NetSuite製造業向け導入ガイド|生産管理・原価管理・在庫管理の解決策と判断軸【2026年版】

NetSuiteの原価計算の方法は、7つあります。

そして、品目に保存した後は、方法を変えられません(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

製造業の導入では、こうした「後から変えにくい設定」が、最初の設計に集まっています。

NetSuite(ネットスイート)とは、Oracle NetSuiteが提供するクラウド型のERP(基幹業務システム)です。

会計・販売・購買・在庫・生産を、1つのデータベースで管理します。

製造業から見たときの要点は3つです。

  • 生産管理は、作業指示だけの軽い形から工程・製造実行まで、3つの段階から選べる
  • 原価計算の方法は品目ごとに選び、保存した後は変えられない
  • 生産管理のやり方が強みの会社は、製造業に特化したERPも並べて比べたほうがよい

では、導入の費用と期間は、何で決まるのか。

生産の段階や原価の設計が、どう金額に響くのか。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが支援した導入の実例に、答えがあります(第10章)。

NetSuiteの基本はNetSuiteとは?クラウドERP入門、製造業ERPの横断比較は製造業ERP15選で扱っています。

目次

この記事で分かること

  • 製造業の3つの悩みと、その共通の原因
  • NetSuiteの生産・原価・在庫の機能で、何ができるか
  • 自社にNetSuiteが向くか、ほかの選択肢が合うかの物差し
  • 導入費用の4事例と、費用と期間を左右する4つの要因
  • 設計の前に決めておく論点と、よくある失敗3つ

言葉の整理:BOM(部品表)は、製品を作るのに要る部品・材料と数量の一覧です。MRP(資材所要量計画)は、需要とBOMから、要る部材とその時期を計算する仕組みを指します。

製造業の経営者がよく抱える3つの悩み

部門ごとに数字が違う

「営業の売上と、経理の売上が合わない」

「製造の在庫数と、販売が見ている在庫数がずれている」

原因の多くは、部門ごとに別のシステムやExcelで管理していることです。

会議のたびに、数字のすり合わせから始めることになります。

在庫が正確につかめない

製造業の在庫は、原材料・仕掛品・完成品の3層に分かれます。

そこに複数の倉庫や拠点が加わるため、手作業では実態とずれが生まれます。

過剰な在庫は資金を寝かせ、欠品は売る機会を逃す。

この二つが同時に起きるのが、在庫が見えない会社の特徴です。

売上は伸びているのに、利益が見えにくい

原因の多くは、原価を製品別・案件別に正しくつかめていないことです。

間接費の配賦が合っていないと、「実はこの製品は赤字だった」と後から分かります。

配賦(はいふ)は、まとめてかかった費用を、決めた基準で製品や部門に割り振ることです。

考え方は配賦とはで扱っています。

3つの悩みに共通する原因は、情報が分かれていることです。

悩みNetSuiteで見るもの導入前の決めごと
部門ごとに数字が違う受注から会計までを1つのデータで記録するどの数字を「正」とするかを、部門の間で決めてあるか
在庫が正確につかめない原材料・仕掛品・完成品を、拠点ごとに同じ仕組みで記録する入出庫の記録を、誰がいつ入れるかを決めてあるか
利益が見えにくい品目ごとの原価計算と、製品別・部門別の収益間接費をどの基準で配るかを決めてあるか

どの悩みも、システムを入れるだけでは解けません。

右の列の「決めごと」がないと、データが1つになっても数字は合いません。

悩み・原因・決めごとのつながりを図にすると、次のとおりです。

製造業の3つの悩みと、共通の原因 部門ごとに数字が違う、在庫がつかめない、利益が見えにくいという3つの悩みの原因は、情報が分かれていること。データを1つにし、正とする数字・入力する人・間接費を配る基準を先に決める。 3つの悩みと、共通の原因 部門ごとに 数字が違う 在庫が つかめない 利益が 見えにくい 共通の原因 情報が分かれている 1つのデータ+決めごと 正とする数字・入力する人・ 間接費を配る基準を先に決める システムを入れるだけでは解けない
製造業の3つの悩みと、共通の原因

