中小企業の海外進出で見落としがちな「基幹システム」の落とし穴|ERP選定が海外展開の成否を分ける

海外進出を決めたものの、基幹システムは後回し——という企業は少なくありません。

ですが、本社と海外拠点でデータが分断され、数字が見えない。現地の会計や税制に合わず、カスタマイズが膨らむ。こうした基幹システムの問題が、海外展開の足を引っ張ります。

本記事では、中小企業の海外進出で見落としがちな「基幹システム」の落とし穴を、経営目線で整理します。先回りして知っておけば、避けられるつまずきです。

目次

なぜ海外進出で基幹システムは後回しになるのか

海外進出の準備では、市場調査・人材・拠点づくりに意識が向きます。

そのため、基幹システムは「現地で何とかする」と先送りされがちです。

そもそも基幹システムとは、会計・販売・在庫・人事など、会社の中核業務を支える仕組みのことです。これを統合したものをERP(基幹業務システム)と呼びます。基幹システムとERPの違いは、基幹システムとERPの違いを解説した記事でくわしく整理しています。

後回しのツケは、進出してから表面化します。数字がそろわない、現地に合わない、という形で出てくるのです。

海外進出で基幹システムが問題化する3つの理由

海外に拠点を持つと、国内とは前提が変わります。主に次の3点です。

  • 通貨・言語:拠点ごとに通貨も言語も異なる
  • 会計・税制:国ごとに会計基準や税制が違う
  • 統制・可視化:本社から各拠点の数字をリアルタイムに見たい

ここで、システムの選び方が分かれ道になります。

オンプレミス型や国産のシステムは、海外拠点への導入でつまずきがちです。各国の事情に合わせるカスタマイズや基盤整備で、導入コストが膨らむためです。NetSuiteの公式情報でも、こうした理由でプロジェクトが頓挫する例が指摘されています。

一方、現地のパッケージを拠点ごとに入れる方法もあります。ですが、日本本社からの統制が届きにくく、コンプライアンスや可視化の面で課題が残ります。

これに対し、グローバル対応のERPには別の選択肢があります。複数の法人や拠点を、一つのシステムで管理する考え方です。たとえばNetSuiteのグローバル機能は、27言語・190通貨に対応し、国ごとの会計・税務にも標準で対応します(出典:NetSuite公式)。その機能の詳細は、NetSuiteのグローバル展開機能(OneWorld)の解説記事で紹介しています。

なお、そもそもクラウドERPへ切り替えるべきか迷っている段階の方は、クラウドERP移行の判断軸をまとめた記事もあわせてご覧ください。

だからこそ「どの方式で海外へ広げるか」が、成否を分けます。

海外進出で見落としがちな4つの落とし穴

海外進出を決めても、基幹システムの検討は後回しになりがちです。

ですが、ここでのつまずきが、進出そのものの成否を左右します。

このセクションは、海外進出を考える企業を責めるために書くのではありません。海外で失敗してほしくないからこそ、現場で起きやすいパターンを共有します。

海外拠点の立ち上げを、現地任せにしないこと。本社と一緒に設計していくこと。ベンチャーネットは、その伴走者でありたいと考えています。

なお、国内拠点での基幹システムの落とし穴は別の記事で扱っています。ここでは、海外進出ならではの4つの落とし穴に絞ります。

拠点ごとにバラバラ導入し、全体が見えなくなる

よくある現象

  • 海外拠点が、それぞれ別の会計ソフトを使っている
  • 月次の数字を集めるのに、本社が各拠点へメールで依頼している
  • 為替の換算を、表計算ソフトで手作業調整している

なぜ失敗するのか

拠点ごとにシステムが違うと、データの形式も勘定科目もそろいません。

そのため、グループ全体の数字を一つにまとめるのに時間がかかります。経営判断は、どうしても後手に回ります。

NetSuiteの公式情報でも、形式や基準がそろわない複数のシステムを支えるコストと複雑さが、課題として挙げられています。

どう回避するか

大切なのは、拠点が増える前に「全社で同じ基盤・同じ指標」を決めておくことです。ベンチャーネットでは、将来の拠点追加を前提に、データの型を一緒に整理します。

日本の業務をそのまま持ち込み、現地に合わない

よくある現象

  • 「日本と同じ運用で」と、現地に求めてしまう
  • 現地の税制への対応を、後から追加開発で埋めようとする
  • 日本製の会計システムを、海外拠点でも使おうとして詰まる

なぜ失敗するのか

オンプレミス型や国産のシステムは、海外拠点への導入でつまずきがちです。各国の基準に合わせるカスタマイズや基盤整備で、コストが膨らむためです。プロジェクトが頓挫することも少なくありません。

しかも、カスタマイズを足すほど、属人化やアップデート時の負担が積み上がります。

どう回避するか

おすすめは、多通貨・多言語・各国の会計や税務に標準で対応するERPを土台にすることです。

その上で「標準機能をそのまま使う(Fit to Standard)」を基本にします。Fit to Standardとは、業務をパッケージの標準に合わせる考え方です。自社固有の事情だけ、最小限のカスタマイズで補います。

全体設計がないまま進める(または最初から完璧を狙う)

よくある現象

  • 進出のたびに、その場しのぎでシステムを足している
  • 逆に「最初から全世界で統一」を掲げ、要件が膨らんで動かない
  • 本社の基幹を全部入れ替える前提で、身動きが取れない

