NetSuiteで連結決算を効率化|自動化できる範囲と、設計が要る範囲

決算月の第2週。

経理の責任者は、海外子会社の試算表がそろうのを待っています。

届いたら換算して、Excelで合算し、グループ内の取引を一つずつ消していく。

子会社が増えるたびに、この作業は延びていきます。

連結会計とは、グループ各社の財務を、親会社を起点に1つにまとめる会計処理のことです。

NetSuiteでは、換算・合算・内部取引の消去の多くを仕組みで回せます。

ただし、換算の方針、消去のルール、会計方針の判断は、最初に自社で設計します。

では、自動に任せられる所と、自社で決める所の境目はどこにあるのか。

その線を引くのが、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの見方です。

目次

この記事で分かること

  • 連結会計の基本の用語
  • NetSuiteで連結を回す全体像と、期末の締めの順番
  • 自動化できる範囲と、設計・判断が要る範囲
  • 導入の費用と期間を左右する要因と、よくある3つの失敗

連結会計の基本の用語

  • 資本連結:親会社の投資と、子会社の資本を相殺する処理
  • 成果連結:グループ会社どうしの取引や、未実現の損益を消す処理
  • 内部取引の消去:グループ内の売買など、内部の取引を打ち消すこと
  • 連結修正仕訳:合算した数字を、連結のルールに合わせて直す仕訳

連結には、開示のための制度連結と、経営判断のための管理連結があります。

どちらも、グループ全体を1つの会社として見る点は同じです。

外部への報告に使うか、社内の判断に使うか。違いは目的にあります。

NetSuiteで連結を回す全体像

NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

複数の子会社を1つのシステムで管理し、連結まで進められます。

財務の連結は、OneWorldとMulti-Bookの2つで使えます(出典:Oracle NetSuite公式)。

  • OneWorld:多通貨・多言語・複数の拠点をまとめて管理する仕組み
  • Multi-Book:1つの取引を、複数の会計基準の帳簿で並行して持つ仕組み

OneWorldの全体像は、NetSuiteのグローバル展開機能で紹介しています。

期末の締めは3つの順番で

Oracleのヘルプでは、期末の締めのチェックリストを次の順に進めると説明されています。

  1. 外貨建ての残高を再評価する
  2. 連結の残高を計算する
  3. グループ会社間の取引を消去する(チェックリストの最後の作業)

消去は、1と2を終えてからでないと実行できません。

(出典:Oracle NetSuiteヘルプ「Intercompany Elimination Overview」、2026年9月確認)

NetSuiteの期末の連結:3つの順番 外貨建ての残高の再評価、連結の残高の計算、グループ会社間取引の消去の順に進める。消去はチェックリストの最後の作業で、前の2つを終えてから実行する。 期末の連結、3つの順番 ① 外貨建ての残高を再評価 チェックリストの最初の作業 ② 連結の残高を計算 3つのレートで換算して合算 ③ グループ会社間取引を消去 チェックリストの最後の作業 ③は①と②を終えてから実行できる
NetSuiteの期末の連結:3つの順番

連結の4つのステップ

合算と通貨の換算

海外子会社の数字は、親会社の通貨に換算してから合算します。

NetSuiteは、子会社で記録した取引を、親会社の勘定へ同時に転記する仕組みを持っています(出典:Oracle NetSuite公式)。

換算に使うレートは、勘定の種類によって3つに分かれます。

レートの種類中身標準で使う勘定
期末レート(Current)期末時点の為替レート資本を除く貸借対照表の勘定
平均レート(Average)期中の取引の加重平均のレート損益計算書の勘定
取得時レート(Historical)資本の勘定に使うレート資本の勘定

(出典:Oracle NetSuiteヘルプ「Consolidated Exchange Rate Types」、2026年9月確認)

為替差損益と評価替えの実務は、NetSuiteで為替差損益はどう処理する?で扱っています。

内部取引の消去

グループ会社間の売上・請求の行は、グループ会社間の勘定をもとに、消去の対象として標準で特定されます。

期末に消去を実行すると、対象の行に消去の仕訳が作られます。

グループ会社間の売掛金・買掛金の為替の評価損益も、消去で考慮されます。

(出典:Oracle NetSuiteヘルプ「Intercompany Elimination Overview」、2026年9月確認)

