NetSuiteでコスト管理を一元化|散らばる費用を「見える化」して利益を最大化する方法

「コストを下げるなら、まず削れる費用を探せばいい」

そう考えて、経費の一覧を眺めることから始める会社は多いものです。

コスト管理とは、費用の中身を分類して把握し利益を守るために抑えていく活動です。

ところが、削る費用を探しても、全社でいくらかかっているかが分からなければ手が止まります。

コスト管理が難しい理由の多くは、データが部門や案件ごとに散らばっていることです。

だから最初に決めるのは、削る費用ではなく、費用の分類です。

分類が決まれば、Excelで足りるか、システムが要るかも見えてきます。

では、分類がそろった先で、経営は何ができるようになるのか。

目次

この記事で分かること

  • コスト管理が難しくなる理由
  • 直接費・間接費、製造原価・売上原価の違い
  • Excelで足りる段階と、システムが要る段階の見分け方
  • NetSuiteでコストを分類する区分の考え方
  • 分類がそろった先の3つの段階と、今日できる点検

コスト管理はなぜ難しいのか

費用は、毎日さまざまな場所で発生します。

部門ごと、案件ごと、拠点ごと。

それぞれが別の表やシステムで動くと、全社の数字を集めるだけで手間がかかります。

  • 数字が出るころには、状況が変わっている
  • どこに無駄があるのか、見当がつかない
  • 部門ごとに、費用の分け方の基準がばらばらになる

「高い」のではなく、「見えない」。

それが、コスト管理を難しくしています。

コストの種類と内訳を押さえる

コストは、大きく直接費と間接費に分けられます。

区分意味例
直接費特定の製品・サービスに直接ひもづく費用原材料費、直接の労務費
間接費複数の製品・サービスにまたがる費用光熱費、本社の管理費
材料費・労務費・経費費用の性質で分けた3つの分類材料、人件費、その他の経費

間接費は、決めた基準で製品や部門に割り振ります。

これを配賦といいます。

基準の決め方は、配賦とは?で扱っています。

製造原価と売上原価の違い

製造原価は、製品を作るためにかかった費用の合計です。

売上原価は、実際に売れた製品にかかった費用だけを指します。

売上高から売上原価を引くと、売上総利益(粗利)が出ます。

作ったが売れていない製品の費用は、売上原価ではなく在庫に残ります。

ここを混同すると、利益の見え方が変わります。

分かれ目を図にすると、次のとおりです。

製造原価と売上原価の分かれ目 製造原価は製品を作るためにかかった費用の合計。そのうち売れた製品の費用が売上原価で、売上高から引くと売上総利益(粗利)になる。売れていない製品の費用は売上原価に入らず、在庫に残る。 製造原価と売上原価の分かれ目 製造原価 製品を作るためにかかった費用の合計 売れた 売れていない 売上原価 売上高から引くと 売上総利益(粗利) 在庫 売上原価には入らず 在庫に残る 混同すると、利益の見え方が変わる
製造原価と売上原価の分かれ目

売上原価の計算は売上原価とは?で、原価計算の方法は個別原価計算と総合原価計算の違いで扱っています。

販売費及び一般管理費を見る

販売費及び一般管理費は、2つに分かれます。

販売の活動にかかる販売費と、会社全体の管理にかかる一般管理費です。

たとえば、売上に対する販売費の割合(販売費率)を出します。

過去の実績や同業の水準と比べると、適正な水準が見えてきます。

高すぎれば、広告宣伝費の見直しや、営業の効率の改善を考えます。

判断の物差し|Excelで足りる段階と、システムが要る段階

自社の数字をどう見るか

まず、次の3つに答えてみてください。

  • 全社の費用が月末から何日で出るか:時間がかかるほど、打つ手が遅れる
  • 部門別・案件別の損益が出るか:出なければ、どこで利益が削られているか分からない
  • 費用の分け方が部門の間でそろっているか:そろっていなければ、比べても意味がない

コストの持ち方の比較

持ち方向く会社注意点AIとの親和性
Excelで集計部門・案件が少なく、月1回の集計で足りる最新の版が分からない、数字が合わない低。ファイルが散らばり、点検を任せにくい
会計ソフトの部門別部門別の損益を月次で見ている案件や在庫とのつながりは手作業中。会計の数字はそろう
ERPで一元管理部門・案件・拠点が多く、日々の数字を見たい分類の設計が要る高。販売・購買・会計が同じデータでつながる

