「奉行を長く使ってきたのだから、上位の奉行V ERPクラウドに上げるのが自然だろう」
勘定奉行を使う会社の経理部長やCFOから、よく聞く考え方です。
国内中心の会社なら、多くの場合その判断で合っています。
ただ、海外拠点やグループ会社が増える途中の会社では、答えが変わることがあります。
NetSuiteと奉行V ERPクラウドの違いとは、経営の基盤を「世界で一つのデータ」で持つか、「日本の業務と会計」を軸に持つかの違いです。
NetSuiteは、Oracleが提供するクラウドERPです。
奉行V ERPクラウドは、OBC(株式会社オービックビジネスコンサルタント)が提供するSaaS型のERPです。
ERP(統合基幹業務システム)は、会計・販売・在庫・人事などの業務データを一つにまとめる仕組みを指します。
- 海外拠点・販売から在庫までの一体の管理・AIの活用を重く見るなら、NetSuiteが合いやすい
- 国内中心で、会計・人事労務・IPOの準備を日本の実務に沿って固めたいなら、奉行V ERPクラウドが合いやすい
- どちらも合わない会社には、組み合わせや「いまは変えない」という道もある
では、奉行シリーズを使ってきた会社は、何を見て「上げる」か「移る」かを決めればよいのか。
答えは、機能の表ではなく、5年後の会社の姿のほうにあります。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、奉行V ERPクラウドの導入支援をしていません。
それでも、奉行V ERPクラウドのほうが合う条件は、そのまま書きます。
この記事で分かること
- NetSuiteと奉行V ERPクラウドの考え方の違い(早見表)
- 公式情報で見た両製品の要点と、6つの軸での比較
- どんな会社ならどちらが合うか、どちらも合わない場合の選択肢
- いま奉行シリーズを使っている会社の3つの道
- 移る前に業務を仕分ける、ベンチャーネットの2つの型
奉行V ERPクラウドそのものの機能や費用は、勘定奉行VERPとはで解説しています。
NetSuiteの全体像は、NetSuiteとは?をご覧ください。
違いは「基盤の広さ」と「日本の実務への深さ」
早見表
| 観点 | NetSuite | 奉行V ERPクラウド |
|---|---|---|
| 提供元 | Oracle(米国) | OBC(日本) |
| 一言で | 世界で一つのデータで経営を見る基盤 | 日本の中堅企業の会計・業務を統合する基盤 |
| 中心の業務 | 会計・販売・購買・在庫・CRMまで | 会計・人事労務・販売管理など |
| 強み | 海外・グループ・販売から会計までの一体の管理 | 日本の業務慣行・法制度への対応、IPOの準備 |
| 費用の目安 | ミニマム構成で月額20万円〜 | 個別見積 |
どちらも「クラウドERP」ですが、守備範囲の中心が違います。
NetSuiteは広さ、奉行V ERPクラウドは日本の実務への深さが持ち味です。
どちらを取るかは、今の課題より、5年後の会社の姿で決まります。
今は国内だけでも、海外やグループに広がる計画があれば、広さの価値が上がります。
公式情報で見たNetSuiteの要点
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
190通貨・27言語に対応し、複数の子会社を一つのシステムで扱うOneWorldという仕組みを持ちます。
大きなリリースは年2回で、数か月かけて段階的に更新されます(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
業種別の導入の型として、SuiteSuccessがあります。
公式サイトでは「決められた時間と予算ですぐに本稼働できます」と案内されています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
公式情報で見た奉行V ERPクラウドの要点
OBCの公式サイトでは、次のように案内されています(2026年9月確認)。
- 奉行シリーズの導入の累計は86万(2026年8月末時点)
- 上場企業の導入は1,736社(2026年8月末時点)
- MicrosoftのAzure AI Serviceを採用
- 過去10年のIPO実現企業の導入は50.8%(2026年3月末時点)
- グループ会社での利用は5,557社(2023年12月末時点)
安全の面では、SOC1 Type2・SOC2 Type2の保証報告書を案内しています。
