「生産管理のパッケージを入れれば、経営の数字も見えるようになる」
そう期待して選び、稼働後も製品別の利益をExcelで集め直している。
製造業では、珍しくない話です。
生産革新シリーズとは、大塚商会が提供する、中堅・中小の製造業向けの生産管理パッケージ群です。
組立・加工・配合など、生産の方式ごとに6つの製品が分かれています。
得意なのは、生産の現場を回すことです。
- 課題が生産の現場に集中している会社には、方式に合った製品を選べる点が強みです
- 会計・販売を含む全社の数字を1つにつなぎたい会社は、統合型ERPとも比べてください
- 価格は公開されておらず、構成と規模に応じた見積が前提です
では、自社の課題は現場にあるのか、経営の数字にあるのか。
その見分け方が、製品選びの出発点になります。
この記事で分かること
- 生産革新シリーズの位置づけと、6製品の違い
- 各製品で、公式に確認できる主な機能
- 費用の考え方と、金額を左右する4つの要因
- 生産管理特化型と統合型ERPの違い(AIとの親和性を含む)
- 課題を「現場」と「経営の数字」に仕分ける考え方
言葉の整理:生産管理システムは、受注から生産計画、在庫、出荷までの「モノづくりの流れ」を管理する仕組みです。
ERPは、会計・販売・在庫・人事などをつなぎ、会社全体を管理する仕組みを指します。
生産革新シリーズとは
生産革新シリーズは、業種・業態を特化させた生産管理パッケージの総称です。
開発はOSK(大塚商会の100%子会社)が手がけ、大塚商会が販売・サポートを提供しています。
各製品は「SMILE V 2nd Edition」「SMILE V Air」の名で提供されています。
大塚商会では、専門組織「製造SP」が開発から導入後の支援までを担ってきました。
(出典:大塚商会 ニュースリリース 2021年6月28日・ERPナビ、OSK 会社概要、2026年9月確認)
生産管理システムとERPの違いは、基幹システムとERPの違いで詳しく解説しています。
SMILE V全体については、SMILE Vとはをご覧ください。
6製品の違い
生産の方式ごとに製品が分かれ、自社のモノづくりに近いものを選ぶ設計です。
| 製品 | 向く業態・生産方式 | 特徴の要点 | 提供形態 |
|---|---|---|---|
| Fu-jin(風神) | 中小〜中堅の組立業(標準品の見込・受注生産) | 販売管理と一体の製販一気通貫。ファブレスにも対応 | パッケージ型 |
| Raijin(雷神) | 組立業(繰返+個別受注のハイブリッド) | 受注形態が混在する組立向け。Bom-jinと連携(オプション) | パッケージ型 |
| Ryu-jin(龍神) | 量産加工(自動車・電気部品、金属・樹脂・食品など) | 内示や予測に対応した生産計画、工程別の在庫・負荷、ロットトレース | パッケージ型 |
| Blendjin(ブレンジン) | 配合業(食品・化学製品・化粧品など) | 配合型の生産管理に対応 | パッケージ型 |
| Bom-jin | 設計・部品構成表(BOM)の管理 | 図面・技術情報を品目台帳で管理し、生産管理と双方向に連携 | パッケージ型(補完) |
| Wun-jin(雲神) | 多品種小ロット・個別受注生産中心の加工業 | クラウド型。品目マスター等の登録なしでも受注を登録できる | クラウド |
系統で並べると、選びやすくなります。
- 組立系:Fu-jin/Raijin
- 加工・量産系:Ryu-jin
- 配合系:Blendjin
- 設計・BOM管理:Bom-jin
- 多品種小ロット・クラウド:Wun-jin
生産方式から製品を逆引きすると、次の図のとおりです。
Bom-jinは設計部門の情報を管理する製品です。
公式ページでは、Raijinとの双方向の連携が案内されています。
(出典:大塚商会 生産革新 Raijin・Bom-jin・Blendjin 関連システム、2026年9月確認)
公式で確認できる主な機能
Fu-jin|組立業の製販一気通貫
大塚商会は、Fu-jinを中小〜中堅の組立製造業向けの生産管理システムと位置づけています。
公式ページにある主な機能は、次のとおりです(出典:大塚商会 生産革新 Fu-jin、2026年9月確認)。
- 構成部品の発注・在庫の管理
- 製造・進捗の管理
- 出荷・売上の管理
- 請求・入金・支払の処理
- 外貨での取引への対応
自社の工場を持たないファブレスの企業にも対応できるとされています。
