NetSuiteの経費精算とは|楽楽精算・SAP Concurとの使い分けと連携を解説

「経費精算を効率化したいが、NetSuiteで完結すべきか、いま使っている専用システムを残すべきか」。NetSuiteの導入を検討する経理部長・CFOの方から、よくいただくご相談です。

日本の経費精算は、楽楽精算やSAP Concurといった専用SaaS(クラウドで提供されるソフトウェア)が広く使われてきた領域です。だからこそ、NetSuiteを入れるときには「経費精算をどう扱うか」が必ず論点になります。

本記事は、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、この問いに正直に向き合うために書きました。NetSuiteの経費精算機能を紹介するだけでなく、専用SaaSとの使い分けや連携まで、公平に整理します。

この記事で分かること

  • NetSuiteの経費精算でできること(モバイル入力・承認ワークフロー・自動取込)
  • なぜ日本では楽楽精算・SAP Concurなどの専用SaaSが選ばれてきたのか
  • 「NetSuite完結/専用SaaS連携/併用」3つの選び方
  • 経費精算の導入でつまずく失敗パターンと回避策

読了目安:約8分

目次

NetSuiteの経費精算とは

NetSuiteの経費精算は、従業員の立替経費や出張費の申請から承認、会計への反映までを一連の流れで管理する機能です。ERP(統合基幹業務システム)の一部として、会計や予算と最初からつながっている点が特徴です。

申請から精算までの流れ

NetSuiteの経費精算では、次のような流れで業務が進みます。

  • 従業員が、Webブラウザやモバイルデバイスからどこでも経費を申請する
  • 承認者が、設定したワークフローに沿って承認・却下する
  • 承認された経費が、自動でNetSuiteの会計データに取り込まれる

承認プロセスは、自社のルールに合わせてカスタマイズできます。出張経費、経費報告書、請求書処理にも対応します(出典:Oracle NetSuite公式「経費管理ソフトウェア」)。

NetSuiteならではの強み

NetSuiteの経費精算が専用SaaSと違うのは、「ERPと一体である」という一点に尽きます。

経費データは自動的にNetSuite ERPに取り込まれるため、経費レポートの二重入力がなくなります。さらに、プロジェクト管理や会計と連携し、経費をプロジェクト単位で紐づけることもできます。

つまり「経費を入力したら、そのまま会計とプロジェクト原価に反映される」。この一気通貫が、ERP一体型ならではの価値です。

なぜ日本では専用SaaSが選ばれてきたのか

経費精算の話をするうえで、避けて通れない事実があります。日本では、経費精算は専用SaaSが市場を握ってきた、という点です。

主要な経費精算ツールの実態

代表的なツールを、立場を公平にして整理します。

ツール提供元特徴
SAP Concur株式会社コンカー(SAP)国内経費精算市場のベンダー別売上金額シェアで12年連続トップ。出張予約〜精算〜分析を一体化し、各国の税制に対応
楽楽精算ラクス累計導入20,000社超。承認ワークフローの柔軟性が高く、会計ソフトに依存せず連携できる中立性が強み
freee(経費精算)freeefreee会計と一体運用。スマホで領収書を撮影すれば精算から帳簿付けまで完結
マネーフォワード クラウド経費マネーフォワード自社の会計と組むと自動仕訳の精度が上がる。CSV・APIで他社会計とも連携
経費BANKSBIビジネス・ソリューションズ月3,000円台からの低価格で、電帳法に標準対応。勘定奉行クラウドと自動連携

「シェアNo.1」という表現は、Concurが売上金額ベース、楽楽精算が導入社数ベースと、集計の軸が異なります(出典:ITR Market View、各社公表値)。どちらも事実なので、両方を押さえておくと判断を誤りません。

専用SaaSが強い理由

専用SaaSが日本で支持されてきたのには、明確な理由があります。

  • 交通系ICカードや経路検索との連携など、日本の現場の使い勝手に最適化されている
  • 電子帳簿保存法(電帳法)やインボイス制度といった、日本固有の制度対応が手厚い
  • スマホでの申請・承認が、現場社員にとって直感的

これらは、経費精算という「全社員が毎月触る業務」では大きな強みになります。

勘定奉行だけで経費精算はできるのか

「会計システムの勘定奉行があれば、経費精算もできるのでは」というご質問をよくいただきます。

結論から言うと、勘定奉行クラウドは財務会計システムであり、その承認機能は仕訳伝票の承認です。従業員のモバイル申請・承認・立替精算といった経費精算のワークフローは、守備範囲が異なります。

そのため実務では、楽楽精算や経費BANKなどの専用システムを連携させる構成が一般的です。勘定奉行を提供するOBC自身も、これらとのAPI連携を用意しています。

3つの実装パターンと選び方

ここからが本題です。NetSuiteを導入するとき、経費精算は大きく3つの選び方があります。

その前に、ひとつ前提を揃えておきます。専用SaaSは「経費精算専用」のツールで、月数千円から始められるものもあります。一方のNetSuiteは「ERP統合基盤」であり、経費精算はその一部です。土俵が違うものを、同じ値段で比べてはいけません。

