従業員31〜100名の会社のOdoo活用モデル|製造・人事へ広げる順番と見極め方

社員が50名を超えたあたりから、経営会議で出てくる数字が部署ごとに少しずつ食い違う。製造や案件の管理は、まだ表計算ソフトに残っている。

「このままOdooで広げればいいのか。それとも、もっと大きなシステムを考えるべきか」。31〜100名の経営者から、よく聞く迷いです。

Odoo(オドゥー:販売・在庫・会計などのアプリを同じデータでつなぐERP)は、この規模でも製造・プロジェクト・人事へと範囲を広げられます。営業・経理・在庫がつながっていれば、次は日々の業務が止まる領域から順に足す段階です(段階的な拡張の進め方)。

範囲を広げると、たとえば次のことが変わります。

  • 表計算ソフトに残っていた製造や案件の管理を、Odooに移せる
  • 製造・プロジェクト・人事を、Enterprise版の標準機能で組み合わせやすくなる
  • 「Odooで足りるか」を、役員会で判断表を見ながら話し合える

ただし、急成長や海外展開、連結決算が具体的に視野にあるなら、NetSuiteなど上位ERPも比べる価値があります。乗り換えの二度手間を避けられるからです。

Odooで広げ続けるか、より規模の大きい会社向けのERP(NetSuite)を考えるかは、いまの人数では決まりません。3〜5年後の姿で決まります。では、自社の見立てはどちらに近いのか。答えは役員会で使える判断表にあります。

なお、Odooには無料・オープンソースのCommunity版と、有償サブスクリプションのEnterprise版があり、本文では両者を区別して扱います。

目次

31〜100名は「広げる」と「見極める」が同時に来る規模

11〜30名では、部署間の統合が課題でした。31〜100名で問われるのは、その先です。統合が進んでいる前提で、「次の3〜5年をどう見るか」が問われます。

「広げる」と「見極める」が同時に来る Odooで扱う業務範囲を製造・プロジェクト・人事へ段階的に広げる検討と、3〜5年後の規模・海外展開・連結決算の要否から上位ERPが必要かを見極める検討。どちらか一方ではなく、両方を並行して考える規模。 「広げる」と「見極める」が同時に来る 広げる Odooで扱う業務範囲を 製造・プロジェクト・人事へ 段階的に拡張していく + 見極める 3〜5年後の規模・海外展開・ 連結決算の要否から、 上位ERPが必要かを検討する どちらか一方ではなく、 両方を並行して考える規模
「広げる」と「見極める」が同時に来る

Odooで広げる:製造・プロジェクト・人事への段階的な拡張

業務範囲を、詰まっている順に広げる

すでに営業・経理・在庫がつながっているなら、次は製造、プロジェクト管理、人事へと範囲を広げる段階です。

一度に全業務を統合する必要はありません。日々の業務が止まる領域を最優先し、分析やレポートは後から加える。この順序が現実的です。

Community版とEnterprise版、31〜100名ではどちらか

版31〜100名の会社にとって
Enterprise版(有償)製造・プロジェクト・人事など幅広い業務領域を標準機能で組み合わせやすい
Community版(無料・オープンソース)自社でのホスティング・保守が前提。業務範囲が広がるほど、欠けている機能(会計など)の代替コストが積み上がりやすい

この規模で複数の業務領域を統合するなら、Enterprise版を前提に検討するのが現実的です。Community版とEnterprise版の違いはこちらの記事で整理しています。

31〜100名でOdooを広げる良い点と、気をつけること

この規模でOdooの範囲を広げる良い点と、気をつけることは次のとおりです。版で違う項目には版を添えています。

良い点

  • 製造・プロジェクト・人事へ広げられる:営業・経理・在庫がつながった後も、同じOdooで業務範囲を広げられる
  • 詰まっている順に段階的に広げられる:一度に全業務を統合する必要はない。日々の業務が止まる領域を優先し、分析やレポートは後から加える
  • 幅広い業務を標準機能で組み合わせやすい:Enterprise版なら、製造・プロジェクト・人事など幅広い業務領域を標準機能で組み合わせやすい
  • 大きすぎるシステムの見直し先にもなる:契約している機能の半分以下しか使っていないなら、規模適正化を検討する余地がある。譲れない要件の有無も合わせて確かめる

