NetSuite EPM(経営管理)とは?標準の予算管理との違い・できること・向いている企業【2026年版】

「Excelでの予算編成が、毎期つらい」「グループ各社の数字を集めるのに時間がかかる」「決算がなかなか早まらない」。

経営管理の現場では、こうした悩みがよく聞かれます。そんな課題に応える選択肢が、NetSuite EPMです。

NetSuite EPM(Enterprise Performance Management=企業業績管理)は、経営管理のプロセスを一つにまとめるソリューションです。

予算編成・連結・決算・レポートといった業務を、ひとつにつなげます。

この記事で分かること

  • NetSuite EPMとは何か、標準の予算管理と何が違うのか
  • EPMでできること、向いている企業・まだ早い企業
  • 導入で失敗しないための見極め方

(読了目安:約8分)

ベンチャーネットは、Oracle NetSuiteの導入支援を行う認定パートナー(Solution Provider)です。本記事は、Oracle・NetSuiteの公式情報と、私たちが現場で見てきた実例をもとに構成しました。

目次

NetSuite EPMとは

NetSuite EPMは、計画・予算・予測・勘定調整・決算・レポートを束ねる経営管理ソリューションです。NetSuite ERPに追加して使う別製品にあたります。

専門用語を一つ整理します。EPM(Enterprise Performance Management)とは、企業の業績を計画・分析し、改善していくための仕組みのことです。

NetSuite EPMは、Oracleの企業向けソリューション「Oracle Fusion Cloud EPM」をベースに構築されています。NetSuiteにそのまま統合されるため、常に最新のデータで経営管理を行えます。

ERPとEPMは役割が違う

ERPとEPMは、似ているようで役割が異なります。

  • ERP:会計・販売・在庫など、日々の取引処理と業務データの管理
  • EPM:その取引データをもとにした、計画・分析・業績の最適化

つまりERPが「日々の業務を回す基盤」だとすれば、EPMは「経営の意思決定を支える基盤」です。EPMはERPのデータの上に成り立っています。

なぜ今、経営管理にEPMなのか

経営管理にEPMが求められる背景には、いくつかの理由があります。

1つ目は、データの分散です。会計・販売・各部門の数字がバラバラに管理されていると、全体像の把握に時間がかかります。

2つ目は、決算早期化への要請です。スピーディーな経営判断のため、月次・四半期の数字を早く締めたいというニーズが高まっています。

3つ目は、Excel運用の限界です。属人的なExcelの予算管理は、担当者が変わると引き継げないリスクを抱えます。

日本でも2024年9月から提供開始

NetSuite EPMは、2024年9月から日本での提供が始まりました。Oracle NetSuiteが「SuiteConnect TOKYO」(2024年7月17日)で発表したものです。

日本の税務報告基準にも準拠しています(出典:日本オラクル プレスリリース、2024年7月17日)。日本企業が安心して使える環境が整いつつあります。

NetSuite EPMの構成モジュール

NetSuite EPMは、複数のモジュールで構成されています。主なものは次のとおりです。

モジュール役割こんな課題に
NetSuite Planning and Budgeting(NSPB)予算編成・予測・モデリングExcel予算が属人化・限界
NetSuite Account Reconciliation勘定調整の自動化月次の照合作業が重い
連結・決算プロセス決算タスクの標準化・チェックリスト決算が遅い・属人的
Narrative Reportingコメント付き財務報告書の作成・版管理報告資料の作成負荷が高い

いくつか補足します。

NetSuite Planning and Budgeting(NSPB)は、予算編成と予測を自動化するモジュールです。予算テンプレートはNetSuite ERPの総勘定元帳から動的に更新されます。

Narrative Reportingとは、数値だけでなく説明文(ナラティブ)を添えた報告書を作る機能です。コメントが版管理されるため、いつ何を報告したかをたどれます。

なお、Microsoft Officeと連携するSmart Viewを使えば、ExcelやWord上でEPMのデータを扱えます。使い慣れたツールから離れずに済む点も特徴です。

標準の予算管理とNetSuite EPMの違い

ここが、多くの方が迷うポイントです。「NetSuite標準の予算管理」と「EPM」は、何が違うのでしょうか。

結論から言えば、対応できる範囲と高度さが異なります。

観点NetSuite 標準の予算管理NetSuite EPM(別製品)
製品形態ERP標準機能の範囲ERPに追加する別製品
予算編成部門予算・実績対比の基本全社/部門の予算編成を自動化、承認ワークフロー内蔵
予測・シナリオ限定的what-if・複数シナリオ・ローリング予測
グループ連結単体中心連結・グループ財務計画
決算・勘定調整標準の決算機能勘定調整の自動化・決算プロセスの標準化
レポート標準レポートNarrative Reporting、Smart View(Office連携)
AIとの親和性限定的組込AIで予測・分析を自動化
向いている企業まず予算を整えたい単体・少部門連結・複数シナリオ・決算早期化が必要な企業

