ZACとNetSuiteを徹底比較|業種特化ERPと統合型ERPの選び方・乗り換え判断【2026年版】

月末の3営業日目。

経理の担当者が、ZACから出したデータと会計ソフトの売上を並べ、1行ずつ合わせています。

ZACとNetSuiteの違いとは、案件管理を深く作り込んだ「業種特化型」か、会計まで1つにまとめる「統合型」かの違いです。

ZACは案件ごとの損益に強く、会計は外部の会計システムと連携します。

NetSuiteは、案件・販売・会計・顧客管理を1つのデータベースで扱います。

  • 仕事の中心が案件で、国内の事業が中心なら、ZACが合いやすい
  • 会計・顧客管理・海外の子会社まで1つで見たいなら、NetSuiteが合いやすい
  • ZACで回っている会社は、すぐに乗り換える必要はない

冒頭の突き合わせは、ZACと会計システムの2つで回す会社で、毎月くり返される作業です。

「回ってはいる。でも、会社が大きくなってきた。このままでよいのか」

IT・広告・コンサルなど、案件で仕事が進む会社の経営者から、よく受ける相談です。

では、ZACで回っている会社は、何をきっかけに比べ始めればよいのか。

答えは、機能の一覧よりも、この月末の作業の中にあります。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、ZACを扱っていません。

ZACの長所は、開発元オロの公式情報にもとづいて載せています。

目次

この記事で分かること

  • ZACとNetSuiteの設計の違い(比較表)
  • 会計の持ち方の違いと、それが経営に与える影響
  • 新しく選ぶ会社の物差しと、ZACを使う会社の乗り換えのサイン
  • ZACの案件管理を仕分ける2つの型と、乗り換えの3つの失敗

ERPは、販売・購買・会計などの業務を1つの仕組みで管理するシステムです。

案件型ビジネスは、仕事が案件やプロジェクトの単位で進み、案件ごとに売上と原価を見る業種を指します。

両製品をひと言でいうと|基本の比較表

比較の観点ZACNetSuite
提供元株式会社オロOracle(米国)
設計の考え方案件型ビジネスに特化業種を問わない統合型
中心の機能案件ごとの損益・販売・購買・勤怠・工数・経費販売・購買・在庫・会計・顧客管理・EC
財務会計外部の会計システムと連携同じ基盤に総勘定元帳を持つ
顧客管理・営業支援HubSpot・Salesforceとの連携のオプション同じ基盤に持つ
海外対応公式の機能一覧に多通貨の記載は見当たらない220地域・190通貨・27言語
利用の広がり導入社数1,100社突破世界220地域・44,000社以上

(出典:オロ ZAC製品サイト・Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)

総勘定元帳は、会社のすべての取引を勘定科目ごとにまとめた、会計の中心の帳簿です。

ZACの公式サイトが挙げる対象の業種は、次のとおりです(出典:オロ ZAC製品サイト、2026年9月確認)。

  • IT・システム開発
  • 広告制作・クリエイティブ
  • 士業・コンサルティング
  • 建設コンサルタント
  • 映像制作
  • 設備工事・メンテナンス

両製品は、競い合うというより、得意な範囲が違います。

案件の管理の深さでは、業種に特化したZACに分があります。

会社全体の広さでは、統合型のNetSuiteに分がある。

表の中で判断を大きく分けるのは、「財務会計」と「海外対応」の2行です。

ZACの詳しい説明はZACとは?、NetSuiteはNetSuiteとは?で扱っています。

最大の分かれ目|会計を1つで持つか、つなぐか

ZACは会計システムと「つなぐ」

ZACは、案件・販売・購買などのデータから、区分けしたCSVのデータを出力します。

それを財務会計システムに連携する形です(出典:オロ ZAC公式、2026年9月確認)。

連携先の例には、次の会計システムが挙がっています。

  • 奉行V ERPシリーズ・勘定奉行クラウド
  • SuperStream-NX
  • マネーフォワード クラウド会計Plus
  • FX5クラウド など

(出典:オロ ZAC公式、2026年9月確認)

