1993年と1998年。
国産のProActiveと、クラウドのNetSuiteが生まれた年の差は、わずか5年です。
それでも、2つの製品が前提にしてきたものは大きく違います。
ProActiveとは、SCSKが1993年に国産初のERPパッケージとして発売した基幹システムです。
現在は「PROACTIVE」として提供されています。
NetSuiteとは、Oracleが提供する全業種向けのクラウドERPです。
比べた答えの核は、次の3つです。
- 国内の事業が中心で、ProActiveの資産があるなら、PROACTIVEの中での更新が有力
- 海外・グループの管理、外部のAIの活用を重く見るなら、NetSuiteが候補
- 決め手は製品の優劣ではなく、3〜5年後の会社の形といま抱える作り込みの量
では、いまProActiveを使っている会社は、何から手をつければよいのか。
残す・上げる・替えるを決める順番があります。
この記事で分かること
- ProActive(PROACTIVE)とNetSuiteの基本の違い
- 比べるときの5つの軸(提供の形・海外・AI・費用・作り込み)
- どちらが合う会社か、どちらでもない方が合う場合
- いまProActiveを使う会社が、残す・上げる・替えるを決める順番
- ProActiveから替えると変わることと、作り込みの仕分け方
言葉の整理:ERPは、会計・販売・在庫・人事などの基幹の業務を一つにまとめて管理する仕組みです。
各製品の詳しい説明は、ProActive(プロアクティブ)とは?とNetSuiteとは?で扱っています。
全体像|生まれと設計の違い
| 比較の軸 | ProActive(PROACTIVE) | NetSuite |
|---|---|---|
| 提供元 | SCSK(国内) | Oracle(米国) |
| 生まれ | 1993年、国産初のERPパッケージ | 1998年、NetLedgerとしてサービス開始 |
| 導入の実績 | 7,500社を超える | 世界220地域・44,000社以上 |
| 提供の形 | オンプレミス/SaaS(ProActive for SaaS) | クラウドだけ(マルチテナント型) |
| 主な業務 | 会計・人事給与・販売・購買・生産など | 会計・販売・在庫・購買・CRM・ECなど |
| 海外 | 国内の業務が中心 | 190通貨・27言語に対応 |
| 料金 | 公式サイトに記載なし(個別見積り) | ミニマム構成で月額20万円〜 |
1993年の発売は、SCSKの発表によります(出典:SCSK公式、2026年9月確認)。
SaaS型のProActive for SaaSは、2014年に提供が始まりました(同)。
PROACTIVEの導入実績は、7,500社を超えるとされています(同)。
NetSuiteは1998年、NetLedgerの名で正式にサービスを始めました(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
NetSuiteの数字は、Oracle NetSuite公式サイト(2026年9月時点)によります。
マルチテナント型は、複数の利用企業が一つのサービスの基盤を共有する方式です。
全社が同じ版を使い、更新は提供元が行います。
SCSKは2024年11月19日、ProActive C4の「PROACTIVE」への進化を発表しました(出典:SCSK公式、2026年9月確認)。
製造業向けのatWill、建設・住宅向けのPImacsとの統合によるものです(同)。
業界ごとの提供を広げる動きです。
ひと言でいえば、ProActiveは国内の業務に深く合わせてきた国産ERPです。
NetSuiteはクラウドと海外を前提に作られたERPです。
比べるときの5つの軸
5つの軸の要点を先に図にすると、次のとおりです。
提供の形|選べる柔軟さか、更新の手間の少なさか
ProActiveは、オンプレミスとSaaSから選べます(出典:PROACTIVE公式 よくあるご質問、2026年9月確認)。
両方を組み合わせる導入も提案されています(同)。
自社でサーバーを持ちたい会社や、いまの運用に合わせたい会社には柔軟です。
NetSuiteは、クラウドだけです。
大きなリリースは年2回で、数か月かけて段階的に更新されます(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。
サーバーの管理はない代わりに、更新の時期を自社で選ぶことはできません。
海外・グループ|いちばんの分かれ目
海外の拠点やグループ会社の管理を考えるなら、ここで道が分かれます。
NetSuiteは190通貨・27言語に対応し、グループを一つの基盤で扱えます。
ProActiveは国内の業務に強みがあり、海外を前提にした標準の対応は設計の中心ではありません。
AI|組み込みのAIと、外部のAIとの接続
