「NetSuite Next」や「Ask Oracle」など、自律的に動くAIの話題が増えています。
ですが、その多くは現時点で北米先行・英語のみで、日本での提供はこれからです。「最新のAIが来てから考えよう」と感じている方も多いかもしれません。
一方で、もう日本語で、しかもNetSuiteに標準で組み込まれた生成AIがあることは、あまり知られていません。それが「Text Enhance(テキストエンハンス)」と「Prompt Studio(プロンプトスタジオ)」です。
この記事を作成したのは、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットです。2つの機能の仕組みから使い方、外部AIとの違いまでをやさしく整理します。最新のAIを待つより、今ある機能から一歩を踏み出すための入門記事です。
📌 この記事で分かること
- NetSuite Text Enhance/Prompt Studioとは何か(仕組みと特徴)
- 2つの機能で実際にできること・使い方の流れ
- ChatGPTなど外部AIとの違いと使い分け
- 「機能を入れたのに使われない」を防ぐコツ
読了の目安:約8分
NetSuite Text Enhanceとは
NetSuite Text Enhanceは、NetSuiteに組み込まれた生成AI機能です。営業メールや商品説明、報告書などの文章を、AIがNetSuite内のデータを踏まえて作成・改善します。
ここでいう生成AIとは、指示に応じて文章を自動で作るAIのことです。
NetSuite内のデータを踏まえた文章を作れる
Text Enhanceの特徴は、ゼロから文章を考えるのではなく、NetSuiteの中にあるデータを活用する点です。
たとえば営業の場面では、ERP・CRM・サプライチェーンのデータを組み合わせて、商品説明・価格・在庫状況・配送情報などを含んだメールの下書きを素早く作れます(出典:Oracle NetSuite公式)。
商品説明、発注書、求人情報、社内メモなど、さまざまな長文フィールドのドラフト作成に使えます。
入力データが外部AIに渡らない仕組み
Text Enhanceは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI、オラクルのクラウド基盤)上の生成AIサービスを使っています。
ここが、社外の生成AIを別途使う場合との大きな違いです。
OCIの生成AIサービスでは、入力したデータが大規模言語モデル(LLM、文章を生成するAIの本体)の提供元と共有されたり、他の利用者に公開されたりしません(出典:Oracle日本 2024年7月17日)。
さらに、NetSuiteの権限設定(ロールベースのセキュリティ)が働くため、各ユーザーには閲覧権限のある情報だけが扱われます。
2025年から日本語で使える
Text Enhanceは、2025年1月から日本語版のNetSuiteでも利用できるようになりました。
日本は、英語圏以外で「NetSuite Text Enhance」が提供される最初の市場となり、自然な日本語が生成されます(出典:Oracle日本 2024年7月17日)。
多くの環境では標準で有効になっているため、特別な追加導入をしなくても使い始められます。
Text Enhanceで実際にできること
Text Enhanceは「文章を一から作る」だけでなく、「今ある文章を整える」用途にも使えます。ここでは代表的な使い道を紹介します。
文章の作成・改善
主に次のような作業を支援します。
- 営業メール・問い合わせ返信の下書き作成
- 商品説明・発注書・求人情報・社内メモの作成
- 読みやすい言い回しへの言い換え
- 文法・スペルミスの修正
- 文章を「長くする」「短くする」調整
「ゼロから書く時間」と「整える時間」の両方を短くできるのが特徴です。
22言語への翻訳(Text Enhance Translate)
Text Enhanceには、テキストフィールドを翻訳する機能もあります。
NetSuite上の文章を、22の言語へ翻訳できます(出典:Oracle NetSuite公式)。元の言語を自分で選ばなくても、自動で言語を判定してくれます。
海外拠点とのやり取りや、多言語での顧客対応がある企業に役立ちます。
財務・経理での活用
財務・経理の現場でも、文章作成の場面は意外と多くあります。
たとえば、催促状の作成、仕訳入力時の取引の説明文、発注書の入力支援などです。こうした定型的な文章作成を速められるため、債権回収や決算の迅速化にもつながります(出典:NetSuite公式)。
経理・財務に特化したAI活用(請求書の読み取りや異常検知など)は、NetSuiteの財務・経理をAIで自動化するで詳しく解説しています。
NetSuite Prompt Studioとは
NetSuite Prompt Studioは、AIが返す文章の「形式・トーン・表現の幅」を設定できる機能です。主に管理者や開発者が使います。
Text Enhanceが「文章を作る側」だとすれば、Prompt Studioは「作り方のルールを決める側」と考えると分かりやすいです。
AIの出力を自社向けに調整できる
Prompt Studioを使うと、Text EnhanceなどのAIが生成する応答を、自社向けに細かく制御できます(出典:Oracle日本 2025年7月23日)。
