「AIがコードを書いてくれるなら、NetSuiteの開発者はもう要らないのか」
開発の相談で、最近よく聞かれる問いです。
答えは「要る」。ただし、開発者の時間の使い方は変わります。
SuiteCloud Developer Assistantとは、自然言語の指示からSuiteScriptのコードを作る、開発者向けのAIです。
NetSuite Developer Assistantとも呼ばれ、開発用のエディタ(VS Code)の中で動きます。
AIが出すのは下書きで、作業は開発者が一つずつ承認してから実行されます。
日本の自社のアカウントで使えるかは、アカウント担当への確認が要ります。
では、書く時間が短くなった分、開発者は何に時間を使うべきなのか。
その答えが、誰も説明できないスクリプトを抱えた会社にとっての、立て直しの糸口になります。
この記事で分かること
- SuiteCloud Developer Assistantでできること・前提の環境
- N/llmモジュールやAI Connector Serviceとの違い
- 生成したコードを本番に入れるまでの手順と、よくある失敗3つ
- 日本での対応状況と、待たずにいま進められること
SuiteCloud Developer Assistantとは
Oracleのヘルプは、これをSuiteCloudで開発する人向けのAIコーディング支援と説明しています。
VS CodeにCline拡張を通じて組み込まれます。
SuiteCloudとSuiteScriptに特化した言語モデルを使います(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
NetSuite 2026.1で登場した機能です(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
- SuiteScript:NetSuiteの開発言語。JavaScriptがもと
- SuiteCloud:NetSuiteのカスタマイズや拡張のための開発の基盤
- SDF(SuiteCloud Development Framework):カスタマイズをファイルで管理し、環境に展開する仕組み
- Cline:VS Codeで動く、AIのコーディング支援の拡張機能
使うための前提の環境
ヘルプでは、次のものが前提とされています(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
- SuiteCloud Extension for VS Code
- Cline 4.0.0以降
- SuiteCloudのプロジェクトと、NetSuiteのアカウントの認証ID
- (推奨)SuiteCloud CLI for Node.js
また、SDFのプロジェクト向けに作られていると案内されています。
SDFでカスタマイズを管理していない会社は、まずその整備が要ります。
できること
ヘルプに載っている主な作業は、次のとおりです(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
| 作業 | 中身 |
|---|---|
| コードの生成 | 指示からSuiteScript 2.1のコードを作る(JavaScript・TypeScript) |
| テストの生成 | 単体テストを作り、依存する部分をまねる(モック) |
| カスタムオブジェクト | カスタムレコードなどの定義をXMLで作り、マニフェストを更新 |
| デバッグの支援 | 構文のエラーを見つけ、直し方を示す |
| 説明文の作成 | readme、コードの説明、コメントを作る |
| 依存関係の管理 | 足りない・古いパッケージを見つけ、入れ方を示す |
仕組みの要は、承認です。
提案された作業は開発者が一つずつ承認してから実行されます。
対応する技術は、SuiteScriptのJavaScript・TypeScriptと、XML・JSONです。
対応外の技術を頼むと、その旨の通知が出ると案内されています。
2026年4月には、SuiteCloud Agent Skillsも発表されました(出典:Oracle NetSuite公式ニュースルーム、2026年9月確認)。
ヘルプでは、NetSuite固有の手順や決まりをAIに教える、再利用できる指示と説明しています。
OpenAIとAnthropicのプラットフォーム向けに、開発者用のプラグインもあります。
(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)
SuiteScriptの基礎は、SuiteScriptとはで扱っています。
ほかのAI機能・開発の進め方との違い
NetSuiteのAI機能の中での位置づけ
| 項目 | SuiteCloud Developer Assistant | N/llmモジュール | AI Connector Service |