NetSuiteとは|製造業から見た特徴

NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

190通貨・27言語に対応しています。

Oracle NetSuiteは、自社の製品を「#1 AI Cloud ERP」と掲げています。

AI Connector Serviceを使うと、ClaudeやChatGPTなどの外部のAIとNetSuiteをつなげられます。

(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)

製造業に「統合型」が効く理由

営業が受注を入れると、その情報が生産・購買・会計にそのままつながります。

現場の管理と経営の数字が、同じデータでつながる。ここが統合型の価値です。

拠点や事業が増えていく製造業ほど、この効果は大きくなります。

クラウドとオンプレミスの違い

オンプレミスは、自社でサーバーを持ってシステムを動かす形です。

観点クラウドERP(NetSuiteなど)オンプレミスERP
初期投資サーバーは不要。月額の費用で平準化サーバーとライセンスの費用がかかる
更新NetSuiteは年2回、通常は春と秋に更新自社で更新の作業と費用を見込む
作り込みの扱い更新時もカスタマイズは新版へ引き継がれる作り込みが多いと更新が重くなる
海外展開多通貨・多言語が標準国ごとに追加の開発が要ることがある

NetSuiteの更新の頻度と、カスタマイズの引き継ぎは、Oracle NetSuite公式のFAQにもとづきます(2026年9月確認)。

ただし、引き継がれても動作の確認は要ります。

進め方はNetSuiteのバージョンアップへの備え方で扱っています。

先に知っておきたい弱いところ

NetSuiteは世界標準で作られた製品です。

そのため、日本の製造業では次の点に工夫が要ることがあります。

  • 日本独自の帳票や、取引先ごとの締めの請求は、設定や開発で合わせる
  • 一部の画面やヘルプ、新しい機能の情報は、英語で読むことがある
  • 機能が多い分、慣れるまでに時間がかかる

どれも、事前に知っていれば備えられます。

詳しくはNetSuiteでできないことは?で扱っています。

生産管理でできること|3つの段階から選ぶ

NetSuiteの生産管理は、1つの形ではありません。

Oracle NetSuiteは、製造の複雑さに応じて3つの段階を案内しています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

段階できること(公式の説明の要約)向く製造業
作業指示と組立(Work Orders & Assemblies)組立品目を定め、作業指示を少ない手間で作る。仕掛品や労務の個別の追跡はしない軽い組立が中心
仕掛品と工程(WIP & Routings)作業場所の設定、労務費の追跡、能力を無限と見た日程計画、ガントチャート工程が複数あり、労務も見たい
高度製造(Advanced Manufacturing)能力の上限を考えた日程計画、バッチ管理、製造実行まで工程が複雑、現場の実行まで管理したい
NetSuiteの生産管理の3つの段階 作業指示と組立、仕掛品と工程、高度製造の3段階。下に行くほど管理が細かくなり、現場の入力も増える。今の製造の複雑さに合う段階から始める。 生産管理の3つの段階 1|作業指示と組立 軽い組立。仕掛品・労務は追わない 2|仕掛品と工程 工程と労務費を追う。ガントチャート 3|高度製造 能力の上限を考えた計画と製造実行 いまの複雑さに合う段階から始める 下ほど管理が細かく、現場の入力も増える
NetSuiteの生産管理の3つの段階

最初から一番上の段階を選ぶ必要はありません。

今の製造の複雑さに合う段階から始め、事業に合わせて上げていきます。

段階が上がるほど、工程ごとの実績がそろい、遅れや原価のずれをAIで点検しやすくもなります。

その分、現場の入力の手間は増えます。

高度製造の詳細は、NetSuite Advanced Manufacturingとはで扱っています。

BOM・工程・MRP

  • BOM:製品を構成する部品・材料の階層を登録する
  • 工程(ルーティング):製造の順番、作業時間、使う設備を定める
  • MRP:需要とBOMから、要る原材料・部品・半製品と、その時期を出す

Oracle NetSuiteは、MRPで次のことができると説明しています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

  • 拠点をまたいで、品目の需要と供給のつながりをたどる
  • 手元の在庫と、入る予定の在庫(作業指示・移動・発注)を割り当てる
  • 仮の計画を複数作り、変化が在庫や納期にどう響くかを試す

