AS400リプレイスのポイント|サポート終了とNetSuite移行の判断軸

IBMが「IBM i 7.3」のケアサービス終了を発表し、移行を検討している企業が増えています。

「AS400が終わると聞いたが、何をどう進めればいいか分からない」——そんな一人情シス・経営者の方に向けて、本記事ではAS400リプレイス先のERPの選び方と、失敗を防ぐための判断軸を整理してお届けします。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • IBM i 7.3のサポート終了で何が変わるのか
  • AS400リプレイス先を選ぶ際の比較軸
  • 移行プロジェクトで起きやすい失敗パターン
  • ベンチャーネットが大切にしている考え方

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、中堅・中小企業のERP移行を支援しています。本記事は、ベンチャーネットが現場で見てきた実例と、IBM・Oracle NetSuiteの公式情報をもとに構成しました。

目次

まず整理する:AS400・IBM i・IBM i 7.3 の違い

「AS400がサポート終了」という表現がよく使われますが、正確には少し異なります。この記事を読み進める前に、用語の違いを整理しておきましょう。

AS400(IBM i)というプラットフォームは今も継続中

AS400は1988年にIBMが発表したオフィスコンピューターのブランド名です。

その後、名称は「iSeries」「System i」と変わり、現在は「IBM i」として進化を続けています。IBMは2035年までのロードマップを公開しており、プラットフォーム自体が終了する予定はありません。

終了するのは「IBM i 7.3のケアサービス」——2026年9月30日が期限

終了するのはバージョン「IBM i 7.3」のケアサービスです。2026年9月30日をもって、標準サポートが終了します。

サポート終了後は、有償の延長サポート(Service Extension)を2028年9月まで利用できますが、通常料金の1.5倍以上となります。「お金で時間を買う」選択肢です。

それでも移行を検討すべき3つのリスク

プラットフォーム自体が終わるわけではない——それでも、多くの企業が移行を選んでいます。理由は、ビジネス環境が変化しているからです。

エンジニア不足・属人化の深刻化

IBM iを扱えるエンジニアは、高齢化が進んでいます。

ベンチャーネットへの相談でも、「担当者が退職して、誰もシステムの中身を把握していない」という声は珍しくありません。

知識が特定の人に集中している状態(属人化)は、システムの維持コストを押し上げ、将来の移行をより困難にします。

ハードウェア老朽化と部品調達リスク

IBM iが動く物理サーバー(Power Systems)も、年々古くなっています。

部品の調達が難しくなり、修理に時間がかかるケースが増えています。ハードウェアの故障はシステム停止に直結するため、経営リスクとして認識しておく必要があります。

クラウド連携・AI活用の機会損失

他社がクラウドERPを活用してリアルタイムの経営データを得ているなかで、オンプレミスのAS400では同じ速度で動けません。

データの一元化・AI活用・他サービスとの連携——これらを実現するためには、クラウドネイティブな基盤への移行が必要です。

移行コストへの懸念を和らげる制度

「移行の必要性は理解できるが、コストが心配」——多くの経営者の方が抱えるこの懸念に対して、活用できる制度があります。

2026年度から「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」に名称変更されました(中小企業庁2026年3月10日発表)。中小企業のクラウドERP導入も対象に含まれており、AS400からの移行費用の一部を補助金で賄える可能性があります。

なお、基幹システムの保守切れリスク全般や、クラウドERPとオンプレミスの違いについては、以下の関連記事も参考にしてください。

▶ 関連記事:基幹システムの保守切れのリスクとは?対応方法
▶ 関連記事:クラウドERPに乗り換えるべき?オンプレミス型との違い

AS400リプレイスの選択肢を比較する

移行先の主な選択肢は3つです。自社の状況に照らして選んでください。

パッケージERP vs スクラッチ開発

比較項目パッケージERPスクラッチ開発
導入期間3〜6ヶ月(標準)1〜2年
初期費用
保守体制ベンダー提供自社確保が必要
カスタマイズ性設定の範囲内自由度高
機能拡張バージョンアップで継続都度開発

中堅・中小企業においては、コスト・期間・保守体制の観点から、パッケージERPが現実的な選択肢になります。

NetSuite vs 国産ERPパッケージ

比較項目NetSuite国産ERPパッケージ
グローバル対応
クラウド対応
日本特有の会計要件
機能拡張性
中堅・中小企業向け
AI親和性◎ ChatGPT・Claude等の外部AI連携、組込型AI機能搭載△ ベンダー依存

選択のポイント:日本国内中心で日本特有の会計要件が多いなら国産ERP。グローバル展開を視野に入れているか、継続的な機能拡張を求めるならNetSuiteが一つの目安です。