政府のクラウドの安全基準であるISMAPにも、登録されています(出典:OBC公式、2026年9月確認)。
SOC1は、財務報告に関わる内部統制を、外部の監査人が評価した報告書です。
クラウドの製品を選ぶとき、監査法人から求められることがあります。
考え方の違いは、使い始めた後に出る
| 場面 | NetSuiteで起きること | 奉行V ERPクラウドで起きること |
|---|---|---|
| 法制度が変わった時 | 日本の制度への対応は、機能や設定を個別に見る必要がある | プログラムは自動で更新される。制度ごとの対応は提供元に確認 |
| 海外の拠点を作った時 | 同じシステムの中に子会社を足していける | 本社で海外の会計をまとめる形が中心 |
| 販売の仕組みを変えた時 | 販売と会計が同じデータなので、変更が会計まで届く | 販売管理と会計のつながりの範囲を要確認 |
| 担当者が替わった時 | 標準の画面と手順なので、世界共通の情報が多い | 国内の利用者が多く、経験者を見つけやすい |
(奉行V ERPクラウドの自動更新の出典:OBC公式、2026年9月確認)
国内の制度への対応を重く見るか。
事業の広がりへの対応を重く見るか。
分かれ目は、この2つのどちらに重心を置くかです。
6つの軸で比べる
比較のまとめ
| 比較の軸 | NetSuite | 奉行V ERPクラウド |
|---|---|---|
| AIとの親和性 | 組み込みのAIと、外部のAIとの接続(MCP)の両方 | Azure AI Serviceを採用。ノーコード・ローコードやETLのツールで外部と連携 |
| 海外・グループ | 190通貨・27言語。複数の子会社を一つのシステムで | 管理連結・連結精算表。多言語多通貨のGlobal Editionあり |
| 統合の範囲 | 会計・販売・在庫・CRM・EC・プロジェクト・人事 | 会計・人事労務・販売管理などの基幹業務 |
| 広げ方 | SuiteScriptなどで拡張。標準に合わせるのが基本 | ノーコード・ローコードのツールで拡張 |
| 導入の進め方 | SuiteSuccessで業種別の型を使う | 標準機能をもとに、必要な業務の範囲を選んで入れる |
| 費用 | ミニマム構成で月額20万円〜。構成で変わる | 個別見積 |
(出典:Oracle NetSuite公式・ヘルプ、OBC公式、2026年9月確認)
AIとの親和性
AIとの親和性は、ERPのデータをAIの分析や点検に生かしやすいかどうかです。
NetSuiteは、ERPの中に組み込まれたAIと、外部のAIとの接続の両方を持ちます。
外部との接続には、AI Connector Serviceを使います。
MCP(AIと外部のシステムをつなぐ共通の規格)にもとづく仕組みです。
Oracleのヘルプでは、Claude(Pro以上)やChatGPTが使えると案内されています。
サービス自体は有料の機能ではなく、管理者のロール(権限の役割)では使えません。
組み込みのAIは、日本で使えるかどうかが機能ごとに違います。
Narrative Insights(レポートの要約)は、日本でも使えます。
一方、Bill Capture(請求書の読み取り)は米国のみの提供です(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
奉行V ERPクラウドは、MicrosoftのAzure AI Serviceを採用しています。
外部のサービスとは、ノーコード・ローコードやETLのツールで連携できます(出典:OBC公式、2026年9月確認)。
ETLは、データを取り出し、形を整え、別のシステムに入れる仕組みです。
- ClaudeやChatGPTから、販売・在庫・会計のデータに直接聞きたい → NetSuiteの仕組みが合いやすい
- 会計や人事の業務の中でAIを使い、外部とは連携ツールでつなげば十分 → 奉行V ERPクラウドも候補
経理の現場なら、「先月より粗利が大きく下がった取引先を洗い出す」「入金が遅れがちな取引先を一覧にする」といった点検をAIに頼めます。
どちらの製品でも、AIの価値はデータが一か所にそろっているかで決まります。
AIに見せてよいデータの範囲と、答えを人が見直す所は、先に決めておいてください。
海外・グループの管理
NetSuiteは、海外の子会社を含むグループを、一つのシステムで扱う前提で作られています。
海外の拠点を持つ会社や、数年のうちに持つ予定の会社ほど、比べる価値が大きくなります。
詳しくはNetSuiteのグローバル展開機能で解説しています。