| AIの軸 | ProActive(PROACTIVE) | NetSuite |
|---|---|---|
| 製品に組み込まれたAI | PROACTIVE AI(マルチAIエージェントの機能) | 決算・銀行の照合・レポートの説明文などのAI機能 |
| 身近な業務のAI | PROACTIVEコンシェルジュ(Teamsで経費精算) | AIによる顧客の要約など |
| 外部の生成AIとの接続 | 公式サイトに記載なし(2026年9月確認) | AI Connector Service(MCPに対応) |
PROACTIVEは、PROACTIVE AIを中核に置き、マルチAIエージェントの機能を持つとしています(出典:SCSK公式、2026年9月確認)。
PROACTIVEコンシェルジュは、Teamsで使う経費精算のAIです(出典:SCSKの発表、2026年9月確認)。
領収書の画像を添付して「精算したい」と送ると、申請の伝票を自動で作ります(同)。
NetSuiteは、2026年2月11日のSuiteConnectで8つのAI機能を発表しました(出典:NetSuite公式発表、2026年9月確認)。
MCPは、AIが外部のシステムにあるデータを使うための、共通の接続方式です。
AI Connector Serviceは、MCPに対応したAIから使えます(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。
例として、Claude Pro以上やChatGPTが挙げられています(同)。
組み込みのAIは、どちらも持っています。
違いが出るのは、外部の生成AIと業務のデータを直接つなぐかです。
費用|公開の仕方と、乗り換えの費用を決めるもの
PROACTIVEの料金は、公式サイトに記載がありません(2026年9月確認)。
要件に応じた個別の見積りのため、SCSKに聞くのが確実です。
NetSuiteは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。
ライセンスより大きく動くのが、乗り換えの費用と期間です。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの経験では、左右する要因は4つあります。
- 機能範囲:会計・販売・在庫・購買のどこまでを載せるか
- 開発:とくに外部のシステムとの連携と、ProActiveで作り込んだ機能の扱い
- 社内の体制:情報システムの担当が少ないと、支援を厚くするぶん期間も延びやすい
- ユーザー数:受入テストと教育の工数、社内の調整の時間
長く使ったProActiveほど、2つ目の作り込みが重くなります。
載せる範囲を先に決めてから見積りを取ると、比べやすくなります。
作り込みとロックイン|長く使うほど効く軸
ロックインは、特定の仕様や会社から離れにくくなることです。
製品を問わず、独自の作り込みを重ねるほど、ロックインは強まります。
NetSuiteは、SuiteCloudという基盤の上で作り込む設計です。
公式サイトでは、カスタマイズは版の更新ごとに自動で引き継がれ、修正は要らないと説明しています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
それでも、更新の前に試験用の環境で作り込みの動きを見ておくと安心です。
どちらを選んでも、業務を標準に合わせる(Fit to Standard)ほど、将来の乗り換えや拡張がしやすくなります。
判断の物差し|どちらが合う会社か
PROACTIVEが合う会社
- 事業が国内中心で、海外の拠点を持つ予定が当面ない
- すでにProActiveの資産があり、SCSKの支援の体制を重く見る
- 製造(atWill)や建設・住宅(PImacs)など、業界向けの提供を使いたい
- オンプレミスを含め、提供の形を選びたい
NetSuiteが合う会社
- 海外の拠点やグループ会社への展開を考えている
- クラウドで、サーバーの管理なしに最新の機能を使い続けたい
- 外部の生成AIと業務のデータをつなぎ、活用を広げたい
- 会計・販売・在庫・CRMを一つのデータにまとめたい
どちらでもない方が合う場合
国産で別の強みの製品も比べたいなら、SMILEなどの他の国産ERPがあります。
費用を抑えて機能を選んで組み立てたいなら、Odooも候補です。
独自の業務が強みでパッケージに合わせられないなら、AIスクラッチ開発で必要な部分だけ作る道もあります。
いまのProActiveで大きな困りごとがなければ、替えずに更新の計画だけ立てるのも答えです。
これから選ぶ会社と、いまProActiveを使う会社
これからERPを選ぶ会社
- 3〜5年後の拠点の数と国を書き出す
- 会計・販売・在庫・人事給与のうち、載せる範囲を決める
- AIをどの業務に使いたいかを1つ決める
- 両製品のデモで、自社の実際の帳票を使って試す