BOMの考え方はBOM(部品表)とは、MRPの詳細はNetSuiteのSupply Planning(MRP)とはで扱っています。

生産の形態への対応

生産の形態は、会社によって違います。

  • 受注生産:注文を受けてから作る
  • 見込生産:需要の予測にもとづいて先に作り、在庫で持つ
  • 繰返生産:同じ製品を続けて作る
  • 多品種少量生産:種類が多く、1種類あたりの量が少ない

NetSuiteでは、BOM・作業指示・MRPを組み合わせて生産を管理します。

自社の形態で例外の処理まで回るかは、デモで自社の製品を使って見てください。

検査や不適合の管理が要る場合は、NetSuite Quality Managementもあわせて読んでおきます。

業種別の初期設定(SuiteSuccess)

SuiteSuccess(スイートサクセス)は、業種ごとの標準の型を使って導入を進める、Oracle NetSuiteの手法です。

日本の公式サイトでは、製造業向けのManufacturing Editionが案内されています。

事前の構成には、ベストプラクティスと実績のあるワークフローが含まれます。

業務ロールごとのダッシュボード・KPI・レポートも用意されています。

(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)

ゼロから設計しない分、導入の期間を短くしやすくなります。

原価管理でできること

製造業にとって、原価管理は利益を左右するテーマです。

原価計算の方法は7つ

Oracle NetSuiteのヘルプでは、在庫の原価計算の方法として次の7つが挙げられています。

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)

方法考え方向く品目の例
平均(Average)入るたびに平均の単価を計算し直す。既定の方法単価の変動が小さい汎用の部材
先入先出(FIFO)先に入ったものから出たと考える仕入の時期で単価が変わる品目
後入先出(LIFO)後に入ったものから出たと考える会計方針で採用している場合
グループ平均複数の拠点をまとめて1つの平均を持つ拠点間で同じ品目を動かす場合
個別(Specific)シリアル番号ごとの実際の原価を使う高額な機器
ロット(Lot Numbered)ロット番号ごとに原価を追うロットで管理する材料
標準(Standard)標準の原価を決め、実際との差異を追う量産品、原価改善を回したい製品

ヘルプには、品目に保存した後は方法を変えられないとも書かれています。

どの方法を使うかは、会計の方針とも関わります。

顧問の会計士・税理士と相談し、品目を登録する前に決めてください。

標準原価と差異の分析

標準原価では、あらかじめ決めた原価と、実際にかかった原価の差を追えます。

差の出た工程や要素を見て、改善につなげる使い方です。

たとえば、次のような場合です(数字は説明のための架空の例です)。

  • 製品Aの標準原価を1個1,000円と決めた
  • 今月の実際の原価は、1個1,080円だった
  • 差の80円のうち、材料の値上がりが50円、作業時間の超過が30円だった

要素ごとに分けて見られれば、「仕入の交渉」と「工程の見直し」のどちらに手を打つかが決まります。

標準原価の見直しの時期も、あらかじめ決めておきます。

個別原価計算と総合原価計算

  • 個別原価計算:製品や案件ごとに原価を集める。受注生産・多品種少量に向く
  • 総合原価計算:一定期間の製造原価を生産量で割る。量産に向く

どちらの考え方をどう組むかは、製品のラインや事業ごとの設計になります。

詳しくは個別原価計算と総合原価計算の違いと、NetSuiteで実現する全体最適な原価管理で扱っています。

在庫管理でできること

ロット・シリアル・有効期限

  • ロット管理:製造のロット単位で在庫を追う。品質問題が起きたときの追跡に役立つ
  • シリアル管理:1個ずつ在庫を追う。高額な機器や特殊な部品に向く
  • 有効期限の管理:使用期限のある原材料を管理する