つまり、ZACを使う会社の多くは、ZACと会計システムの2つで回しています。

この形には、はっきりした長所があります。

  • 使い慣れた会計システムを、そのまま残せる
  • 顧問の税理士が慣れた会計ソフトを使い続けられる
  • 案件の管理だけを先に良くできる

NetSuiteは会計まで「1つで持つ」

NetSuiteは、販売・購買・案件・会計が同じデータベースにあります。

請求を出せば、その場で売掛金と売上の仕訳ができ、会計の数字にすぐ反映されます。

こちらの長所は、次の3つです。

  • 2つのシステムの間で、数字を突き合わせる作業が要らない
  • 月次の締めの途中でも、会社全体の数字を見られる
  • 子会社や海外の会社を増やしても、同じ仕組みで扱える

その代わり、会計の仕組みも入れ替えることになります。

経理と顧問の税理士の準備が要ります。

会計を「つなぐ」か「1つで持つ」か ZACは区分けしたCSVで外部の会計システムに連携し、月末に数字を突き合わせる。NetSuiteは案件・販売・会計・顧客管理を1つのデータベースで持ち、請求と同時に仕訳ができる。 会計を「つなぐ」か「1つで持つ」か ZAC+会計システム NetSuite ZAC 案件・販売・購買・工数 区分けCSV 会計システム 仕訳・総勘定元帳 月末に突き合わせる 案件 販売・購買 会計 顧客管理 1つのデータベース 請求と同時に仕訳 どちらが合うかは、毎月の 突き合わせの時間で見る
会計を「つなぐ」か「1つで持つ」か

どちらが合うかの見分け方

自社の状況合いやすい形
会計システムに不満がなく、案件の管理だけを良くしたいZAC+今の会計システム
月次の締めで、ZACと会計の突き合わせに時間がかかっているNetSuiteで1つに
子会社が増え、連結の作業が重くなってきたNetSuiteで1つに
経理の人数が少なく、仕組みを増やしたくないどちらも候補。締めの手間で比べる

経理の担当者に、一つだけ聞いてみてください。

「ZACと会計の数字を合わせるのに、毎月何時間かかっているか」。

その時間が、NetSuiteを検討する価値の目安になります。

ほとんどかかっていないなら、今の2つの仕組みはうまく回っています。

ZACと会計の2つで回し続けるときのコツ

2つの仕組みで回すと決めた場合も、手間は減らせます。

  • 連携の頻度:月末にまとめて送るか、週ごとに送るか
  • マスタのコード:取引先・部門・勘定科目のコードを、両方で同じにする
  • 突き合わせの手順:どの数字を、誰が、いつ照らし合わせるか
  • 例外の扱い:値引き・返品・前受の処理を、どちらで入れるか

この4つが決まっていないと、月末の作業は担当者の経験頼みになります。

1枚の手順書にしておけば、担当者が替わっても同じ手順で回ります。

機能の領域ごとの比較

評価は、公式情報をもとにしたベンチャーネットの見立てです。

領域ZACNetSuite
案件ごとの損益◎ 業種に合わせて深く作り込まれている○ プロジェクトの会計・進み具合の管理
工数・勤怠◎ 勤怠・工数の管理を持つ○ 工数の入力と原価への反映
販売・購買○ 案件にひもづく販売・購買◎ 販売・購買・在庫を一体で
財務会計△ 外部の会計システムと連携◎ 総勘定元帳・売掛金・買掛金を持つ
顧客管理・営業支援○ HubSpot・Salesforceと連携◎ CRM・SFAを同じ基盤に持つ
複数の会社・連結△ 会計システム側での対応が中心◎ 複数の会社を1つで扱う
海外△ 公式の機能一覧で確認できず◎ 多通貨・多言語・各国の税制
国内の法令◎ 電子帳簿保存法・インボイスに対応○ 日本向けの設定・パートナーの支援