1で海外が見えているならNetSuiteを先に深く見ます。
人事給与まで国内の仕組みで一つにしたいなら、PROACTIVEが先です。
いまProActiveを使っていて、見直しを考える会社
冒頭の「何から手をつけるか」への答えが、この節です。
選択肢は、残す・PROACTIVEの中で上げる・NetSuiteなどへ替えるの3つ。
次の順番で決めます。
- 保守の条件を聞く:公式サイトのサポートのページに、保守の終了時期の記載はありません(2026年9月確認)。自社の版の保守の期限を、SCSKに問い合わせます
- 困りごとを分ける:国内の業務の困りごとか、海外・グループ・AIの困りごとか
- 作り込みを棚卸しする:独自の作り込みの数と、いまも使っているものを数える
- 3つを同じ表で比べる:費用・期間・現場の負担・3年後の姿で比べる
SCSKの保守には、ライセンス保守・カスタマイズ保守・ヘルプデスクの3つがあります(出典:SCSK公式、2026年9月確認)。
ライセンス保守では、バージョンアップ・法改正・障害のパッチが提供されます(同)。
保守の期限の考え方は、基幹システムの保守切れリスクとは?で扱っています。
図を言葉にすると、次のとおりです。
困りごとが国内の業務の効率なら、PROACTIVEの中で上げるほうが負担は小さいことが多い。
海外・グループや外部のAIの困りごとが大きいなら、替える検討に進みます。
大きな困りごとがなく保守も続くなら、残して次の見直しの時期だけ決めます。
残す・上げる・替えるのチェック表
| 当てはまること | 示す方向 |
|---|---|
| 海外の拠点やグループ会社の数字を、表計算でまとめている | 替える(NetSuiteなど) |
| 困りごとの多くが、国内の業務の効率に関するもの | PROACTIVEの中で上げる |
| 作り込みが多く、半分以上が使われていない | 上げる・替えるの前に棚卸し |
| 自社の版の保守の期限が近い | 期限から逆算して3つを比べる |
| いま大きな困りごとがなく、保守も続く | 残す。次の見直しの時期だけ決める |
印が一つの方向に集まらないときは、困りごとの優先順位を経営で決めるのが先です。
よくある失敗3つ
失敗1:いまの作りを、そのまま新しいシステムに移す
起きること:仕様書がなく、誰も全体を説明できない作り込みまで再現しようとする。新しいシステムが前より複雑になる。
原因:「本当に要る業務」と「惰性で続けている業務」を分けなかった。
避け方:乗り換えを、業務を仕分ける機会と捉えます。
第6章の型で、標準で足りる範囲を先に決め、作り込みは最小限に絞ります。
失敗2:目的があいまいなまま、製品の比較から入る
起きること:機能の多さや知名度で候補を絞り、使わない機能に投資する。
原因:何を良くするための導入かを、測れる形で決めていなかった。
避け方:「月次決算を5営業日短くする」のように、測れる目標を先に決めます。
ERPは目的ではなく手段です。
失敗3:いまの業務への合い方だけで選び、数年後に動けなくなる
起きること:数年後の海外展開やAIの活用に対応できず、また大きな入れ替えが要る。
原因:3〜5年後の会社の形を、判断の軸に入れていなかった。
避け方:海外展開・グループの統合・AIの活用の見込みを、判断の軸に入れます。
一度にすべてを目指さず、広げやすい基盤を選びます。
ベンチャーネットならこう見る|比べる前に、作り込みを仕分ける
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
国産ERPとの比較で取る立場は、「どれが優れているかではなく、それぞれに長所がある」です。
そのうえで、比べる前に作り込みを仕分けます。
型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap
- 業務の見える化:いまの業務の流れを、現場に聞いて描く
- 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
- Fit&Gap:残った業務を、移る先の製品の標準機能と照らし合わせる
ProActiveの機能の一覧を、そのまま要件にはしません。
使っていない帳票や、手作業で補っている業務が混ざっているからです。
移る先がPROACTIVEでもNetSuiteでも、この順番は変わりません。
型2:標準に合わせる/開発する/残す
Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。
- 標準に合わせる:業務のほうを、移る先の標準の機能に寄せる
- 開発する:追加の開発や、外部のシステムとの連携で補う
- 残す:新しいERPには載せず、いまの仕組みや運用で続ける
2つ目を選ぶほど、2-4で見た「開発」の要因が重くなります。
ProActiveから替えると変わること
NetSuiteへ替える場合、見積りの前にお伝えしていることがあります。