設定と実務はNetSuiteのロット管理・シリアル番号管理で扱っています。

複数の倉庫・拠点をまとめて見る

複数の工場・倉庫・販売拠点の在庫を、1つのデータで見られます。

拠点の間の在庫の移動も記録でき、海外の拠点も同じ仕組みで扱えます。

子会社ごとの管理と連結は、NetSuiteのグローバル展開機能で扱っています。

再発注点による自動の補充

品目ごとに、再発注点や発注の単位を決めておきます。

在庫が再発注点を下回ると、補充の手配を出せる仕組みです。

運用は、NetSuiteの在庫管理でできることで扱っています。

判断の物差し|向いている製造業、向いていない製造業

製品の良し悪しではなく、合う条件で考えます。

分かれ目になる問いを図にすると、次のとおりです。

向き・不向きを分ける問い:強みの源泉はどこか 強みの源泉が製品・営業ならNetSuiteが向いている。生産管理のやり方そのものなら、製造業に特化したERPも並べて比べる。拠点が増える、数字を1つにしたい、情シスを置けない会社もNetSuiteが向いている。 向き・不向きを分ける問い 強みの源泉はどこにあるか 製品・営業 NetSuiteが 向いている 生産は標準の形で足りる 生産管理のやり方 製造業に特化した ERPも並べて比べる 特化型を先に見ることも NetSuiteが向くほかの条件 ・拠点・子会社・海外の工場が増えていく ・会計〜生産の数字を1つにそろえたい ・情シスを置けず、サーバーから離れたい
向き・不向きを分ける問い:強みの源泉はどこか

NetSuiteが向いている製造業

  • 拠点・子会社・海外の工場が増えていく
  • 会計・販売・在庫・生産の数字を、1つにそろえたい
  • 専任の情シスを置けず、サーバーの管理から離れたい
  • 生産の管理は標準の形で足り、差別化は製品や営業にある

慎重に比べたほうがよい製造業

  • 生産管理のやり方そのものが、競争力の源泉になっている
  • 工程が非常に複雑で、日本の製造現場の細かな管理を最優先したい
  • 単一の工場・国内取引だけで、今のシステムで安定している

NetSuite以外が合う場合

選択肢合う条件気をつける点
国産の製造業向けERP日本の製造現場の管理を深く作り込みたい作り込みが増えると更新の負担が増える
Odoo小さく始め、アプリを足しながら広げたい日本の会計・税の対応は設計で補う
AIスクラッチ開発特定の業務だけを、自社の形で素早く作りたい会計・監査の要件まで作ると重くなる。保守は自社の責任
いまは入れない課題がExcelの整理や業務の見直しで解ける拠点が増える前に見直しの時期を決める

どれが優れているかではなく、それぞれに長所があります。

詳しい比較は、次の記事で扱っています。

Excelで足りる段階、ERPが要る段階

見る点Excelと既存のシステムで足りる段階ERPを検討する段階
拠点工場と倉庫が1か所ずつ工場・倉庫・子会社が増えていく
月次の締め締めの作業が数日で終わる転記と突合で締めが遅れる
原価主要な製品の原価を手で追える製品別の原価が、決算まで分からない
在庫棚卸しの差が小さい棚卸しのたびに大きな差が出る
人担当者が替わっても回る特定の人しか数字を出せない

右の列に当てはまる項目が増えてきたら、ERPを検討する時期です。

左の列に収まるうちは、「いまは入れない」判断も合理的です。

これから選ぶ製造業と、いま見直す製造業

これからERPを選ぶ製造業

最初に決めるのは、製品ではなく何を1つにしたいかです。

  1. 3つの悩み(数字・在庫・利益)のうち、一番痛いものを決める
  2. 生産の管理が、第3章の3段階のどこで足りるかを見る
  3. 原価計算の方法を、品目の種類ごとに仮に決める(第4章)
  4. 自社の製品と受注のデータで、デモを見る

経営者の目線での論点は、製造業の経営者がNetSuiteで解決できる課題でも扱っています。

いまのシステムを見直す製造業

国産の生産管理や会計を長く使ってきた会社は、次の順で見ます。

  1. 保守の期限と更新の費用:いまのシステムを、いつまで保守してもらえるか
  2. 作り込みの仕分け:追加で開発した機能を「強み」と「慣習」に分ける
  3. つなぎ方の選択:全部を替えるか、会計と販売から替え、生産は当面つなぐか