ここでいうプロンプトとは、AIへの「指示文」のことです。この指示の設計を整えることで、生成される文章の質が安定します。
管理者や開発者は、NetSuite内の任意のカスタムテキストフィールドに対して、指定した形式・トーンでAIが文章を提案するよう設定できます。
「AIを自社の言葉に合わせる」機能
標準設定のままの生成AIは、無難ではあっても「自社らしさ」のない文章を作りがちです。
Prompt Studioは、その差を埋めるための機能です。自社の言い回しや定型に合わせて設計することで、毎回の手直しを減らせます。
ここは、設計の良し悪しが効果を大きく左右する部分でもあります。
Text Enhance・Prompt Studioの使い方の流れ
ここでは、実際に使い始めるまでの大まかな流れを紹介します。
⚠️ NetSuiteの画面構成は更新されることがあります。細かい操作手順は公式ドキュメントをご確認ください。本記事では全体の流れを示します。
設定はAIプリファレンスから
Text EnhanceやPrompt Studioの設定は、管理者ロールで「設定 > 会社 > AI > AIプリファレンス」から管理します。
このページで、Text Enhanceの有効・無効や、Prompt Studioの設定を確認できます。
使い方の基本ステップ
おおまかには、次の流れになります。
- AIプリファレンスでText Enhanceが有効になっているか確認する
- 文章を入れたいフィールドで「テキストエンハンス」ボタンを押す
- 内容を表す簡単な言葉(開始ワード)を入れて、文章を生成する
- 必要に応じて言い換え・修正を行う
- Prompt Studioで、自社向けの形式・トーンを設定する
最初は1つの業務・1つのフィールドから試すのがおすすめです。設定の最適化や全社展開の設計は、ベンチャーネットでもご支援できます。
組込型AIと外部AIの違い・使い分け
「ChatGPTを使えばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
生成AIには、大きく分けて「NetSuiteに組み込まれた組込型」と「外部のAIを使う外部型」があります。それぞれ得意分野が異なります。
| 観点 | 組込型AI (Text Enhance/Prompt Studio) | 外部AI直接利用 (ChatGPT等を別途) | 外部AI連携型 (AI Connector/MCP) |
|---|---|---|---|
| データ連携 | NetSuite内データを自動で参照 | 手動コピペが必要 | NetSuiteに接続して操作 |
| データの扱い | OCI上で完結・外部LLMに渡らない | 入力データの社外送信に注意 | 権限設定で制御 |
| 日本語対応 | ◯ 対応済み(2025年〜) | ◯(ツール次第) | △ 英語のみ(追加言語は予定) |
| 向くシーン | NetSuite内の文章作成・改善 | NetSuite外の汎用的な作業 | 自然言語での横断的なデータ操作 |
どれが優れているという話ではなく、目的で使い分けるのが現実的です。
NetSuite内の文章作成なら組込型、社内データに自然言語で問い合わせたいなら外部AI連携型、というように整理できます。
組込型AIと外部AI(MCP連携)の使い分けは、NetSuite純正AIと外部AIの違いと使い分けで詳しく比較しています。Claude・ChatGPTからNetSuiteを操作するAI ConnectorについてはNetSuite AI Connector(MCP)解説をご覧ください。
よくある落とし穴 ──「入れた」と「使いこなせている」は別の話
NetSuiteの生成AIは、ボタンひとつで使える手軽な機能です。
ですが、導入した企業のすべてが、その価値を引き出せているわけではありません。
これは、AIを売り込みたくて書くのではありません。「機能はあるのに、もったいない使われ方」をよく見かけるからです。ベンチャーネットは、お客様に「失敗してほしくない」という思いで、現場で見えてきたつまずきを共有します。
ここでは、生成AIで陥りがちな4つのパターンと、その回避策をお伝えします。
デフォルトでONなのに、誰も使っていない
よくある現象
- 2025年から日本語で使えることを、そもそも知らない
- 入力欄の「テキストエンハンス」ボタンを見たことはあるが、押したことがない
- 管理者が有効化したきり、現場に使い方が共有されていない
なぜ起きるのか
「機能がある」ことと「使われている」ことは、まったく別の話です。
生成AIは、用途ときっかけが現場に伝わって初めて使われます。ボタンがあるだけでは、人は新しい操作を試しません。
どう回避するか
まずは「どの業務の、どのテキストに使うか」を1〜2個だけ決めて、小さく始めるのがおすすめです。
たとえば「問い合わせへの返信メールの下書き」から始める。1つの成功体験ができると、現場は自然に他の用途へ広げていきます。ベンチャーネットでは、こうした最初の活用シーンの棚卸しから一緒に進めます。
汎用プロンプトのまま使い、「それっぽいが使えない」文章になる
よくある現象
- 生成された文章が、自社のトーンや言い回しと合わない
- 毎回手直しが必要で、結局それほど時短にならない
- 「やっぱりAIは使えない」と結論づけてしまう
なぜ起きるのか
標準設定のままでは、生成AIは「汎用的にそつのない文章」を作るだけです。
