同じ配合で仕込んだのに、今月は先月より出来高が少ない。どの工程で減ったのか、誰も数字で答えられない。
原料メーカーから「このロットに問題があった」と連絡が来ると、出荷先を洗い出すだけで丸一日つぶれる。食品や化学の製造業で、よく聞く場面です。
「うちは組み立てではないので、生産管理のパッケージが合わない」。そう続ける経営者も多くいます。ただ、決めつける前に「何が合い、何が合わないか」を分けると、使える部分が見えてきます。
配合型(プロセス型)とは、原料を混ぜ合わせて製品にする製造です。投入した重量と産出した重量が一致しない点が、組立型と違います(組立型と配合型の違い)。
Odoo(オドゥー)なら、部品表・工程・ロット追跡・単位の換算を標準機能で扱えます(Odooで扱える範囲)。記録をOdooに集めると、たとえば次のことが変わります。
- 品質の連絡が来ても、ロット番号から出荷先をすぐ一覧にできる
- 理論値と実績の差が数字になり、歩留まりの話が感覚論から離れていく
- 1つの品目に購買と在庫の単位を持たせ、換算をそろえられる
- 月次の会議で、配合の見直しや値決めを記録から話せる
ただし、副産物の原価配分や、タンクや反応釜を止めずに回す生産の細かい計画は、無理に寄せないほうがよい部分です。
では、現場を止めずに入れるには、どの順番で進めればよいのか。答えはベンチャーネットが配合型で踏む順番にあります。良い点と注意点は、配合型製造業でOdooを使うメリットとデメリットに版ごとにまとめました。
CommunityとEnterpriseの区別について
部品表・工程・在庫・ロット追跡・購買という土台は、Community版(無料)とEnterprise版(有償)の両方で使えます。一方、原価を部門別に見るための分析会計はEnterprise版が前提です。
組立型と配合型は、システムに求めるものが違う
組立型は、決まった部品を決まった数だけ組み合わせます。この「何をいくつ使うか」の一覧が部品表(製品を作るのに必要な材料と数量の一覧)で、中身は基本的に固定です。
配合型はここが揺れる。混ぜる、加熱する、反応させる工程を通るため、投入した重量と産出した重量が一致しません。
原料の成分も毎回同じとは限らず、品質に合わせて配合比を調整する現場もあります。配合表やレシピと呼ばれるものが、実質的に部品表にあたります。
組立型を前提にした考え方は、ここでつまずく。製造業全般の使いどころは製造業のOdoo活用にまとめました。
配合型(食品・化学)で管理が難しくなる3点
① 歩留まりが一定しない
歩留まりとは、投入した原料に対して実際に取れる製品の割合です。配合型では、この割合が製造のたびに動く。
計画は、理論値で立てるしかありません。差を記録しないまま進むと、在庫も原価も少しずつずれていきます。
② ロットの追跡が前提になる
ロットとは、同じ条件でまとめて作った製品のまとまりです。配合型では、どの原料ロットがどの製品ロットに入ったかをたどれることが前提になる。
記録が紙と表計算ソフトに分かれていると、さかのぼるだけで時間がかかります。業種によっては、法令で記録の保存が求められます。要件は所管の官公庁や専門家にご確認ください。
③ 原料の単位が現場と購買で違う
購買はキロやドラム缶で発注し、現場は計量した重量で扱い、出荷は箱で数える。同じ原料が3つの単位で呼ばれると、在庫が合わなくなります。
どの単位をどう換算するかを先に決める。在庫のずれを防ぐ、地味ですが確かな第一歩です。
Odooで扱える範囲(レシピ・ロット管理・単位の換算)
Odooの製造機能は、配合型でも基本の仕組みとして使えます。
部品表と工程:原料と配合量を部品表として登録し、工程ごとの作業を紐づけられます。副材料や包材も、同じ仕組みで扱える。
ロット/シリアル番号による追跡:原料にロット番号を割り当て、製造と出荷へ引き継げます。前後どちらにもたどれます。
単位の換算:1つの品目に、購買の単位と在庫の単位を持たせられる。
点検記録:受入や工程内の点検を、作業の流れに組み込んで残せます。品質アプリはEnterprise版が前提です。詳しくはOdooの品質管理をご覧ください。
| 領域 | Community版 | Enterprise版 |
|---|---|---|
| 製造(部品表・工程) | 使える | 使える |
| 在庫(ロット/シリアル番号の追跡) | 使える | 使える |
| 購買(原料の発注) | 使える | 使える |
| 会計のフル機能(分析会計・部門別の管理会計) | 対象外 | こちらが前提 |
