月次や四半期の決算、そして予算と実績のすり合わせ。経理・財務の現場は、毎期この作業に多くの時間を取られます。
そこに新しい選択肢が加わりました。NetSuiteは2026年のSuiteConnectで、過去最大規模のAI機能を発表しています(出典:Oracle NetSuite公式)。その中で、EPM(経営管理)領域に「突合」と「計画」という2つのAIエージェントが登場しました。
この記事では、2つのエージェントが何をするのか、本体のAIと何が違うのか、そして日本での状況までをわかりやすく整理します。
この記事で分かること
- 突合エージェント・計画エージェントがそれぞれ何をするか
- NetSuite本体の組込型AIと何が違うか(使うのに何が要るか)
- 日本での提供状況と、自社で検討する際の進め方
読了の目安:約6分
EPM AIエージェントとは?まず全体像から
NetSuite EPMに新しく加わった、決算と計画を助けるAIです。まず土台となるEPMから押さえます。
そもそもNetSuite EPMとは
EPM(Enterprise Performance Management=経営管理)とは、計画・予算・予測・決算・照合・レポートをまとめて扱う仕組みです。
NetSuite EPMは、これらの経営管理プロセスを一つにつなぎます。財務処理のスピードと正確さを高めることを目的とした、NetSuite本体(ERP)とは別の製品です(出典:Oracle NetSuite公式)。EPMの全体像や標準予算管理との違いは、NetSuite EPM(経営管理)とはで解説しています。
加わった2つのエージェント
2026年のSuiteConnectで、このEPMに2つのAIエージェントが発表されました(出典:Oracle NetSuite公式)。
- 突合(Reconciliation)エージェント:決算時の照合・消込を助ける
- 計画(Planning)エージェント:予算づくりや予実分析を助ける
それぞれを順に見ていきます。
突合(Reconciliation)エージェントは何をする?
過去の取引データを学習し、消込(取引の照合)を自動で進めるAIです。
仕組み:履歴を学んだマッチング
突合エージェントは、履歴データで学習したAIのマッチングエンジンを使います。これにより、取引の消込を自動で進めます(出典:Oracle NetSuite公式)。
消込とは、帳簿上の記録と実際の入出金などを突き合わせ、ズレがないか確認する作業です。
経理にとっての意味
従来のルールベースの照合では、決められた条件から外れる取引を人が手作業で調べる必要がありました。
突合エージェントを使うと、四半期の途中でも継続的に照合を進められます。担当者は、リスクの高い例外への対応に集中しやすくなります(出典:Oracle NetSuite公式)。
計画(Planning)エージェントは何をする?
言葉で尋ねるだけで、予実の分析やシナリオ検討ができるAIです。
自然言語でのFP&A分析
計画エージェントは、自然言語(ふだんの言葉)でFP&A、つまり財務計画・分析を行えます。
たとえば、トレンドや差異(予算と実績のズレ)を言葉で尋ねて確認できます(出典:Oracle NetSuite公式)。専門的な操作に詳しくなくても、知りたい数字へたどり着きやすくなります。
What-if(もし〜なら)の試算
「もし売上がこう変わったら」といったシナリオや、シミュレーションを試せます(出典:Oracle NetSuite公式)。部門をまたいだ意思決定の材料づくりに役立ちます。
なお、ライブデータでシナリオ計画を行う「AI Canvas」という別の機能もあります。違いはNetSuite AI Canvasとはで解説しています(こちらは現時点で日本未対応です)。
本体の組込型AI(8機能)との違い
混同しやすいので整理します。本体のAIとEPMエージェントは、使うための前提が異なります。
| 観点 | 本体の組込型AI(8機能) | EPMエージェント(突合・計画) |
|---|---|---|
| 対象業務 | 請求・消込・需要予測・異常検知など全般 | EPM領域(決算照合・FP&A計画) |
| 前提 | NetSuite本体に内蔵 | NetSuite EPM(別ライセンスの製品)が前提 |
| 主な対象者 | 経理・現場・情シス | CFO・経理部長・FP&A担当 |
| 提供時期 | 2026.1で順次提供 | 2026年のSuiteConnectで発表、2026.1で提供 |
ここが多くの方のつまずきポイントです。EPMエージェントは、NetSuite EPMという別ライセンスの製品が前提になります(出典:Oracle NetSuite公式)。NetSuite本体に最初から入っている組込型AIとは、別物として理解しておくと安心です。
使うのに何が必要?日本での提供状況は?