自社らしさや、業務ごとの定型は反映されません。ここを設定で詰めていないと、毎回の手直しが負担になります。
どう回避するか
そこで活きるのがPrompt Studioです。
AIが返す文章の形式・トーン・表現の幅を、自社向けに設定できます。自社の言い回しや定型に合わせて設計すると、手直しの量が大きく減ります。「AIを自社の言葉に合わせる」この設計を、ベンチャーネットは支援します。
AIの出力を鵜呑みにして、人のチェックを外してしまう
よくある現象
- 生成された文章を、確認せずそのまま顧客に送る
- 金額や在庫などの数値を、裏取りせずに使う
- 結果として、誤った情報が社外に出てしまう
なぜ起きるのか
生成AIは「もっともらしい文章」を作るのは得意です。
ですが、その内容が事実として正しいかどうかまでは保証しません。最終的に正しさを担保するのは、今も人の役割です。
どう回避するか
「下書きはAI、確定は人」という運用ルールを、最初に決めておきましょう。
AIはたたき台づくりを速くする道具、最終チェックは担当者が行う。この線引きがあるだけで、安心して使えます。ベンチャーネットは、この運用ルールづくりからお手伝いします。
「最新の自律AI」を待って、今ある生成AIに手をつけない
よくある現象
- Ask OracleやエージェントAIのニュースは追うが、自社は何も変わっていない
- 「日本に対応してから考える」と先送りしている
- AIを業務で使った社内の経験が、いつまでもたまらない
なぜ起きるのか
話題の自律型AIの多くは、現時点で北米先行・英語のみで、日本での提供はこれからです。
完成形を待つ姿勢は一見慎重ですが、待っている間、「AIを業務で使う筋力」が社内に育ちません。いざ対応した時に、使いこなせる人がいない状態になります。
どう回避するか
今日から日本語で使えるText Enhanceで、まず小さく経験を積むことをおすすめします。
最新機能を待つより、今ある機能で一歩を踏み出す。動かしながら学んだ経験は、次のAIが来たときに必ず活きます。「完璧を目指すより、まず回す。動かしながら磨いていく」── ベンチャーネットが大切にしている考え方です。
これら4つに共通するのは、「機能を入れること」がゴールになってしまっている点です。
本当のゴールは、生成AIが日々の業務に定着し、現場の時間を生み出すことです。
「うちもこのパターンかも」と感じた方は、お気軽にご相談ください。御社にとって無理のない始め方を、一緒に考えさせてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 入力したデータが、外部のAIに学習されませんか?
学習されない設計になっています。
Text EnhanceはOCI上の生成AIサービスを使っており、入力データがLLMの提供元と共有されたり、他の利用者に公開されたりしません(出典:Oracle日本 2024年7月17日)。社外の生成AIに直接入力する場合とは、この点が大きく異なります。
Q2. ChatGPTと何が違うのですか?
主な違いは2つです。
1つは、Text EnhanceがNetSuite内のデータ(顧客・在庫・価格など)を自動で踏まえて文章を作る点です。もう1つは、入力データが外部に出ない設計である点です。NetSuite内の業務文書を作るなら、組込型のText Enhanceが扱いやすい場面が多くあります。
Q3. 日本語の精度はどうですか?
自然な日本語が生成されます。
日本は、英語圏以外でText Enhanceが提供される最初の市場として、高品質な日本語生成に対応しています(出典:Oracle日本 2024年7月17日)。
Q4. 追加料金はかかりますか?
Text Enhanceは、NetSuiteに組み込まれた標準の生成AI機能です。
ただし、利用枠や料金体系は契約内容や利用量によって異なる場合があります。正確な条件は、Oracleまたは導入パートナーへの確認をおすすめします。ベンチャーネットでも、料金面を含めてご相談いただけます。
まとめ|最新AIを待つより、今ある生成AIから
NetSuiteの生成AIは、遠い未来の話ではありません。
Text EnhanceとPrompt Studioは、2025年から日本語で使える、NetSuiteに標準で組み込まれた機能です。話題の自律型AIが日本に来るのを待つ間にも、今ある機能で「AIを業務に活かす経験」を積み始められます。
大切なのは、完璧な使い方を最初から目指すことではありません。
1つの業務から小さく始めて、動かしながら磨いていく。その積み重ねが、次のAIの波が来たときに必ず活きてきます。
ベンチャーネットは、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)です。機能の紹介だけでなく、「どう業務に定着させるか」までを一緒に考える伴走者でありたいと考えています。
「うちでも生成AIを使いこなせるだろうか」と感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。御社の業務に合った、無理のない始め方を一緒に設計します。
NetSuiteのAI活用について相談する
- NetSuite導入・AI活用の個別相談(お問い合わせ ※URL最終確認)
- NetSuite資料ダウンロード(資料請求 ※遷移先URL最終確認)
- NetSuiteのAIで何ができるかを知りたい方はNetSuite×AI活用事例10選もご覧ください