- 帳票:いまの帳票の形は、そのままでは出ない。どこまで作るかで費用が変わる
- 締め処理:締めの考え方が、ProActiveと違うことがある
- 画面の操作感:現場の操作は変わる。教育の時間を見込む
- ライセンス費用:構成によっては、いまより上がることがある
- 人事給与:NetSuiteの対象外。ProActiveで人事給与を使う会社は、別の仕組みを残す前提になる
最後の点は、ProActiveとの比較で見落とされやすいところです。
比べた結果がPROACTIVEの中での更新になっても、そのままお伝えします。
ProActiveそのものの仕様や見積りは、提供元のSCSKに聞くのが確実です。
最初の打ち合わせでは、主に次の3つを伺います。
- 3〜5年後に、海外やグループ会社の予定はあるか
- 作り込みの数と、いまも使っている数
- 人事給与を、ERPの中と外のどちらで扱いたいか
今日できること|作り込みの棚卸し表を作る
1時間あれば、次の表の上の10行を埋められます。
| 作り込み・独自の帳票 | 使っている部門と頻度 | なくなると困るか | 型2のどれにするか |
|---|---|---|---|
| (例)独自の請求書の形式 | 経理・月1回 | 困る | 要検討(標準か開発か) |
使う頻度が0の行は、移す必要がない候補です。
この表は、PROACTIVEの中で上げる場合にも、NetSuiteへ替える場合にも使えます。
10行が埋まれば、4-2の3つ目「作り込みを棚卸しする」が終わります。
よくある質問
Q1. ProActiveとNetSuiteの違いを一言で言うと
国産ERPかクラウドERPかの違いです。
国内の業務に深く合わせてきたか、クラウドと海外を前提に作られたかが分かれ目です。
ProActiveはオンプレミスとSaaSから選べます。
NetSuiteはクラウドだけで、190通貨・27言語に対応します。
Q2. ProActiveからNetSuiteへの乗り換えは大変ですか
要件しだいですが計画的に進めれば現実的です。
いまの業務をそのまま移さず、見える化と整理整頓を済ませてから標準に合わせます。
帳票・締め処理・操作感が変わり、人事給与はNetSuiteの対象外です(第6章)。
データの移行・操作の研修・定着の期間も、最初から計画に入れます。
Q3. いまのProActiveの保守はいつまでですか
自社の版の保守の期限をSCSKに聞いてください。
公式サイトのサポートのページには、保守の終了時期の記載はありません(2026年9月確認)。
期限が分かれば、残す・上げる・替えるの検討を始める時期が決まります。
Q4. 国産ERPからクラウドERPへ移る判断の目安は
海外展開・グループ管理・外部AIの活用が3〜5年後の経営に効くかです。
効くなら、移る検討の価値があります。
国内中心で当面の変化が小さいなら、急いで動く必要はありません。
Q5. AIの活用は、どちらが有利ですか
違いは外部の生成AIとの接続です。
組み込みのAIは、両方の製品にあります。
NetSuiteはAI Connector ServiceでMCPに対応したAIとつなげます。
PROACTIVEは、外部の生成AIとの接続の記載を公式サイトで確認できませんでした(2026年9月確認)。
Q6. 費用はどのくらいかかりますか
PROACTIVEは個別見積りです。NetSuiteはミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
NetSuiteは構成で変わり、数百万円規模になることもあります。
乗り換えの費用は、機能範囲・開発・社内の体制・ユーザー数の4つで大きく変わります(2-4)。
まとめ
- ProActiveは国内の業務に強い国産ERP、NetSuiteはクラウドと海外を前提にしたERP
- 分かれ目は、海外・グループと外部のAIとの接続
- いま使っている会社は、残す・上げる・替えるを同じ表で比べる
- 比べる前に、作り込みを「見える化→整理整頓→Fit&Gap」で洗い、「標準に合わせる/開発する/残す」に分ける
- NetSuiteへ替えるなら、帳票・締め処理・操作感が変わり、人事給与は対象外
生まれの5年差より、3〜5年後の会社の形のほうが、選ぶ道を大きく左右します。
まずは作り込みの棚卸し表を、上の10行だけ埋めてみてください。
もう少し詳しく知りたい方へ
PROACTIVEの中で上げるか、NetSuiteへ替えるか。
ベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場で、整理のお手伝いをしています。
- NetSuiteの実際の画面を見てみたい方:NetSuite 無料体験デモ
- いまのERPからの乗り換えを考えている方:基幹システムリプレイス(ERP乗り換え)支援
- 自社に合う道を相談したい方:お問い合わせ
PROACTIVEの仕様・見積りは、提供元のSCSKにお問い合わせください。