▶ 関連記事:【2026年版】ERPを徹底比較|中堅・中小企業が失敗しない選び方とパートナー選定の基準

NetSuiteがAS400の後継として選ばれる理由

AS400からの移行先として、NetSuiteが注目されている理由をお伝えします。

クラウドネイティブで運用負担ゼロ

NetSuiteは設計思想からクラウドで作られています。

物理サーバーの管理・保守は不要です。AS400でかかっていたハードウェア維持コストから解放されます。アップデートは年2回、自動・無償で提供されます。

グローバル対応と継続的なアップデート

NetSuiteは190通貨・27言語・220地域、43,000社以上の導入実績があります(出典:Oracle NetSuite公式PR、SuiteConnect London 2026年3月)。

将来的な海外展開を視野に入れている企業でも、同じシステムで対応できます。Oracle社による継続的な機能拡張も、長期的な投資価値の高さにつながっています。

AI時代に対応した次世代ERP

NetSuiteはOracle社から「#1 AI Cloud ERP」と位置づけられているクラウドERPです。AS400時代には実現できなかったAI活用が、標準機能として組み込まれています。

【組込型AI機能】

2026年に発表された組込型8つのAI機能(SuiteConnect 2026)が搭載されており、経費精算の自動仕訳・需要予測・営業案件の優先順位付けなど、業務の各場面でAIによる支援を受けられます。

【外部AI連携】

さらに「AI Connector Service」を通じて、ChatGPTやClaudeなどの外部AIをNetSuiteと直接連携できます。MCP(Model Context Protocol)対応・Bring Your Own AIのコンセプトで、企業ごとに使い慣れたAIをNetSuite上で活用できる設計です。

AS400上で蓄積してきた業務データは、移行後、AIによる経営判断の精度向上に直接活かせます。データを「保管する場所」から「経営に活かす資源」へ——AI時代のERPへの移行は、単なる入れ替えではなく、データ活用の発射台を整える取り組みです。

▶ 関連記事:AIクラウドERPとは?AI時代の基幹システムと両利きの経営

志成販売株式会社の移行事例

AS400を基盤とした販売管理システムを使用していた志成販売株式会社は、NetSuiteへの移行によりダッシュボードで経営情報を可視化。

従来の定期レポート作業が不要になり、年間約300時間の業務効率化を実現しました(出典:Oracle NetSuite公式事例)。

移行を失敗させる4つの落とし穴

NetSuiteは強力なツールですが、導入アプローチを誤ると本来の価値を発揮できません。

ベンチャーネットが現場で見てきた失敗パターンを4つ整理します。「失敗してほしくない」という思いから、正直にお伝えします。

落とし穴①:AS400の業務をそのまま移植しようとする

よくある現象:

  • 「今と同じ動きをNetSuiteで再現してほしい」と要件を出す
  • 誰も説明できない機能が「とりあえず必要」と言われる
  • カスタマイズが膨らみ、コストと期間が当初の2倍になる

AS400で長年動いてきた業務には、「なぜそうなっているか」が失われた処理が積み重なっています。それをそのまま新システムに移すと、非効率なロジックをNetSuiteの上に再生産することになります。

移行は「業務の棚卸し」の絶好機です。ベンチャーネットでは、移行プロジェクトの初期に「本当に必要な業務」と「惰性で続けている業務」を仕分ける作業を一緒に進めています。

落とし穴②:移行範囲を広げすぎてプロジェクトが止まる

よくある現象:

  • 最初は会計のみの予定が、営業・在庫・人事も一度にやろうとする
  • スコープが膨らんで本番稼働が1年以上延びる
  • 現場が疲弊してプロジェクトへの協力が得られなくなる

「どうせやるなら全部」という判断は合理的に見えますが、一度に変える範囲が広いほどリスクは増えます。AS400では長年の運用で業務が複雑に絡み合っており、一括移行は特に高リスクです。

「まず会計か販売管理から始めて、半年単位で範囲を広げる」というスモールスタートが、移行成功の王道です。ベンチャーネットでは、最初の相談段階から移行範囲の優先順位を一緒に整理しています。

▶ 関連記事:基幹システムのリプレイスの方法は?流れや注意点

落とし穴③:本番稼働日をゴールにしてしまう

よくある現象:

  • 稼働直後から現場で「使いにくい」という声が上がる
  • ExcelとERPの併用が始まり、ERPがサブシステム化する
  • 半年後に「前のAS400の方がよかった」という結論になる

ERPの真のゴールは「システムが現場に定着し、データが正しく入力され続ける状態」です。稼働日をゴールにすると、社員教育・マニュアル整備・定着モニタリングに予算もリソースも割かれなくなります。

本番稼働後3〜6ヶ月の定着フェーズを、プロジェクト開始時から計画に組み込むことが重要です。ベンチャーネットは稼働後の伴走支援も含めて提案しています。

落とし穴④:パートナーを費用の安さだけで選ぶ

よくある現象:

  • 提案金額が最も低かった会社に発注する
  • 稼働後に「追加費用が発生します」と言われ続ける
  • 問題が起きてもなかなか対応してもらえない

AS400からの移行は技術的に複雑です。現場の業務知識とNetSuiteの実装経験の両方が必要になります。経験の浅いパートナーを選ぶと、後工程でのやり直しコストが初期コスト削減分を上回ります。

パートナー選定では、次の3点を確認してください。

  • NetSuite認定資格を実際の担当者が保有しているか
  • 自社と同業種での実装経験があるか
  • 稼働後の伴走支援体制があるか

移行プロジェクトの進め方——ベンチャーネットが大切にしていること

ここまで失敗パターンを4つお伝えしました。共通して言えることが一つあります。

それは、ERP移行を「ITプロジェクト」として扱ってしまうことが、失敗の根本にあるということです。

NetSuiteへの移行は、単なるシステムの入れ替えではありません。業務プロセスを見直し、データの流れを整え、会社の情報基盤を作り直す取り組みです。経営層の関与と意思決定が、プロジェクトの成否を分けます。

ベンチャーネットが大切にしているのは、「システムを導入すること」ではなく「経営をよくすること」です。合わないと判断したら、その旨を正直にお伝えします。一緒に、御社にとって本当に正しい進め方を考えさせてください。

【AS400からNetSuiteへの移行を検討されている方へ】

NetSuiteが御社に合うかどうかを、まずは触って確かめてみませんか。

ベンチャーネットでは、NetSuiteの無料デモと、AS400からの移行支援サービスをご用意しています。

NetSuite無料デモのお申込み
実際の画面を見ながら、御社の業務にどう適用できるかをご相談いただけます。
https://www.venture-net.co.jp/netsuite/lp/oracle-netsuite/

NetSuite – 基幹システムリプレイスサービス
AS400からの移行プロジェクトを、業務棚卸し・移行設計・稼働後の伴走まで一貫して支援します。
https://www.venture-net.co.jp/netsuite/lp/netsuite-erp-replace/

「うちの状況だとどう判断すればいいか」というご相談も歓迎します。一緒に整理させてください。

よくある質問

IBM i 7.3とAS400は何が違うのか?

AS400は1988年にIBMが発表したオフィスコンピューターのブランド名です。その後「iSeries」「System i」と名称が変わり、現在は「IBM i」として継続しています。「AS400がサポート終了する」という表現は正確ではなく、終了するのは「IBM i 7.3というバージョンのケアサービス(2026年9月30日)」です。プラットフォーム自体は継続しており、IBMは2035年までのロードマップを公開しています。

NetSuiteへの移行期間と費用の目安は?

業務範囲・企業規模によりますが、NetSuiteの業種別導入パッケージ(SuiteSuccess)を活用した場合、3〜6ヶ月での稼働が目安です。

費用面では、NetSuiteライセンスは「ミニマム構成の出発点」として月額20万円〜となります。利用するモジュール・ユーザー数・必要なオプションによって変動し、企業規模や要件によっては数百万円規模になることもあります。これに加えて、導入支援パートナーへの費用が必要です。

AS400からの移行ではデータ移行作業が発生するため、事前の業務棚卸しで移行範囲を絞ることがコスト管理のポイントになります。正確な金額は、要件をお伺いしたうえでOracle営業と共にご提示いたします。

NetSuite以外の移行先はないのか?

あります。国産ERPパッケージ(日本特有の会計要件への対応が強み)やスクラッチ開発(独自業務への対応が最大)が主な選択肢です。グローバル展開を視野に入れているか、継続的な機能拡張を求めるならNetSuiteが候補になります。自社の業務特性と将来の事業計画を整理したうえで選択することをおすすめします。

移行後のサポート体制はどうなるのか?

NetSuiteはOracle社が継続的にアップデートを提供するクラウドERPです。稼働後も法改正対応・業務変化への追加設定・社員教育など、継続的な対応が必要になります。ベンチャーネットでは、導入後の運用支援・保守サポートも提供しており、本番稼働後も伴走する体制を整えています。

AS400からNetSuiteへの移行に活用できる補助金はあるか?

2026年度から「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」に名称変更されました(中小企業庁2026年3月10日発表)。中小企業のクラウドERP導入も対象に含まれており、AS400からNetSuiteへの移行費用の一部を補助金で賄える可能性があります。

ただし、補助金の採択は要件・予算・申請時期によって変動します。最新の公募内容は事務局サイト(https://it-shien.smrj.go.jp/)でご確認ください。

ベンチャーネットでは、補助金活用を視野に入れた移行計画のご相談も承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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