に、会社の数か海外の拠点が増える予定がある
連結や会社間の取引の処理を、表計算で行っている
アドオンの仕様を説明できる人が、社内にもパートナーにもいない
ECや顧客管理のデータを、毎月手作業でつないでいる
経営の数字が出るまでに、月の締めから10日以上かかる
いまのパートナーの支援の体制に、不安がある

「はい」が多いほど、替える道を比べる価値は大きくなります。

少なければ、使い続けながら設定や運用を見直すほうが合うことが多いです。

ByDesignの既存ユーザーは、これに「提供方針と保守の期限」を加えます。

SAP ERP(ECC 6.0)を使っている会社は別の論点

B1・ByDesignと、大企業向けのSAP ERP 6.0(ECC 6.0)は別の製品です。

いわゆる「2027年問題」は、ECC 6.0の保守の期限の話です。

SAPの保守方針では、ECC 6.0を含む製品群の標準の保守は2027年末まで、延長保守は2030年末までです(出典:SAP公式、2026年9月確認)。

期限ごとの選択肢は、SAP 2027年問題の解決策で詳しく扱っています。

移行するときの進め方

B1・ByDesignから別の製品へ移る期間は、規模とアドオンの量で大きく変わります。

データの移行と、新旧を並べて動かす期間を含むため、新規の導入より長くなりやすくなります。

要因期間が延びやすい状態
いまのアドオンの範囲独自の機能が多く、仕様を知る人がいない
データ移行の難しさ取引の履歴やマスタが整っていない
並行稼働新旧を長く並べて動かす
業務の見直しの度合い見直す範囲を途中で広げる

並行稼働は、切り替えの前に、新旧のシステムを同時に動かして結果を比べることです。

マスタは、取引先・品目・勘定科目など、取引のもとになる基本のデータです。

費用のほうは、どう動くのか。

ベンチャーネットがNetSuiteの導入を支援してきた中で、費用と期間を左右した要因は4つでした。

機能範囲、開発(特に外部システムとの連携)、社内の体制、ユーザー数です。

B1で積み上げたアドオンと外部とのつなぎは、このうち「開発」の重さに直結します。

情報システムの担当が少ない会社では、支援を厚くする分、期間も延びやすくなります。

期間を延ばす状態と、それを軽くする手を図にすると、次のとおりです。

移行の期間を延ばす4つの状態と、軽くする手 アドオンの仕様を知る人がいない、履歴やマスタが整っていない、新旧を長く並べて動かす、見直す範囲を途中で広げる、の4つで期間が延びやすい。使っていないアドオンを先に外す、古い履歴は参照用に残す、切り替えの判断の基準を決める、最初の1〜2か月で標準で済む範囲と作る範囲を分けることで軽くできる。 移行の期間を延ばす4つの状態 1 アドオンの仕様を知る人がいない → 使っていないアドオンを先に外す 2 履歴やマスタが整っていない → 古い履歴は、旧システムに  参照用に残す方法もある 3 新旧を長く並べて動かす → 切り替えの判断の基準を決める 4 見直す範囲を途中で広げる → 最初の1〜2か月で、標準で済む  範囲と作る範囲を分ける アドオンと外部とのつなぎは、 費用の面でも「開発」の重さに直結する
移行の期間を延ばす4つの状態と、軽くする手

移行の段取り

移る先がどの製品でも、段取りの骨格は変わりません。

段階やることこの段階で決めること
1. 見える化アドオン・帳票・外部とのつなぎと、今の業務の流れを洗い出すいま何があり、誰が使っているか
2. 整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決める移すもの、やめるもの
3. Fit&Gap・製品の比較同じ業務の流れで、2〜3製品の標準と照らす移る先の製品とパートナー
4. データの整備マスタと残高を整え、移すデータの期間を決める何年分の履歴を移すか
5. 並行稼働・切り替え新旧の結果を比べ、切り替えの日を決める切り替えの判断の基準
6. 定着研修と運用のルールを整える稼働後3〜6か月の体制