凡例:◎強み/○対応/△限定的、または他のシステムとの連携が中心

SFAは営業の活動を管理する仕組み、CRMは顧客の情報をまとめて管理する仕組みです。

案件の損益を深く見る力は、ZACの大きな強みです。

業種に合わせた作り込みがあるため、案件型の会社は使い始めやすい。

導入は、ご利用開始まで最短3か月、通常6か月程度と案内されています(出典:オロ ZAC公式、2026年9月確認)。

NetSuiteの強みは、案件の数字が、会計・顧客・海外の会社の数字とそのままつながることです。

プロジェクトの管理は、NetSuiteで実現するプロジェクト管理で扱っています。

案件の原価の集め方

案件型の会社では、案件ごとの原価の集め方が、経営の中心にあります。

ZACは、工数の入力・発注・経費の申請などを案件にひもづけます。

そのうえで、個別の原価計算や配賦、案件ごとの損益を自動で計算します(出典:オロ ZAC公式、2026年9月確認)。

シングルインプット(一度入れたデータが後の業務につながる考え方)で、現場の入力を減らす設計です。

配賦は、まとめてかかった費用を、決まった基準で案件ごとに割り振ることです。

NetSuiteも、工数や経費を案件に集め、案件の損益を見られます。

違いは、その数字がそのまま会計の帳簿とつながることです。

一方で、業種に合わせた細かい画面や帳票は、ZACのほうが最初からそろっていることが多い。

比べるときは、実際の案件を1本使い、次の3つの手順を見てください。

  • 社員の工数が、案件の原価に反映されるまで
  • 外注の費用が、案件にひもづくまで
  • 共通の費用を、どの基準で案件に配るか

AIとの親和性の比較

観点ZACNetSuite
組込型のAIAI日報補完・AI-OCR・AI差分要約・AIマッピングText Enhance・Narrative Insightsなど。提供の地域は機能ごとに異なる
外部のAIとの連携ZAC MCPサーバーで生成AIとつなぐAI Connector Service(MCP)でClaude・ChatGPTなどを接続
AIが使えるデータの広さ案件・売上・原価・工数が中心案件・販売・会計・顧客が1か所に
親和性の見立て中(入力の省力化に強み。会計の数字は別の仕組み)高い(会社全体のデータをAIに渡しやすい)

(出典:ZACニュース・オロ ZAC公式・Oracle NetSuite公式、2026年9月確認。見立てはベンチャーネットによる)

ZACは2026年4月21日に、AI日報補完機能を発表しました。

生成AIが、カレンダーの予定から、ふさわしい案件と作業の内容を提案する機能です。

発表時は2026年5月の提供予定で、ZACの契約に加えて勤怠のライセンスの契約が必要とされています(出典:ZACニュース、2026年9月確認)。

公式サイトには、ほかにAI-OCR・AI差分要約・AIマッピングも載っています。

ZAC MCPサーバーは、生成AIとZACをつなぐ仕組みです。

案件・売上・原価・工数のデータを、AIとの対話で集計・分析する用途です(出典:オロ ZAC公式、2026年9月確認)。

NetSuiteは「#1 AI Cloud ERP」を掲げています(Oracle公式)。

AI Connector Serviceは、自社で選んだAIをつなぐ「Bring your own AI」の考え方です。

利用者もAIも、ロール(役割)に許された範囲だけを見ます(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。

MCP(Model Context Protocol)は、外部のAIとシステムをつなぐための共通の約束事です。

案件型の会社で、AIに任せたい仕事を3つ挙げます。

  • 工数の入力の漏れや、案件のコードの付け間違いの候補を出す
  • 予算に対して原価が膨らみ始めた案件を、早めに知らせる
  • 月次の案件別の損益の変化を、文章で要約して経営会議に出す

