「間接費は、全部門一律で10%削れば減る」
そう考えて号令をかけ、半年後に元の水準へ戻っている会社は少なくありません。
削りやすい費目だけが削られ、利益はほとんど増えない。
現場には、疲れだけが残ります。
間接費とは、製品やサービスを生産する際に、間接的にかかる費用のことです。
家賃・光熱費・一般管理費・減価償却費などが当たります。
間接費の削減は、いきなり削らず、見える化から始めるのが近道です。
どこに・いくらかかっているか分からないまま削ると、必要な費用まで削ってしまうからです。
では、見える化した後、どの順番で手を入れれば、削った分が利益として残るのか。
一律カットと、残る削減の違いは、この順番にあります。
この記事で分かること
- 間接費とは何か、直接費との違いと「配賦」の考え方
- 「見える化→整理整頓→仕組みで回す」の順番と、費目ごとの削り方
- 自社の数字の見方と、Excelで足りる段階・システムが要る段階
- 間接費の削減でよくある3つの失敗と、その避け方
- 今日1時間でできる、自社の間接費の棚卸し
間接費とは?直接費との違い
間接費は、複数の製品・サービスにまたがって発生します。
どの製品にどれだけかかっているかを集計するのは、簡単ではありません。
Oracle NetSuiteの公式の解説でも、間接費(overhead)を次のように説明しています。
「特定の製品やサービスに直接ひも付けられない費用」です(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
間接費は、大きく材料費・労務費・経費の3つに分けられます。
- 間接材料費:消耗品費、備品費、補助材料費など
- 間接労務費:間接作業の賃金、賞与手当、退職給与費用など
- 間接経費:減価償却費、賃料、保険料、修繕費、光熱費、旅費交通費、通信費など
一方、直接費は、製品やサービスの生産に直接かかわって発生する費用です。
原材料費や、直接作業者の人件費が当たります。
| 観点 | 直接費 | 間接費 |
|---|---|---|
| 金額の大きさ | 一つひとつが高額 | 一つひとつは少額 |
| 発生の基準 | 生産するごとに発生 | 生産に関係なく発生 |
| 発生の頻度 | 規則的・限定的 | 不規則・多岐にわたる |
| 配賦の必要性 | 不要 | 必要 |
配賦(はいふ)とは、共通でかかった費用を、一定の基準で各部門や製品に割り振ることです。
間接費の管理では、この配賦が欠かせません。
配賦の基準で、製品の利益は変わる(架空の数字の例)
ある会社で、工場の家賃・光熱費などの間接費が月100万円かかっているとします。
製品Aと製品Bの2つを作っている例です(数字はすべて架空です)。
| 配賦の基準 | 製品Aの割合 | 製品Aへの配賦 | 製品Bへの配賦 |
|---|---|---|---|
| 売上高の比率 | 70% | 70万円 | 30万円 |
| 作業時間の比率 | 40% | 40万円 | 60万円 |
製品Bは、売上は小さいが手間のかかる製品だとします。
売上高で配ると、製品Bの利益は大きく見えます。
作業時間で配ると、製品Bの利益は30万円少なく見えます。
どちらが正しいかは、その費用が何によって増えるかで決まります。
基準の選び方ひとつで、「もうかる製品」の顔ぶれが入れ替わります。
2つの基準の違いを図にすると、次のとおりです。
配賦の考え方は、配賦とは?業績評価が歪まないための原価配賦の考え方とNetSuite活用法で詳しく解説しています。
なぜ間接費が利益率を左右するのか
間接費は、一つひとつの金額は小さな費用です。
それでも費目が多く、部門をまたいで発生するため、合計は見えにくくなります。
適正な金額を見極めるのも、難しいのが実情です。
裏を返せば、ここには手つかずの改善の余地があります。
間接費を減らした分は、そのまま利益として残るからです。
原材料費や人件費の上昇が続き、直接費を下げるのは簡単ではありません。
見落とされがちな間接費に目を向ける意味は、そこにあります。
削減の前に「見える化」|順序を間違えると失敗する
まず見える化、それから削減。
この順番を逆にすると、たいてい失敗します。
必要な費用まで削り、業務が滞ったり、現場が疲れたりするからです。
