Odooのサブスクリプション管理(Subscriptions)|毎月の請求を「作る」のをやめる

継続課金のビジネスで、月初はどうなっているでしょうか。

先月の請求書を複製する。今月分に日付を直す。契約が変わった顧客を思い出して金額を修正する。 解約した顧客を一覧から外す。そして送信する。

慣れれば早い作業です。問題は速さではありません。

怖いのは、契約変更を反映し忘れることです。

プランを上げてもらったのに旧価格で請求してしまう。解約した相手に請求書が届いてしまう。どちらも、信頼に直接ひびきます。

そして手作業である限り、この漏れは件数が増えるほど確実に起きます。

この記事では、Odoo(オドゥー:オープンソース由来の統合業務アプリ群)のサブスクリプション管理を、機能の各論として整理します。

⚠️ このアプリはEnterprise版限定です
Odooのサブスクリプション管理アプリは、有償の Enterprise版 が対象と案内されています。無料の Community版では利用できません

目次

手作業の請求が生むのは、遅さではなく漏れです

構造から見てください。

手作業で毎月の請求を作る場合と契約が請求を生む場合の違いを示した図 左側は先月の請求書を複製し、契約変更を記憶で修正し、解約者を手で外す流れで、反映漏れが起きる状態。右側は契約そのものが正となり、契約を変えれば次回以降の請求に自動で反映され、解約すれば請求も止まる状態を示しています。 請求書を毎月「作る」 契約が請求を「生む」 先月の請求書を複製する 契約変更を記憶で修正する 解約した相手を手で外す 送信する 旧価格のまま請求してしまう 解約者に請求書が届いてしまう 件数が増えるほど確実に起きる 契約(サブスクリプション) プラン・金額・請求の周期 開始日と終了の条件 周期ごとに 請求が自動で作られる 契約を直せば次回から反映される 解約すれば請求も止まる 記憶に頼る場面がなくなる

何が変わるのか

請求書が「作るもの」から「契約から生まれるもの」に変わります。

正となるのは契約です。プラン、金額、周期。そこを直せば、次回以降の請求に反映されます。

「今月の請求を直す」のではなく「契約を直す」。 この順序の変更が本質です。

サブスクリプション管理でできること

Odoo公式ドキュメントによれば、次のようなことができるとされています(2026年8月確認)。

継続プランの設定

契約を作る前に、継続プラン(Recurring Plans)を設定します。

  • 請求の周期を設定する(週・月・年の単位)
  • 自動終了の日数を設定する(支払いがない場合に契約を閉じるまでの日数)
  • 請求時に送るメールのひな型を設定する

標準では、月次・6か月・年次などのプランがあらかじめ用意されているとされています。

🚨 日次の課金は選べません

Odoo公式ドキュメントに明記されている制限です。

日単位の周期はレンタル向けに割り当てられており、サブスクリプションの受注には追加できない。

理由も記載されています。毎日請求書が生成される受注を防ぐためです。

日割りの課金を前提とする商材では、この制限を先に確認してください。

顧客自身による操作

公式ドキュメントによれば、顧客側に権限を渡す設定があります。

  • 顧客が自分で契約を終了できる設定
  • 顧客が自分でプランを変更できる設定

公式は、この設定について問い合わせの件数を減らし、顧客体験を改善する効果があると案内しています。

契約の管理

  • 契約ごとの状態(進行中、終了予定、終了)を管理する
  • 更新の管理を行う
  • 既存の契約に、追加の商品やサービスを乗せる

「解約させない設計」にしないでください

前章の最後の項目について、掘り下げます。

解約手続きを難しくした場合と自分で解約できるようにした場合の結果の違いを示した図 左側は解約に電話や書面を求めることで一時的に契約は残るが、不満が外部の評価に現れ、再契約もされない状態。右側は自分で解約できることで手続きの負担が減り、理由が記録され、再契約の可能性も残る状態を示しています。 解約を難しくする 自分で解約できる 電話か書面でのみ受け付ける 短期的には契約が残る 今月の数字は守られる 不満が外部の評価に現れる 解約対応に人手が取られる 理由も記録されない 二度と戻ってこない 紹介もされなくなる 顧客が自分で手続きできる 解約は止められない 今月の数字は下がり得る 対応の人手が要らない やめた理由が記録に残る 改善の材料になる 再契約の可能性が残る 状況が変われば戻ってくる

短期の数字と、長期の評判

解約を難しくすれば、今月の数字は守られます。 これは事実です。

しかし、やめたい顧客を引き止め続けることはできません。 遅らせるだけです。

そして遅らせている間に起きるのは、不満の蓄積です。その不満は、外部の評価として残ります。

公式の案内も同じ方向です

Odoo公式ドキュメントは、顧客が自分で契約を終了できる設定について、問い合わせを減らし、顧客体験を改善するという趣旨で案内しています。

一方で公式は、引き止めの対応が確立している営業チームでは、あえて有効にしない判断もあり得ると併記しています。 どちらを取るかは自社の方針です。

ただし「手続きを不便にすることで引き止める」のは、方針ではなく設計の怠慢です。 ここは分けて考えてください。

解約の理由を記録してください

顧客が自分で解約できる形にすると、そのときに理由を聞けます。

  • 価格が合わなかったのか
  • 使わなくなったのか
  • 他に移ったのか

この情報は、引き止めの電話よりはるかに価値があります。

継続課金で本当に見るべき数字

サブスクリプション事業では、月々の売上だけを見ても状況が分かりません。

見るべきもの

指標何が分かるか
継続している契約の合計金額今の事業規模
新規の契約増えている勢い
解約の件数と金額抜けている量
契約単価の変化上位プランへの移行が起きているか

3つ目が最も重要です。

新規が増えていても、解約が同じだけあれば事業は成長しません。穴の空いたバケツに水を注いでいる状態になります。

単月の売上では見えないこと

「今月の売上が横ばい」という数字の裏に、大量の新規と大量の解約が隠れていることがあります。

契約の記録が残っていれば、この動きが見えます。 手作業の請求書では見えません。

会計との接続で確認すること

継続課金は、会計の扱いが少し複雑になります。

確認すべきこと

項目内容
年払いの扱い一括で受け取った金額を、どう期間に配分するか
途中解約の返金返金する場合の処理をどう決めるか
適格請求書の要件継続的な請求で要件を満たす形になっているか
未回収の管理支払いがない契約をいつ止めるか