1つ目は、ZACのAI日報補完機能が狙う領域に近い仕事です。

2つ目と3つ目は、案件と会計の両方の数字を使うほど、精度が上がります。

数字が別のシステムにあると、AIに任せる前に、データをそろえる手間がかかる。

差は、AIが見られるデータの広さから生まれます。

AIの活用はAIクラウドERPとは?で扱っています。

判断の物差し|向いている会社・向いていない会社

こうしたいならどれが合いやすいかを図にすると、次のとおりです。

こうしたいなら、これ:ZAC・NetSuite・ほかの選択肢 案件ごとの損益を重視するならZAC、今の会計システムを残したいならZACと今の会計、海外や連結を含めて会社全体を1つで見たいならNetSuite、費用を抑えて案件と会計を1つで始めたいならOdoo、業務がとても独特ならAIスクラッチ開発が合いやすい。 こうしたいなら、これ こうしたい 合いやすい 案件ごとの損益を いちばん重視する ZAC 今の会計システムを そのまま残したい ZAC+ 今の会計 海外・連結も含めて 会社全体を1つで見たい NetSuite 費用を抑え、案件と 会計を1つで始めたい Odoo 業務がとても独特で パッケージに合わない AIスクラッチ 開発 迷ったら、3年後の会社の姿で考える
こうしたいなら、これ:ZAC・NetSuite・ほかの選択肢

ZACが向いている会社

  • 仕事の中心が案件・プロジェクトで、案件ごとの損益を最も重視する
  • 国内の事業が中心で、海外の拠点の予定が当面ない
  • 今の会計システムに不満がなく、残したい
  • 顧客管理は、HubSpotやSalesforceなどで回っている
  • 業種に合わせた作り込みを使って、早く始めたい

ZACには、案件型の業種の「当たり前」が最初から画面に入っています。

受注予定日・売上計上日・入金予定日・請求書の未発行などのアラートも、現場の抜けを減らします(出典:オロ ZAC公式、2026年9月確認)。

案件の管理が経営の中心で、会社の形が当面変わらないなら、ZACを選ぶ理由は十分にあります。

ZACが向いていない会社

  • 子会社や海外の会社が増え、会社全体の数字を1つで見たい
  • ZACと会計の数字の突き合わせに、毎月多くの時間を使っている
  • 物を仕入れて売る事業が大きく、在庫の管理が経営の中心

NetSuiteが向いている会社

  • 案件の損益と、会社全体の会計を1つの仕組みで見たい
  • 顧客管理から請求・入金までを、同じデータでたどりたい
  • 海外の拠点がある、または予定がある
  • 複数の会社・連結の管理が必要になっている

NetSuiteが向いていない会社

  • 案件の管理だけを良くしたく、会計は今のままでよい
  • 業種に特化した案件の画面と、細かい作り込みを最優先したい
  • 国内の小さな組織で、仕組みの広さを使い切れない

判断に迷いやすい例

よくある迷い方を、架空の例で示します。

会社の状況(架空)迷う理由考え方
広告の制作会社。ZACと会計ソフトで回っている。子会社はない経営会議の資料づくりに手間がかかる資料づくりの時間を数え、ZACのBIツール連携で足りるかを先に見る
システム開発。海外に開発の子会社をつくる予定ZACの案件管理に慣れている海外の会社の会計と連結をどうするかで判断。NetSuiteの比較が要る
コンサル会社。M&Aでグループが3社に各社で会計ソフトが違う会社全体の数字を1つで見る必要が強ければ、NetSuiteを比べる

迷ったら、「3年後にこの表のどの行に近いか」を考えてください。

どちらでもない選択肢

状況検討したい選択肢
費用を抑え、案件と会計を1つで始めたいOdoo(Odooとは?)
案件型で、ZAC以外の製品とも比べたいReforma PSAなど(Reforma PSAとNetSuiteの比較)
業務がとても独特で、パッケージに合わないAIスクラッチ開発(AIでスクラッチ開発とERP)