見える化とは、次のような状態をつくることです。
- どの部門で、どの費目に、いくらかかっているか分かる
- どの製品・プロジェクトに、間接費がどれだけ配賦されているか分かる
- 費用の推移が、月単位で追える
この状態になって初めて、「どこから削るか」の順番が見えてきます。
数字は厳しいですが、正直です。
正直に見るほど、打ち手は的確になります。
自社の数字をどう見るか
見える化ができたら、次の4つの見方で数字を読みます。
| 見る数字 | 見方 | 気づけること |
|---|---|---|
| 売上高に占める間接費の比率 | 月ごと・年ごとの推移を見る | 売上の伸びより間接費が速く増えていないか |
| 部門×費目の金額 | 上位の費目と、増えている費目に印をつける | 削る候補と、守るべき費用の区別 |
| 配賦後の製品別・案件別の利益 | 配賦の前と後で順位を比べる | 利益を削っている製品・案件 |
| 前年同月との差 | 差が大きい費目の理由を聞く | 一時的な増加か、定着した増加か |
いちばん効くのは、比率の推移です。
金額が増えていても、売上がそれ以上に伸びていれば、問題は小さいこともあります。
売上が横ばいで間接費だけ増えているなら、早めに手を打つ合図です。
比率の推移の読み方を図にすると、次のとおりです。
Excelで足りる段階と、システムが要る段階
見える化は、Excelから始めてもかまいません。
ただ、会社の規模と複雑さで、合う道具は変わります。
| 段階 | 会社の状態 | 合う道具 |
|---|---|---|
| 1. Excelで足りる | 部門が少なく、配賦の計算が月1回・数行で済む | 会計ソフトの部門別集計+Excel |
| 2. 限界が見え始める | 部門・製品が増え、集計に数日かかる。数字の食い違いが出る | 会計ソフトの部門・タグの機能を広げる、または業務システムを検討 |
| 3. システムが要る | 拠点・製品・案件が多く、配賦を毎月回す。販売・在庫の数字と合わせて見たい | NetSuiteなどのERP |
ERPは、会計・販売・在庫・購買などのデータを1つにまとめるシステムです。
手作業の集計には時間がかかり、入力ミスも起きます。
部門・製品が増えるほど、その差は開きます。
ExcelからERPへ移る目安は、ExcelからNetSuiteへ移行すべきタイミングでも扱っています。
判断の物差し|NetSuiteが合う会社・ほかの選択肢が合う会社
NetSuiteが合うのは、部門・拠点・製品・案件が多く、配賦を毎月回したい会社です。
販売・在庫・購買の数字と間接費を同じ画面で見たい、複数の会社をまとめたい場合も候補になります。
| 会社の状態 | 合う選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| 部門が少なく、会計ソフトの部門別集計で足りる | いまは入れない | 仕組みより、毎月見る習慣づくりが先 |
| 必要な業務が絞られ、費用を抑えて始めたい | Odoo | アプリを選んで小さく始められる |
| 製造原価の細かい計算が中心で、国内の商習慣に合わせたい | 国産ERP | 日本の製造業の業務に合わせた製品が多い |
| 独自の配賦の考え方が経営の核で、既存システムも活かしたい | AIスクラッチ開発 | 必要な計算だけを作り、既存のデータとつなげる |
NetSuiteの費用は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。
間接費の見える化だけが目的なら、費用に見合うかを冷静に比べてください。
費目ごとの削りどころと、NetSuiteでの集計
NetSuiteでは、間接費を部門別・製品別に集計し、配賦までつなげられます。
公式の解説では、直接費・間接費のデータの収集と処理、配賦の処理を自動化すると説明しています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
集計の切り口になるのが、部門・クラス・場所という区分です。
Oracleのヘルプでは、記録を分類するための区分と説明されています。
場所ごとなどに財務レポートを出せ、区分を増やすカスタムセグメントの機能もあります(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。
