NetSuite Narrative Insightsとは|レポートを自動で要約・トレンド解説するAI機能

「で、この数字は、つまり何が起きているのか」

経営会議で損益計算書を配ると、最初に出る問いです。

数字は見えても、その意味までは読み取りにくいものです。

NetSuite Narrative Insightsとは、対応するレポートやレコードを、生成AIが短い文章で要約する機能です。

日本でも使えます。

損益計算書や予算と実績の比較など、会議で見るレポートの多くが対象です。

ただし、要約は判断の出発点にすぎません。

ボタンを押せば会議が変わる、というものでもありません。

では、要約を読んだ後、会議は何をすればよいのか。

目次

この記事で分かること

  • Narrative Insightsで何ができ、どのレポートが対象か
  • 使い方と、日本での提供状況
  • NetSuite Analytics Warehouse(NAW)・標準レポートとの違い
  • 活かしやすい会社と、まだ早い会社
  • 要約を「変化→理由→打ち手」で読み、90日で会議に根づかせる進め方

読了の目安:約9分

NetSuite Narrative Insightsとは

Narrative Insightsは、生成AIを使って、対応するレポートやレコードを簡潔に要約する機能です。

Oracleのヘルプでは、次のような「気づき」を示すことがあると説明しています(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

  • トレンド(傾向の変化)
  • 異常(いつもと違う動き)
  • リスク(注意すべき兆し)
  • 機会(伸ばせそうな点)
  • データの抜け(入力の漏れ)

たとえば在庫のレポートなら、過剰な在庫や欠品のおそれといった見どころを、読みやすい言葉でまとめます。

「数字を出す」から「数字の意味を説明する」へ。

そのひと手間を、AIが肩代わりします。

NetSuite(ネットスイート)は、Oracleが提供するクラウド型のERP(基幹システム)です。

Narrative Insightsは、次の世代のAI群「NetSuite Next」の流れにある機能でもあります。

全体像はNetSuite Nextとはで扱っています。

なぜ今、この機能が注目されるのか

数字を見える化しても、意味を読み解けなければ、経営の判断は変わりません。

中堅・中小企業では、レポートは出せても「で、どうすればいいのか」が残りがちです。

集めたデータが、眠ったままになる。

Narrative Insightsは、その「意味を言葉にする」作業を助けます。

特別な追加の導入なしに、ふだん見ているレポートから試せる。

ここが大きな変化です。

対象になるレポートとレコード

Oracleのヘルプには、対象のレポートとレコードの一覧があります。

主なものを業務別に並べます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

業務対象の主なレポート・レコード
会計・財務損益計算書、貸借対照表(比較を含む)、キャッシュフロー計算書、試算表、予算と実績の比較、仕訳
売掛・買掛売掛金の年齢表、買掛金の年齢表、入金、請求書、貸方メモ
販売受注の一覧・明細、品目別・顧客別・営業担当別の売上、見積
在庫・購買在庫の動きの明細、入荷待ちの受注、在庫の台帳、未完了の発注、在庫品目
営業・顧客商談のパイプライン、受注した商談、Customer 360、サポートの案件
その他キャンペーンの費用対効果、返品、給与の集計

Customer 360とは、顧客ごとの情報を1つの画面にまとめる機能です。

対象は、会計・販売・在庫・営業の日常的なレポートにほぼ広がっています。

経営会議で見る損益計算書や予算と実績の比較も入っています。

一方で、カスタマイズしたレポートは対象外です。

自社で作り込んだレポートが中心の会社は、まず対象に入るかを見てください。

使い方はワンクリック

対応するレポートやレコードを開き、Generate Insight(インサイトを生成)のボタンを押すだけです。

数秒で要約が表示され、何度でも作り直せます。

流れを図にすると、次のとおりです。

Narrative Insightsの使い方の流れ 対応するレポートを開き、Generate Insightを押すと数秒で要約が出る。トレンドや異常などの気づきを読み、最後は元のレポートで確かめる。設定は既定でオン。 使い方の流れ 対応するレポートを開く 損益計算書・予算と実績の比較など Generate Insightを押す 数秒で要約が出る。何度でも作り直せる 要約を読む トレンド・異常・リスク・機会・データの抜け 元のレポートで確かめる 要約に誤りや抜けが含まれることがある 設定は既定でオン(管理者がオフにできる)
Narrative Insightsの使い方の流れ

設定で押さえる点は次のとおりです(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

  • AI設定の画面の「Enable Narrative Insights」で使うかどうかを決める
  • この設定は既定でオン。管理者のロールでいつでもオフにできる
  • AI設定の画面は、生成AIに対応するアカウントだけに表示される