保守の期限が近いと、比べる時間がないまま同じ形の更新を選びがちです。

期限の2〜3年前から、更新と乗り換えの両方の見積もりを並べておくと、判断に余裕が生まれます。

データの移行は、基幹システムのデータ移行ガイドをご覧ください。

すでにNetSuiteを使っていて、使いこなせていない会社もあります。

その場合は、製品を替える前に、設定と運用の見直しで解けるかを見ます。

たとえば、工程の実績を追わない設定のまま、工程別の原価を求めているケースです。

パートナーの支援が合わなければ、パートナーを替える道もあります。

考え方は基幹システムは「更新」か「乗り換え」かで扱っています。

よくある失敗3つ

失敗1:目的があいまいなまま進める

起きること:ベンダーの提案をそのまま受け入れ、使わない機能にお金をかける。

原因:「業務効率化」「DX推進」といった言葉だけで始め、生産・原価・在庫のどこを優先するかが決まっていない。

避け方:「月次決算を5営業日早める」「原価の差異を製品別に見る」のように、測れる目標を最初に決めます。

目標が決まると、生産の段階や原価計算の方法の選び方も決まってきます。

失敗2:今のやり方をそのまま移し、作り込みが膨らむ

起きること:新しいシステムが前より複雑になり、更新のたびに確認の負担が増える。

原因:工場ごとの例外の処理や、理由の分からない手順まで、すべて再現しようとした。BOM・工程・MRPのまわりで特に起きやすい。

避け方:第9章の型1「見える化→整理整頓→Fit&Gap」の順で進めます。

いまの業務の流れを描き、やめる・まとめる・そろえる業務を決めてから、標準機能と照らし合わせる。

合わない業務は、型2の「標準に合わせる/開発する/残す」のどれかに決めます。

「うちは特殊だから」という声が出たら、何が特殊なのかを一度書き出してみてください。

開発の考え方はNetSuiteのカスタマイズ完全ガイドで扱っています。

失敗3:稼働後の運用を決めずに始める

起きること:システムは動いているのに、現場がExcelに戻り、データが経営に生かされない。

製造業では、生産の現場の運用が止まると、製造そのものに響きます。

原因:「誰が保守するか」「誰が改善を提案するか」を決めずに稼働した。導入と運用の支援が別の会社に分かれていることもある。

避け方:導入の計画と同じ時期に、稼働後の体制を決めます。

社内の担当者は1人に集中させず、少なくとも2人で知識を持つようにします。

稼働後の数か月は、使われていない画面や、Excelに戻った業務がないかを点検します。

伴走型の支援の考え方は伴走型のNetSuite導入支援とはで扱っています。

ベンチャーネットならこう見る

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

製造業のご相談で使うのは、次の2つの型です。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap

製品が決まっていても、まず受注から出荷・請求・原価の集計までの流れを、現場に聞いて描きます。

次に、やめる・まとめる・そろえる業務を決めます。

残った業務だけを、NetSuiteの標準機能と照らし合わせます(Fit&Gap)。

例外の処理の多くは、2段目で「やめる」か「そろえる」に落ちます。

型2:標準に合わせる/開発する/残す

Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。

  • 標準に合わせる:業務のほうを、NetSuiteの標準に寄せる
  • 開発する:追加の開発や、外部システムとの連携で補う
  • 残す:いまの生産管理システムなどに残し、NetSuiteとつなぐ