見える化ができたら、費目ごとに削りどころを探します。
- 間接材料費:消耗品の一括購入で単価を下げ、必要量を見極めて在庫を適正にする。NetSuiteでは安全在庫の設定や需要予測を使い、過剰在庫のコストを抑えられる
- 間接労務費:業務の自動化で作業の時間を減らす。外部の力を借りる、業務の流れそのものを見直すといった方法もある
- 間接経費:家賃・光熱費・旅費交通費・通信費などは、見える化の効果が大きい。部門ごとの推移から増えている費目を見つけ、出張のルールや契約の棚卸しにつなげる
原価管理の全体の進め方は、NetSuiteで実現する全体最適な原価管理をご覧ください。
販管費の管理に絞った解説は、販売費及び一般管理費(販管費)とは?にあります。
これから選ぶ会社と、いま使っていて見直す会社
これから仕組みを選ぶ会社は、道具の前に「見たい切り口(部門・製品・案件・拠点のどれか)」と「費目ごとの配賦の基準」の2つを決めてください。
この2つが決まっていれば、Excel・会計ソフト・ERPのどれで足りるかも判断しやすくなります。
システムは入っているのに間接費が見えない会社は、原因が道具ではなく設定と運用にあることが多いものです。
- 部門・クラスの区分が、経営が見たい切り口と合っていない
- 配賦の基準が、導入時のままになっている
- 誰も毎月の推移を見ていない
乗り換えを考える前に、いまの仕組みで区分と配賦を直せないかを見てください。
保守の更新や契約の見直しの時期は、そのよい機会です。
間接費の削減でよくある3つの失敗
失敗1:見える化せずに、いきなり削る
起きること:「前年比で一律◯%カット」の号令が出る。目につきやすい費目だけが削られ、削ったのに利益が増えない。
原因:配賦されていないため、どこにいくらかかっているかが見えていない。
避け方:まず部門別・製品別に間接費を見える化し、削る順番をつけます。
削る費目と、守るべき費目を分けてから着手します。
失敗2:現場の納得を得ず、トップダウンだけで進める
起きること:削減目標の数字だけが現場に下りてくる。一時的に数字は下がっても、見えないところで非効率が生まれ、長続きしない。
原因:間接費は現場の日常業務にひも付いているのに、「なぜ削るのか」を共有していない。
避け方:部門の責任者を巻き込み、理由を一緒に共有します。
見える化したデータが、そのときの共通言語になります。
失敗3:一度削って終わりにする
起きること:削減の取り組みが単発で終わり、半年後にはコストが元の水準に戻っている。
原因:間接費は放っておくと再び増える性質があるのに、推移を追う仕組みがない。
避け方:ダッシュボードで、間接費の推移をいつでも見られる状態にします。
毎月の会議の議題に、比率の推移を1行入れます。
経営者が毎朝見る画面の決め方は、NetSuiteダッシュボード|経営者が毎朝見る5つの画面の決め方で解説しています。
ベンチャーネットならこう見る|削る前に、整理整頓
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱います。
SAPからのリプレイスにも対応し、特定の製品に誘導しない立場を取っています。
間接費の相談で勧めているのは、「削る」の前に「整理整頓」を置くことです。
型1:見える化→整理整頓→仕組みで回す
- 業務の見える化:費目の裏にある業務の流れを、現場に聞いて描く
- 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
- 仕組みで回す:残った業務を、システムの標準機能で毎月集計・配賦する
削る判断は、2段目の整理整頓で下します。
やめる業務が決まれば、その業務にひも付く消耗品・外注・通信の費用も一緒に消えます。
費目から削るのではなく、業務からやめる。
一律カットとの違いは、ここにあります。
3段目で仕組みに載せるのは、やめずに残った業務だけです。
システムに載せる範囲が減るので、設定も配賦の計算も軽くなります。
型2:守り→攻め→次へ
間接費の見える化は、3段で広がります。
- 守り:部門×費目の数字が毎月そろい、推移が追える
- 攻め:配賦した数字で、製品・案件ごとの損得を読み、価格や撤退を決める