1つ目と3つ目は税務に関わります。 この記事では判断しません。

考え方は Odooのインボイス制度(適格請求書)対応Odooの会計機能でできること にまとめています。公開前に、税理士など専門家に確認してください。

4つ目は運用の設計です。 公式によれば、支払いがない場合に契約を自動で閉じるまでの日数を設定できます。この日数を、社内の督促の運用と合わせてください。

Community版とEnterprise版の違い

Odooには、無料の Community版 と有償の Enterprise版 があります。

Community版はオープンソースとして無料で使えます。ただし、サーバの用意・アップデート・障害対応は自社の責任になり、公式サポートの対象外です。

サブスクリプション管理アプリは、Enterprise版が対象です。Community版では利用できないと案内されています。

Community版での代替

完全な代替はありません。 ただし、契約件数が少ない段階では次の形で運用できます。

  • 顧客ごとの契約内容を、記録として管理する
  • 毎月の請求書を、前月分を複製して作る
  • 解約と変更を、運用のルールで反映する

つまり、いまの手作業を整理した形です。 件数が増えると限界が来ます。

目安として、契約が数十件を超えたあたりから手作業の漏れが目立ち始めます。

どの機能がどちらの版で使えるかはバージョンによって変わります。 検討時には必ず対象バージョンで確認してください。詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。

他のアプリとのつながり

アプリつながり方
販売管理契約は受注の一形態として扱われる
請求書周期ごとの請求書が自動で作られる
会計売上と入金の記録先
CRM契約前の商談と、契約後の関係が同じ場所に残る
ヘルプデスク契約状況を見ながらサポートに対応できる

詳細はそれぞれの記事にまとめています。

入れないほうがよい場合

正直に書きます。

状況判断
継続契約が10件程度。内容もほぼ同じ入れる必要はありません
日割りの課金が前提の商材周期の制限を先に確認してください
複雑な従量課金が中心(使った分だけ請求)専用サービスの検討を
契約が数十件以上あり、プランも複数ある効果が出やすい領域です

専用のサブスク管理サービスとの違い

サブスクリプション事業に特化したサービスがあります。従量課金の細かな計算、決済の失敗時の再試行、複雑な料金体系では、専用サービスのほうが優れています。

この点で競うつもりはありません。

Odooに意味があるのは、契約から請求、入金、会計までが同じ場所にある場合です。「この顧客の累計売上はいくらか」「解約した顧客は何を買っていたか」が、1つのデータで追えます。

決済サービスと会計ソフトが別々だと、この接続が切れます。

よくある質問

Q1. 日割りでの課金はできますか?

Odoo公式ドキュメントによれば、日単位の周期はレンタル向けで、サブスクリプションの受注には追加できないとされています。

毎日請求書が作られることを防ぐための制限です。日割りが前提の商材では、設計を変える必要があります。

Q2. 途中でプランを変更できますか?

契約の内容を変更する運用ができます。

ただし、変更した月の請求をどう扱うか(日割りにするか、翌月からにするか)は、自社のルールとして決めてください。 システムの設定より先の話です。

Q3. 決済と連動できますか?

決済サービスとの連携が可能な設計です。ただし、日本国内で利用できる決済手段と手数料は、提供事業者との契約で決まります。

実際に使う前に、対象バージョンと契約内容で確認してください。

Q4. 支払いがない契約はどうなりますか?

公式によれば、支払いがない場合に契約を自動で閉じるまでの日数を設定できます。

この日数は、社内の督促の運用と合わせてください。 督促の連絡より先に契約が閉じると、混乱します。

Q5. 既存の契約データを移行できますか?

移行は可能です。ただし、開始日、次回請求日、契約金額の3つを正確に移してください。

ここがずれると、移行直後の請求が全件おかしくなります。 移行の進め方は Odooへのデータ移行の進め方 をご覧ください。

まとめ

Odooのサブスクリプション管理が変えるのは、請求書を作る速さではありません。

正となるものが「請求書」から「契約」に変わることです。

プラン、金額、周期。契約を直せば、次回以降の請求に反映されます。解約すれば請求も止まります。記憶に頼って修正する場面がなくなります。

手作業の請求で本当に怖いのは、遅さではなく反映漏れです。旧価格のまま請求する、解約した相手に請求書が届く。どちらも信頼に直接ひびきます。

設計で注意すべき点も1つあります。「解約させない設計」にしないでください。

手続きを不便にすれば今月の数字は守られますが、やめたい顧客を引き止め続けることはできません。遅らせている間に不満が蓄積し、外部の評価として残ります。

顧客が自分で解約できる形にすると、そのときに理由を聞けます。 この情報は、引き止めの電話よりはるかに価値があります。

なお、日単位の課金は選べません。 公式が「レンタル向けであり、サブスクリプションには追加できない」と明記しています。日割りが前提の商材では、設計を変える必要があります。

会計面では、年払いの期間配分と適格請求書の要件が関わります。税務に関わる部分は、専門家に確認してください。

もう少し詳しく知りたい方へ

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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