奉行V ERPクラウドは、グループ会社の情報を集めて、管理連結と連結精算表を作れます。
多言語・多通貨の「勘定奉行クラウド Global Edition」もあります(出典:OBC公式、2026年9月確認)。
国内の本社を中心に、海外拠点の会計をまとめる形に向きます。
統合の範囲
NetSuiteは、会計・販売・購買・在庫・CRM・EC・プロジェクト・人事を一つのデータベースで扱います。
受注から出荷・請求・会計までが、同じデータでつながります。
奉行V ERPクラウドは、会計・人事労務・販売管理などの基幹業務を中心に統合します。
給与や勤怠まで、日本の労務の業務を一つの提供元でそろえやすい点が特徴です。
「販売・在庫・会計を一つにしたい」ならNetSuite。
「会計と人事労務を中核に固めたい」なら奉行V ERPクラウド。
販売や在庫を表計算で管理している部分が多いほど、統合の範囲を広く取る価値が上がります。
広げ方と導入の進め方
NetSuiteは、SuiteScript(NetSuite専用の開発の言語)などで機能を広げられます。
ただし基本は、Fit to Standard(業務をシステムの標準の機能に合わせる進め方)です。
奉行V ERPクラウドも、標準の機能に業務を合わせ、足りない所は連携ツールで補う考え方です。
必要な業務の範囲を選んで入れられます(出典:OBC公式、2026年9月確認)。
どちらも、作り込みを増やすほど、クラウドの更新の恩恵が小さくなります。
段階的に入れる場合も、最終的にどこまでを一つにするかの地図は、最初に描いておきます。
地図がないまま進めると、つなぎ目が増え、後から一つにまとめる手間が膨らむからです。
費用の見方
NetSuiteは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
使うモジュール・ユーザー数・オプションで金額は変わり、月額が数百万円規模になることもあります。
奉行V ERPクラウドは、公開情報の範囲では個別見積です。
使うサービスとライセンスの数で、費用が変わります。
ライセンスの差より大きく開くのは、導入の費用と期間です。
ベンチャーネットがNetSuiteの導入を支援してきた中で、差を生む要因は4つあります。
機能範囲、開発(特に外部システムとの連携)、社内の体制、ユーザー数。
情報システムの担当が少ない会社では、サポートを厚くする分、期間も延びやすくなります。
奉行シリーズから移るなら、いまの会計と他システムをつなぐ箇所の数が、「開発」の重さに響きます。
比べるときは、月額だけでなく5年ほどの総額で見てください。
見積は、利用料・導入の支援・作り込み・データの移行・保守を、同じ行にそろえて並べます。
費用の考え方は、クラウドERPの費用・料金相場で解説しています。
NetSuiteを候補にするなら、先に見る日本の会計・税制
奉行シリーズは、日本の会計・税制・労務に合わせて作られてきた製品です。
NetSuiteを候補にするなら、次の点を先に見てください。
| 見る点 | 理由 | 詳しくは |
|---|---|---|
| 原価の計上の方法 | NetSuiteは出荷の時点で売上原価を計上する(売上原価対立法にあたる)。三分法とは仕訳の考え方が違う | ERP導入で会計がつまずく3層構造 |
| 消費税・インボイス | 日本の税の計算と帳票の形が合うか | NetSuite SuiteTaxとは |
| 電子帳簿保存法 | 証憑の保存の方法が、法の要件に合うか | NetSuiteと電子帳簿保存法・インボイス制度の対応 |
| 手形 | 日本独自の支払の方法を使っているか | NetSuiteは日本の手形に対応できる? |
| 給与・勤怠 | 日本の給与の計算を、どの製品で持つか | 給与は別の製品と組み合わせる形も比べる |
こうした点は、国産の製品のほうが手間なく合うことがあります。
差を埋める方法と費用を見積もったうえで、比べてください。
導入した後の支え方
どちらの製品も、導入と運用は、提供元か認定のパートナーが支えます。
NetSuiteは、Oracleが認定したパートナーが導入と運用を支援する形が中心です。
奉行V ERPクラウドは、OBCか、奉行V ERPクラウドの認定パートナーが窓口です。
製品が同じでも、支援する会社の力量で結果は大きく変わります。
支援する会社には、次の3つを聞いてください。
答え方の具体さも、見極めの材料になります。
- 自社の業種や規模の導入を、どのくらい経験しているか
- 稼働した後の問い合わせに、誰が・どの時間帯で答えるか
