「ERPで現場の仕事が増えた」はなぜ起きるのか|3つの型と4つの手段

月次の締めは3日早くなった。

経営会議の資料も、自動で出るようになった。

それなのに現場からは、「前より入力が増えた」という声が上がる。

ERPとは、会計・販売・在庫・購買などの業務を、1つの仕組みでつなぐシステムのことです。

「ERPは経営のためのもの。現場は入力が増えるだけ」。

導入に関わっていると、この言葉を何度も耳にします。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、ERPを導入する側の会社です。

それでも、この批判には半分は理があると考えています。

ただし原因は、仕組みそのものではありません。

増えた作業を、誰も設計していないことにあります。

増えた作業は、3つの型に分けられます。

1つはAIと設計で消え、1つは半分消え、残る1つは経営者が決めない限り消えません。

では、どこから手をつければよいのか。

消しやすいところから、ではありません。

この記事で分かること

  1. 効率化が成功しても、現場の仕事が増えることがある理由
  2. ERPで生まれる「意味のない作業」の3つの型
  3. 消していい作業と、消してはいけない作業の見分け方
  4. 手間を減らす4つの手段と、AIで減らせる手間・減らせない手間の境目
  5. 経営者・業務リーダーが着手する順番
目次

効率化は成功した。それなのに、現場が冷めている

新しい仕組みが入り、転記の手間は減りました。

それでも、現場からはこんな声が出てきます。

  • 「前より入力する項目が増えた気がする」
  • 「この承認、何のためにあるんですか」
  • 「毎月出しているこの資料、誰か見ているんですか」

この状態は、プロジェクトの失敗ではありません。

導入が失敗したときに何が起きるかは、ERP導入はなぜ失敗するのかにあります。

現場から見えている3つの症状

症状現場で起きていること
①二重入力が残るERPに入れたあと、同じ内容を部署のExcelにも入力している
②入力項目が多い1件の登録に何十項目も埋める。現場が使うのは一部だけ
③何も返ってこない入力した数字は経営会議の資料になるが、本人が見て助かる画面はない

3つに共通するのは、手間と見返りが釣り合っていないことです。

効率化そのものが、新しい作業を生む

効率化は、余力を作ります。

そして余力は、多くの場合、管理の側に回ります。

処理が速くなれば、手が回らなかった確認ができるようになる。

データがそろえば、作れなかった集計が作れるようになる。

ですが、確認と集計は、人の作業として現場に落ちます。

効率化に失敗したのではありません。

効率化の成果を何に使うかを、決めていないのです。

生産性が上がったかどうかは、労働生産性とは?計算式と、NetSuiteで「上がらない原因」を断つ経営戦略の計算式で測れます。

けれど、働く人の実感は、その数字には出てきません。

増えた作業を、3つの型に分ける

文化人類学者のデヴィッド・グレーバーは、本人ですら意味を感じられない仕事を「ブルシット・ジョブ」と呼び、5つの型に分けました。

(『ブルシット・ジョブ——クソどうでもいい仕事の理論』酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹 訳、岩波書店)

この5つをERPの現場に当てはめると、2つはほとんど起きません。

型ERPで起きる具体的な形誰が生んだかAIとの親和性
取り巻き(誰かを偉く見せるための仕事)ほぼ起きない——
脅し屋(他社と張り合うための仕事)ほぼ起きない——
尻拭い(壊れたものを繕う仕事)Excel併用、二重入力、手作業の転記設計の穴高(自動化で消えやすい)
書類穴埋め人(形を整えるための仕事)誰も読まない月次レポート、形だけの承認統制の過剰設計中(作るのは任せられるが、要否の判断は人)
タスクマスター(仕事を作る仕事)承認階層の増殖、報告のための報告決めきれない経営低(AIでは消えない)

当てはまらない型は、当てはめませんでした。

借りてきた枠に全部を押し込むと、読んだ瞬間に借り物だと分かるからです。

右の2列が、この記事の結論につながります。

  • 尻拭いは、AIと自動化で消える
  • 書類穴埋め人は、半分消える
  • タスクマスターは、経営者が決めない限り消えない

第1章の症状①は尻拭い、症状②は書類穴埋め人にあたります。

症状③は、3つの型すべての結果です。

ERPで増える作業の3つの型と消え方 尻拭いは設計の穴から生まれAIと設計で消える。書類穴埋め人は統制の過剰設計から生まれ半分消える。タスクマスターは決めきれない経営から生まれ経営者が決めない限り消えない。 増える作業の3つの型尻拭い生んだもの:設計の穴AIと設計で消える書類穴埋め人生んだもの:統制の過剰設計作る手間は減る。要否は人が決めるタスクマスター生んだもの:決めきれない経営経営者が決めない限り消えない着手は消しやすい順ではなく決めごとから
ERPで増える作業の3つの型と消え方