- 次へ:KPIや管理会計に広げ、経営の数字の1つとして定着させる
間接費をゼロにすることはできません。
間接費は、「削る対象」であると同時に「間接部門が生む価値」でもあります。
コストとしてだけ見ると、判断を誤ることがあります。
攻めの段では、削る費目と、人材育成や品質のために守る費目を分けて見てください。
間接部門の価値の見方は、間接部門は「コスト」か「資産」かで扱っています。
最初の打ち合わせで伺うのは、主に次の3つです。
- 売上高に占める間接費の比率は、ここ数年どう動いているか
- 配賦の基準は、誰が何を根拠に決めたか
- 毎月その数字を見て、誰が動くか
今日できること|1時間で間接費を棚卸しする
次の手順で、自社の間接費を並べてみてください。
- 会計ソフトから、直近12か月の販管費と製造間接費を、費目×月で書き出す
- 12か月の合計が大きい順に並べ、上位5つの費目に印をつける
- 前年同月より増えている費目に、別の印をつける
- 両方の印がついた費目について、担当部門に理由を一言ずつ聞く
- 売上高に占める間接費の比率を、月ごとに1行で計算する
両方の印がついた費目が、最初に見直す候補です。
理由を聞いて「必要な増加」と分かれば、それは守るべき費用です。
よくある質問
Q1. 間接費は、どのくらい削減できますか?
一律の目安はありません。
削れる幅は、会社の状況で大きく変わります。
まず見える化すると、気づかなかった無駄が見つかることがよくあります。
自社の実態をつかんでから、現実的な目標を決めてください。
Q2. 中小企業でも、間接費の見える化はできますか?
できます。規模が小さいうちに仕組みを整えるほうが効果的です。
間接費は、会社が成長するほど複雑になります。
早い段階で見える化の仕組みを持つと、成長に合わせて管理しやすくなります。
Q3. Excelでの管理ではダメなのでしょうか?
部門・製品が少ないうちはExcelでも足ります。
ただし部門・製品が増えると、集計に時間がかかり、入力ミスも増えます。
集計に数日かかる、数字が合わないといった状態が、見直しの合図です(第5章)。
Q4. 配賦の基準は、どう決めればよいですか?
その費用が何によって増えるかで決めます。
作業時間で増える費用は作業時間、面積で決まる家賃は面積、といった考え方です。
基準で製品の利益の見え方が変わるため、会計の担当と一緒に決めてください(第1章1-1)。
Q5. NetSuiteでなくても、間接費の見える化はできますか?
できます。会計ソフトの部門別集計やOdoo・国産ERPでも始められます。
部門・製品が少ない会社は、いまの道具で運用を整えるのが先です。
販売・在庫の数字と合わせて見たい、拠点が多いといった場合にNetSuiteが候補になります(第6章)。
Q6. 何から相談すればいいですか?
「どこにいくらかかっているか分からない」という状態の整理からでかまいません。
費目の裏の業務を見える化し、やめる業務を決めるところから始められます(第10章)。
まとめ:一律カットより、業務からやめる
- 間接費は費目が多く部門をまたぐため、合計が見えにくい
- いきなり削らず、見える化→整理整頓→仕組みで回すの順に進める
- 配賦の基準で、製品の利益の見え方は変わる
- 見るべきは金額より、売上高に占める比率の推移
- 部門・製品が少なければExcelで足り、増えればシステムが要る
「一律10%」の号令をかける前に、費目を12か月並べてみてください。
両方の印がついた費目の裏に、やめられる業務が隠れていることがあります。
もう少し詳しく知りたい方へ
間接費の見える化の進め方や、合う道具の選び方をご相談いただけます。
- NetSuiteダッシュボード構築サービス:間接費の推移を毎月追える画面づくり
- NetSuite×会計ブリッジ伴走(CFO向け):配賦の基準と管理会計の設計
- お問い合わせ:「どこにいくらかかっているか分からない」段階からご相談ください

コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 間接部門の見方は、間接費を「見える化」して削減する方法で扱っています。 […]
[…] 販管費の重さは、間接コストの削減で扱っています。 […]