製造業では、工程の細かな管理を「残す」選択がよく出ます。

「開発する」を選ぶほど、導入費用と更新の負担が増えます。第10章の事例1が、その典型です。

ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎ・立て直しと、他システムとの連携が多くを占めます。

「残す」を選んだ仕組みとNetSuiteをつなぐ設計も、同じチームで受け持ちます。

最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。

  • 強みの源泉は、製品・営業・生産管理のどれか
  • 生産の段階はどこで足りるか(作業指示だけか、工程と労務まで見るか)
  • 稼働後に、社内の誰が回すか

1つ目の答えが「生産管理のやり方そのもの」なら、製造業に特化したERPを先に見ることをお勧めすることもあります。

合わないときは、合わないとお伝えします。

パートナーを選ぶときの2つの視点

1つめは支援の形です。

パートナーに丸投げすると、業務の理解が浅いまま設定が進み、稼働後に「現場に合わない」となりやすい。

業務が複雑な製造業ほど、会社とパートナーが一緒に業務を整理し、定着まで進める伴走型が合います。

2つめは導入と運用を分けずに支えられるかです。

導入だけの契約だと、稼働後の相談に「範囲外です」と返されることがあります。

基幹システムが止まれば、生産そのものに響きます。

契約の前に、稼働後に誰がどこまで支えるかを聞いてください。

選び方はNetSuiteパートナーの選び方でも扱っています。

導入の進め方と費用・期間

導入の流れ

  1. ヒアリング:いまの業務の流れ、課題、目標を整理する
  2. 要件の整理と設計:あるべき業務の流れを決め、NetSuiteでの実現方法を決める
  3. 初期設定とデータ移行:マスタの設定、データの移行、帳票の調整
  4. テスト:現場の担当者と、受入のテストをする
  5. 稼働:本番の運用を始める
  6. 運用の支援:稼働後の改善、追加の設定、教育

流れの詳細はNetSuite導入の流れで扱っています。

費用と期間|導入費用の4事例

NetSuiteのライセンスは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

使うモジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。

導入の費用と期間は、ライセンスより大きく開きます。

ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用を並べます。

事例1事例2事例3事例4
ユーザー数100名程度30名程度20名程度3名程度
機能範囲購買・販売・在庫・会計購買・販売・プロジェクト管理購買・販売・在庫・会計購買・販売
外部システム連携開発あり(他社SaaS・顧客独自システム)あり(助言・QAのみ、開発は顧客側)なしなし
アドオン開発ありありありなし
期間1.5年1年2年1.5か月
顧客側体制情シスあり情シス・開発会社あり情シスなし情シスなし
導入費用2億円程度(うち開発約7割)2,000万円程度3,000万円程度150万円程度
NetSuite導入費用の4事例(ベンチャーネットの支援例) 3名・1.5か月で150万円程度、30名・1年で2000万円程度、20名・2年で3000万円程度、100名・1.5年で2億円程度。 NetSuite導入費用の4事例事例4|3名程度150万円程度購買・販売開発なし・期間1.5か月事例2|30名程度2,000万円程度購買・販売・PJ管理連携・開発あり・期間1年事例3|20名程度3,000万円程度購買・販売・在庫・会計開発あり/情シスなし・期間2年事例1|100名程度2億円程度購買・販売・在庫・会計連携・開発あり・期間1.5年ベンチャーネットの支援事例事例1は約7割が開発費
NetSuite導入費用の4事例(ベンチャーネットの支援例)

製造業に近いのは、購買・販売・在庫・会計を入れた事例1と事例3です。

事例1の2億円程度は、約7割が開発でした。他社のSaaSや顧客独自のシステムとの連携が、金額を押し上げています。

事例3は20名程度でも、情シスがいないためサポートを厚くし、期間は2年と最も長くなりました。

差を生む要因は、次の4つです。

  • 機能範囲:購買・販売だけか、在庫・会計や生産まで入れるか
  • 開発:とくに外部システムとの連携。第9章の型2で「開発する」を選ぶほど重くなる
  • 社内の体制:情シスが少ないとサポートを厚くするため、期間も延びやすい
  • ユーザー数:受入テストと教育の工数が増え、社内の調整で長くなりがち

見積もりの読み方は、NetSuiteの料金・費用で扱っています。

ライセンスの最終的な金額は、Oracleの営業が提示します。

ベンチャーネットは、その前の構成の整理と、導入から保守までを担います。

中堅・中小の製造業では、デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)も検討できます。

対象や条件は、公募の要領で読んでください。

進め方はデジタル化・AI導入補助金の活用で扱っています。

設計の前に決めておく論点

製造業の導入では、後から変えにくい設定がいくつかあります。

冒頭の原価計算の方法も、その一つです。

論点決めること後から変えにくい理由
原価計算の方法品目の種類ごとに、7つの方法のどれを使うか品目に保存した後は変えられない(第4章)
ロット・シリアルどの品目をロットで、どれを1個ずつ追うか入出庫の記録の仕方がすべて変わる
拠点の単位工場・倉庫・棚を、どの細かさで分けるか在庫と原価の集計の単位になる
BOMの階層半製品を品目として持つか、工程の中で扱うか作業指示と原価の積み上げが変わる
生産の段階作業指示だけか、工程と労務まで追うか(第3章)現場の入力の手間と、見える原価が変わる