尻拭い型:システムの穴を、人が埋めている

どんな作業か

ERPに入力したあと、同じ数字を部署のExcelに打ち直す。

連携できていない2つのシステムの間を、人がコピーで橋渡しする。

どれも、仕組みの穴を人が埋めている作業です。

本人もムダだと分かっています。それでも、やめると業務が止まる。

なぜ生まれるか:入力の「発生源」が決まっていない

受注の情報なら、営業のメール、見積もりのExcel、ERPの受注画面。

どれが「最初に受け取る場所」なのかが、決まっていません。

発生源が決まっていないと、情報はあちこちで入力されます。

導入時に「今のやり方をそのままシステムに移す」と決めると、この形が固定されます。

見つけ方

この型は、Excelのファイル名に現れます。

「◯◯管理_最新_v3」「照合用」「確認用」が部署ごとにあるなら、そこが穴です。

もう1つの手がかりは、月末にだけ忙しくなる人です。

その中身が突き合わせと転記なら、穴を1人で埋めている可能性があります。

消し方と、その落とし穴

この型は、設計とAIで消える種類です。具体的な手段は第6章にあります。

気をつけたいのは、尻拭いを消すことには誰も反対しない、という点です。

だから多くの会社はここから手を付け、残りの2つの型が手つかずになります。

尻拭いを消すと余力が生まれます。

その余力は、放っておくと管理の作業で埋まります。

書類穴埋め人型:誰も読まない資料を、毎月作っている

どんな作業か

作っている本人も、誰が読んでいるか知らない定例レポート。

差し戻されたことが一度もない承認。

「一応、記録として」作られ、誰の目にも触れない資料。

なぜ生まれるか①:やめる判断が、同時に行われない

多くは、善意から生まれます。

問題が起きるたびに「見える化しよう」「チェックを入れよう」と決める。

ところが、やめる判断が同時に行われないと、積み上がるだけです。

5年もたてば、誰も理由を説明できない報告が並びます。

間接部門は、この積み上がりをいちばん受け止める場所です。

間接部門の見方は、間接費を「見える化」して削減する方法で扱っています。

なぜ生まれるか②:分析の要件を、そのまま入力の要件にした

経営が「部門別・商品別・地域別・担当者別に見たい」と言う。

その要望が、そのまま現場の入力項目になります。

本来、分析の切り口と入力の項目は別物です。

入力から計算できる項目は、入力させる必要がありません。

担当者が決まれば部門は決まり、商品が決まれば分類は決まります。

この「翻訳」をせずに下ろすと、項目の半分は空欄か、とりあえずの値で埋まる。

経営が見たかった数字の質まで下がります。

分析の切り口を、入力項目に翻訳する 経営が見たい切り口をそのまま入力項目にすると、項目の半分は空欄かとりあえずの値で埋まり、数字の質まで下がる。担当者が決まれば部門、商品が決まれば分類が決まるので、計算できる項目は入力させない。 見たい切り口を、入力項目に翻訳する経営が見たい切り口部門別・商品別・地域別・担当者別そのまま下ろす要望が入力項目になる半分は空欄か、とりあえずの値数字の質まで下がる翻訳して下ろす担当者→部門は決まる商品→分類は決まる計算できる項目は入力させない分析の切り口と入力の項目は別物
分析の切り口を、入力項目に翻訳する

難所:消していいものと、消してはいけないもの

「誰も読まない書類」と「読まれないが必要な記録」は、外から見ると同じ形をしています。

前者は消すべきで、後者は消してはいけません。

切り分けないまま「ムダをなくそう」と旗を振れば、内部統制を壊します。

見分ける問いは、1つで足ります。

その作業をやめたとき、困る人はいるか。困るのは誰か。

答え判定扱い
誰も困らない消していいやめる。代替も作らない
監査法人・税務署・取引先が困る消してはいけない統制として残す。作る手間だけを軽くする
困る人がいるか分からない判断がつかない3か月止めてみる。誰も何も言わなければ、消していい作業だった