| 画面・項目のノーコード調整(Odoo Studio) | 対象外 | こちらが前提 |
| 公式サポート | 対象外 | 含まれる |
Odoo Studioを使うには、Enterprise版の中でもカスタムプランが必要です。スタンダードプランには含まれません。
版ごとの対応範囲は改定されることがあります。検討の段階で、Odoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。
配合型製造業でOdooを使うメリットとデメリット
配合型の製造業から見ると、Odooの良い点と注意点は次のとおりです。使える版は、機能ごとに添えています。
メリット
- 配合を部品表と工程で扱える:原料と配合量を部品表として登録し、工程ごとの作業を紐づけられる。副材料や包材も同じ仕組み。Community版でも使える
- ロットを前後どちらにもたどれる:原料にロット番号を割り当て、製造と出荷へ引き継げる。Community版でも使える
- 単位の換算をそろえられる:1つの品目に、購買の単位と在庫の単位を持たせられる
- 理論値と実績の差が数字になる:製造の実績を入れると、歩留まりの差が見える。差の分析はEnterprise版を前提に組む
- 点検の記録を作業の流れに残せる:受入や工程内の点検を組み込める。品質アプリはEnterprise版が前提
デメリット・注意点
- 原価の部門別分析と品質アプリは有償版:分析会計と品質アプリはEnterprise版が前提。Odoo Studioはカスタムプランが必要
- 副産物・連産品の原価配分は社内で決める:最適な配分が標準機能から自動で出るとは考えず、配分ルールを社内で決め、必要なら開発する
- 配合比を都度変える運用は記録先を決める:部品表を毎回書き換えると、版数が増えて管理が重くなる
- 止めずに回す生産の計画は合わないことがある:タンクや反応釜の洗浄や段取り替えまで含む計画は、別の仕組みとの併用も検討する
両方を並べると、次の図のとおりです。
注意点の中身は扱いにくい範囲で、Odooと別の仕組みの分け方はどこまでをOdooで、どこからを別の仕組みでやるかで説明しています。
扱いにくい範囲も、先に知っておく
配合型で無理が出やすい部分は、次の3つです。
副産物・連産品の原価配分
主製品と副産物が同時に出る場合、原価の割り振り方は会社ごとの方針で決まります。標準機能から最適な配分が自動で出る、とは考えないでください。
配合比を都度変える運用
成分に合わせて配合を毎回調整するなら、その記録先を決める必要がある。部品表を毎回書き換えると、版数が増えて管理が重くなる。
装置の連続運転を前提とした計画
タンクや反応釜を止めずに回す生産では、指図の単位で立てた計画が実態と合わないことがあります。洗浄や段取り替えまで含む細かい計画は、別の仕組みとの併用も検討します。
自社がどこまで標準の型に乗りそうかは、次の5項目で当たりがつく。
- □ 配合表は製品ごとにおおむね決まっており、調整する場合も記録のルールがある
- □ 原料の受入時に、メーカーのロット番号か自社のロット番号を控えている
- □ 購買・計量・出荷の単位の換算が、社内で1つの表にまとまっている
- □ 副産物・連産品が出ないか、出る場合の原価の割り振り方が決まっている
- □ 生産計画を、装置の稼働ではなく製造指図(作る指示)の単位で立てている
当てはまる項目が多いほど、標準機能で進めやすい。外れた項目は、どこまでをOdooでやるかの表で扱い方を決めます。
どこまでをOdooで、どこからを別の仕組みでやるか
| 対象 | 進め方の目安 |
|---|---|
| 在庫とロット追跡、部品表と工程、実績記録 | Odooの標準機能で回す |
| 理論値と実績の差の分析 | 実績をOdooに入れ、分析はEnterprise版を前提に組む |
| 副産物・連産品の原価配分 | 配分ルールを社内で決め、必要なら開発 |
| 装置単位の細かい生産計画 | 別の仕組みとの併用も検討する |
| 配合ロジックが独自すぎる部分 | パッケージに乗せず、作る選択も含めて検討 |
最後の行には補足があります。配合の考え方が独自でパッケージの型に収まらないなら、AIスクラッチ開発という選択肢もある。ただし開発費と保守費が別途かかるため、対象は差別化になる部分に絞るのが現実的です。