大切なのは、標準の予算管理でも多くのことができる、という点です。

NetSuite標準でも、実績をもとにした年間着地の予測や、半期・四半期予算への対応は可能です。標準で十分な企業も少なくありません。

「まず予算管理を整えたい」という段階なら、標準機能から始めるのが現実的です。詳しくは「NetSuiteで実現する予算管理の効率化と高度化」をご覧ください。

その先で、連結や決算早期化といった高度なニーズが出てきたとき、EPMが選択肢になります。

NetSuite EPMでできること・メリット

NetSuite EPMを導入すると、経営管理の各プロセスが一つにつながります。代表的なメリットは次のとおりです。

  • 予算編成の高速化:面倒な予算プロセスを自動化し、承認の進捗も追える
  • グループ連結:複数社・部門の財務計画を一元化
  • 決算の早期化:勘定調整の自動化と決算タスクの標準化で締めを速く
  • 報告の効率化:Narrative ReportingとSmart Viewで報告資料の負荷を軽減

AIとの親和性

NetSuite EPMは、AIとの親和性も特徴の一つです。

NetSuite Planning and Budgetingには、組み込みのAI機能が用意されています。予測アルゴリズムが計画・予測・差異を継続的に分析し、トレンドや異常を見つけ出します。

これにより、財務部門は分析にかける時間を減らし、意思決定を速められます。データが増えるほど、こうした自動分析の価値は高まります。

NetSuite EPMが向いている企業/まだ早い企業

すべての企業にEPMが必要なわけではありません。自社がどちらかを見極めることが大切です。

EPMが向いている企業

  • グループ会社があり、連結での計画・管理が必要
  • 部門が多く、予算編成が複雑になっている
  • 決算が遅く、早期化したい
  • Excelの予算管理が属人化し、限界を感じている

まだ標準で十分な企業

  • 単一会社で、部門数も多くない
  • 予算編成が年1回程度で、複雑なシナリオが不要
  • まずは基本的な予算管理を整えたい段階

迷ったときは、無理にEPMから入る必要はありません。まず標準で回し、ニーズが育ってからEPMを検討する。この順序が、結果的に失敗を防ぎます。

NetSuite EPM導入の失敗パターン ── 「入れれば高度化する」わけではない

NetSuite EPMは強力な経営管理ソリューションです。ですが、導入の入り方を誤ると、本来の価値を発揮できません。

ここでお伝えするのは、EPMを売り込みたいからではありません。「失敗してほしくない」という思いからです。

EPMは、入れれば自動的に経営管理が高度化する魔法ではありません。むしろ「自社に本当に必要か」を見極めることが出発点になります。

ベンチャーネットは、お客様との対等な関係を大切にしています。リスクを正直にお伝えし、一緒に見極める伴走者でありたい。そんな思いで、4つの失敗パターンを共有します。