|---|---|---|---|
| 何をするか | 自然言語からコード・テスト・定義を作る | SuiteScriptから生成AIを呼び、独自の機能を作る | ClaudeやChatGPTなどからNetSuiteのデータを扱う |
| 主な使い手 | 開発者(VS Code+Cline) | 開発者(SuiteScript 2.1) | 業務のユーザーも含む |
| 日本での扱い | アカウント担当に確認 | 2026.2で全サポート地域に拡大(下記) | 公式ページで確認 |
N/llmモジュールは、2026.2のリリースノートで提供地域が広がりました。
NetSuiteがサポートするすべての地域で使えるとされています(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
N/llmの呼び出しは、AI Units(生成AIの利用量の単位)を消費します。
開発の進め方の比べ方
| 進め方 | 向いている場面 | 注意点 | AIとの親和性 |
|---|---|---|---|
| A. 開発者が手で書く | 複雑で、業務の判断が多い処理 | 時間と人手がかかる | 低 |
| B. Developer Assistant | SDFで管理した定型の開発・テスト | 承認とレビューの手間は残る | 高。NetSuite向けに調整されている |
| C. 汎用のAIコーディング支援 | NetSuite以外も含む開発 | NetSuite固有の決まりに外れやすい | 中。Agent Skillsで補える |
| D. SuiteFlow(ノーコード) | 承認の流れなど単純な自動化 | 複雑な処理は苦手 | 低 |
SuiteFlowは、画面の設定だけで業務の流れを自動化するNetSuiteの機能です。
使い分けは、NetSuiteのカスタマイズ完全ガイドで扱っています。
したいことから道具を引けるように図にすると、次のとおりです。
日本での対応状況
今回確かめたOracleのヘルプには、Developer Assistantの国や言語による制限の記載は見当たりませんでした。
一方、日本で使えると明記した公式情報も見つけられませんでした。
自社のアカウントで使えるかは、アカウント担当に確認してください。
使えない場合でも、止まる必要はありません。
N/llmモジュールは全サポート地域で使えるとされ、既存の開発の進め方もそのまま使えます。
向いている会社、いまは使わなくてよい会社
向いているのは、次のような会社です。
- 社内か、付き合いのあるパートナーに、SuiteScriptを読める開発者がいる
- カスタマイズをSDFで管理し、本番以外の環境で試す運用がある
- 小さな開発や修正が多く、テストの作成に時間を取られている
逆に、社内に開発者がおらず生成されたコードを確かめられない会社は、急いで使う理由がありません。
カスタマイズが少なく、標準機能やSuiteFlowで足りている会社も同じです。
開発はパートナーに任せ、要件の整理に時間を使うほうが先に効きます。
業務の大半が独自でERPの型に合わないなら、AIでスクラッチ開発とERPの比較も参考になります。
これからNetSuiteを選ぶ会社には、一つだけ注意があります。
AIでコードが速く書けることは、カスタマイズを増やしてよい理由にはなりません。
作ったコードは、バージョンアップのたびに確かめる対象になるからです。
バージョンアップへの備えは、NetSuiteのバージョンアップへの備え方で扱っています。
生成したコードを本番に入れるまで
Oracleのヘルプのベストプラクティスは、生成したコードを下書きとして扱うよう求めています。
本番に直接入れず、本番以外で試し、同僚のレビューを受ける。
プロンプトに認証情報を入れず、生成物はバージョン管理に残す(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
試す環境は、NetSuiteのサンドボックスで扱っています。
この順番を飛ばすと、次の失敗が起きます。
よくある失敗3つ
失敗1:生成したコードを、そのまま本番に入れる
起きること:データの件数が多い時や、入力が空の時にエラーが出る。業務が止まる。
原因:生成したコードを完成品として扱い、本番以外の環境で試さなかった。
避け方:第6章の順番を守ります。
空の入力と大量のデータで試し、同僚のレビューを受けてから本番に入れます。
失敗2:プロンプトに、認証情報や顧客のデータを入れる
起きること:パスワードや個人情報が、コードやテストのデータに残る。
原因:動かすことを急ぎ、入れてよい情報のルールを決めていなかった。
避け方:ヘルプでは、パスワードや秘密の鍵をプロンプトに入れないよう求めています。
テストのデータに、個人情報や機密の業務データが入っていないかも見ます(出典:同)。
失敗3:AIが速く作れるので、カスタマイズが増えすぎる
起きること:数年後、誰も中身を説明できないスクリプトが並ぶ。バージョンアップのたびに確認が膨らむ。