最初の1〜2か月で、標準で済む範囲と作る範囲を分けておくと、後の手戻りが減ります。

何年分の履歴を移すかも、費用と期間に大きく効きます。

古い履歴は移さず、旧システムのデータを参照用に残す方法もあります。

データ移行は基幹システムのデータ移行ガイド、全体の流れは基幹システムのリプレイスとはをご覧ください。

よくある失敗3つ

失敗1:いまの業務とアドオンを、そのまま再現しようとする

起きること:作り込みが増え、費用と期間がふくらむ。クラウドの自動のバージョンアップの利点も薄れる。

原因:「今と同じに」「うちは特殊だから」と、B1・ByDesignで作ったアドオンをすべて移そうとした。

避け方:実際のデータと現場への聞き取りを突き合わせ、使っていないアドオンを先に外します。

残ったものを「標準に合わせる・開発する・残す」に分けます(第10章)。

全部を一度に変える必要はなく、会計や販売から段階的に進める方法もあります。

失敗2:SAPの延長で考えてしまう

起きること:設計の途中で「前はできたのに」が続き、手戻りが増える。

原因:「同じERPだから、同じように動くはず」と考えた。

B1とNetSuiteでは、提供の形も、作り込みの方法も、バージョンアップの運用も違います。

避け方:移行の前に、製品の考え方の違いを押さえます。

最初の打ち合わせでは、いまの画面ではなく「業務の目的」から要件を書き出します。

失敗3:体制とパートナーを軽く見る

起きること:日本の税制やインボイス制度への対応、データ移行や切り替えの段取りで詰まる。

原因:費用を抑えるため、社内だけで進めようとした。

または、B1のパートナーと同じ役割を、新しいパートナーに期待した。

避け方:移行先の製品に詳しいパートナーと、役割を分けて進めます。

要件の整理から稼働後の運用まで、誰が何を担うかを先に決めます。

同じ失敗を繰り返さない進め方は、ERP導入はなぜ失敗するのかでも扱っています。

ベンチャーネットならこう見る|アドオンは2つの型で仕分ける

B1を長く使った会社ほど、アドオンの一覧は長くなります。

その一覧を、そのまま移る先の要件にしない。

ベンチャーネットは、ここから始めます。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap

  1. 業務の見える化:いまの業務の流れと、アドオンが使われている場面を現場に聞いて描く
  2. 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
  3. Fit&Gap:残った業務を、移る先の標準機能と照らし合わせる

移る先の製品が決まっていても、見える化からやり直します。

一覧には、もう使っていない帳票や、表計算で補っている業務が混ざっているからです。

型2:標準に合わせる/開発する/残す

Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。

  • 標準に合わせる:業務のほうを、移る先の標準機能に寄せる
  • 開発する:追加の開発や、外部の仕組みとの連携で補う
  • 残す:新しいERPには載せず、いまの仕組みや運用で続ける

「開発する」が増えるほど、第8章で見た費用と期間は重くなります。

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、NetSuite標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&GapNetSuiteの標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

図の3段目はNetSuiteを例にしていますが、GROW with SAPと比べる場合も順番は同じです。

2つの型で仕分けてから比べると、SAPの中の道と外の道を同じ土俵に並べられます。

最初の打ち合わせで伺う3つのこと

  1. いまの製品で困っていることは、製品の限界か、使い方や設定の問題か
  2. 3年後の会社の数・拠点・人数は、いまの製品の得意な範囲に収まるか
  3. いまのアドオンのうち、なくすと業務が止まるものはいくつあるか