気をつけること

  • Community版は代替コストが積み上がりやすい:自社でのホスティング・保守が前提。業務範囲が広がるほど、欠けている機能(会計など)の代替コストが積み上がりやすい
  • 3〜5年後の姿によってはNetSuiteも比べる:急成長や海外展開、連結決算が具体的に視野にあるなら、NetSuiteなど上位ERPも検討する
  • 先回りしすぎると使わない機能が増える:使わない機能は費用と運用の複雑さを生み、稼働後の定着も難しくなる

両方を並べると、次の図のとおりです。

31〜100名でOdooを広げる良い点と注意点 良い点は、同じOdooで製造・プロジェクト・人事へ範囲を広げられる、日々の業務が止まる領域から段階的に広げられる、Enterprise版なら幅広い業務領域を標準機能で組み合わせやすい、大きすぎるシステムの規模を見直す選択肢にもなること。注意点は、Community版は業務範囲が広がるほど欠けている機能の代替コストが積み上がりやすい、急成長・海外展開・連結決算が視野にあればNetSuiteなど規模の大きい会社向けのERPも比べる、将来を見越しすぎると使わない機能が増えること。 31〜100名でOdooを広げる良い点と注意点 良い点 製造・プロジェクト・人事へ広げる 同じOdooで業務範囲を広げられる 詰まっている順に段階的に広げる 日々の業務が止まる領域から 幅広い業務を標準機能で組み合わせる Enterprise版の場合 大きすぎるシステムの見直し先にも 使う機能が半分以下なら検討の余地 注意点 Community版は代替コストが増えやすい 欠けている機能(会計など)の代わり 3〜5年後によってはNetSuiteも比べる 急成長・海外展開・連結決算 先回りしすぎると使わない機能が増える 費用と運用の複雑さを生む
31〜100名でOdooを広げる良い点と注意点

NetSuiteも比べるかどうかは、次の章の役員会で使える判断表で確かめられます。

Odooのままか、NetSuiteも視野に入れるか|3〜5年後で判断する

判断軸は「規模」ではなく「3〜5年後の姿」

31〜100名という現在の規模だけでは、Odooのままでよいか、NetSuiteを視野に入れるべきかは決まりません。判断の軸は、「3〜5年後にどうなっているか」です。

役員会で使える判断表

自社の見立てが、どちらの列に多く当てはまるかを確かめてください。

論点Odooのまま広げるほうが合うNetSuiteも視野に入れる
3〜5年後の人数着実な成長を見込んでいる数百名規模への急成長を見込んでいる
拠点・海外海外展開が当面、具体的な計画にない海外展開や複数拠点が具体的に視野にある
決算連結決算は当面、具体的な計画にない連結決算が具体的に視野にある
外部の目当面、大きな資金調達の予定はない資金調達や将来のM&A(合併・買収)を想定している
業務の型まだ固まらず、標準機能への適合を進めている型が固まり、あとは規模を広げる段階

右の列に複数当てはまるなら、最初から広い範囲を見据えた基盤を検討する価値があります。乗り換えの二度手間を避けられるからです。この論点は成長企業の基幹システムはどこから始めるかで詳しく扱っています。連結決算の行が右に当てはまる場合は、グループ連結決算をNetSuiteで効率化で、自動化できる範囲と設計が要る範囲を確かめられます。

左の列が多い場合は、Odooで業務範囲を段階的に広げる進め方が引き続き現実的です。OdooとNetSuiteの違いは、こちらの記事で整理しています。

断定はできません。成長の見立て次第だからです。表の答えが割れたときこそ、外部の視点を交えて検討することをおすすめします。

3〜5年後の見込みで判断が分かれる 3〜5年後の姿を問い、着実な成長で海外展開がなければOdooのまま業務範囲を段階的に広げる。急成長や海外展開が視野にあれば、NetSuiteなど上位ERPを視野に入れて検討する。 3〜5年後の見込みで判断が分かれる 3〜5年後の姿は? 着実な成長・ 海外展開なし Odooのまま 業務範囲を 段階的に広げる 急成長・海外展開 が視野に NetSuiteなど 上位ERPを 視野に入れて 検討する
3〜5年後の見込みで判断が分かれる

逆のケース:大きすぎるシステムからOdooへ

31〜100名の会社の中には、逆の悩みを抱える会社もあります。「過去に導入した大型ERPが、いまの事業規模と釣り合わなくなっている」というものです。

事業を絞り込んだ、想定した成長に至らなかった、保守期限が近づいている。こうしたきっかけで、規模の見直しを検討する会社があります。

この場合の判断基準は、「使っている機能の割合」と「譲れない要件の有無」です。契約している機能の半分以下しか使っていないなら、規模適正化を検討する余地があります。詳しくは脱・大型ERPを検討する中堅企業の進め方で整理しています。