グループ会社間取引の自動管理(Automated Intercompany Management)は、OneWorldの機能です。

この機能がなければ、消去の仕訳は手で作って計上します。

(出典:Oracle NetSuiteヘルプ「Automated Intercompany Management Overview」、2026年9月確認)

どの取引を内部取引として扱うか。そのルールは自社で決めます。

連結修正

連結に要る処理は、期末の締めの手順に沿って効率よく進められます。

一方で、未実現利益の消去のように、個別の判断や設定が要る部分もあります。

ここは、自社の会計方針に沿って決めます。

連結財務諸表の作成

修正後の連結財務諸表は、仕組みで作れます。

ただ、Multi-Bookを使う場合、標準で連結を扱うのはプライマリブックだけです(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。

日本基準とIFRSのどちらで連結するかは、帳簿を設計する最初の段階で決めます。

詳しくはIFRSと日本基準の二重報告をご覧ください。

自動でできる範囲と、設計が要る範囲

冒頭の境目は、ステップごとに次の表のとおりです。

連結のステップ自動化できる範囲設計・判断・手作業が要る範囲
合算・通貨の換算3つのレートでの換算と合算換算の方針、マスタ・勘定科目・決算期の統一
内部取引の消去対象の行の特定と、期末の消去の仕訳どの取引を内部取引とするかのルール
連結修正期末の締めの手順の効率化未実現利益の消去など、個別の判断・設定
連結財務諸表連結後の財務諸表の作成どの基準で連結するか、開示の様式

すべてが自動になるわけではありません。

それでも、入口の設計を通せば、毎月・毎期の手作業は大きく減ります。

右の列を先に埋めた会社ほど、左の列の自動化が効きます。

連結の4つのやり方

やり方向く会社注意点
A. Excelで合算子会社が1〜2社人に依存し、締めが遅れやすい
B. 各社のERPはそのまま、連結だけ専用ツール各社のERPが異なるデータの受け渡しの手間が残る
C. NetSuite OneWorldで全社を1つに子会社が増える、海外があるマスタ統一の設計が要る
D. 2層ERP(本社は既存、子会社をNetSuite)本社の基幹を残したい本社との受け渡しの設計が要る

Cでは、取引から連結までのデータが1か所にそろいます。

消去しきれない内部取引を毎月洗い出すような点検も、AIに任せやすくなります。

Dの考え方は、2層ERP(Two-Tier ERP)とはで紹介しています。

NetSuiteに追加する経営管理の製品(EPM)には、「決算管理と連結」があります。

連結と決算の手順を1つの仕組みで管理する製品です(出典:NetSuite日本公式サイト、2026年9月確認)。

中身はNetSuite EPMとはをご覧ください。

判断の物差し|向いている会社・向いていない会社

NetSuiteでの連結が向いている会社

  • 子会社が3社以上あり、今後も増える見込みがある
  • 海外子会社があり、通貨の換算に手間がかかっている
  • 連結が特定の人のExcelに依存している
  • 子会社の基幹システムも、あわせて見直したい

向いていない会社・急がなくてよい会社

  • 子会社が1〜2社で、内部取引も少ない(Excelで足りることが多い)
  • 各社の基幹システムを当面変えない(連結専用のツールが早いことがある)

子会社の統合の方針がまだ決まっていないなら、「いまは入れない」も選択肢です。

方針が固まる前にシステムを決めると、マスタの統一でやり直しが起きやすくなります。

判断の順番を図にすると、次のとおりです。

NetSuiteで連結するかを決める3つの問い 子会社の統合の方針がまだなら、いまは入れないも選択肢。子会社が1〜2社で内部取引が少なければExcelで足りることが多い。各社の基幹を当面変えないなら連結専用のツールが早いことがあり、あわせて見直すならNetSuiteでの連結が向いている。 NetSuiteで連結するか、3つの問い 子会社の統合の方針は決まったか まだ いまは入れないも選択肢 方針を固めるのが先 決まった 子会社は3社以上で、今後も増えるか いいえ Excelで足りることが多い 1〜2社で内部取引も少ない はい 各社の基幹システムを当面変えないか 変えない 見直す 連結専用のツール のほうが早いことがある NetSuiteでの連結 が向いている
NetSuiteで連結するかを決める3つの問い