なぜ失敗するのか

全体像のない継ぎ足しは、後で連結や統制が破綻します。一方で、一斉に完璧を目指すと、要件が膨れ上がって頓挫します。

どちらも「進め方」でつまずくパターンです。

どう回避するか

ベンチャーネットの考え方は「完璧を目指すより、まず回す」です。

たとえば、本社の基幹を残したまま、海外拠点にクラウドERPを展開してデータ連携する方法があります。これを2層ERPと呼びます。本社導入のあとに、海外拠点へ段階的に広げる進め方も有効です。

海外の知見が薄いまま、進めてしまう

よくある現象

  • 国内導入の感覚のまま、海外特有の要件を見落とす
  • 現地語・現地の税制・時差の壁で、進行が止まる
  • 「とりあえず安いところ」でパートナーを選んでしまう

なぜ失敗するのか

海外展開は、各国のルール対応・連結・現地運用が複雑に絡みます。国内の導入とは難しさが違います。

ここでの知見の差が、そのまま頓挫のリスクになります。

どう回避するか

海外展開を見据えた設計の経験があるパートナーと、対等な関係で進めることが近道です。ベンチャーネットは、海外展開を見据えたNetSuite導入支援で、海外拠点を見据えたERP導入を伴走支援しています。

海外進出は「システム導入」ではなく、経営プロジェクトです。

そして、最初の設計が成否を分けます。完璧を目指すより、まず回しながら磨いていく。その方が、結果的に早く前に進めます。

進め方に迷ったら、一緒に考えさせてください。

海外展開の進め方は4つ|アプローチ比較

海外へシステムを広げる方法は、大きく4つに整理できます。

どれが常に正解、というわけではありません。自社の拠点数や統制の必要度によって、向き不向きが変わります。

アプローチ統制・可視化現地対応コスト・期間拡張性向いている企業
①本社ERPをそのまま海外展開△(各国対応が重い)重くなりがち拠点が少なく本社主導が強い
②現地パッケージを拠点ごと△(分断しやすい)拠点ごとに発生各国の独立性が高い
③クラウドERPで一元管理○(標準対応型)段階導入で平準化グループ全体を一気通貫したい
④2層ERP○(連携前提)本社を残せて軽め本社の基幹は維持したい

2層ERPとは、本社の基幹システムを残したまま、海外拠点にクラウドERPを展開してデータ連携する方式です。

自社がどのタイプに近いかを、まず見極めることが第一歩になります。製品ごとの比較や選び方まで踏み込みたい方は、ERPを徹底比較した記事も参考になります。

失敗を避ける進め方|「完璧より、まず回す」

海外展開のシステムは、一度に完璧を目指すと頓挫しがちです。

ベンチャーネットがおすすめするのは、全体設計を先に描き、そこから段階的に広げる進め方です。

順序のイメージは次のとおりです。

  • まず、グループ全体で「見たい指標」と「データの型」を決める
  • 次に、本社または優先度の高い拠点から導入する
  • その後、ほかの拠点へ段階的に展開する

このとき、標準機能をそのまま使うFit to Standardを基本にします。固有の事情だけ、最小限のカスタマイズで補います。

海外進出は、システム導入ではなく経営プロジェクトです。最初の設計図があれば、拠点が増えても迷いません。

自社に合った進め方を具体的に描きたい方は、海外展開を見据えたNetSuite導入支援で、グローバル展開・海外拠点管理に対応した導入の進め方を確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 海外拠点にも、日本本社と同じ製品を入れるべきですか?

必ずしも同じ製品である必要はありません。大切なのは、拠点のデータがつながり、連結・可視化できることです。本社の基幹を残し、海外にクラウドERPを展開する2層ERPという選択肢もあります。

Q2. 海外製のERPで、現地の会計基準や税制に対応できますか?

多通貨・多言語に対応し、国ごとの会計・税務に標準対応するERPがあります。たとえばNetSuiteのグローバル機能は27言語・190通貨に対応します(出典:NetSuite公式)。ただし、日本独自の商習慣(手形など)は個別に確認が必要です。

Q3. 日本本社と海外拠点、どちらから始めるべきですか?

一概には言えません。ただ、全体設計を先に描いてから段階展開するのが安全です。本社から始める場合も、拠点から先行する場合も、共通の指標を最初に決めておきます。

Q4. 海外進出後に、システムを入れ替えるのは難しいですか?

後からの入れ替えは、業務への影響が大きくなります。だからこそ、最初の設計が肝心です。拡張を前提としたクラウドERPなら、入れ替えずに拠点を追加していけます。早めに相談しておくと、手戻りを防げます。

まとめ|海外進出は「経営プロジェクト」

海外進出の成否は、基幹システムの選び方に大きく左右されます。

拠点ごとのバラバラ導入、現地に合わないカスタマイズ、全体設計の欠如、知見不足のまま進める——。今回の4つの落とし穴は、いずれも先回りすれば避けられます。

ベンチャーネットは、海外拠点を見据えたERP導入を、対等な関係で伴走支援しています。完璧を目指すより、まず回しながら磨いていく。その一歩を、一緒に考えさせてください。

海外展開を見据えたERPの全体像をつかみたい方は、まず海外展開を見据えたNetSuite導入支援をご覧ください。実際の画面で確かめたい方はNetSuite無料デモを、自社の状況に合わせて相談したい方は30分の無料相談をご利用ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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