議論で決着がつかない作業は、止めたときの反応で決まります。

人が新しく書く報告と、システムが勝手に残す記録は、別物です。

消せるのは前者だけです。

入口・表示・記録の3層で考えると、記録の層は消えません。

詳しくはERPの画面は消えるのかをご覧ください。

タスクマスター型:承認と報告が、増殖している

どんな作業か

3人で足りていた承認が、いつの間にか5人になっている。

報告のための会議があり、その会議のための事前資料がある。

なぜ生まれるか

原因は、設計の穴でも統制の過剰でもありません。

決めきれないことです。

責任の所在を決めきれないと、承認者を増やして分散させる。

任せる範囲を決めきれないと、報告を増やして確認する。

どちらも、決断を先送りにするための仕組みです。

だからAIでは消えない

承認階層は、AIでは1段も減りません。

AIは承認を速くできます。

けれど、「この承認はもう要らない」とは決められないからです。

減らせるのは、経営者だけです。

決めることは、次の3つにまとまります。

承認の設計は、NetSuiteの承認ワークフロー実装ガイドで扱っています。

決めること決めないと起きること決め方の目安
金額の基準少額の支出にも部長承認が必要になり、承認待ちが常態化する金額帯ごとに承認者を決め、下限を思い切って上げる
権限の委譲責任を分散させるために、承認者が増え続ける「誰が責任を負うか」を1人決める。連帯ではなく単独で
例外の扱い例外のたびに承認が1段増え、そのまま元に戻らない例外の判断者と、例外を通常に戻す時期をセットで決める

設定は、あとから合わせられます。

決めごとは、設定では代わりが効きません。

3つの型に共通すること

尻拭いは、要望を「聞く」場はあったのに、「捨てる」場がなかった。

書類穴埋め人は、統制を「足す」判断はあったのに、「外す」場がなかった。

タスクマスターは、承認を「増やす」のは誰でもできるのに、「減らす」場がない。

つまり、人の問題ではなく、場の問題です。

だから直せます。人を替える必要はありません。場を作ればいい。

手間を減らす4つの手段

手段何を減らすか向く場面AIとの親和性
①入力させない(マスタ整備・システム間連携)入力そのもの他のシステムにすでにデータがある中
②入力を軽くする(読み取り・候補表示・既定値)打鍵の数と、判断の回数紙やPDFが起点の業務高
③入力を代行させる(AIエージェント)転記・分類・突き合わせ判断の基準を言葉にできる業務高
④入力後を賢くする(分析・アラート)現場の手間は減らない経営側の見える化高

現場の体感がいちばん大きいのは①で、②と③がそれに続きます。

③は大きく効く一方、確認の手間が残ります。

④は、現場の体感を変えません。

多くの会社が、④だけを進めて「AIを入れた」と言っています。

④は、現場の入力を1回も減らしません。

①〜③と、必ずセットにしてください。

①の親和性を「中」にしたのは、中心が設計だからです。どのシステムを正とするかは、人が決めます。

③には条件があります。判断の基準を、言葉にできる業務であることです。

🌏 日本での提供状況:NetSuiteには請求書を読み取る機能(Bill Capture)があります。ただし、Oracleの公式ドキュメントでは対象地域が米国に限られています。日本では、汎用のAIと取り込みの仕組みを組み合わせる方法が現実的です。

手段参考
①NetSuiteのCSVインポート/NetSuiteとfreee・マネーフォワード・勘定奉行を組み合わせる
③NetSuite AI Connector Serviceとは/MCP活用ユースケース集/NetSuiteあるある15選
④NetSuiteの「純正AI」と「外部AI連携」は何が違う?

型と手段の対応

型効く手段効かない手段
尻拭い①②③④
書類穴埋め人②③(作る手間は減る)①④。要否は手段ではなく人が決める
タスクマスターなし①②③④すべて

タスクマスター型の行の「なし」は、書き落としではありません。

この型には、手段が効かないのです。

AIで減らせる手間と、減らせない手間

区分手間の例AIの役割人が残すこと
減らせる書類からの転記、費目の分類、入金と請求の突き合わせ下書き・候補を出す確認と確定
一部減らせる承認前のチェック、マスタの表記ゆれの整理、差異の原因調べ論点を並べる・説明を書く判断
減らせない発生源の決定、入力項目の取捨選択、承認そのもの材料を整理するまで決定