NetSuiteの費用は、最小構成(ミニマム構成)でも月20万円〜が出発点です。利用するモジュール・ユーザー数・必要なオプションによって変動し、数百万円規模になることもあります。これは「経費精算のための費用」ではなく「ERP全体を一本化するための投資」です。

この前提のうえで、3つのパターンを比較します。

比較軸①NetSuiteで完結②専用SaaS+NetSuite連携③併用・段階移行
初期コストERP一体のため経費分の追加は小(ERP本体が前提)専用SaaSの月額が別途発生二重で発生しやすい
現場の使いやすさERP統一のUI。日本の細かな運用は設計しだい日本の現場UIに最適化移行期は混在しがち
会計・ERP連携自動取込で二重入力ゼロAPI/CSV連携の設計が必要連携品質に依存
内部統制ERP一体で証跡を一元管理連携部分の統制設計が要設計しだい
グローバル対応多通貨・多言語で強い製品により差(Concurは強い)製品しだい
AIとの親和性組込型AIを標準搭載(詳細は次章)製品のAI機能に依存製品しだい

選び方には、おおまかな傾向があります。

  • すでに勘定奉行や弥生会計を使っている → 専用SaaS連携が摩擦の少ない選択肢
  • 新しくバックオフィスを作る → 会計一体型のfreeeやマネーフォワードがTCO(総保有コスト)で有利
  • グローバル展開・内部統制を重視 → SAP Concur
  • ERPを軸に、経費から会計・在庫・プロジェクトまで全社を一本化したい → NetSuiteで完結

どれが正解ということはありません。御社の経営課題が「経費精算の効率化」なのか「全社のデータ一本化」なのかで、答えは変わります。

AIとの親和性で見る経費精算

経費精算とAIの相性も、近年の重要な判断軸です。AIの活用には、大きく2つの方向があります。

ひとつは、システムに最初から組み込まれた「組込型AI」です。NetSuiteは「#1 AI Cloud ERP」を掲げ、組込型のAI機能を標準で搭載しています。これらは日本でも利用できます。

もうひとつは、ChatGPTやClaudeといった外部のAIと直接つなぐ「外部AI連携型」です。NetSuiteには、外部AIを直接連携できるAI Connector Service(MCP対応・Bring Your Own AI)があります。ただし、この機能は現時点で日本では未対応(英語のみ)です。誤解を避けるため、この点は正確にお伝えしておきます。

専用SaaS側にも、AI-OCR(領収書を読み取って自動入力する機能)やAIによる不正検知など、経費精算に特化したAI機能があります。

経費精算という一業務だけを見れば、専用SaaSのAI機能が便利な場面もあります。一方で、全社のデータをAIで分析したいなら、ERP一体のNetSuiteに分があります。ここでも「何を実現したいか」で選び方が変わります。

経費精算システムの導入でつまずく失敗パターン

経費精算システムは、ERPの中では比較的導入しやすい領域です。ですが、導入しやすいぶん、つまずきも起きやすい。

ここでは、ベンチャーネットが現場で見てきた、経費精算でつまずく3つのパターンと回避策を共有します。

これは、NetSuiteを売り込みたいから書くのではありません。お客様に「失敗してほしくない」という思いから書くものです。私たちは、お客様との対等な関係を大切にしています。リスクを正直にお伝えし、一緒に乗り越える伴走者でありたい。そんな思いで現場の知見を共有します。

パターン①:目的が「経費精算の効率化」止まりになっている

よくある現象

  • 「とにかく経費精算を楽にしたい」だけで導入を決める
  • 会計やERPとつながらず、データを二重入力している
  • 精算は速くなったが、経営の数字は何も変わらない

なぜ失敗するか

経費精算は、会計・予算・プロジェクト原価とつながって、はじめて経営に効きます。

ツール単体の部分最適だと、「精算が速くなっただけ」で終わってしまいます。目的に具体性が欠けていると、本当に必要な機能を見極められません。

どう回避するか

「経費精算で何を実現したいか」を具体化しましょう。たとえば「月次決算を数日早める」「プロジェクト別のコストを可視化する」といった目標です。

そのうえで、経費精算を「会計・ERPデータの入口」として位置づけます。ベンチャーネットは、全社のデータ設計から逆算して、経費精算の置き場所を一緒に考えます。

パターン②:専用SaaSとの「二重投資」と「連携の後回し」

よくある現象

  • 専用SaaSを入れたのに、ERPへは手作業で転記している
  • ERPにも経費機能があるのに、別の専用SaaSもフル機能で契約して重複している
  • 連携は「あとで考える」と後回しになっている