Ryu-jin|量産加工の計画と負荷
Ryu-jinは、自動車・電気部品や、金属・樹脂・食品などを量産加工する製造業向けです。
公式ページでは、次の機能が挙げられています(出典:大塚商会 生産革新 Ryu-jin、2026年9月確認)。
- 取引先からの内示(発注の予告)や予測をもとにした生産計画
- 仕掛品を含む、工程ごとの在庫の管理
- 工程・設備ごとの負荷の確認と調整
- 原材料がいつ・どこから来たかを追うロットトレース
カスタマイズの道具として「SMILE Custom AP Builder」も案内されています。
Wun-jin|多品種小ロットをクラウドで
Wun-jin(SMILE V Air)は、多品種小ロット生産向けのクラウド型の生産販売管理システムです。
販売管理をもとに、工程管理や製造指図書の発行ができます(出典:大塚商会 生産革新 Wun-jin、2026年9月確認)。
公式ページの特徴は、次の2点です。
- 品目マスター等を登録しなくても、受注を登録できる
- 工程や部材を、ツリーの形で登録できる
一品ごとに品目が変わる加工業では、マスターの事前登録が大きな負担です。
その負担を減らしたい会社に向いた設計といえます。
共通する考え方
製品ごとに得意分野は違いますが、共通する考え方もあります。
- 工程の進捗管理:製造の進み具合や負荷を見ながら計画を立てる
- 在庫の適正化:原材料・仕掛品・完成品の在庫を見える化する
- 販売とのつながり:受注から出荷・売上までを1つの流れで扱う
実際に使える機能や範囲は、構成によって変わります。
詳細は提供元の大塚商会に問い合わせてください。
費用の考え方
生産革新シリーズの価格は、公開されていません。
構成と規模で変わるため、大塚商会への見積依頼が前提です。
金額を大きく動かすのは、どの製品でも次の4つです。
1つ目は、使う製品と業務の範囲です。
生産管理だけか、販売・会計まで入れるか、Bom-jinのような補完の製品も入れるかで変わります。
2つ目は開発の量で、特に会計や他のシステムとつなぐ開発が金額を押し上げます。
3つ目は社内の体制、4つ目は使う人数です。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが導入を支援してきた中でも、差を生む要因はこの4つでした。
情報システムの担当が少ない会社では、支援を厚くする分、期間も延びやすくなります。
中小企業は「デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)」などの制度も検討材料になります。
対象や条件は年度ごとに変わります。
補助金の使い方は、デジタル化・AI導入補助金でNetSuiteを導入する方法で解説しています。
生産管理特化型と統合型ERPの違い
選ぶ前に考えておきたいのが、「生産管理特化型」と「統合型ERP」のどちらが合うかです。
| 観点 | 生産管理特化型(生産革新シリーズなど) | 統合型クラウドERP(例:NetSuite) |
|---|---|---|
| 中心の目的 | 生産の現場を回す | 会計まで含めて全社を統合する |
| 生産方式への合わせ方 | 方式ごとに製品を選ぶ | 標準の機能と設定・拡張で合わせる |
| 会計とのつながり | 全社の会計は、別の仕組みとつなぐ設計になりやすい | 1つのデータベースで会計まで持つ |
| 海外拠点 | 製品ごとに提供元に確認 | 多通貨・多言語・複数の子会社を扱える |
| 費用の考え方 | 構成・規模に応じた見積 | ミニマム構成で月額20万円〜が出発点 |
| AIとの親和性 | 生産のデータは現場に集まる。全社の分析には会計などとの連携が要る | 生産・販売・会計のデータが1か所にあり、AIで横断的に点検しやすい |
NetSuiteの費用は、モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、構成によっては数百万円規模になることもあります。
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
どちらが優れているかではなく、それぞれに長所があります。
AIとの親和性も、製品の名前より「データがどこにそろうか」で決まります。
特化型を選ぶ場合も、会計や販売とデータをつなぐ設計を最初に決めておくと、後からAIを使いやすくなります。
判断の物差し|どの型が自社に合うか