- 法制度の変更や製品の更新のときに、何をしてくれるか
NetSuiteのパートナーの選び方は、NetSuiteパートナーの選び方で解説しています。
判断の物差し|どちらが合うか
NetSuiteが合う会社
次のうち2つ以上に当てはまるなら、NetSuiteを比べる価値があります。
- 海外に拠点がある、または3〜5年のうちに海外に出る予定がある
- 販売・購買・在庫・会計を、一つのデータでつなぎたい
- ClaudeやChatGPTから、業務のデータを使って分析したい
- M&Aで事業やグループ会社が増える予定がある
- 業務を標準に合わせて見直す覚悟が、経営者にある
NetSuiteの価値は、販売から会計までが一つのデータでつながる所にあります。
会計の効率化だけが目的なら、ほかの製品のほうが費用に見合うことも多いでしょう。
反対に、国内の1社だけで会計と人事労務の効率化が主な目的なら、NetSuiteは合いにくくなります。
会計だけを先に替え、販売や在庫を当面そのままにしたい場合も同じです。
奉行V ERPクラウドが合う会社
次のうち2つ以上に当てはまるなら、奉行V ERPクラウドが合う可能性が高くなります。
- 事業の中心が国内で、当面は海外に出る予定がない
- すでに奉行シリーズを使っていて、上位の製品に移りたい
- 顧問税理士や監査法人が、奉行シリーズに慣れている
- IPOの準備と内部統制を、日本の実務に沿って固めたい
- 給与・勤怠など人事労務まで、一つの提供元でそろえたい
強みは、日本の会計・人事労務の実務に沿って、早く固められる所です。
国内で成長している段階の会社には、無理のない選択です。
一方で、海外子会社の販売や在庫まで日々同じ仕組みで見たい会社には、合いにくくなります。
どちらも合わない場合
| 選択肢 | 合う条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| NetSuiteと国産の会計ソフトの組み合わせ | 販売・在庫はNetSuite、会計は慣れた製品を残したい | つなぎ目の設計と、二重入力の防止が要る |
| Odoo | 小さく始めて、アプリを足しながら広げたい | 日本向けの設定と、支援する会社の選び方が要る |
| AIスクラッチ開発 | 業務が他社と大きく違い、それ自体が強み | 作った後の保守と改修の体制が要る |
| いまは変えない | 今の仕組みで回り、更新の期限も迫っていない | 見直しの時期だけは決めておく |
組み合わせの方法は、NetSuiteとfreee・マネーフォワード・勘定奉行を組み合わせるで検証しています。
AIスクラッチ開発は、生成AIを使って自社専用のシステムを作る方法です。
比べ方は、AIでスクラッチ開発とERP、どちらを選ぶべきかをご覧ください。
これから選ぶ会社と、奉行シリーズを使っている会社
これから選ぶ会社
進め方は、次の順番です。
- 5年後の会社の姿を決める(国内を深めるか・海外か・グループを広げるか・IPOか)
- ERPに任せる範囲を決める(会計と人事労務か、販売・在庫までか)
- 第3章の物差しで候補を絞る
- 同じ場面で両方のデモを見る
- 顧問税理士と監査法人に早めに相談する
デモでは、受注から出荷・請求・入金までを1件通してもらいます。
月末の締めで今いちばん時間がかかる作業と、税理士に渡している帳票も、両方の製品で再現してもらいましょう。
受け方は、NetSuite体験デモで確認すべき10のポイントで解説しています。
いま奉行シリーズを使っていて、見直しを考えている会社
奉行シリーズを使っている会社には、3つの道があります。
| 道 | 合う条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| A. 奉行V ERPクラウドへ上げる | 国内中心で、会計・人事労務を深めたい | 販売・在庫をどこで持つかを決めておく |
| B. 会計は奉行、販売・在庫はNetSuite | 販売・在庫の管理を強くしたいが、会計は慣れた形を残したい | 二つをつなぐ設計と、月末の突き合わせの手間 |
| C. 全面的にNetSuiteへ移る | 海外・グループ・AIの活用が経営の中心になる | 仕訳の考え方の違いと、業務の見直しが要る |
慣れた製品の上位に移るのは、自然で負担の少ない道です。
現場の操作の慣れも、税理士とのやり取りも、そのまま生かせます。
ただ、会社が海外やグループへ広がる途中なら、次の更新の時期に一度はCも比べてください。
冒頭の問いへの答えは、ここにあります。