経営の問いが曖昧なまま導入する

よくある現象

  • 「Excel作業が大変だから」EPMを検討する
  • 「他社が入れたから」と横並びで導入する

なぜ失敗するか

何を高速化・高度化したいのかが曖昧だと、必要なモジュールを見極められません。

その結果、機能を持て余し、せっかくの投資が使われないまま終わります。

どう回避するか

「連結決算を5営業日早める」「予算サイクルを3週間短縮する」。こうした具体的な経営の問いを、最初に言語化しましょう。

EPMはあくまで手段です。経営にどんなインパクトを与えたいかを先に決めることが大切です。

標準の予算管理で足りるのに導入する

よくある現象

  • 単一会社・少人数・年1回予算でも「高度な経営管理」に憧れる
  • 標準機能を試す前にEPM導入を決めてしまう

なぜ失敗するか

NetSuiteの標準予算管理で十分な企業もあります。そこに別製品コストを払うと、機能を使いこなせず塩漬けになりがちです。

どう回避するか

まずは標準の予算管理から始めるのが現実的です(詳しくは「NetSuiteで実現する予算管理の効率化と高度化」をご覧ください)。

グループ連結、複数シナリオ、決算早期化。こうしたニーズが出てきた段階でEPMを検討すれば十分です。

Excelの非効率をそのままEPMに移植する

よくある現象

  • 「今のExcelと同じ形に」とEPMをカスタマイズする
  • 属人的な数式やマクロをそのまま再現しようとする

なぜ失敗するか

非効率な運用をそのまま移植すると、ブラックボックスを作り直すことになります。

EPMにあらかじめ用意されたベストプラクティスを、自ら殺してしまうのです。

どう回避するか

このタイミングで予算プロセスを棚卸ししましょう。

「本当に必要な計算」と「惰性で続けている作業」を仕分けることが、高度化の第一歩になります。

日本の財務会計の特殊性を整理せず導入する

よくある現象

  • 自社の会計方針とEPM標準のズレを確認しないまま進める
  • 顧問税理士の業務フローとの整合を後回しにする

なぜ失敗するか

連結や決算の場面で、EPMの前提と日本の実務がズレることがあります。

確認を怠ると、あとで自社にも顧問税理士にも負担がかかります。

どう回避するか

会計方針とEPM標準の差分を、事前に整理しておきましょう。

顧問税理士が出力帳票やデータ形式に対応できるかも、早めに確認しておくと安心です。

大切なのは「ツール導入」ではなく「経営管理プロセスの設計」

4つの失敗パターンに共通するのは、ある一つの認識のズレです。

それは、EPMを「ツール導入」として扱ってしまうことです。

EPM導入は、単なるシステム追加ではありません。予算・連結・決算・報告という経営管理のプロセスそのものを設計し直す取り組みです。

だからこそ、ベンチャーネットが大切にしている考え方をお伝えします。

それは「完璧を目指すより、まず回す。動かしながら磨いていく」という姿勢です。

まずは標準で始め、必要に応じてEPMへ。どこまで標準で・どこからEPMかを、一緒に見極めましょう。

「うちはどちらだろう」と感じた方は、お気軽にご相談ください。御社にとって最適な進め方を、一緒に考えさせてください。

NetSuite EPM導入の進め方とベンチャーネットの伴走

EPM導入で迷ったとき、進め方の基本は「段階的に」です。

まずは標準のNetSuiteで業務を回します。そのうえで、連結・予測・決算早期化といったニーズが明確になった段階で、EPMを重ねていきます。

この順序なら、最小のコストで使いやすい経営管理基盤を築けます。

ベンチャーネットは、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)として、この見極めから伴走します。

私たちが大切にしているのは、製品を売ることではありません。「どこまで標準で足り、どこからEPMが必要か」を、お客様と対等な立場で一緒に考えることです。

「その機能は標準で十分です」とお伝えすることもあります。過剰な投資を避け、本当に必要な形で導入していただくためです。

EPM導入を「コスト」ではなく「経営への投資」にする。そのための伴走を、私たちは担いたいと考えています。

関連して、コスト管理の観点は「NetSuiteでコスト管理を徹底し、利益を最大化する方法」でも解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. EPMと標準の予算管理機能は何が違いますか?

標準の予算管理はERP内の基本機能、EPMは計画・連結・決算・レポートを束ねた別製品です。

標準でも予算と実績の対比や着地予測はできます。一方EPMは、連結・複数シナリオ・決算早期化など、より高度な経営管理に対応します。詳しくは本記事「4. 標準の予算管理とNetSuite EPMの違い」の比較表をご覧ください。

Q2. EPMは単体で使えますか?

EPMは、NetSuite ERPの財務データを前提に動く設計です。

ERPの総勘定元帳などからデータを取り込んで予算・連結・分析を行います。そのため、標準のNetSuite ERPに追加して使うことで真価を発揮します。

Q3. 導入のコスト感はどのくらいですか?

EPMはERPに追加する別製品のため、別途ライセンス費用が発生します。

費用は、利用するモジュール・ユーザー数・必要なオプションによって変動します。最終的な金額はOracleからの提示となります。まずは「何を実現したいか」の要件整理から始めるのがおすすめです。

Q4. 日本の会計基準・税務に対応していますか?

NetSuite EPMは2024年9月から日本で提供されており、日本の税務報告基準にも準拠しています。

ただし、自社固有の会計方針とEPM標準との差分は、別途整理が必要です。この点は本記事「7.4」でも触れています。

Q5. 導入するとどんな成果が期待できますか?

代表的な成果は、予算サイクルの短縮・決算の早期化・Excel脱却です。

ただし、成果は「経営の問い」を定義できているかに左右されます。何を高度化したいかが曖昧なままでは、効果は出にくくなります(本記事「7.1」参照)。

まとめ:EPMは「経営管理プロセスの設計」から

NetSuite EPMは、予算・連結・決算・レポートを一つにまとめる経営管理ソリューションです。2024年9月から日本でも提供が始まりました。

ただし、入れれば経営管理が高度化する魔法ではありません。大切なのは、ツール導入ではなく経営管理プロセスの設計として捉えることです。

まずは標準で回し、必要に応じてEPMへ。この段階的な進め方が、失敗を避ける近道になります。

「自社に標準とEPMのどちらが合うか」を見極めたい方は、お気軽にご相談ください。

NetSuiteそのものをまず知りたい方は「NetSuiteとは?中堅・中小企業の経営者が知っておきたいクラウドERP入門」もあわせてご覧ください。

お問い合わせ・ご相談

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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