生産革新シリーズが向いている会社
- 課題が生産の現場に集中していて、まず現場を回したい
- 組立・量産加工・配合など、生産の方式がはっきりしている
- SMILE Vの販売・会計をすでに使っている、または組み合わせたい
- 多品種小ロットで、マスター登録の手間を減らしたい(Wun-jin)
他の型とも比べたい会社
- 生産だけでなく、会計・販売・在庫まで全社の数字を1つにつなぎたい
- 海外拠点や子会社を、同じ仕組みで管理したい
- 生産方式が複数の事業にまたがり、1製品に収まらない
生産革新シリーズ以外が合う場合
| 自社の状況 | 合いやすい選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| 個別受注の製番原価が最重要 | 製番特化型の国産ERP | 案件ごとの原価管理に強い |
| 全社・海外を1つの数字で見たい | NetSuiteなど統合型 | 会計まで1つのデータベースで持てる |
| 小規模で、段階的に広げたい | Odoo | 必要なアプリから始められる |
| 独自の工程が強みで、パッケージに合わない | AIを使ったスクラッチ開発 | 必要な部分だけ作れる。保守の体制が要る |
| 業務の流れと課題がまだ言葉になっていない | いまは入れない | 先に業務を整理したほうが失敗が減る |
製番特化型の例はBIZXIM製番とは、OdooはOdooとはで扱っています。
スクラッチ開発との比べ方は、AIでスクラッチ開発とERP、どちらを選ぶべきかをご覧ください。
これから選ぶ会社と、いまSMILEを使っている会社
これから選ぶ会社|生産方式を一言で言う
最初に、次の3つを言葉にしてください。
- 解決したいのは現場の課題か、経営の数字の課題か
- 自社の生産方式は、組立・量産加工・配合・多品種小ロットのどれか
- 5年後に、海外拠点や新しい事業を持つ計画はあるか
言葉にする3つを図にすると、次のとおりです。
現場の課題が中心で方式が明確なら、生産革新シリーズは選びやすい候補です。
経営の数字や海外が課題なら、統合型も同じ条件で比べてください。
ERP全体の比較は【2026年版】ERP・クラウドERPを徹底比較、製造業の選択肢は製造業向けERP15選にまとめています。
いま使っていて見直す会社|生産と会計の間のExcelを見る
見直しのきっかけは、次のどれかが多いはずです。
- 保守期限や版の更新:まず大塚商会に、後継の版と移行の条件を聞く
- 事業の変化:海外・複数事業・M&Aで、1製品に収まらなくなった
- Excelでの補い:生産と会計の間を、手作業でつないでいる
同じシリーズの新しい版に上げるか、別の型に乗り換えるか。
この判断は、基幹システムは「更新」か「乗り換え」かで解説しています。
SMILE VとNetSuiteを直接比べたい場合は、NetSuite vs SMILE V 2nd Editionをご覧ください。
よくある失敗3つ
失敗1:目的が曖昧なまま製品を選ぶ
起きること:機能の多さで選び、導入後に「解決したかった課題が残っている」と気づく。
原因:「何を解決したいのか」を先に言葉にしなかった。
避け方:課題を3つまでに絞り、それぞれに「何が、いつまでに、どう変わればよいか」を書きます。
製品のデモは、その3つを見る場として使います。
失敗2:特化型か統合型かを見極めずに決める
起きること:現場は回るが、経営の数字はExcelで集め直している。
原因:現場の課題と経営の課題を分けずに、1つの製品で両方を解こうとした。
避け方:「現場を回す仕組み」と「経営の数字を出す仕組み」を分けて要件を書きます(第9章)。
特化型を選ぶなら、会計とのつなぎ方を選定の段階で決めます。
失敗3:導入後の定着を軽く見る
起きること:本番稼働の後、現場が元のやり方に戻る。
原因:稼働日をゴールにし、教育や運用ルールの予算を取っていなかった。
避け方:稼働後の数か月を、最初から計画に入れます。
操作研修・マニュアル・運用ルールの明文化を「定着の工程」として扱います。
導入の失敗を避ける考え方は、ERP導入はなぜ失敗するのかでも扱っています。
ベンチャーネットならこう見る|課題を「現場」と「経営の数字」に仕分ける
冒頭の「経営の数字も見えるはず」という期待は、課題の置きどころを分けないまま製品を選ぶと外れます。
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
それでも製品を先に決めず、次の2つの型で進めます。