AIが引き受けるのは、下書き・候補・要約まで。

確定するのは人です。

誰が確定したかの記録を残せば、統制の考え方は従来と変わりません。

「減らせない」の行は、どれもAIを入れる前に決めることです。

任せる範囲の線引きは、AIエージェントに「任せる範囲」と、経営者が「握る範囲」にあります。

浮いた時間が次の仕事に消える理由は、AIで仕事が速くなっても、早く帰れないのはなぜかで扱っています。

着手の順番:消しやすい順ではない

冒頭の問いに、ここで答えます。

多くの会社は、消しやすい尻拭いから手を付けます。

この順番は、途中で止まります。

タスクマスター型を残したまま尻拭いを消すと、書類穴埋め人型が増えるからです。

順やること誰が対応する型・手段
1承認と報告の数を決め直す(金額基準・権限・例外)経営者タスクマスター
2誰も読まない資料をやめる(判断がつかないものは3か月止める)経営者・管理職書類穴埋め人
3数える(1件あたり何回入力しているか)業務リーダー—
4発生源を決める(情報を最初に受け取る場所を1つに)業務リーダー尻拭い
5入力させない(連携とマスタ整備)情報システム・パートナー手段①
6入力を軽くする(読み取りと候補表示)情報システム・パートナー手段②
7代行させる(基準を言葉にできた業務から)情報システム・パートナー手段③
8見返りを返す(現場向けの画面を作る)業務リーダー—
9入力後を賢くする(経営向けの分析とアラート)経営者・情報システム手段④

1を先に置くのは、逆にすると、あとの成果が1の隙間に吸い込まれるからです。

1と5を並行しても構いません。

1を「あとで」にしないことだけは守ってください。

9つの手順を、担う人ごとにまとめると次のとおりです。

着手の順番:決めごとから、担う人ごとに 1〜2は経営者・管理職が承認と報告を決め直し、読まれない資料をやめる。3〜4は業務リーダーが数えて発生源を決め、5〜7は手段①②③で入力を減らす。8で現場に見返りを返し、9で入力後を賢くする。 着手の順番:決めごとから1〜2 承認と報告を決め直す経営者・管理職|読まれない資料もやめる3〜4 数える・発生源を決める業務リーダー5〜7 入力させない・軽く・代行情報システム・パートナー|手段①②③8 見返りを返す業務リーダー|現場向けの画面を作る9 入力後を賢くする経営者・情報システム|手段④1を「あとで」にしない
着手の順番:決めごとから、担う人ごとに

8の「見返り」とは

手間を減らすだけでは、半分です。

見返りとは、入力した人が自分の仕事で使える画面のことです。

  • 営業担当:自分の案件の受注・出荷・請求・入金が1画面で見える
  • 購買担当:自分が発注した品目の納期と、遅れそうなものが見える
  • 経理担当:未処理の請求書と、締めまでの残り件数が見える

この実感があると、入力は「やらされる作業」から「自分のための記録」に変わります。

経営向けのダッシュボードを1枚作るなら、現場向けの画面も1枚作る。

これを、設計の約束ごとにしてください。

誰がどこで入力するかは、ERP導入前にやるべき業務フロー可視化で扱っています。

この話でつまずく、3つの失敗パターン

現場を大事にしている会社ほど、はまりやすい落とし穴です。

失敗①:現場の声を、全部システムに入れてしまう

よくある現象

現場の要望を丁寧に聞き、すべて仕様に反映した。

稼働してみると、尻拭いの作業がそのまま仕様として固定されていた。

なぜ起きるか

現場が語るのは「今どうやっているか」です。

それを写すと、繕いの作業まで一緒に設計に入ります。

どう回避するか

要望を1つずつ、「これは何の穴を埋めているのか」と問い直します。

穴が特定できたら、作業ではなく穴のほうを直します。

失敗②:承認を減らさずに、自動化する

よくある現象

申請から承認までの時間は半分になった。

けれど承認に関わる人数は同じで、現場の「待ち」の感覚は変わっていない。

なぜ起きるか

自動化は、処理を速くする手段です。

階層の数は、経営の決めごとです。

速くすることに集中すると、タスクマスター型が残ります。

どう回避するか

自動化の設計に入る前に、承認の数そのものを見直します。

失敗③:AIを「入力後のレポート」にだけ使った

よくある現象

ダッシュボードが増え、週次の報告も増えた。

経営会議は楽になったが、現場の入力の負担は何も変わっていない。

なぜ起きるか

「AI活用=見える化」と考え、手段④だけを進めたからです。

良かれと思って可視化を進めると、書類穴埋め人型を自分で量産します。

どう回避するか

AIは入力の前段(手段②・③)にも置き、効果は「打鍵の数が減ったか」で測ります。

そして、レポートを1つ増やすなら、1つやめる。

ベンチャーネットは、経営ダッシュボードの構築を支援しています。

だからこそ、ここに書いておきます。

「増やす」より「減らす」相談を歓迎します。

ベンチャーネットならこう見る|「捨てる場」を先に作る

第5章で見たとおり、3つの型はどれも「引く場」がなかったことから生まれています。

ベンチャーネットの進め方は、この「引く場」を最初に置く形になっています。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap

  1. 業務の見える化:いまの業務の流れを、現場に聞いて描く
  2. 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
  3. Fit&Gap:残った業務を、製品の標準機能と照らし合わせる