導入の費用と期間|連結で効いてくる4つの要因

連結を目当てにNetSuiteを入れる場合、ライセンスはミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。

導入の費用は、もっと開きます。

ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用でも、差は大きく出ています。

3名程度・1.5か月で150万円程度の事例もあれば、100名程度・1.5年で2億円程度の事例もあります。

2億円程度の事例は、約7割が開発費でした。

4事例の中身は、NetSuiteの料金・費用・価格に載せています。

費用と期間を左右する要因は4つです。

連結の導入では、それぞれ次の点に表れます。

要因連結の導入で表れる点
機能範囲会計だけか、子会社の販売・購買まで1つにするか
開発(特に外部連携)本社の既存の基幹システムとつなぐか(2層ERPなど)
社内の体制親会社と子会社の経理に、設計に割ける人がいるか
ユーザー数子会社の数と、各社で操作する人の数

子会社の数と、既存の基幹とつなぐかどうか。

連結の導入では、この2つが見積りの幅を大きく動かします。

これから選ぶ会社と、いま使っている会社

これからNetSuiteを選ぶ会社

  • 子会社の勘定科目・決算期・換算の方針を、選定と並行して洗い出す
  • 全社を一度に移すか、主要な子会社から始めるかを決める
  • 本社の基幹を残すなら、受け渡しの範囲を見積りの前に決めておく

M&A後の統合の進め方は、M&A後のPMI完全ガイドで扱っています。

いまNetSuiteを使っていて、連結を見直したい会社

  • グループ会社間取引の自動管理を使わず、消去の仕訳を手で作っていないか
  • 期末の締めが、再評価→連結残高の計算→消去の順で回っているか
  • 導入パートナーの支援が止まっていないか。止まっていれば、保守・伴走の相手を見直す時期です

日本の連結実務で押さえること

NetSuiteは世界共通の製品です。

日本特有の実務には、事前の確認が要ります。

  • 日本基準とIFRSの違いへの対応の方針
  • 子会社ごとの決算期の扱い
  • 顧問税理士や監査法人との連携
日本の連結実務:プロジェクトの初期に決める3つ Multi-Bookで複数の基準の帳簿を並行して持てるが、標準で連結するのはプライマリブックだけ。そのため、日本基準とIFRSへの対応の方針、子会社ごとの決算期の扱い、顧問税理士や監査法人との連携を初期に決める。 日本の連結実務、初期に決める3つ Multi-Bookで基準は並行して持てる ただし標準で連結するのはプライマリブック 日本基準とIFRSへの対応の方針 子会社ごとの決算期の扱い 顧問税理士・監査法人との連携 標準機能だけでは完結しにくいため、先に決める
日本の連結実務:プロジェクトの初期に決める3つ

「できない」という話ではありません。

Multi-Bookで、複数の基準を並行して持てます。

ただ、日本の会計要件は標準機能だけで完結しにくいため、方針はプロジェクトの初期に決めておきます。

NetSuiteの基礎は、NetSuiteとは?で紹介しています。

よくある3つの失敗

失敗1:足場を固めないまま合算する

起きること:システムは正しく動いているのに、連結の数字が合わない。

原因:子会社ごとに、勘定科目の体系・決算期・換算の方針がばらばら。

避け方:合算より先に、勘定科目・決算期・換算の方針の統一を設計します。

失敗2:連結を特定の人のExcelに任せたまま、システムだけ足す

起きること:システムを入れても、その人がいないと連結が締まらない。

原因:内部取引の判定や修正の判断が、個人の頭の中にある。

避け方:判断をルールとして言葉にし、消去の対象の勘定や設定に落とします。

失敗3:全社・全基準を一度に、自己流で立ち上げる

起きること:設計と検証が膨らんで止まる。設定後に数字が合わず、やり直しになる。

原因:連結は、会計基準とシステムの設定、日本の実務が交わる領域。範囲を広げるほど、判断の量も増える。

避け方:主要な子会社・主要な基準から始め、会計とシステムの両方が分かる相手と設計します。

ベンチャーネットならこう見る

連結の相談で、ベンチャーネットが最初に聞くのは機能ではありません。

「前月の連結は、何日かかり、どこで止まりましたか」です。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap

連結の作業も、ほかの業務と同じ順番で見ます。

  1. 見える化:回収・換算・消去・修正・財務諸表の作成を、工程ごとに日数と担当で描く
  2. 整理整頓:勘定科目・決算期・換算の方針をそろえ、内部取引の判定をルールにする
  3. Fit&Gap:残った作業を、NetSuiteの標準の連結と照らし合わせる

Fit&Gapは、業務と機能の合う・合わないを一つずつ見る作業です。

失敗1と失敗2は、どちらも2段目を飛ばしたときに起きます。

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、NetSuite標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&GapNetSuiteの標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

型2:標準に合わせる/開発する/残す

標準で収まらない作業は、3つのどれかに決めます。

  • 標準に合わせる:換算のレートや締めの順番は、NetSuiteの標準に寄せる
  • 開発する:本社の既存の基幹との受け渡しなど、つなぐ部分だけを作る
  • 残す:個別の判断が要る連結修正は、当面は担当者の手で続ける

開発を選ぶほど、第6章の「開発」の要因が重くなります。

子会社が少ないうちは、「まだExcelで足ります」とお伝えすることもあります。

最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。

  • 連結の目的は、開示の制度連結か、経営判断の管理連結か
  • どの基準で連結するか(Multi-Bookでは、標準で連結するのはプライマリブックだけ)
  • どの子会社から始めるか

今日できること|連結の締めを時間で測る(1時間)

前月(または前四半期)の連結を振り返り、次の表を埋めてみてください。

工程かかった日数担当止まった理由
(例)子会社の試算表の回収4日経理1名海外子会社の締めが遅い

回収・換算・消去・修正・財務諸表の作成の順に書き出します。

日数が最も大きい工程が、仕組みで縮める最初の候補です。

この表が、型1の「見える化」の1枚目になります。

よくある質問

Q1. NetSuiteの連結は、どのモジュールで使えますか

OneWorldとMulti-Bookです。

子会社の取引を、親会社の勘定へ同時に転記する仕組みです。

グループ会社間取引の自動管理も、OneWorldの機能です。

Q2. 連結はすべて自動ですか

すべてではありません。

換算・合算・内部取引の消去・財務諸表の作成は、仕組みで回せます。

未実現利益の消去など、個別の判断や設定が要る部分もあります(第4章)。

Q3. 内部取引の消去の仕訳は、いつ作られますか

期末に消去の処理を実行したときです。

締めのチェックリストでは最後の作業です。再評価と連結残高の計算を終えてから行います(第2章)。

Q4. 海外子会社の換算レートはどう決まりますか

勘定の種類ごとに3つのレートを使い分けます。

標準では、資本を除く貸借対照表は期末レート、損益計算書は平均レート、資本は取得時レートです(第3章)。

Q5. 日本基準とIFRSの両方で連結できますか

帳簿は並行して持てますが標準で連結するのはプライマリブックです。

どの基準で連結するかを、最初の設計で決めます。

Q6. 連結決算はどのくらい早くなりますか

連結の構造と運用で変わります。

まず、自社のどの工程に時間がかかっているかを切り分けるのが近道です(第11章)。

まとめ

  • NetSuiteの連結は、OneWorldとMulti-Bookが土台
  • 期末は再評価→連結残高の計算→内部取引の消去の順
  • 換算は期末・平均・取得時の3つのレートを勘定ごとに使い分ける
  • 標準で連結するのはプライマリブック。どの基準で連結するかを先に決める
  • 導入の費用と期間は、子会社の数と既存の基幹とつなぐかで大きく動く

決算月の第2週に、試算表を待つ時間はどこまで縮むのか。

答えは、前月の連結を工程ごとに測った表の中にあります。

もう少し詳しく知りたい方へ

連結をどこまで自動にできるかは、グループの構造で変わります。

線引きの整理から、ご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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