「今月も忙しかったのに、思ったほど利益が残っていない」。コンサルティング会社や士業事務所で、よく聞く言葉です。
月初には、前月の手帳とメールを見返して請求書を作る。「あの相談、請求しましたか」という確認が、所長と担当者の間で毎月くり返されます。
この手応えのなさは、案件・時間・お金を一か所に集めると変えられます。Odoo(オドゥー)なら、案件・工数・見積・請求を1つの基盤で扱えます。申告書や届出書類の作成は専用システムに残し、その周りをOdooが受け持つ形です。
この業種が売っているのは、ほぼ「人の時間」で、原価のほとんどは人件費です。工数(案件にかけた作業時間)を案件に紐づけ、単価を掛けた原価と請求額を比べれば、案件ごとの採算が出ます(Odooで担える範囲)。
Odooで案件と時間とお金をつなぐと、たとえば次のことが変わります。
- 誰がどの案件を抱えているかが、担当者以外にも見える
- 顧問料とスポット業務の請求が同じ基盤に載る
- 顧客ごとの年間売上と投入時間を、並べて見られる
- 顧問料の見直しを、感覚ではなく投入時間をもとに話し合える
ただし、人数がごく少なく、案件管理より専用システムの比重が大きい事務所には、Odooが合わないこともあります(メリットとデメリット)。
残る問いは、測ったことのない工数を、現場がどうすれば毎日つけるようになるかです。答えは工数管理が根づくまでの4つの手順にあります。
CommunityとEnterpriseの区別について
案件とタスクの管理、工数の記録、見積と請求は無料のCommunity版でも扱えます。会計のフル機能、書類の保管、継続課金の管理はEnterprise版が前提です。
士業・コンサルティングの案件管理で起きていること
多くの事務所では、案件はメールと担当者の頭の中にあります。工数は誰も測っていません。請求は月初に前月の記憶をたどって作ります。
顧問料は毎月ほぼ同じ額なので迷いません。困るのはスポット業務です。「あの相談は請求したか」の確認から始まり、ときどき漏れます。
売上は立っているのに手応えがない。その正体は、案件ごとに何時間かけていくら受け取ったかが、誰にも見えていないことです。
業務のどこが分断されているか
分断1:案件の進捗と工数が別々に置かれている
進み具合は担当者に聞けば分かります。しかし、何時間使ったかは分かりません。工数を測っていないため、赤字の案件は終わるまで気づけません。
分断2:顧問料とスポット業務の請求が別の仕組みで動いている
顧問料は契約に沿って毎月処理され、スポット業務は都度見積と請求を作ります。別々の場所にあると、顧客ごとの年間売上が一目で出せません。
分断3:担当者が抱えている案件が本人以外に見えない
案件が個人のメールとファイルに閉じていると、状況が分かるのは担当者だけです。引き継ぎに時間がかかり、負荷の偏りも見えません。
自社に当てはまるか:経営会議で使えるチェック
次の項目に2つ以上当てはまるなら、案件・工数・請求を一つに集める効果は大きいはずです。
- □ 顧問先ごとに、年間で何時間使っているかを答えられない
- □ スポット業務の請求漏れに、あとから気づいたことがある
- □ 担当者が休むと、その人の案件の進み具合が分からない
- □ 顧問料の見直しを、感覚や付き合いの長さで決めている
- □ 忙しい人と手が空いている人の差を、数字で説明できない
士業・コンサルの業務をOdooでどこまで担えるか
Odooで担える範囲
Odooは案件(プロジェクト)とタスクを管理できます。誰がどの作業を持っているかが、一覧で見えます。
中心になるのは工数の記録です。作業時間を案件に紐づけると、案件ごとの採算が見えます。工数に単価を掛けた原価と、請求額の差が出せるからです。
顧客と商談の管理、スポット業務の見積と請求、顧問料の請求も同じ基盤で扱えます。書類の保管もできますが、こちらはEnterprise版が前提です。
詳しくはOdooの工数管理(Timesheets)とプロジェクト管理の記事で扱います。
専用のシステムに任せる範囲
士業の業務そのものを行うソフトは、Odooの担当ではありません。申告書や届出書類の作成は、専用システムが担う領域です。