他の主要なERPも含めて比べるなら、ERPを徹底比較と自社に最適なERPを見つけるための比較選定ポイントをご覧ください。

表計算から選ぶ会社と、ZACを使い続けている会社

表計算から移る会社は「会計を残すか」を先に決める

初めて案件管理の仕組みを入れる会社は、次の順番で考えます。

  1. 3年後・5年後の事業の姿を書く(海外・新しい事業・M&Aの可能性)
  2. 会計を1つの仕組みで持つか、今の会計システムを残すかを決める
  3. 「案件管理の深さ」と「会社全体の広さ」のどちらを優先するかを決める

1と2が決まれば、3は自然に決まることが多い。

海外や子会社の予定があれば広さ、案件の種類が多く複雑なら深さです。

いきなり片方に決めず、両方のデモで同じ案件を通してもらってください。

「見積→受注→工数→請求→入金→会計」までを1本です。

合い方の見方はFit&Gap分析で扱っています。

費用は、形の違いから並べます。

費用の項目ZACNetSuite
始めるとき初期設定費用10万円、導入支援(条件つきの無料プラン/都度見積もりのプラン)導入の支援の費用(範囲で変わる)
毎月・毎年ライセンス(各ライセンスの価格×機能の利用人数)、保守費用6万円〜/月利用料(ミニマム構成で月額20万円〜)
別にかかるもの財務会計システムの費用連携する他のシステムの費用

(出典:オロ ZAC公式・Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)

NetSuiteは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。

導入の費用と期間は、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数の4つで大きく変わります。

NetSuiteの費用の見方は、NetSuiteの料金で扱っています。

ZACを選ぶなら、会計システムの費用も足してください。

2つの仕組みの合計と、NetSuiteの1つの仕組みを、5年程度の総額で並べるのが公平です。

総額には、見えにくい費用も入れます。

  • 2つの仕組みの間の突き合わせにかかる、社内の人の時間
  • 連携の仕組みを直すときの費用
  • 会社や拠点が増えたときに、追加で要る仕組みの費用

これらを入れると、利用料の差とは違う結果になることがあります。

逆に、会社の形が当面変わらないなら、ZACと今の会計システムの組み合わせが安く済むこともあります。

ZACを使う会社が、比べ始めてよい5つのサイン

ZACで業務が回っているなら、まずそれを大切にしてください。

業務が整った会社ほど、「会計や顧客管理まで1つにしたい」という要望が出てきます。

自然な流れです。

ただ、乗り換えありきで動くと、失敗しやすくなります。

比べ始めてよいのは、次のサインが出たときです。

サイン起きていることNetSuiteで変わること
1. 顧客管理と会計まで一体にしたい営業・案件・会計のデータが別々で、突き合わせが多い見込み客から入金までを1本でたどれる
2. 海外の拠点の管理が要る通貨・言語・税制が違う会社が増える多通貨・多言語・各国の税制を1つで扱う
3. 財務管理を高度にしたい収益認識や複数の案件の利益管理が複雑になった会計と案件が同じ基盤で動く
4. 連結とグループの管理が重い子会社の追加やM&Aで会社が増えた複数の会社を前提に管理できる
5. 経営の判断を速くしたい会社全体の数字が月次の締めの後にしか分からない画面で会社全体の数字を見られる

収益認識は、売上をいつ、いくら計上するかを決めるルールのことです。

サイン1は、営業から会計までを1本で見たくなったときです。

ZACはHubSpotやSalesforceと連携できますが、仕組みは別々のまま。

見込み客から入金までを1つの画面で追いたいなら、NetSuiteの統合が活きます。

サイン2は、海外に拠点をつくるときです。

ZACの公式の機能一覧には、多通貨の記載は見当たりませんでした(2026年9月確認)。

海外の会社の会計をどう扱うかを、先に決める必要があります。

見落としやすい点は、中小企業の海外進出で見落としがちな「基幹システム」の落とし穴で扱っています。

サイン3と4は、会社が大きくなったときです。

収益認識や子会社の連結などの要件が増えるほど、会計を1つで持つ価値が上がります。

サイン5は、締めを待たずに会社全体の数字を見たいかどうかです。

逆に、次の場合はZACを使い続けるのが合理的です。

  • 業務が案件の管理に集まり、それ以外は他のシステムで完結している
  • 海外の展開や子会社の管理の予定がない
  • 今のZACで業務が回り、はっきりした不満や不足がない

