NetSuiteは日本の手形に対応できる?受取・支払手形の管理方法と注意点

「日本の手形を、海外製のシステムで本当に扱えるのか」── NetSuiteを検討する経理・財務の方から、よくいただく不安です。

手形は日本独自の支払い慣行です。海外発のクラウドERPでは対応していないのでは、と心配になるのも当然でしょう。

結論からお伝えすると、NetSuiteは日本版で手形に対応しています。受取手形も支払手形も管理できます。

この記事では、手形機能でできること・基本的な流れ・導入前の注意点を分かりやすく解説します。執筆は、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが担当しています。

この記事で分かること(読了目安:約5分)

  • NetSuiteが日本の手形(受取手形・支払手形)に対応しているか
  • 手形機能でできること(満期管理・割引・裏書)と基本的な流れ
  • 受取手形と支払手形の処理の違い
  • 導入前に知っておきたい注意点(SuiteTaxとの非互換など)
目次

NetSuiteは日本の手形に対応している?

NetSuiteは、日本版で手形に対応しています。海外製のERPですが、日本独自の商習慣にきちんと向き合っています。

手形とは、商品やサービスの代金を、一定期間後に支払うことを約束する有価証券です。日本の伝統的な支払い手段で、約束手形に近い性格を持ちます。

NetSuiteでは「Japan Localization SuiteApp」という日本対応の追加機能群を通じて、手形を扱えます。日本向けに提供される「Japan Edition」のアカウントには、この機能が標準で組み込まれています。

対応しているのは、次の2種類です。

  • 受取手形:顧客から受け取る手形
  • 支払手形:仕入先などへ発行する手形

どちらもNetSuite上で管理できます(出典:Oracle NetSuite公式ドキュメント「Using Tegatas」)。

NetSuiteの手形機能でできること

NetSuiteの手形機能では、受け取りから支払い、満期の管理まで一通りの業務を扱えます。

公式情報によると、日本企業はNetSuiteで次のことができます。

  • 顧客から受取手形を受け取る
  • 資金を回収し、銀行口座に入金する
  • 仕入先への支払いとして支払手形を発行する
  • 受取手形を第三者に裏書して、自社の支払いに使う

ここで出てくる用語を整理しておきます。

  • 満期日:手形の額面金額が回収できるようになる期日。通常、数週間〜数ヶ月先に設定されます。
  • 手形割引:満期前に銀行で手形を現金化すること。受け取れる額は、額面から銀行の手数料を引いた金額になります。
  • 裏書:受取手形を第三者に譲渡し、自社の支払いに充てること。

会計面では、手形が支払われたとき・受け取られたときに、相殺の仕訳が自動で記帳されます。仕訳は取引が行われた時点の日付で、総勘定元帳に記帳されます(出典:「Using Tegatas」)。

手作業での仕訳入力を減らせるのは、経理にとって大きな利点です。

受取手形と支払手形の処理の違い

手形は、自社が「受け取る側」か「支払う側」かで処理が変わります。違いを整理しました。

受取手形支払手形
自社の立場代金を受け取る側代金を支払う側
起点となる取引顧客からの売掛金の回収仕入先への買掛金の決済
満期日の扱い満期日に代金を回収満期日に代金を支払う
特有の操作銀行で割引(満期前に現金化)/第三者へ裏書譲渡(特になし)
会計上の位置づけ一般に資産一般に負債

「会計上の位置づけ」は一般的な考え方を示したものです。実際の仕訳や勘定科目の扱いは、自社の会計方針によって異なる場合があります。

特に受取手形は、満期を待たずに現金化(割引)したり、支払いに回したり(裏書)と、資金繰りの選択肢が広い点が特徴です。

手形管理の基本的な流れ

手形管理は、「登録 → 満期まで管理 → 満期に決済」という流れが基本です。受取と支払で見てみましょう。

受取手形の流れは次のとおりです。

  1. 顧客からの支払いとして、受取手形を登録する
  2. 満期日まで管理する
  3. 満期日に資金を回収し、銀行口座に入金する

なお、満期を待たずに銀行で割引して現金化したり、第三者へ裏書譲渡したりする選択もできます。

支払手形の流れは次のとおりです。

  1. 仕入先への支払いとして、支払手形を発行する
  2. 満期日まで管理する
  3. 満期日に代金を支払う

いずれの場合も、決済のタイミングで相殺の仕訳が自動で記帳されます。

なお、具体的な画面操作や設定手順(勘定科目の設定など)は、NetSuiteのバージョンや構成によって異なります。実際の設定は、Oracle公式ドキュメントの手順に沿って進めてください。

ひとつ設定上の注意があります。手形の支払・受取に使う勘定は、親GL勘定(複数の勘定をまとめる上位の勘定)には設定できません(出典:「Using Tegatas」)。

導入前に知っておきたい注意点・落とし穴

NetSuiteで手形を扱う前に、知っておきたい条件がいくつかあります。

「手形が使えます」と言い切ってしまうのは簡単です。けれども、条件を知らないまま進めると、導入の途中で行き詰まることがあります。だからこそ、できることだけでなく、注意点も正直にお伝えします。

