クラウドERPの導入担当者が必ず知っておくべきポイント3選【導入コンサルタントが解説】

企業の人・モノ・カネ・データを統合的に管理するERPは、昔はオンプレミス型が主流でしたが、近年は技術の発達により、クラウドで提供される時代となってきました。

クラウドERPには主に以下の特徴が挙げられます。

  • 短期間・低コストでのスタート:インフラ設備不要のため
  • リアルタイムで統合的なデータの可視化:会社間や国を超えたデータ管理が可能
  • 安定性:バージョンアップやインフラ管理が不要に

クラウドERP市場は競争激化の一途をたどっていますが、それぞれの製品を詳細に分析してみると、「これはクラウドERPとは言えないのでは?」と思わざるを得ない製品も少なくありません。

そこで今回は、クラウドERPを選定するうえで重要となるポイントについてピックアップしてみましょう。

NetSuiteの全体像について知りたい方は、以下記事をチェックしてください。

目次

①真のクラウド vs フェイククラウド

一口に「クラウド」と言っても、その指す意味合いはサービスにおいて異なるケースが多々あります。「クラウドERP」と呼称していても、蓋を開けてみたら実態はオンプレミス型とあまり変わらなかった、というケースも少なくありません。

クラウドERPはさまざまな分類がありますが、ここでは「真のクラウド」と「フェイククラウド」で分けてみると以下の特徴が考えられます。

真のクラウド
  • サービスがクラウド用にゼロから設計され、統合的なデータモデルを提供する
  • マルチテナント型で運営され、世界各国に何百台のサーバーとデータの冗長性を持つ
  • アップグレードは全世界的に実施され、他サービスへの拡張もオンプレミス型と比較して容易に実施できる
フェイククラウド
  • クラウド用に設計されておらず、オンプレミス型サービスを再設計したものである
  • 顧客ごとに環境のセットアップとデプロイを行うシングルテナント型であり、オンプレミス型と変わらない
  • アップグレードは個別に実施され、拡張や統合も個別に開発するため費用が高い

最近のクラウドの隆盛に従って、さまざまなサービスも「クラウド」を呼称し、リブランディングされていますが、クラウドERPもこの流れにあります。クラウドERPと銘打っていても、本当にクラウドに合わせた設計がなされ、クラウドの恩恵を受けているかは慎重に見極めする必要があります。

②スモールスタート vs ビッグスタート

従来のオンプレミス型ERPの導入プロジェクトの大きな問題の一つに、「スケジュールの遅延・予算超過が頻繁に起こる」という点が挙げられます。その理由として、要件定義があいまいなことや、プロジェクト体制が大規模でなかなか意思統一が図りにくいことが挙げられます。

これらの課題を踏まえて、近年のERP導入・リプレイスのプロジェクトでは、導入段階では最低限の要件定義とカスタマイズにとどめ、運用開始後に必要に応じて機能拡張やカスタマイズを行っていく傾向にあります。この方法を用いることで、要件定義時に網羅的に必要そうな要素を列挙し、設定したはいいものの、実際はほとんど使われなかった、というミスマッチを避けることができます。クラウドERPであれば、運用後の機能拡張も容易なので、この方法に合っているわけです。

ですので、クラウドERPでの導入にあたっては、「テンプレートでの導入の場合はどれくらいの期間がかかりますか?」という点を聞いてみましょう。「テンプレートはありません。すべて個別カスタマイズです」「最低でも半年はかかりますね」といった返答の場合は注意した方がよいかもしれません。

③統合プラットフォーム vs 機能特化型+α

クラウドERPの特徴の一つに、会計・人事・流通・顧客といった会社のデータを統合的に管理できる点が挙げられます。これまでのERPでもこれらのデータを扱うことはできましたが、それぞれのデータが分断されているため、有効活用することができないケースが多かったです。クラウドERPであれば、統合的なプラットフォーム上でデータを管理しているため、分野を横断してデータを取り扱うことができます。

しかし、近年登場している「クラウドERP」の中には、もともと会計機能に特化していたサービスに、それ以外のサービスを加えて「クラウドERP」とリブランディングしているものもあります。このサービスは、機能的には会計や人事といったものはありますが、領域間の連携機能に乏しい場合がほとんどです。別々のサービスがあたかも1つのサービスとしてまとめられている場合は、統合的な管理というクラウドERPの持ち味を活かすことが難しいです。

クラウドERPの導入・リプレイスにあたっては、上記のポイントを踏まえたうえで製品・サービスについて検討してみてください。

クラウドERPの建前と本音

ここからは、導入運用コンサルタントの視点から、クラウドERPに対する考え方について紹介いたします。

業務フローの柔軟性が乏しく、カスタマイズを前提としている企業は向かない

既に運用している業務フローを前提に、カスタマイズや開発を通じてクラウドERP側を業務フローに合わせることを前提としている場合、クラウドERPではなくフルスクラッチのERP導入を検討してください。

クラウドERPは多くの場合標準フローが定められています。クラウドの定期的なアップデートという恩恵を受けるために、可能な限りクラウドERP側に合わせる選択肢から検討してください。もちろん、クラウドERPは柔軟性が高いためある程度のカスタマイズや開発による解決もできますが、それでもどうしても実現が難しい仕様も存在します。自社の業務フローのうち、どれだけ柔軟性があるかは事前に検討しておきましょう。

会計機能(特に財務会計)のみの使用であれば国内会計サービスを使用すべき

クラウドERPの導入を検討している企業の中で、よくよくヒヤリングしてみると会計機能のみ利用したいというケースもいくつか伺ったことがあります。その場合は「販売在庫管理やプロジェクト管理などと組み合わせる予定がない場合は、国内の会計サービスの方が優れています」と正直に申し上げます。国内の財務会計サービスは利便性に優れており、日々の運用担当者の工数や税理士・会計士とのやり取りなども考えると、財務会計機能もNetSuiteに一本化するよりも、外部サービスと連携することをお勧めしております。

ERPは「ヒト・モノ・カネ・情報の管理サービス」と言われますが、このうちカネのみの管理しかしない場合はERPのメリットよりもデメリットの方が上回ることが多いので、慎重に検討する必要があります。

営業担当者のデモはあくまでゴールであり、そこに至るまでに道のりがある

「クラウドERPを導入して、データを入れればすぐに営業のデモのようなイメージが実現できる」というのは少々性急です。実際には「どのようにデータを入れるか」「業務フローとのマッピングに問題ないか」「権限の切り分けは十分か」など、考慮すべき内容は多々あります。ゴールに至るまでに、導入会社とお客様と一丸となって道を進む必要があります。また、必ずしも視覚的なUIに優れているわけではなく、ヘルプを見ないでも直観的に操作できるシステムとは言えません。そのため、ある程度必要な操作や設定項目を理解する必要があります。

「クラウドERPが自社に適しているか知りたい」「NetSuiteを導入すべきか迷っている」
ぜひお気軽に下記よりお問い合わせください。

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この記事を書いた人

株式会社ベンチャーネット コンサルティング事業部

保有資格:NetSuite ERP Consultant, NetSuite SuiteFoundation

担当領域:NetSuite導入運用支援、RPA導入運用支援、Webマーケティング、Web広告運用

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