Odooが受け持つのはその周辺です。どの案件がどこまで進み、何時間かかり、いくら請求するのか。ここを一つに集めます。
制度や法令の解釈も、Odooの役割には入りません。制度面の判断は、その分野の情報源や専門家にご確認ください。
申告や書類作成そのものの手間を減らす話は、士業・会計事務所のAI活用で取り上げています。
つなぎ方の考え方
線の引き方は単純です。「成果物そのものを作る作業」は専用システム、「案件・時間・お金の流れ」はOdooと分けます。連携させなくても、集めるだけで採算は形になります。
Odooの対応範囲(Community版/Enterprise版)
| 業務 | Community版 | Enterprise版 |
|---|---|---|
| 案件・タスクの管理 | 使える | 使える |
| 工数の記録 | 使える | 使える |
| 顧客・商談の管理(CRM) | 使える | 使える |
| 見積・受注・請求書の発行 | 使える | 使える |
| 会計のフル機能 | 対象外 | 前提 |
| 案件に紐づく書類の保管 | 対象外 | 前提 |
| 顧問料など継続課金の管理 | 対象外 | 前提 |
版ごとの対応範囲は、改定されることがあるため、導入を検討する段階でOdoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。
コンサルティング・士業でOdooを使うメリットとデメリット
案件・工数・請求の面から見ると、Odooの良い点と注意点は次のとおりです。使える版は、機能ごとに添えています。
メリット
- 案件と担当者が一覧で見える:案件とタスクを管理でき、誰がどの作業を持っているかが分かる。Community版でも使える
- 案件ごとの採算を出せる:作業時間を案件に紐づけ、工数に単価を掛けた原価と請求額の差を見る。工数の記録はCommunity版でも使える
- 顧問料とスポット業務を同じ基盤で扱える:見積・請求書の発行はCommunity版でも使える。顧問料などの継続課金の管理はEnterprise版が前提
- 専用システムと役割を分けられる:申告書や届出書類の作成は専用システムに残し、案件・時間・お金の流れをOdooに集める。連携させなくても、集めるだけで採算は形になる
デメリット・注意点
- 会計のフル機能と書類の保管はEnterprise版が前提:Community版は、ホスティングと保守が自社の責任で、公式サポートの対象外になる
- 士業の業務そのものは担わない:申告書・届出書類の作成と、制度や法令の解釈は、Odooの役割に入らない
- 工数の記録が続かないと数字が出ない:作業分類を細かく分け、15分単位の入力を義務づけると、最初の1か月で続かなくなりがち
- 合わない事務所もある:人数がごく少なく、案件管理より専用システムの比重が大きい事務所には、Odooが合わないことがある
両方を並べると、次の図のとおりです。
工数の記録を続ける進め方は工数管理が根づくまで、数字の使い方は工数管理でよくある2つの失敗で説明しています。
工数管理が根づくまで:ベンチャーネットが確かめる4つのこと
一度に全部を入れると、途中で止まります。ベンチャーネットは、次の順番で一つずつ確かめながら進めます。
ステップ1:何の採算を知りたいかを決める
最初に聞くのは、システムの話ではありません。「顧問先ごとの採算か、スポット業務の単価か、担当者の負荷か」。知りたい問いが決まらないと、工数の分類が際限なく増えます。
ステップ2:案件を一つの場所に集める
進行中の案件をすべて登録して担当者と期限を入れれば、「誰が何を抱えているか」が全員に見えます。ここで使うのは、標準機能に業務を合わせるFit to Standardの考え方です。
ステップ3:粗い工数の記録を始める
ここが山場です。「時間を測る」と言われた現場は身構えます。最初から分単位で測ろうとすると、まず続きません。
まずは案件単位で、日ごとにおおよその時間を記録します。そして、目的は監視ではなく採算を知ることだと、先にメンバーへ伝えます。この一言を省くと、記録が形だけになるからです。
ステップ4:請求をつなげ、数字を一度だけ読む