注意点1:日本対応の追加機能を入れて初めて使える

手形機能は、NetSuiteのグローバル標準版には含まれていません。

「Japan Localization SuiteApp」という日本対応の追加機能群を導入して、はじめて使えます。日本向けに提供される「Japan Edition」のアカウントには、この機能が標準で組み込まれています。

対処として、自社のアカウントが日本版か、この追加機能が入っているかを、まず確認しましょう。

注意点2:新しい税エンジン「SuiteTax」とは併用できない(最重要)

ここが一番の落とし穴です。

日本対応の機能群は、NetSuiteの新しい税計算エンジン「SuiteTax」と互換性がありません。SuiteTaxを有効にしたアカウントには、日本対応の機能群を入れられません。

つまり、手形を使うかどうかは、税エンジンの選択という、より大きな設計判断と結びついています。

対処として、税エンジンをどちらにするかは導入のいちばん最初に決めておく必要があります。手形を含む日本対応の全体に影響するためです(詳しくは関連記事「SuiteTaxとJapan Localizationの非互換問題」で解説します)。

注意点3:会計仕訳・税務の扱いは自社で確認する

NetSuiteでは、手形が支払われたとき・受け取られたときに、相殺の仕訳が自動で記帳されます。

ただし、仕訳の細かい切り方や、税務上の扱いは企業ごとに異なります。「一般的にはこうなる」という前提で運用を設計しつつ、自社の会計方針や顧問税理士の見解と照らし合わせることが大切です。

対処として、仕訳の自動化は便利ですが、最終的な会計処理は自社の方針に合わせて確認しましょう。

注意点4:グローバル展開企業は構成の確認を

日本対応の機能群は、日本子会社を持つ「OneWorld」(複数拠点・多通貨を一つのシステムで統合管理する構成)のアカウントでも導入できます。

手形はあくまで日本版の機能なので、海外拠点を含む構成では、日本子会社の側で正しく使えるかを確認しておくと安心です。

対処として、グローバルにNetSuiteを使っている企業は、日本子会社の構成で手形機能が動くかを事前に確認しましょう。

これらの注意点は、自社の構成や会計方針によって答えが変わります。

「手形が使えるかどうか」を単体で悩むよりも、日本の会計対応全体の設計のなかで一緒に確認していくほうが、結果的に確実です。ベンチャーネットは、こうした要件の整理から伴走します。

よくある質問

NetSuiteの手形機能について、検討段階でよくいただく質問をまとめました。

Q1. NetSuiteの手形機能はSuiteTaxと併用できますか?

併用できません。手形機能を含む日本対応の機能群(Japan Localization SuiteApp)は、新しい税エンジンSuiteTaxと互換性がないためです。

そのため、SuiteTaxを使う方針なのか、日本対応の機能群を使う方針なのかは、導入の最初の段階で決める必要があります。この判断は手形だけでなく、日本の税務対応全体に影響します。

Q2. 手形の会計仕訳は自動で作られますか?

はい、決済のタイミングで相殺の仕訳が自動で記帳されます。手作業での入力負担を減らせます。

ただし、仕訳の細かい切り方や税務上の扱いは企業ごとに異なります。自動化された仕訳が自社の会計方針に合っているかは、別途確認することをおすすめします。

Q3. OneWorldでなくても手形は使えますか?

手形は日本版(Japan Edition)の機能です。日本子会社を持つOneWorldのアカウントでも導入できます。

自社の構成で手形機能が使えるかどうかは、アカウントの種類や子会社の設定によって変わります。導入前に構成を確認しておくと安心です。

まとめ|手形単体でなく、日本対応の全体設計を

NetSuiteは日本の手形に対応しています。受取手形・支払手形の両方を管理でき、満期管理・割引・裏書も扱えます。決済時の仕訳も自動で記帳されます。

一方で、SuiteTaxとの非互換や、会計処理の自社確認など、導入前に押さえておきたい条件もあります。

手形が使えるかどうかは、日本の会計対応全体の設計の一部です。単体で判断するよりも、全体の中で考えるほうが確実です。

ベンチャーネットは、NetSuiteの導入を、手形を含む日本の会計要件の整理から伴走します。「自社の場合はどうなるのか」が気になったら、お気軽にご相談ください。一緒に、最適な進め方を考えさせてください。

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【内部リンク|未公開記事はプレースホルダー】

  • NetSuite Japan Localization SuiteAppとは(日本対応の全体像)|※未公開・要確認
  • SuiteTaxとJapan Localizationの非互換問題|※未公開・要確認
  • 締め請求書(Invoice Summary)の作り方/源泉徴収税への対応|※未公開・要確認
  • NetSuiteと電子帳簿保存法・インボイス制度の対応(公開済み)|https://www.venture-net.co.jp/netsuite/national-tax-records-in-electronic-form/ ※実在要確認
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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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