ZACを続けながら、一部だけ見直す道

乗り換えるか、続けるかの二択ではありません。

困りごとZACを続けたまま考えられる手
経営会議の資料づくりに時間がかかるZACのBIツール連携を使い、集計を自動にする
会計との突き合わせが重い連携の頻度・マスタ・手順をそろえる(第2章2-4)
顧客管理が別で、営業の数字が見えないHubSpot・Salesforceとの連携のオプションを使う
会計ソフトが古く、限界がある会計システムだけを見直し、ZACとの連携を組み直す

(ZACの連携の出典:オロ ZAC公式の機能一覧、2026年9月確認)

こうした手を打っても困りごとが残るなら、そのときが比べる時期です。

ZACの今後の計画やサポートの方針は、開発元のオロに聞くのが確実です。

乗り換えでよくある3つの失敗

3つの失敗と避け方を図にすると、次のとおりです。

ZACからの乗り換えでよくある3つの失敗 ZACの画面をそのまま再現しようとする、会計の考え方の違いに直前まで気づかない、Fit&Gapを省いて乗り換えありきで進める。1つ目は、案件管理を業務の要件として書き出して避ける。 乗り換えでよくある3つの失敗 1 ZACの案件管理をそのまま再現 避け方:業務の要件として書き出す 2 会計の違いに直前まで気づかない 避け方:設計の最初に経理・税理士と決める 3 Fit&Gapを省いて進める 避け方:決める前にFit&Gapを行う
ZACからの乗り換えでよくある3つの失敗

失敗1:ZACの案件管理を、そのままNetSuiteで再現しようとする

起きること:「ZACでできていたことを、NetSuiteでも同じように」と求め、作り込みが膨らんだ。

費用と期間が延び、NetSuiteの年2回の更新ごとに確認の手間がかかるようになった。

原因:ZACは案件型の業種に合わせて深く作り込まれ、NetSuiteは会社全体を統合する汎用の設計である。

設計が違うのに、「同じことをさせる」前提で進めた。

避け方:ZACの画面を写すのではなく、案件管理を「業務の要件」として書き出します。

そのうえで、第8章の型2で仕分けます。

製品の型に自社を合わせる考え方が、成否を分けます。

失敗2:会計の考え方の違いに、移行の直前まで気づかない

起きること:設計の終盤で、ZACと会計システムで分けていた仕訳が、NetSuiteでは別の仕組みになると気づいた。

顧問の税理士の作業の流れとも合わず、決算の前後で確認の往復が増えた。

原因:2つで回していた処理を、NetSuiteの1つの仕組みにどう載せるか、早くに決めていなかった。

NetSuiteは、商品を出荷した時点で在庫資産を減らし、売上原価を計上します(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。