記録した工数と、顧問料・スポット業務の請求を同じ基盤に載せれば、顧客ごとの年間売上と投入時間を並べて見られます。所長や代表と一緒に読み合わせるのは、最初の数か月分がそろった時点の一度だけです。
進める中で、Odooが合わないと分かることもあります。たとえば人数がごく少なく、案件管理より専用システムの比重が大きい事務所です。その場合は無理に勧めず、そうお伝えします。
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。拠点や事業が増えて会計の要件が重くなれば、NetSuiteも選択肢です。その規模で案件ごとの採算をどう見るかは、NetSuiteで実現するプロジェクト管理にまとめています。AIスクラッチ開発は、ライセンスはかかりませんが、開発費・保守費が別途かかります。
工数管理でよくある2つの失敗
失敗1:工数の入力ルールを細かく決めすぎる
作業分類を数十種類に分け、15分単位の入力を義務づける。こうした設計は、最初の1か月で続かなくなりがちです。粗くても毎日入る記録のほうが役に立ちます。
失敗2:採算の数字をそのまま個人の評価に使う
数字が見えると評価に直結させたくなりますが、その時点から数字は歪みます。まずは案件の受け方と価格の見直しに使ってください。単価の合わない案件を見つけるのが、本来の目的です。
士業・コンサルのOdoo活用でよくある質問
Community版だけで案件管理と工数の記録はできますか?
できます。案件管理も工数の記録も、両方の版で扱えます。ただしホスティングと保守は自社の責任で、公式サポートの対象外です。詳しくはCommunity版とEnterprise版の違いをご覧ください。
士業の専用システムをOdooに置き換えられますか?
置き換えは前提にしないでください。申告書や届出書類の作成は専用システムの領域で、Odooは案件・工数・請求という周辺を担う、という分け方が現実的です。
顧問料の請求はOdooで自動化できますか?
継続課金の管理はEnterprise版の機能なので、定期請求の仕組みまで求めるならEnterprise版が前提です。Community版でも請求書の発行はできるので、どこまで自動にしたいかが版の選択に関わります。
少人数の事務所でも導入する意味はありますか?
あります。人数が少ないほど、1人の工数の偏りが利益に直結するからです。小規模なほうが、効果を実感しやすい面もあります。サービス業でのOdoo活用も参考になります。
コンサルティング・士業でOdooを使うメリットとデメリットは何ですか?
案件ごとの採算が見える一方で版の区分と工数の記録の定着に注意が要ります。
案件・工数・見積・請求を1つの基盤に集め、工数と請求額の差から案件ごとの採算を出せます。案件管理と工数の記録は、Community版でも使えます。
一方、会計のフル機能・書類の保管・継続課金の管理はEnterprise版が前提です。工数の入力ルールを最初から細かく決めすぎると、記録が続きません(メリットとデメリット)。
まとめ
コンサルティング会社と士業事務所にとって、工数は原価そのものです。
- 売っているのが人の時間である以上、工数が見えなければ原価も見えない
- 顧問料とスポット業務が別管理だと、顧客ごとの採算が出ない
- Odooは案件・工数・見積・請求を一つの基盤で扱える
- 会計のフル機能、書類の保管、継続課金の管理はEnterprise版が前提
- 士業の業務そのものは専用システムに任せ、周辺をOdooが担う
- メリットは案件ごとの採算が見えること。注意点は版の区分・業務の範囲と、工数の記録が根づくかどうか
まずは案件の登録と、粗い工数の記録から始めてください。
1年後の顧問契約の更新時期には、顧問先ごとの1年分の投入時間が手元にそろっています。時間を食っていた先には根拠を示して報酬の見直しを相談でき、月初の「あれ、請求しましたか」という確認も消えています。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「工数が見えないので、案件ごとの採算が分からない」という整理から、ご相談を承っています。
関連記事