逆に、装置産業として規模が大きい場合や、複数の工場をグローバルに持つ場合は話が変わります。連結決算まで視野に入るなら、NetSuiteやSAPが合うこともあります。規模の大きい製造業の生産・原価・在庫の考え方は、NetSuiteの教科書のNetSuite製造業向け導入ガイドが参考です。判断の軸はOdooが向いている企業にまとめています。
在庫とロットから原価へ――ベンチャーネットが配合型で踏む順番
配合型では、原価から手をつけると止まりやすくなる。ベンチャーネットは、次の順番で進めます。
在庫とロット、部品表と実績、原価の精度。記録を先に整え、分析は後に回します。逆にすると、現場が止まります。
ステップ1:実際の配合表と、数か月分の仕込み記録を見る
最初に確かめるのは、機能より現場の記録です。配合を都度変えているか、単位をどこで換算しているかを見て、扱いにくい範囲の5項目に照らします。
標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」で進められる範囲と、合わない範囲をこの時点で分ける。合わない部分は、合わないとお伝えします。
ステップ2:在庫とロット追跡をそろえる
原料と製品の在庫を1か所に集め、ロット番号を付けて動かします。単位の換算表も、ここで一本にする。
ここが整うと、原料メーカーからの問い合わせにその場で答えられる。まず「見える化」です。
ステップ3:部品表と工程を登録し、実績を入れる
配合を部品表として登録し、製造の実績を入力します。理論値と実績の差が数字になり、歩留まりの話が感覚論から離れていきます。
どの製品のどの工程で差が出るかが分かる、「わかる化」の段階です。製造機能の全体像はOdooの製造管理で説明しています。
ステップ4:実績がたまってから原価の精度を上げる
実績が数か月分たまってから詰めるほうが、現実に近い数字になる。値決めや配合の見直しに使える「儲かる化」は、ここからです。
部門別の管理会計まで踏み込むなら、Enterprise版が前提です。副産物の配分ルールも、この段階で経営の方針として決めます。原価計算の方式(個別原価計算と総合原価計算)の違いは、個別原価計算と総合原価計算の違いとは?で扱っています。
よくある質問
配合を毎回調整する工場でも、Odooの製造機能は使えますか?
使えます。部品表と工程、ロット追跡、単位換算という基本の部分は、そのまま使える範囲です。配合の調整記録や副産物の原価配分は、運用の設計で埋める部分が残ります。
Community版だけで始められますか?
始められます。在庫・購買・製造の基本的な範囲なら、Community版でも使える範囲です。ただしホスティングと保守は自社で担い、公式サポートの対象外です。
法令で求められる記録の保存には対応できますか?
ロット単位で製造と出荷の記録を残すことはできます。ただし要件は業種や製品で変わるため、所管の官公庁や専門家にご確認ください。
現場が入力してくれるか不安です。どう進めればよいですか?
入力する場所を現場の動線に合わせ、項目を最小限から始めます。最初から全部を埋めようとすると、続きません。
食品・化学の工場でOdooを使うメリットとデメリットは何ですか?
配合とロットを標準機能で扱える一方で原価配分や連続運転の計画に制約があります。
部品表と工程、ロット追跡、単位の換算は標準機能で扱えます。部品表・在庫・購買は、Community版でも使えます。一方、分析会計と品質アプリはEnterprise版が前提です。副産物の原価配分や、タンクや反応釜を止めずに回す生産の細かい計画は、無理に寄せないほうがよい部分です(メリットとデメリット)。
まとめ
- 組立型と配合型では、投入量と産出量が一致するかが根本的に違う
- 難しいのは、歩留まりの変動、ロット追跡、単位の不一致の3点
- 部品表・工程・ロット追跡・単位換算は標準機能で扱える
- 副産物の原価配分や装置単位の細かい計画は、無理に寄せない
- 在庫とロットから入り、原価の精度は後から上げる
- メリットは配合・ロット・単位をそろえて記録できること。注意点は版・原価配分・連続運転の計画
1年後、原料メーカーから品質の連絡が来ても、該当ロットの出荷先はロット番号をたどればすぐに一覧になる。月次の会議では製品ごとの理論値と実績の差が並び、配合の見直しや値決めを記録から話せている。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「自社の配合表と仕込み記録が、どこまでOdooの標準機能に乗るか」という見極めから、ご相談を承っています。
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