なぜ失敗するか

「使い慣れた専用SaaS」と「ERPの経費機能」を整理しないまま、両方を抱えてしまうケースです。

連携設計を軽視すると、結局CSVの手作業が残ります。二重のコストと二重の運用負荷が、静かに積み上がっていきます。

どう回避するか

最初に「どこを正(マスター)にするか」を決めることが大切です。

そのうえで「NetSuiteで完結」「専用SaaS+NetSuite連携」「併用」の3択を、全社のデータ設計の中で選びます。ベンチャーネットは土俵を揃えて、御社にとっての適材適所を一緒に見極めます。

パターン③:導入後の「定着」を軽視している

よくある現象

  • 「本番稼働」をゴールにしている
  • 現場のスマホ運用ルールが曖昧なまま
  • 経費規程とシステムの設定がズレて、Excel併用に逆戻りする

なぜ失敗するか

経費精算は、全社員が毎月触る業務です。

現場が使いこなせないと、申請が滞り、経理に手戻りが集中します。「新しいシステムは使いにくい」という声が広がると、定着しないまま形骸化してしまいます。

どう回避するか

稼働後3〜6か月の定着計画を、プロジェクト開始時点から組み込みましょう。

具体的には、操作研修・マニュアルやFAQの整備・運用ルールの明文化・定着度のモニタリングです。経費規程の見直しとセットで進めるのが効果的です。ベンチャーネットは、運用フェーズも伴走します。

これら3つの失敗は、すべて「事前に知っていれば避けられる」ものです。ベンチャーネットは、経費精算を売り込むより、御社の経営に本当に役立つ形を一緒に考えたいと思っています。

ベンチャーネットの考え方

経費精算をどう実装するかは、突き詰めると「自社をどう経営したいか」という問いに行き着きます。最後に、私たちが大切にしている考え方をお伝えします。

無理に一本化しない

「経営の全体像をひとつのシステムで見たい」。その想いは、経営者として自然なものです。私たちも全体最適という発想を大切にしています。

ただし、日本企業の経費精算や財務会計には、専用ツールが強い領域があります。私たちは多くのプロジェクトで、財務会計はフェーズ2以降に回し、まずは効果の出やすい領域から進めることをおすすめしています。

経費精算も同じです。NetSuiteで完結させるのが正解の企業もあれば、使い慣れた専用SaaSと連携するのが正解の企業もあります。大切なのは、適材適所で選ぶことです。

「売りたいベンダー」ではなく「課題を解決するパートナー」

製品を売りたいベンダーは、機能の説明には詳しくても、お客様の業務や課題への関心が薄いことがあります。

私たちは、まず「なぜ経費精算を見直したいのか」「何を実現したいのか」を深掘りします。製品ありきではなく、課題ありきで提案を組み立てます。

ときには「その機能は標準で十分です」「そのカスタマイズはおすすめしません」とお伝えすることもあります。過剰な作り込みを止めることも、伴走者の役割だと考えているからです。

よくある質問(FAQ)

Q1. NetSuiteだけで経費精算は完結できますか?

可能です。モバイル申請・承認ワークフロー・会計への自動取込まで、標準で対応しています。ただし、日本の細かな現場運用に合わせるには、初期の設計が重要になります。

Q2. すでに楽楽精算やConcurを使っています。NetSuite導入後はどうなりますか?

「連携して残す」か「NetSuiteに移行する」かを、全社のデータ設計の中で選びます。使い慣れた専用SaaSを無理に一本化せず、連携して活かす判断も十分にあり得ます。御社の状況に合わせて一緒に検討します。

Q3. 勘定奉行だけで経費精算もできますか?

勘定奉行は財務会計システムで、従業員のモバイル経費申請・承認のワークフローは守備範囲が異なります。経費精算には、楽楽精算や経費BANKなどの専用システムを連携させる構成が一般的です。

Q4. 経費精算のためにERPを入れるのは大げさではないですか?

そのとおりです。経費精算「だけ」が目的なら、ERPは過剰です。ERPは、経費から会計・在庫・プロジェクトまで全社を一本化することが目的で、経費精算はその一部にすぎません。経費精算だけを解決したいなら、専用SaaSが合理的です。私たちは、その判断も正直にお伝えします。

導入企業の取り組みは、お客様の声もあわせてご覧ください。

まとめ:自社に合った経費精算の形を一緒に考える

NetSuiteの経費精算は、ERPと一体であることが最大の強みです。一方で、日本では専用SaaSが強く、無理に一本化しない判断も十分に合理的です。

選び方は、大きく3つでした。

  • NetSuiteで完結する
  • 専用SaaSとNetSuiteを連携する
  • 併用・段階移行する

どれを選ぶべきかは、御社の経営課題が「経費精算の効率化」なのか「全社のデータ一本化」なのかで変わります。

ベンチャーネットは、製品を売り込むのではなく、御社にとっての最適な形を一緒に考える伴走者でありたいと考えています。「うちはどの選び方が向いているのか」と感じた方は、お気軽にご相談ください。次の一歩を、一緒に整理させてください。

お問い合わせ・ご相談

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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