31〜100名の会社で、ベンチャーネットが最初に確かめること

ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。そのため、最初から製品を決めずに、次の順で確かめます。

  1. 3〜5年後の姿を聞く:人数、拠点、海外、資金調達の予定を経営者から直接うかがいます。ERP(基幹業務システム)はITではなく経営のプロジェクトだからです。
  2. 詰まっている業務と、使っていない機能を棚卸しする:日々止まっている業務はどこか。逆に、契約しているのに使っていない機能はどれか。両方を並べます。
  3. 標準機能に業務を合わせられるかを確かめる:Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で、変えてよい業務と譲れない業務を分けます。
  4. 広げる順番を決める:まず数字を見える化し、次に原因がわかる状態にし、最後に儲けにつなげる。この順で、足すアプリの順番を決めます。
  5. 合わないなら、合わないと伝える:Odooでは足りない見立てならNetSuiteを、パッケージに乗らない固有業務がある場合はAIスクラッチ開発を提案します。ライセンスは不要でも、開発費・保守費が別途かかる点も含めてお伝えします。

標準機能への合わせ方はOdooとFit to Standardで詳しく解説しています。「見える化→わかる化→儲かる化」の順番が、なぜデータを1か所に集めることから始まるのかは、データを1か所に集めると、経営はどう変わるかにまとめています。

規模の判断でよくある2つの失敗

失敗1:現在の規模だけで判断してしまう

「今31〜100名だから、このERPが正解」という決め方は、成長スピードを考えに入れていません。3〜5年後の姿から逆算してください。

失敗2:将来を見越しすぎて、当面使わない機能まで入れる

先回りにも代償があります。使わない機能は費用と運用の複雑さを生み、稼働後の定着も難しくなります。判断は両方向のバランスです。

よくある質問

31〜100名なら、より規模の大きい会社向けのERP(NetSuite)を必ず検討すべきですか?

いいえ。現在の規模だけでは決まりません。3〜5年後の成長見込み、海外展開の有無、外部の目が入る局面の想定。この3つを踏まえて検討してください。

業務範囲を広げる順番に決まりはありますか?

基本の順番はあります。日々の業務が止まる領域(受注・在庫・請求など)を優先し、分析やレポート、人事などは後から加える形です。

過去に導入した大型システムが重すぎる場合、どう判断すればよいですか?

契約している機能のうち、実際に使っている割合で判断してください。半分以下であれば、規模の見直しを検討する価値があります。

この規模でも、パーツ導入や段階的な進め方は有効ですか?

有効です。規模が大きくなっても、一度にすべてを統合・移行する必要はありません。詰まっている領域から順に進める考え方は変わりません。

31〜100名の会社でOdooを広げるメリットとデメリットは何ですか?

同じOdooで範囲を広げられる一方で3〜5年後の見立ても要ります。

製造・プロジェクト・人事へと、日々の業務が止まる領域から段階的に広げられます。Enterprise版なら、幅広い業務領域を標準機能で組み合わせやすくなります。

一方で、急成長や海外展開、連結決算が視野にあるなら、NetSuiteなど上位ERPも比べる価値があります(良い点と、気をつけること)。

まとめ

31〜100名は、Odooでの活用を広げる判断と、将来を見極める判断が同時に必要になる規模です。

  • 業務範囲は、日々の業務が止まる領域から優先して広げる
  • NetSuiteを検討すべきかは、現在の規模ではなく3〜5年後の姿で判断する
  • 海外展開・急成長・外部の目が入る局面が見えているかが判断材料
  • 逆に、過去の大型システムが重すぎるなら規模適正化も選択肢
  • 断定はできない。自社だけで判断が難しければ外部の視点を交える
  • Odooを広げる良さは段階的に範囲を足せること。注意点は版の選び方と3〜5年後の見立て

1年後には、受注から請求に加えて、製造や案件の記録もOdooにたまり始めています。次の拠点を出すか迷ったとき、その記録と判断表を手元に「Odooで足りるか、NetSuiteも考えるか」を役員会で落ち着いて話し合えているはずです。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「うちの成長スピードなら、どこまでOdooで広げ、どこから見直すべきか」という整理から、ご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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