ERPは、会計・販売・購買・在庫などの業務を1つのデータでつなぐ基幹システムです。

部門・案件が少なく、会計ソフトで部門別の損益が出ているなら、いまの仕組みで足ります。

「いまは入れない」という判断です。

業務の範囲が限られ費用を抑えたいなら、Odooや国産ERPも比べます。

特定の業務の費用だけを細かく見たいなら、その部分をAIスクラッチ開発で作る道もあります。

NetSuiteでコストを分類する区分

NetSuiteでは、取引に部門・クラス・場所という分類の区分をつけられます。

Oracleのヘルプでは、これらを記録を分類する区分と説明しています。

場所ごとなどに財務のレポートを出せます。

区分を増やしたい場合は、カスタムセグメントの機能で追加できます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

区分設計の例決めるときの論点
部門営業部・製造部・管理部組織の変更のたびに作り直さないか
クラス製品の系列・事業利益を見たい単位と合っているか
場所工場・倉庫・拠点在庫の場所と会計の場所をそろえるか
カスタムセグメント案件・販路など増やしすぎて入力の負担にならないか

※例は架空の設計です。

見たい損益から区分を逆引きすると、次のとおりです。

見たい損益から選ぶNetSuiteの区分 部門ごとに見たいなら部門、製品の系列・事業ごとならクラス、工場・倉庫・拠点ごとなら場所、案件・販路ごとならカスタムセグメントを使う。区分は増やしすぎず、入力の負担とのつり合いを見る。例は架空の設計。 見たい損益から区分を選ぶ こう見たい この区分 部門ごと(営業部など) 部門 製品の系列・事業ごと クラス 工場・倉庫・拠点ごと 場所 案件・販路ごと カスタム セグメント 区分は増やしすぎず、入力の負担とつり合わせる
見たい損益から選ぶNetSuiteの区分(例は架空の設計)

分類をつけておけば、同じデータから部門別・事業別・拠点別の損益を出せます。

案件ごとの予算と実績はNetSuiteで実現するプロジェクト管理で、予算の仕組みはNetSuiteで予算管理を効率化で扱っています。

調達から在庫・物流までのサプライチェーンの費用も、同じ考え方で見られます。

需要の予測で在庫を適正に保てば、欠品や在庫の偏りによる費用を減らせます。

予測の考え方は、NetSuiteの需要予測をご覧ください。

これから選ぶ会社と、いま使っている会社

これから仕組みを選ぶ会社は、利益を見たい単位(部門・製品・案件・拠点)を、優先の順に3つまで書き出します。

その単位に直接つけられない費用は、配賦の基準を先に決めます。

ここまで決まれば、Excelで足りるか、ERPが要るかが判断できます。

すでにERPや会計ソフトを使っている会社でも、「コストが見えない」ことはあります。

よくあるのは、分類が組織の変更についていかず、古い部門のまま残っている形です。

区分が多すぎて、空欄のまま入力されていないこともあります。

保守の期限や更新の時期は、分類を作り直す好機です。

よくある3つの失敗

失敗1:ツールを入れれば終わりだと考える

起きること:システムを入れたが、数字を見て判断する場が増えない。コストは下がらない。

原因:データを見て、判断し、改善するのは人だという前提が抜けていた。

避け方:導入の時点で、誰が・いつ・どの数字を見るかを決めます。

経営者が毎月見る画面の決め方は、経営ダッシュボードの作り方で扱っています。

失敗2:現場にコストの数字が届かない

起きること:数字が一部の管理者だけのものになり、現場の改善につながらない。

原因:数字の共有の仕方と、部門ごとの目標を決めていなかった。

避け方:部門ごとに見る数字を絞り、目標とあわせて共有します。

改善の案を募る場や、進み具合を定期的に振り返る場も設けます。

失敗3:費用の分類の設計を、最初に詰めない

起きること:部門別・案件別の集計が、後で合わなくなる。作り直しに時間がかかる。

原因:分類を曖昧なまま、入力を始めてしまった。

避け方:第4章の表のように、区分ごとに「何を見たいか」を決めてから入力を始めます。

区分は増やしすぎず、入力の負担とのつり合いを見ます。

ベンチャーネットならこう見る

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱います。

SAPからのリプレイスにも対応しています。

コスト管理の相談では、2つの型で考えます。

分類の前に|見える化→整理整頓→Fit&Gap

いきなり区分の表を作ると、いまのずれがそのまま新しい仕組みに移ります。

ベンチャーネットは、次の順で進めます。

  1. 見える化:どの部門が、どの費用を、どの表や科目に入れているかを描き出す
  2. 整理整頓:同じ費用を別の科目に入れている分をそろえる。使っていない区分はやめる
  3. Fit&Gap:そろえた分類を、NetSuiteの部門・クラス・場所に当てはめる