日本でいう売上原価対立法(売った時点で売上原価を計上する方法)にあたります。

日本の会社でよく使われる三分法とは、考え方が異なります。

避け方:設計の最初の段階で、CFO・経理の責任者・顧問の税理士を交えた会を開きます。

仕訳の型・原価の配賦・収益認識の3つを、NetSuiteでどう扱うかを先に決めます。

帳票やデータの形が、今の経理と税理士の業務に合うかも、ここで見ておきます。

会計の差の考え方はERPと会計のギャップで扱っています。

失敗3:Fit&Gapを省き、「乗り換えありき」で進める

起きること:移った後で「思っていたのと違う」と感じ、現場の不満が続いた。

範囲も一度に広げすぎて、テストと現場の混乱が膨らんだ。

原因:「ZACの限界を感じる→NetSuiteの評判がよい→とりあえず進める」と、合い方の確認を省いた。

「どうせなら顧客管理も一緒に」と、範囲を一度に広げた。

合う仕組みは、事業の形や規模、成長の段階で変わる。

すべての会社にNetSuiteが合うわけではありません。

避け方:本格的に決める前に、Fit&Gapを行います。

移す範囲は、「ZACで困っていた領域」と「NetSuiteで効果がはっきり出る領域」から始めます。

定着を見てから、段階的に広げる。

最初から100点を目指さず、80点で始めて直していくほうが、結果として近道です。

失敗の全体像は、ERP導入はなぜ失敗するのかで扱っています。

ベンチャーネットならこう見る|ZACの案件管理を仕分ける2つの型

「ZACの機能一覧を渡せば、要件は足りるはずだ」

乗り換えを考える会社から、よく聞く言葉です。

ベンチャーネットは、移る先がNetSuiteに決まっていても、業務の見える化からやり直します。

機能一覧には、もう使っていない帳票や、Excelで補っている作業が混ざっています。

一覧をそのまま要件にすると、要らない作り込みまで運ぶことになる。

失敗1の多くは、ここから始まります。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap

  1. 業務の見える化:案件の登録から入金・会計までの流れを、現場に聞いて描く
  2. 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
  3. Fit&Gap:残った業務を、NetSuiteの標準機能と照らし合わせる

月末の突き合わせのように、2つの仕組みの間を埋める作業は、2段目でやめる候補になります。

1つの仕組みにまとめれば、要らなくなるからです。

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、NetSuite標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&GapNetSuiteの標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

型2:標準に合わせる/開発する/残す

Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。

選択ZACからの乗り換えでの例
標準に合わせる案件の登録や承認の流れを、NetSuiteの標準のプロジェクト管理に寄せる
開発する業種に固有の帳票や、外部のシステムとの連携を追加で作る
残す新しい仕組みに載せず、いまの運用や別の仕組みで続ける

1つ目を選べる業務が多いほど、年2回の更新の手間は軽くなります。

2つ目は、費用と期間を押し上げやすい選択です。

3つ目には、「当面はZACを続け、会計だけを見直す」という判断も含まれます。

変わることは、見積もりの前に伝える

NetSuiteへ移れば、帳票の形、締め処理の考え方、画面の操作感が変わります。

ライセンス費用が、いまより上がることもあります。

給与・人事はNetSuiteの対象外で、別の仕組みが要ります。

ベンチャーネットは、こうした点を先にお伝えします。

比べた結果が「ZACを続ける」になれば、その結論もそのまま申し上げます。

ZACのような業種特化の製品とNetSuiteは、どちらが優れているかではなく、それぞれに長所があります。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているのは、合う条件で選ぶためです。

最初の打ち合わせで伺うのは、主に次の3つです。

  • ZACと会計の突き合わせに、毎月何時間かかっているか
  • 3年後に、会社の数と国の数は増えるか
  • ZACの案件管理のうち、手放せない機能はどれか

データの移し方は、基幹システムのデータ移行ガイドで扱っています。

乗り換えの相手を選ぶときの目安

乗り換えの成否は、製品と同じくらい、一緒に進める相手で決まります。

契約の前の会話で、次のサインを見てください。

見る点良いサイン
最初の提案導入を勧める前に、今の業務と将来の姿を聞いてくる
Fit&Gap合わない部分を、合わないとはっきり言う
範囲の決め方一度に広げず、段階的に進める案を出す
稼働後定着の段階の体制と費用を示す

選び方はNetSuiteパートナーの選び方と伴走型のNetSuite導入支援とは?で扱っています。

今日できること|1時間でつくる「突き合わせの時間の表」

経理と案件の担当者に聞いて、次の表を埋めてみてください。

作業誰が月に何時間使っている仕組み
(例)ZACの売上と会計の売上の突き合わせ経理8時間ZAC・会計ソフト・Excel
(例)案件別の利益を経営会議用にまとめる経営企画6時間ZAC・Excel
(例)顧客管理と受注の数字の照合営業事務4時間Salesforce・ZAC