「上げる」か「移る」かを分けるのは、次のような変化が起きているかどうかです。
- 海外に子会社を作る、またはM&Aでグループ会社が増える
- 販売や在庫を表計算で管理していて、会計とのずれが大きい
- 月次の締めで、販売と会計の数字の突き合わせに時間がかかっている
どの道を取る場合も、移す過去のデータの範囲、勘定科目と部門の体系、税理士への帳票の受け渡し、給与と勤怠の持ち方の4つは決めておきます。
期限の直前に動き出すと、比べる時間が足りず、今のまま更新するしかなくなります。
期限から逆算して、少なくとも1年前には比べ始めてください。
移し方の考え方は、基幹システムのリプレイスとはで解説しています。
よくある3つの失敗
3つの失敗と避け方を図にすると、次のとおりです。
失敗1:目的があいまいなまま、機能を比べる
起きること:比べるほど迷い、提案をそのまま受け入れて、使わない機能にお金をかける。
原因:「業務の効率化」「DXの推進」といった大きな言葉のまま、比べ始めていた。
目的があいまいだと、社内の立場ごとに違うゴールを描き、合意も進みません。
避け方:比べる前に、経営の課題(海外展開、IPOの準備など)と業務の課題を言葉にします。
目標の数字も1つ置きます(例:月次の締めを5営業日早める)。
失敗2:今の業務をそのまま再現しようとする
起きること:作り込みが増え、導入の費用と、更新のたびの調整が膨らむ。
原因:どちらもSaaS型で、標準の業務の流れを前提に作られていることを軽く見ていた。
避け方:今の業務を、「本当に必要な業務」と「昔のシステムの制約から生まれた業務」に分けます。
後者は、新しい製品に合わせて見直します。
分け方は、Fit&Gap分析で解説しています。
失敗3:税理士・監査法人との相談を後回しにする
起きること:導入の後に、税理士から帳票の形を直すよう求められる。監査の対応で追加の作業が生まれる。
原因:選定を、経理と情報システムの担当だけで進めていた。
税理士事務所の中には、特定の会計ソフトにしか対応しない所もあります。
避け方:選び始めの段階で、経営者・経理の責任者・システムの担当・顧問税理士を一度そろえます。
必要に応じて、監査法人にも相談します。
ベンチャーネットならこう見る|比べる前に、業務を仕分ける
「奉行の機能一覧を渡せば、NetSuiteで同じことができるか分かるはずだ」
比較の相談で、こう言われることがあります。
ベンチャーネットは、機能一覧の突き合わせから始めません。
長く使った奉行の周りには、表計算で補っている作業や、もう誰も見ていない帳票が混ざっています。
一覧のまま比べると、要らない作業まで新しい製品に運ぶことになります。
型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap
- 業務の見える化:受注から締めまでの今の流れを、現場に聞いて描く
- 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる作業を決める
- Fit&Gap:残った業務を、候補の標準機能と照らし合わせる
Fit&Gapは、業務と機能の合う・合わないを一つずつ見る作業のことです。
比べる相手がNetSuiteでも奉行V ERPクラウドでも、この順番は変わりません。
型2:標準に合わせる/開発する/残す
Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。
- 標準に合わせる:業務のほうを、製品の標準機能に寄せる
- 開発する:追加の開発や、外部の仕組みとの連携で補う
- 残す:新しい製品には載せず、いまの仕組みで続ける(会計を奉行に残すBの道も、これにあたる)
2つ目が多いほど、費用と期間は膨らみます。
仕分けの結果が「会計はほぼ標準で済み、販売と在庫に作り込みが要る」なら、Bの道が現実的かもしれません。
変わることは、先に伝える
奉行からNetSuiteに移ると、帳票の形、締め処理の考え方、画面の操作感が変わります。
ライセンス費用が、いまより上がることもあります。
給与・人事はNetSuiteの対象外で、別の製品が要ります。
こうした点は、見積もりの前にお伝えします。
国産の会計製品と海外製のERPは、どちらが優れているかではなく、それぞれに長所があります。
仕分けの結果、奉行V ERPクラウドのほうが合うなら、その理由もそのままお伝えします。
今日できること|1時間で「2択の前提」をそろえる
経営者と経理の責任者で、次の表を埋めてみてください。
| 問い | 自社の答え |
|---|---|
| 3年以内に海外の拠点を持つ予定は? | |