製品が決まっていても、見える化から始めます。

第8章の点検は、この1番目を1時間でやる方法です。

分類がそろった先|守り→攻め→次へ

冒頭の問いに戻ります。

分類がそろうと、コスト管理は3つの段階で広がっていきます。

定着の先の3段階:守り→攻め→次へ 守りは業務が回ること、攻めはデータで打つこと、次へは経営が変わること。 定着の先の3段階守り|業務が回る在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる攻め|データで打つ売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計次へ|経営が変わるKPI、管理会計、上場に向けた内部統制
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ
段階コスト管理でできること
守り|業務が回る同じ分類で、全社の費用が毎月そろう。集計のための手作業が減る
攻め|データで打つ部門別・案件別の損益で、利益を削っている場所に手を打つ。先月より急に増えた費用をAIで洗い出す
次へ|経営が変わる管理会計やKPIで、どの事業に人とお金を向けるかを決める

削る費用を探すのは、守りが固まってからで遅くありません。

分類がそろえば、削ってよい費用と、削ると利益が減る費用を分けて見られます。

「コスト削減」が「利益を増やす判断」に変わるのは、この3段目です。

今日できること|1時間で費用の分け方を点検する

先月の費用の明細を開き、金額の大きい順に10項目を選んでください。

そのうえで、次の表を埋めます。

費用直接費か間接費かどの部門・製品・案件の費用か部門の間で分け方がそろっているか
(例)外注費直接費案件Aそろっていない(営業部は販売費に入れている)

「そろっていない」が多いほど、仕組みより先に分類を決める必要があります。

間接費の割合が大きい場合は、間接費を「見える化」して削減する方法も参考になります。

よくある質問

Q1. コスト管理はExcelではだめですか

規模によってはExcelで足ります。

部門や案件が増え、データが散らばると、集計の負担が一気に増えます。

全社のコストを早く見たい段階になったら、一元管理の仕組みを考えます(第3章)。

Q2. NetSuiteを入れれば、コスト管理は自動でできますか

自動ではできません。

NetSuiteは、コスト管理に必要なデータを整えて見える化する基盤です。

改善のサイクルを回すのは人の役割です(第6章)。

Q3. 原価計算とコスト管理は何が違いますか

原価計算はコスト管理の一部です。

原価計算は、製品やサービスにかかった費用を計算する手続きです。

コスト管理は、その結果を使って費用を抑え、利益を高める活動の全体です。

Q4. NetSuiteでは、どんな単位でコストを分けられますか

部門・クラス・場所の区分と追加のカスタムセグメントです。

区分ごとに財務のレポートを出せます。

何を見たいかを決めてから区分を設計します(第4章)。

Q5. 製造原価と売上原価は、どちらを見ればよいですか

利益を見るなら売上原価です。

製造原価には、まだ売れていない製品の費用も含まれます。

在庫が増えている時期は、両方を並べて見ると実態がつかめます(第2章)。

Q6. まず何から始めればよいですか

費用の分け方の点検からです。

金額の大きい費用10項目の分け方を、部門の間で比べてみてください(第8章)。

それが、見える化の最初の一歩になります(7-1)。

まとめ

  • コスト管理が難しい理由の多くは、データが散らばっていること
  • 直接費・間接費、製造原価・売上原価の違いを押さえる
  • 部門・案件が少なければExcelや会計ソフトで足りる。増えたら一元管理を考える
  • NetSuiteでは、部門・クラス・場所とカスタムセグメントでコストを分けられる
  • 分類は、見える化→整理整頓→Fit&Gapの順で決める。そろった先に、守り→攻め→次へがある

削る費用を探す前に、費用の分け方をそろえる。

その1時間の点検が、コスト管理を「削る作業」から「利益を選ぶ判断」に変える入口です。

もう少し詳しく知りたい方へ

コストを見える形にする進め方は、利益を見たい単位と、いまの集計の仕組みで変わります。

費用の分類の設計から、ご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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