前提条件と、日本での状況を正直にお伝えします。
前提=NetSuite EPMのライセンス
突合・計画のエージェントを使うには、まずNetSuite EPMが必要です。これは本体とは別のライセンス製品です。
費用は、利用するモジュールや構成によって変わります。具体的な見積もりは、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、Oracleの営業担当と一緒に確認します。
日本での提供状況(要確認)
NetSuite EPM自体は、2024年9月から日本市場向けに提供されています(出典:Oracle NetSuite公式)。
一方で、今回のAIエージェント(突合・計画)の日本での提供時期や日本語対応については、本記事の執筆時点(2026年6月)で公式に明確な案内が確認できていません。
AIの新機能は、まず北米から提供され、日本へ順に広がる傾向があります。導入を検討する際は、最新の対応状況をベンチャーネットへご確認ください。本記事も、状況に合わせて随時更新します。
導入でつまずきやすいポイント
先に知っておくと、誤った期待や手戻りを防げます。よくある3つを挙げます。
- 「本体に入っている」と思い込む
EPMエージェントは別ライセンスが前提です。前提を整理しないまま計画を進めると、想定外の追加検討が発生します。 - 日本での提供状況を確認しないまま計画する
提供は段階的で、日本での状況は要確認です。確認を後回しにすると、スケジュールに影響します。 - 業務フローやデータを整えずAIに任せる
突合エージェントは履歴データを学習します。データの品質や運用の設計が整っていないと、期待どおりに働きません。
いずれも、要件とデータ・運用の設計を最初に整理しておくことで防げます。ベンチャーネットは、この設計段階から一緒に検討する伴走型の支援を行っています。
自社に必要か?ケース別のネクストアクション
最後に、検討の進め方を3段階で整理します。
AIの波は、これから本格的に広がっていきます。だからこそ、今のうちにNetSuiteという土台を整え、前向きにその時を待ち構えるという考え方もできます。
- (a) 今できること
日本で提供済みのNetSuite EPM(計画・予算・予測)から始める方法です。NetSuiteの組込型AIや外部AI連携の全体像は、組込型AIと外部AI連携の違いで解説しています。 - (b) 作り込めば実現できること
今あるNetSuiteのデータを、生成AIと組み合わせて経営に活かす方法もあります。自社に合った活用の形を、設計から一緒に検討できます。 - (c) 順次対応していくこと
日本未対応の機能も、対応が順に進みます。本記事は最新状況に合わせて更新します。最新の状況は、お問い合わせください。
なお、NetSuiteは特定のAIベンダーに縛られず、自社が選んだAIを使える設計を持っています。この柔軟性は、変化の速いAI時代に、経営の選択肢を守ることにつながります。
新しい仕組みを、一社だけで最適な形に落とし込むのは簡単ではありません。前提の整理から運用設計まで、対等な立場で一緒に考えるパートナーがいると、判断がぶれにくくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. EPMエージェントは、本体のAIと何が違いますか?
A. 使うための前提が違います。本体の組込型AIはNetSuiteに内蔵されています。一方、EPMエージェントは、NetSuite EPMという別ライセンスの製品が前提です。対象も、決算照合やFP&A計画といったEPM領域に絞られます。
Q. 日本でも使えますか?日本語に対応していますか?
A. NetSuite EPM自体は2024年9月から日本で提供されています(出典:Oracle NetSuite公式)。ただし、今回のAIエージェントの日本での提供時期や日本語対応は、執筆時点で公式に明確な案内が確認できていません。導入前に最新状況のご確認をおすすめします。
Q. 経理の仕事は、どう変わりますか?
A. 消込などの定型作業をAIが進めるため、手作業が減ります。担当者は、リスクの高い例外への対応や分析に時間を回しやすくなります。計画エージェントを使えば、予実分析やシナリオ検討も言葉で進められます。
まとめ
NetSuiteのEPM AIエージェントは、決算の照合(突合)と、予算・計画づくり(計画)を助ける2つのAIです。
ポイントは3つあります。第一に、NetSuite EPMという別ライセンスの製品が前提であること。第二に、日本での提供状況は要確認であること。第三に、効果を出すには要件とデータ・運用の設計が欠かせないことです。
自社に必要かどうかは、状況によって変わります。前提の整理から、ベンチャーネットが一緒に検討します。
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