同じ設定は、決算の進み具合をまとめるIntelligent Close Managerの要約にも効きます。

詳細は、NetSuite Intelligent Close Managerとはで扱っています。

日本でも使える?提供状況と注意点

日本でも使えます。

Oracleのヘルプでは、すべての地域と、システムが対応する言語で使えるとされています。

日本語も対象です(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

自社で使えるかどうかは、アカウントのAI設定の画面で分かります。

注意点もあります。

  • AIの要約のため、誤りや抜けが含まれることがある。画面にも、元のレポートで確かめるよう注意書きが出る
  • 要約は、いま見ている画面の内容をもとに作られる
  • ヘルスケア分野でBAA(個人の医療情報の扱いを定める契約)を結んだ顧客は、有効にできない

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)

要約は「出発点」として使い、最後は元のレポートで確かめる。

これが安全な使い方です。

NetSuite 2026.2では、対話型のアシスタントAsk Oracleにも、Narrative Insights向けのスキルが加わりました。

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)

ただし、Ask Oracleを含むNetSuite Nextは北米から展開が始まった段階です。

(出典:Oracle NetSuite公式ニュース、2026年7月15日)

NAW・標準レポートとの違い

Narrative Insightsは、分析の機能とよく混同されます。

どれが優れているかではなく、役割が違います。

目的から逆に引くと、次のとおりです。

目的から選ぶ:標準レポート・NAW・Narrative Insights 数字そのものを出したいなら標準レポートや保存検索、大量のデータを深く分析したいならNAW、数字の意味を文章で知りたいならNarrative Insights。3つは組み合わせて使う。 こうしたいなら、この道具 数字そのものを 出したい 標準レポート 定型の集計・抽出 大量のデータを 深く分析したい NAW 部門をまたぐ分析 数字の意味を 文章で知りたい Narrative Insights 月次のレビューに 優劣ではなく役割の違い。3つは組み合わせて使う
目的から選ぶ:標準レポート・NAW・Narrative Insights
軸Narrative InsightsNetSuite Analytics Warehouse(NAW)標準レポート・保存検索
役割と出すもの数字の意味を文章で説明(要約・トレンド・異常・リスク)大量のデータを集めて深く分析(ダッシュボード・多次元の分析)数字そのものを出す(表・明細)
向く用途素早い気づき・月次のレビュー本格的なBI・部門をまたぐ分析定型の集計・抽出
カスタム対応対象は決まったレポートのみ別製品・別ライセンスで柔軟自由に作れる
AIとの親和性高。画面の中でそのまま要約できる高。社外のデータも合わせて分析できる中。AIに渡す素材になる

標準レポートで数字を出し、NAWで深く分析し、Narrative Insightsで意味を言葉にする。

3つは組み合わせて使うものです。

本格的な分析の基盤は、NetSuite Analytics Warehouse(NAW)とはで扱っています。

判断の物差し:活かしやすい会社・まだ早い会社

活かしやすい会社

  • 会計・販売・在庫をNetSuiteで一元管理している
  • 月次の会議で、数字の説明に時間がかかっている
  • 標準のレポート(損益計算書や売上の集計など)を日常的に使っている

まだ早い会社・別の選択肢が合う会社

  • 取引先や品目の登録がばらばらで、数字そのものが信用されていない:先にマスタを整える段階
  • 大事なレポートがすべてカスタム:保存検索の結果を外部のAIに読ませるほうが早いことがある
  • 会計ソフトとExcelで回っている:いまはERPを入れず、汎用のAIで数字の説明を試す手もある

AIを要約の道具で終わらせない考え方は、AI導入率16.6%の中小企業へで扱っています。

これから選ぶ会社と、いま使っている会社

これからNetSuiteを選ぶ会社は、要約の機能そのものより、要約に耐えるデータを作れるかを見てください。

勘定科目・部門・品目の区分を導入時に決めておけば、最初から意味のある要約が出ます。

いまNetSuiteを使っている会社は、次の順で見直すと無駄がありません。

  1. AI設定で「Enable Narrative Insights」がオンになっているか
  2. 毎月の会議で使うレポートが、第3章の対象に入っているか
  3. カスタムのレポートを、標準のレポートに置き換えられないか

保守の期限やパートナーの交代を控えているなら、その機会にレポートの棚卸しをすると手戻りが減ります。

使いこなせない3つの落とし穴

落とし穴1:データが汚いまま要約させる

起きること:もっともらしいのに、事実と違う要約が出る。

原因:取引先や商品の区分がばらばらで、重複や入力の漏れが多かった。AIはデータを見たまま要約します。

避け方:部門ごとの入力のルールをそろえ、マスタを整えてから使います。要約の「データの抜け」の指摘は、データを直す手がかりにもなります。

落とし穴2:対象の範囲を誤解して、うのみにする

起きること:カスタムのレポートで要約が出ず混乱する。1つの画面の要約を、全社の判断材料にしてしまう。

原因:何が対象で、どの範囲を見た要約かを押さえていなかった。

避け方:対象のレポートと、要約が見ている範囲を最初に押さえます。どの画面の要約をどの判断に使うかを運用のルールとして決めます。

落とし穴3:要約を出して終わり、会議に組み込まない

起きること:たまにボタンを押すだけで、次の打ち手が決まらない。

原因:気づきを打ち手につなぐ運用がなかった。

避け方:月次のレビューで、決まったレポートの要約を最初に読む流れをつくります。対象を絞って始め、慣れたら広げます。

ベンチャーネットならこう見る|1本のレポートで90日、「変化→理由→打ち手」で読む

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場です。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