原因:「作れるか」だけで判断し、「作るべきか」を決めていなかった。
避け方:開発の前に、標準機能・SuiteFlowで足りないかを見ます。
生成物はバージョン管理に登録し、説明文も一緒に残します。
ベンチャーネットならこう見る
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、特定の製品に誘導しません。
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎ・立て直しと、他システムとの連携が多い。
そこでよく出会うのが、失敗3の「誰も説明できないスクリプト」です。
型1:作る前に「標準に合わせる/開発する/残す」を決める
AIで開発が速くなっても、判断の順番は変わりません。
いまの業務を見える化し、やめる・まとめる業務を決め、NetSuiteの標準機能と照らし合わせる。
標準で収まらない所だけを、「標準に合わせる」「開発する」「残す」のどれにするか決めます。
AIが担えるのは、「開発する」と決めた後の作業を速くすることです。
型2:既存のスクリプトは、棚卸ししてから立て直す
引き継いだアカウントでは、次の順で進めます。
- 数える:スクリプトの一覧を出し、目的・説明できる人・テストの有無を表にする
- 仕分ける:いまも使うもの、標準機能やSuiteFlowで置き換えられるもの、やめるものに分ける
- 補う:残すスクリプトに、説明文とテストを付け、SDFで管理する
Developer Assistantを使える環境なら、3の説明文とテストの作成は、使いどころの候補になります。
ただし、Oracleのベストプラクティスも、ベンチャーネットの環境で検証してから入れるのが原則です。
新しい機能を、いきなりお客様の本番の近くで使うことはしません。
今日できること|自社のカスタマイズを数える
NetSuiteの管理画面で、自社のスクリプトの一覧を開き、次の表を埋めてみてください。
| スクリプト名 | 何のためのものか | 説明できる人 | テストの有無 |
|---|---|---|---|
| (例)請求書の自動送信 | 月末の請求 | 経理のAさん | なし |
「説明できる人」が空欄の行が、最初に手を付けるところです。
そこが、開発者が書く時間を減らして、取り戻すべき仕事でもあります。
よくある質問
Q1. 日本語の環境でも使えますか
日本で使えると明記した公式情報は見つけられませんでした。
ヘルプに国や言語の制限の記載も見当たりませんでした。
自社のアカウントで使えるかは、アカウント担当に確認してください(第4章)。
Q2. SuiteScriptを知らなくても使えますか
開発者の代わりにはなりません。
生成されたコードが正しいかを判断するには、SuiteScriptの知識が要ります。
提案された作業は、開発者が一つずつ承認してから実行されます。
Q3. 生成されたコードは、そのまま本番に入れてよいですか
本番に直接入れてはいけません。
ヘルプでは、下書きとして扱い、本番以外で試し、レビューを受けるよう求めています(第6章)。
Q4. 追加の費用はかかりますか
利用条件はアカウント担当に確認してください。
今回確かめたヘルプには、Developer Assistantの費用の記載は見当たりませんでした。
なお、N/llmモジュールなどの生成AI機能は、AI Unitsを消費する仕組みです。
Q5. 使えるようになるまで、何をしておけばよいですか
カスタマイズの棚卸しとSDFでの管理の整備です。
使う前提がSDFのプロジェクトだからです。
本番以外で試す環境と、レビューの手順も決めておきます(第6章・第8章)。
Q6. N/llmモジュールとは何が違いますか
Developer Assistantはコードを作るAIです。
N/llmはスクリプトから生成AIを呼ぶ仕組みです。
N/llmを使うと、請求書の説明文を自動で作るなど、業務の中にAIを組み込めます(第3章)。
まとめ
- Developer Assistantは、VS CodeとClineの上で動く、SuiteScript向けのAI開発支援
- 提案された作業は開発者が一つずつ承認する。生成物は下書きとして扱う
- 前提はSDFのプロジェクト。本番以外で試す環境とレビューの手順が要る
- 日本での利用可否はアカウント担当に確認する。待つ間も、既存の開発とN/llmで進められる
- 作る前に、標準に合わせる/開発する/残すを決める
開発者は、要らなくなりません。
書く時間が減った分、「何を作り、何を作らないか」を決める仕事に時間を使えます。
その第一歩は、自社のスクリプトの一覧を開くことです。
もう少し詳しく知りたい方へ
カスタマイズの棚卸しから、要件に合わせた開発、AIの組み込みまで、ご相談をお受けしています。

コメント
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