合計の時間が、今の仕組みの「見えない費用」です。

小さければ、今の仕組みを続けるのが合理的。

大きければ、1つにまとめる案を具体的に比べる価値があります。

3年後に会社や国の数が増える予定があるかも、1行で書き添えます。

この表と1行があれば、どちらの窓口に相談しても、話が具体的になります。

余裕があれば、直近3か月の「すぐに知りたかったのに分からなかった」場面も書き出します。

「この案件は赤字になりそうか」「今月の粗利はいくらか」。

今の仕組みで何日後に答えられたかを添えてください。

その日数が長いほど、数字を1つにまとめる価値は大きくなります。

よくある質問

Q1. ZACで特に困っていません。それでもNetSuiteを検討する意味はありますか

すぐに乗り換える必要はありません。

会社が伸びると、会計や顧客管理まで1つにしたい要望が出ることがあります。

将来の選択肢として知っておき、第6章のサインが出たときに比べれば十分です。

Q2. ZACとNetSuiteの一番大きな違いは何ですか

財務会計を1つの仕組みで持つかどうかです。

ZACは、区分けしたCSVのデータを出して、外部の会計システムと連携します。

NetSuiteは、会計を含めて1つのデータベースで扱います。

今の会計システムを残したいか、会社全体を1つで見たいかで、合う方が決まります。

Q3. ZACのデータをNetSuiteに移せますか

移せます。ただし、移す範囲と形の設計が要ります。

取引先・社員・案件などのマスタは、NetSuiteの形に合わせて移します。

過去の取引を何年分移すかは、業務の必要で決めます。

会計の仕訳は、ZACと会計システムの考え方の違いを踏まえて移し方を決めます。

範囲は、Fit&Gapの段階で決めておくのがおすすめです。

Q4. 費用と期間の目安はどれくらいですか

構成と範囲で大きく変わります。

NetSuiteの利用料は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

複数のモジュールを使う中堅企業では、数百万円規模になることもあります。

導入の費用と期間は、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数で変わります。

ZACを続ける場合の費用も、会計システムを含めて同じ期間で並べてください。

Q5. ZACにAIの機能はありますか

AI日報補完などの機能があります。

AI日報補完は、生成AIがカレンダーの予定から案件と作業を提案する機能です。

勤怠のライセンスの契約が必要とされています(出典:ZACニュース、2026年9月確認)。

生成AIとZACをつなぐZAC MCPサーバーも、公式サイトに載っています(出典:オロ ZAC公式、2026年9月確認)。

Q6. ERPの乗り換えは失敗が怖いのですが

合い方を先に見れば危険は大きく減らせます。

失敗の多くは、Fit&Gapを省いたり、範囲を一度に広げたりすることから起きます。

第7章の3つの失敗を避ける順番で進めてください。

効果のはっきりした領域から始めるのが安全です。

Q7. どちらが合うか迷っています。誰に相談すればよいですか

それぞれの製品の窓口に同じ質問をしてください。

ZACの詳細は開発元のオロに、NetSuiteの詳細はNetSuiteのパートナーに聞くのが確実です。

両方の話を聞き、第9章の表を土台に比べると、納得して決められます。

まとめ

  • ZACとNetSuiteの違いは、業種特化の深さと統合の広さにある
  • 最大の分かれ目は、財務会計の持ち方(1つで持つか、つなぐか)
  • ZACで回っている会社は、すぐに乗り換える必要はない
  • 顧客管理・海外・連結・経営の速さの要望が出たら、比べ始めるサイン
  • 乗り換えるなら、見える化から始め、「標準に合わせる/開発する/残す」で仕分ける

月末の突き合わせに、毎月何時間かかっているか。

比べ始めるかどうかは、まずその時間を数えてから決めてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

NetSuiteが自社の案件管理と会計に合うかを、実際の画面で見たい方は、無料のデモをご利用ください。

ZACなど今のシステムからの乗り換えを考えている方は、リプレイスの相談もお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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