使い方で解ける困りごとが多いなら、B1やByDesignを使い続けるほうが合います。

その場合は、SAPの認定パートナーへの相談をおすすめしています。

国産ERP・B1・NetSuiteのどれが優れているかではなく、それぞれに長所がある。

ベンチャーネットは、その前提で候補を並べます。

今日できること|アドオンの棚卸し表を作る

いまB1・ByDesignを使っている会社は、次の表を1時間で埋めてみてください。

アドオン・独自の機能使う部門・回数なくなると困ること標準の機能で代わりになるか
(例)独自の請求書の形式経理・月1回取引先ごとの形式が出せない要確認

月に1回も使わないものは、移行の対象から外せる候補です。

「なくなると困ること」が書けないものも、見直しの候補になります。

これから選ぶ会社は、自社の実際の取引を1件選び、受注から入金までの流れを書き出します。

その流れを、比べたい製品のデモで同じように流してもらいます。

よくある質問

Q1. SAP Business OneとNetSuiteはどう違うのですか

提供の形と得意な範囲が違います。

B1はオンプレミスとクラウドを選べ、小規模〜中堅の下位層が主な対象です。

NetSuiteはクラウド専用で、会計から販売・在庫・ECまでを一つの基盤で持ちます(第3章・第4章)。

Q2. ByDesignを使っています。この先どうすればよいですか

まず提供方針と保守の期限をSAPに聞きます。

期限が分かれば、慌てずに計画を立てられます。

選択肢は、使い続ける、SAPの中で移る、別の製品へ替える、の3つです。

どれが合うかは、規模・海外展開・本社の方針で変わります(第7章7-3)。

Q3. Business Oneは、この先も使い続けられますか

B1はいまも新しい顧客が増えている製品です。

SAPの発表では、2025年12月時点で83,000社以上に使われ、新しい顧客も増えています。

期限に追われて替える状況ではないため、困りごとと3年後の姿から判断します(第7章7-2)。

Q4. B1・ByDesignからNetSuiteへ移る期間はどのくらいですか

規模とアドオンの量で大きく変わります。

アドオンの範囲、データの整い方、並行稼働の有無、業務の見直しの度合いが期間を動かします。

具体的な期間は、範囲を決めたうえでパートナーの見積もりで出してもらいます。

最初に標準で済む範囲を決めておくと、手戻りが減ります(第8章)。

Q5. いまのSAPのパートナーとの関係はどうなりますか

移行の後も関係が続くことがあります。

たとえば、ほかのSAPの製品の保守を、いまのパートナーが続ける場合です。

本社はNetSuite、一部の子会社はB1のまま、という形では、両方のパートナーが役割を分けます。

Q6. NetSuiteの料金はSAPと比べてどうですか

提供の形とライセンスの体系が違うため単純には比べられません。

NetSuiteは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションの構成で変わり、数百万円規模になることもあります。

最終の金額はOracleの営業が提示します。

比べるときは、利用料・ライセンス、サーバーの費用、アドオンの保守、委託と社内の人件費をそろえます。

費用の考え方は、NetSuiteの料金・費用で詳しく扱っています。

Q7. 2027年問題は、B1やByDesignにも関係しますか

2027年問題は大企業向けのSAP ERP 6.0の保守の期限の話です。

B1・ByDesignとは別の製品です。

ECC 6.0をお使いの場合は、SAP 2027年問題の解決策をご覧ください(第7章7-5)。

まとめ

  • これから選ぶ候補はB1・NetSuite・GROW with SAPなど。ByDesignは提供方針をSAPに聞く
  • B1はオンプレミスも選べる小規模〜中堅の下位層向けの製品
  • NetSuiteは会計から販売・在庫・ECまでを一つにするクラウドERP
  • 候補はオンプレミス・3年後の拠点・SAPで広げるかの3つの問いで絞る
  • いま使っている会社は、困りごとが製品の限界か使い方の問題かを先に分ける
  • 替えるなら、アドオンを見える化→整理整頓→Fit&Gapで洗い、標準に合わせる・開発する・残すに分ける

「B1のままでいいのか」への答えは、7-4のチェック表の「はい」の数に出ます。

まずは表を埋め、3年後の自社の姿と並べてみてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

B1・ByDesignを使い続けるか、替えるか。これから選ぶなら、どの製品が合うか。

ベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場で、整理のお手伝いをしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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