正解は会社ごとに違います。

現場の入力の手間と、経営が見たい数字の細かさの釣り合いで決めます。

今日できること|1つの製品で「数字の流れ」を書き出す

主力の製品を1つ選び、次の表を埋めてみてください。

工程使っているシステム・Excel入力する人月末に合わない数字
(例)受注販売管理システム営業事務売上の月の区切り

受注・生産指示・材料の購買・入庫・出荷・請求・原価の集計の順に書きます。

システムが切り替わる所と、手で転記している所が、情報が分かれている場所です。

この表が、そのまま型1の「見える化」の下書きになります。

あわせて、その製品の原価を、今どの方法で計算しているかも書き添えます。

第4章の7つのどれに近いかが分かると、相談の場で話が早くなります。

第6章の「Excelで足りる段階、ERPが要る段階」の表にも、自社を当てはめてみてください。

よくある質問

Q1. NetSuiteは多品種少量生産の製造業でも使えますか

使えます。

製品ごとにBOMと工程を登録し、受注に応じて作業指示と原価の集計を回します。

例外の処理まで回るかは、自社の製品のデータでデモを見てください。

Q2. 導入にはどのくらいの期間と費用がかかりますか

支援した事例では1.5か月・150万円程度から1.5年・2億円程度まで開きがあります。

ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の例です。

製造業に近い購買・販売・在庫・会計の事例は、20名程度で2年・3,000万円程度、100名程度で1.5年・2億円程度でした(第10章)。

ライセンスはミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

Q3. 社内に情シスがいなくても導入できますか

できます。

技術の作業はパートナーが担い、社内の担当者は業務の実態を伝えることに集中します。

ただし情シスが少ないと、サポートを厚くする分、期間は延びやすくなります(第10章の事例3)。

Q4. 原価計算の方法は、後から変えられますか

品目に保存した後は変えられません。

Oracle NetSuiteのヘルプに、その旨が書かれています(第4章)。

品目を登録する前に、会計の方針と合わせて決めてください。

Q5. 今の国産の生産管理システムから替える価値はありますか

拠点が増える製造業には価値が出やすいです。

海外展開を考える製造業も同じです。

一方、単一の拠点・国内取引だけで安定しているなら、続ける判断も合理的です。

生産管理を残してNetSuiteとつなぐ道もあります(第7章・第9章)。

Q6. NetSuiteとSAPは、製造業から見て何が違いますか

得意な規模と用途が違います。

SAPは大企業・グローバル製造業の複雑な業務を広く深く扱う点に強みがあります。

NetSuiteは、中堅・中小企業がクラウドで会社全体を1つにする用途に向きます。

Q7. 製造業でNetSuiteとAIをどう組み合わせられますか

まずデータを1か所にそろえることが前提です。

そのうえで、AI Connector Serviceを使うと、ClaudeやChatGPTなどからNetSuiteのデータを扱えます(第2章)。

工程の実績がそろうほど、遅れや原価のずれの点検にAIを使いやすくなります。

まとめ

  • 製造業の3つの悩み(数字・在庫・利益)の共通の原因は、情報が分かれていること
  • NetSuiteの生産管理は、作業指示・仕掛品と工程・高度製造の3段階から選べる
  • 原価計算の方法は7つ。品目に保存した後は変えられないため、最初に決める
  • 導入費用は、機能範囲・開発・社内の体制・ユーザー数で、150万円程度から2億円程度まで開く
  • 生産管理のやり方そのものが強みなら、製造業に特化したERPも並べて比べる

費用を押し上げるのも、後から変えにくいのも、最初の設計です。

まずは第11章の表で、主力製品1つの数字の流れを書き出してください。

もう少し詳しく知りたい方へ

生産・原価・在庫のどこから1つにするか、どの段階の生産管理が合うか。

その判断の段階から、製造業の経営者のご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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