要約の相談では、機能の前に次の3つを聞きます。

  1. 毎月の経営会議で、いちばん説明に時間がかかる数字はどれか
  2. その数字は、Narrative Insightsの対象のレポートで出せるか
  3. 要約を読んだ後、誰が何を決めるか

型1:1本のレポート・1つのKPIで、最短90日の1周目

会議で使うレポートを1本に絞ります。

追う数字も、売上総利益率なら売上総利益率の1つにします。

そのうえで、最短90日、毎月の会議で要約から読み始めます。

担当者の読みと、AIの要約は同じ条件で並べます。

同じ月の同じレポートで、両者が何を指摘したかを比べるのです。

要約が外れる理由がデータなら、マスタと入力のルールを直す。

対象外のレポートなら、標準に置き換えるか、外部のAIで補うかを決めます。

型2:要約は「変化→理由→打ち手」の3つの問いで読む

要約を読む3つの問い:変化→理由→打ち手 AIの要約が主に答えるのは「何が変わったか」。「なぜ変わったか」と「誰が何をするか」は、人が元のデータを見て決める。 要約を読む3つの問い ① 何が変わったか AIの要約が主に答える AI ② なぜ変わったか 元のデータを見て人が考える 人 ③ 誰が何をするか 会議で担当と期限を決める 人 要約は出発点。判断は人が行う
要約を読む3つの問い:変化→理由→打ち手
問い例(架空の数字です)
何が変わったか売上総利益率が前月より2ポイント下がった
なぜ変わったか値引きの大きい受注が月末に集中した
誰が何をするか営業部長が、値引きの承認の基準を来週までに見直す

要約が答えるのは、主に1つめの問いです。

2つめと3つめは、人が元のデータを見て決めます。

冒頭の「つまり何が起きているのか」に要約が答え、その先を会議が引き取る。

この分担を決めておくと、AIの要約に頼りすぎずに済みます。

機能より先に、会議の型を決める。

それが、要約を経営の道具にする近道です。

今日できること:1本のレポートで要約を試す

1時間あれば、次の作業ができます。

  1. 先月の経営会議で使った数字を書き出す
  2. その数字を出すレポートが、第3章の対象かを見る
  3. 対象なら、Generate Insightを押して要約を読む
  4. 要約と自分の読み方が違う点を、3つ書き出す

違う点が「データの抜け」なら、直すべき入力が見えます。

違う点が「解釈」なら、会議で話し合う価値のある論点です。

どちらも、90日の1周目の最初の材料になります。

よくある質問

Q1. 日本語でも使えますか

使えます。

Oracleのヘルプでは、すべての地域と、システムが対応する言語で使えるとされています。

AIの要約のため、元のレポートで確かめてから使ってください。

Q2. どんなレポートでも要約できますか

いいえ。対象は決まった標準のレポートとレコードです。

損益計算書・貸借対照表・売上の集計・在庫の明細などが対象です。

カスタマイズしたレポートは対象外です(第3章)。

Q3. AIの要約は、そのまま信用してよいですか

出発点として使ってください。元のレポートで確かめるのが前提です。

画面にも、誤りや抜けがありうるという注意書きが出ます。

判断は、人の目で見たうえで行うのが安全です。

Q4. 使うために何を準備すればよいですか

設定・対象・データの3つです。

AI設定がオンか、使いたいレポートが対象か、要約に耐えるデータか。

この3つを見てください(第8章)。

Q5. 使いたくない場合、止められますか

管理者がオフにできます。

「Enable Narrative Insights」は既定でオンで、管理者のロールでいつでもオフにできます。

Q6. NAWを入れていれば、Narrative Insightsは不要ですか

役割が違うため両方に使い道があります。

NAWは深く分析する基盤で、Narrative Insightsは日々の数字の意味を素早くつかむ機能です(第6章)。

まとめ:AIの要約は「経営の道具」として使う

  • Narrative Insightsは、対応するレポート・レコードを生成AIが要約する機能
  • 日本でも使える。全地域・対応する言語で提供
  • 対象は決まった標準のレポートで、カスタムのレポートは対象外
  • 要約は出発点。「変化→理由→打ち手」のうち、要約が答えるのは主に変化
  • 1本のレポート・1つのKPIで、最短90日の1周目を回す

「つまり何が起きているのか」には、要約が答えてくれます。

その先の「誰が何をするか」を決めるために、まず会議で使うレポートを1本選んでください。

もう少し詳しく知りたい方へ

要約を活かせるかどうかは、データの土台と会議の型で変わります。

「自社はどのレポートから始めるか」の整理から、ご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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