2段目の整理整頓が、「捨てる場」にあたります。

Fit&Gapは、業務と機能の合う・合わないを一つずつ見る作業のことです。

やめる業務を2段目で決めておけば、尻拭いの作業を仕様に持ち込まずに済みます。

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、移る先の製品の標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&Gap移る先の製品の標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

型2:定着の4手順

稼働後に作業を増やさないために、ベンチャーネットは次の4つを手順にしています。

  • データ整理を最初に
  • 段階的に導入
  • 研修・サポートを徹底
  • 操作はシンプルに(使わない機能を盛らない)

4つ目は、書類穴埋め人型への予防です。

使わない項目や画面を最初から載せなければ、「とりあえずの値」で埋める作業も生まれません。

ベンチャーネットは、この2つの型に沿って、作業の仕分け、承認と報告の設計、発生源と項目の設計を進めます。

連携とAIの組み込み、現場向け画面と定着の伴走も引き受けます(伴走型のNetSuite導入支援とは)。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

特定の製品に誘導しない立場です。

システムを入れないほうがよい場面では、そう申し上げます。

今日できること:数えてみる

所要は30分です。2つを数えてください。

①決めごとの積み残し(10分)

直近1か月で、次の2つが何件あったか。

  1. 提出したが、誰からも反応がなかった資料
  2. 押したが、一度も差し戻されなかった承認

この件数が、書類穴埋め人型とタスクマスター型のコストの手がかりです。

どれを消していいか迷ったら、第4章の問い(やめたとき、困る人はいるか)で仕分けます。

②1件あたりの打鍵(20分)

  1. よく使う取引を1つ選ぶ(受注、発注、経費など)
  2. 1件を登録するまでに、入力する項目がいくつあるかを数える
  3. そのうち、他のシステムや書類にすでにある情報の転記がいくつあるかを数える

転記の数が、設計で消せる手間です。

数字が出たら、第7章の順番に沿って、どこから消すかを考えてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. これは、特定のERP製品への批判ですか

A. いいえ。

ここで書いた3つの型は、どのERPでも起きます。NetSuiteでも起きます。

製品の良し悪しではなく、業務の決め方で決まる部分の話です。

Q2. 「意味のない作業を減らそう」と言うと、内部統制が弱くなりませんか

A. その心配は正しく、この記事でいちばん注意している点です。

「誰も読まない書類」と「読まれないが必要な記録」は別物です。

第4章の問い(やめたとき、困るのは誰か)で切り分け、監査法人や税務署が困るものは統制として残してください。

Q3. AIを入れれば、こうした作業はなくなりますか

A. 一部はなくなります。

尻拭い型は自動化で消え、書類穴埋め人型は作る手間が減ります。

ただし、承認階層と報告の増殖はAIでは消えません。

決める人が決めるまで、そのまま残ります。

Q4. 現場の要望は、聞いたら全部入れるべきではないのですか

A. 聞くことと、全部入れることは別です。

現場の声は、「この作業は何の穴を埋めているか」を知るための最良の材料です。

ただし、新しい仕組みで穴が塞がれば不要になる要望を、仕様として固定しないでください。

聞いたうえで捨てる。それが正しい順番です。

Q5. 今のERPを入れ替えないと、手間は減らせませんか

A. 多くの場合、入れ替えずに減らせる手間があります。

発生源の整理、入力項目の見直し、AIによる読み取りと下書きは、今のERPのままでも始められます。

それでも構造的に解決できない場合に、入れ替えを検討する順番をおすすめします。

まとめ:仕組みを決めるのは製品ではなく、業務の決め方

  • ERPで起きる意味のない作業は3つの型:尻拭い/書類穴埋め人/タスクマスター
  • 尻拭いはAIと設計で消える。書類穴埋め人は半分消える。タスクマスターは経営者が決めないと消えない
  • 3つとも「足す」判断はあったのに「引く」場がなかった。人の問題ではなく場の問題
  • 消していい作業と、消してはいけない記録は、「やめたとき困るのは誰か」で切り分ける
  • 入力後を賢くする(④)だけでは、現場の手間は1回も減らない
  • 着手は消しやすい順ではなく決めごとから

締めが3日早くなっても、現場の表情が晴れないなら、足りないのは次の手段ではありません。

承認と報告を1つ減らす決めごとです。

今月の承認の一覧を、経営者の手元で1枚に並べるところから始めてください。

NetSuiteそのものについてはNetSuiteとはで解説しています。

もう少し詳しく知りたい方へ

作業の仕分けや、承認と報告の線引きを、一緒に考えるところからご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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