| 販売・在庫の管理は、今どこでしているか? | |
| 月次の締めは、今何営業日かかっているか? | |
| 顧問税理士が慣れている会計の製品は? | |
| 今の製品の更新・契約の期限はいつか? |
上の2つが「予定なし・会計と別の仕組みで足りている」なら、奉行V ERPクラウドが合いやすくなります。
「予定あり・表計算で管理している」なら、NetSuiteも並べて比べてください。
時間が余ったら、月末の締めの作業を順に書き出します。
表計算で数字をつなぎ直す作業が多いほど、販売から会計までの統合の価値は大きくなります。
よくある質問
Q1. 月額費用はどのくらい違いますか
構成で変わるため5年の総額で比べてください。
NetSuiteはミニマム構成で月額20万円〜が出発点で、構成によっては数百万円規模になります。
奉行V ERPクラウドは個別見積です。
導入の費用は、機能範囲・開発・社内の体制・ユーザー数で大きく変わります(第2章2-6)。
Q2. どちらが短い期間で導入できますか
業務の範囲と作り込みの量で決まります。
NetSuiteは業種別の型のSuiteSuccessを使えます。
奉行V ERPクラウドは、必要な業務の範囲を選んで入れられます。
関係者の合意の速さも、期間を大きく左右します。
Q3. 顧問税理士が新しいERPに慣れていない場合は
選ぶ前に税理士に相談するのが近道です。
帳票やデータの形が、税理士の業務に合うかを見てもらいます。
多くの場合、データを出力して渡す形で対応できます。
合わない場合は、形を変換する仕組みや、税理士の変更も考えます。
Q4. 会計だけ先にERPに切り替えられますか
できますがNetSuiteでは慎重に考えるのがおすすめです。
NetSuiteは、商品を出荷した時点で在庫資産を減らし、売上原価を計上します(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。
日本でいう売上原価対立法にあたり、三分法とは仕訳の考え方が違います。
NetSuiteの価値は販売から会計までのつながりにあり、会計だけでは生かし切れません。
奉行V ERPクラウドは日本の会計の慣行に沿うため、会計からの切り替えの負担は小さい傾向にあります。
Q5. IPOの準備にはどちらが向いていますか
国内のIPOの準備が中心なら奉行V ERPクラウドの実績は大きな判断材料です。
過去10年のIPO実現企業の50.8%が奉行シリーズを導入しています(出典:OBC公式、2026年3月末時点)。
上場後に海外やグループへ広げる計画があるなら、NetSuiteも比べてください。
準備の項目は、IPO準備の内部統制・監査対応チェックリストにまとめています。
Q6. 奉行シリーズからNetSuiteに移ると、過去のデータはどうなりますか
移す範囲と細かさを決めて移すのが一般的です。
すべての過去の仕訳を移すとは限らず、期首の残高と直近の取引だけを移す形もあります。
税理士や監査法人が見る期間を踏まえて、範囲を決めてください。
Q7. ERP選定で最初にすべきことは何ですか
自社の3〜5年後の姿を経営者が言葉にすることです。
そのうえで必要な統合の範囲を決め、候補を並べます。
この順番を踏むと、「機能で迷う」状態から「経営の選択として決める」状態に変わります。
候補は2つに限らず、組み合わせも含めて並べてください。
まとめ
- NetSuiteは基盤の広さ、奉行V ERPクラウドは日本の実務への深さが持ち味
- 海外・グループ・販売から会計までの統合・AIの活用を重く見るなら、NetSuite
- 国内中心で、会計・人事労務・IPOの準備を固めるなら、奉行V ERPクラウド
- 奉行シリーズを使う会社は、上位への移行・組み合わせ・全面移行の3つを比べる
- 比べる前に「見える化→整理整頓→Fit&Gap」で業務を仕分け、「標準に合わせる/開発する/残す」を決める
- 見積は5年の総額で、同じ行にそろえて比べる
「奉行を使ってきたから、上位に上げる」。
国内中心の会社なら、その判断で多くの場合は合っています。
迷うのは、海外やグループへ広がる途中の会社です。
その場合は、まず受注から締めまでの業務を書き出してから、2つの製品を並べてください。
もう少し詳しく知りたい方へ
NetSuiteが自社に合うかどうか、奉行シリーズからの見直しを含めてご相談をお受けしています。
NetSuiteが合わない場合は、その理由もお伝えします。
奉行V ERPクラウドについては、提供元のOBC、または奉行V ERPクラウドの認定パートナーにお問い合わせください。