型1:課題を「現場」と「経営の数字」に仕分ける
困りごとを1つずつ、どちらの課題かに分けます。
- 現場の課題:仕掛品の数、工程の負荷、ロットの追跡など、モノづくりを回すための困りごと
- 経営の数字の課題:製品別の利益、月次の締め、拠点別の数字など、経営が判断するための困りごと
現場の課題が多く、生産方式がはっきりしていれば、生産革新シリーズは自然な候補です。
経営の数字の課題が多く、5年後に海外や新事業の計画があるなら、統合型を同じ条件で比べます。
どちらでも、会計とのつなぎ方(同じ仕組みか、連携か、手作業か)は先に決めます。
型2:標準に合わせる/開発する/残す
候補の製品の標準機能と照らして合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。
- 標準に合わせる:慣れで続けている手順は、製品の標準に寄せる
- 開発する:強みの工程で、標準では足りないものは追加の開発や連携で補う
- 残す:新しい仕組みには載せず、いまの運用で続ける
「開発する」が増えるほど、第4章で見た費用と期間は重くなります。
比べるときは、初期費用だけでなく、保守・更新・定着の費用まで含めた総額で見てください。
今日できること|課題を「現場」と「経営」に仕分ける
いま困っていることを、思いつくまま10個書き出してください。
そのうえで、次の表に仕分けます。
| 課題 | 現場の課題か | 経営の数字の課題か | いまの補い方 |
|---|---|---|---|
| (例)仕掛品の数が分からない | ○ | 月末に現場で数える | |
| (例)製品別の利益が月末に出ない | ○ | 経理がExcelで集計 |
1時間ほどで終わります。
現場の列に○が多ければ、特化型が合いやすくなります。
経営の列に○が多ければ、統合型を比べる価値が大きくなります。
よくある質問
Q1. 生産革新シリーズとは何ですか
中堅・中小の製造業向けの生産管理パッケージ群です。
Fu-jin・Raijin・Ryu-jin・Blendjin・Bom-jin・Wun-jinの6製品があり、大塚商会が提供しています。
組立・加工・配合など、自社のモノづくりに近い製品を選ぶ設計です。
Q2. 6製品のうち、自社にはどれが合いますか
生産方式と業態で選ぶのが基本です。
組立ならFu-jin/Raijin、量産加工ならRyu-jin、配合ならBlendjinです。
多品種小ロットでクラウドならWun-jin、設計BOMの管理にはBom-jinです。
Q3. クラウドで使える製品はありますか
Wun-jin(SMILE V Air)がクラウド型です。
多品種小ロット生産向けで、品目マスター等を登録しなくても受注を登録できます。
他の製品の提供形態は、大塚商会に問い合わせてください。
Q4. 費用はどれくらいですか
構成と規模で変わるため見積が必要です。
使う製品と業務の範囲、会計などとつなぐ開発の量、社内の体制、人数で金額が動きます(第4章)。
正確な金額は、大塚商会に見積を依頼してください。
Q5. NetSuiteなど統合型クラウドERPとの違いは何ですか
中心の目的が違います。
生産革新シリーズは生産の現場に特化した仕組みです。
NetSuiteのような統合型は、会計まで含めて全社をつなぐ仕組みです。
どちらが合うかは、課題の置きどころで決まります。
Q6. いまSMILEを使っていますが、見直すべきですか
事業の形が変わったかで決めます。
国内の事業が中心で現場の課題が主なら、同じシリーズでの更新が合理的な場合もあります。
海外・複数事業・経営の数字の課題が大きいなら、統合型も比べてください。
まとめ
- 生産革新シリーズは、大塚商会の方式別の生産管理パッケージ群
- 組立はFu-jin/Raijin、量産加工はRyu-jin、配合はBlendjin、多品種小ロットのクラウドはWun-jin
- 価格は非公開。範囲・開発・社内の体制・人数で変わるため、総額で比べる
- 選ぶ前に、課題を現場と経営の数字に仕分ける
- 特化型でも、会計とのつなぎ方を先に決める
「入れれば経営の数字も見える」とは限りません。
まずは困りごとを10個書き出し、現場と経営のどちらに○が多いかを見てください。
もう少し詳しく知りたい方へ
生産革新シリーズの製品の詳細や見積は、提供元の大塚商会にお問い合わせください。
特化型と統合型のどちらが自社に合うか迷う場合は、ベンチャーネットが中立の立場で整理をお手伝いします。
