「生産性を上げる」と聞くと、「人を減らす」か「もっと働かせる」を思い浮かべる経営者は少なくありません。
実際に求められているのは、その逆です。
労働生産性とは、投入した労働量に対して、どれだけの付加価値を生み出したかを示す指標です。
式は「付加価値額÷労働投入量」。従業員1人あたり、または1時間あたりの成果を表します。
人を減らさずに上げる道は2つしかありません。
分子の付加価値を増やすか、分母に紛れ込んだムダを減らすかです。
では、新しいシステムを入れれば、分母のムダは減るのか。
入れただけでは、減りません。
差を分けるのは道具ではなく、その前に決める3つのこと、測る・捨てる・任せるです。
この記事で分かること
- 労働生産性の定義と計算式(架空の数字での計算例つき)
- 自社の数字の見方と、Excelで足りる段階・システムが要る段階
- 生産性が上がらない3つの失敗と避け方
- 最初の90日で「1業務・1KPI」から始める進め方
言葉の整理:付加価値は、会社が新しく生み出した価値です。売上から、外部から買った原材料や外注の費用を引いて求めます。
労働投入量は、仕事に使った人の量です。従業員数や労働時間で表します。
労働生産性の計算式
基本の式
労働生産性 = 付加価値額 ÷ 労働投入量
付加価値額 = 売上高 - 外部購入費用(原材料費・外注費など)
(出典:公益財団法人日本生産性本部、2026年9月確認)
計算の例(架空の数字です)
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10億円 | 10億円 |
| 外部購入費用 | 6億円 | 7億円 |
| 付加価値額 | 4億円 | 3億円 |
| 従業員数 | 50人 | 30人 |
| 1人あたりの労働生産性 | 800万円 | 1,000万円 |
売上は同じでも、1人あたりの生産性は200万円違います。
B社は外注を多く使うため付加価値額は小さい一方、少ない人数で回しています。
どちらが良いかは、外注の使い方や事業の形で決まります。
見るべきは、1回の数字ではありません。
同じ式で毎年くり返し測った変化です。
式のバリエーション
- 付加価値労働生産性(1時間あたり) = 付加価値額 ÷(労働者数×労働時間)
- 物的労働生産性 = 生産量 ÷ 労働時間
「1人1時間あたりの粗利」を測る指標に、人時生産性があります。
詳しくは人時生産性を上げるにはをご覧ください。
なぜ今、労働生産性なのか
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は、1995年をピークに減り続けています(出典:総務省「令和4年版 情報通信白書」、2026年9月確認)。
2050年には5,275万人と、2021年と比べて29.2%減る見込みです(同)。
式に戻すと、意味ははっきりします。
分母の労働投入量は、これ以上増やしにくい。
成長するには、1人ひとりが生む分子を大きくするしかありません。
優秀な人が、毎月の集計や転記に何日も使っている。
その時間こそ、経営が取り戻すべきものです。
中小企業の生産性の課題は、なぜ日本の中小企業は生産性が上がらないのかで扱っています。
自社の数字をどう見るか
数字を見る3つの視点
- 推移:去年より上がったか、下がったか
- 分解:分子(付加価値)と分母(労働投入量)のどちらが動いたか
- 部門の差:部門や事業ごとに、差が大きくないか
下がったときの打ち手は、どちらが動いたかで変わります。
分子なら、価格や商品の構成を見直す。
分母なら、業務のムダや手作業を見直す。
どちらが動いたかで打ち手を分けると、次のとおりです。
部門を並べるときは、経理・総務などの間接部門も入れます。
付加価値を直接生まないぶん、数字で語られにくい部門です。
それでも、集計や確認の手作業が多いほど、全社の分母を押し上げます。
見方は、間接部門は「コスト」か「資産」かで扱っています。
Excelで足りる段階と、システムが要る段階
| 段階 | 状態 | 向いている道具 |
|---|---|---|
| 年に1回、全社の数字を見る | 決算書と人数があれば計算できる | Excelで足りる |
| 部門別に毎月見る | 部門ごとの売上・外注費・労働時間を集める | Excelでも可能。集計の手間が大きい |
| 部門・事業別に、ほぼリアルタイムで見る | 売上・原価・工数が一つのデータにそろっている | ERPなどのシステムが要る |
毎月の集計に、担当者が何日もかけているなら、システムを考える段階です。
集計に使う時間が、そのまま分母を押し上げています。
生産性を上げる方法を比べる
| アプローチ | 効果が出るまで | 向いている会社 | 限界 |
|---|---|---|---|
| 個別ツールの導入 | 早い(数週間〜) | 特定の業務だけ直したい | 部門ごとにデータが分かれる |
| 業務の外部委託 | 中(数か月) | コア業務に集中したい | ノウハウが社内に残らない |
| 人材配置の見直し | 中〜長(数か月〜) | 人を生かしたい | 評価・配置の仕組みが要る |
| クラウドERPで統合 | 長(数か月〜) | 全社の生産性を底上げしたい | 導入と定着に伴走が要る |
クラウドERPにも幅があります。
会計・販売・在庫・プロジェクトを一つにまとめるならNetSuite、費用を抑えて小さく始めるならOdoo。
日本の帳票を標準のまま使いたいなら国産ERP、業務が独特ならAIを使ったスクラッチ開発が候補です。
業務の棚卸しがまだなら、「いまは入れない」も立派な選択です。
生産性が「上がらない」3つの失敗
失敗1:そもそも「測っていない」
起きること:打ち手を打っても効果が分からず、元のやり方に戻る。
原因:生産性を数字でつかんでいない。
部門ごとに基準がばらばらで、「忙しい=頑張っている」で評価している。
避け方:一つの基準で、続けて測ることから始めます。
全社の数字を同じ基準で見られる仕組みがあれば、議論の土台がそろいます。
失敗2:業務を「捨てていない」
起きること:自動化したのに、残業が減らない。
原因:誰も使わない帳票や「念のため」の作業を残したまま、システムに載せ替えた。
ムダを速くしただけで、分母が減っていない。
避け方:導入を機に、「本当に要る業務」と「惰性で続けている業務」を仕分けます。
社内だけでは決めにくい領域なので、外の目が効きます。
失敗3:人を「生かせていない」
起きること:優秀な人が定型業務に張り付き、特定の人に仕事が集中する。
原因:自動化で空いた時間を、どの仕事に回すかを決めていない。
避け方:自動化と同時に、「誰に、何を任せるか」を決めます。
人件費を生かす考え方は、人件費は「削る」ではなく「活かす」で扱っています。
3つの失敗は、裏返すとそのまま打ち手の順番になります。
測る、捨てる、任せる。
NetSuiteで生産性を上げる打ち手
NetSuiteは、会計・販売・在庫・プロジェクト管理などを一つで管理するクラウドERPです。
世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
全社のデータが一つになると、次の打ち手を取りやすくなります。
| 打ち手 | 中身 | 効く先 |
|---|---|---|
| 業務の可視化と標準化 | 部門間の流れを見える化し、ワークフロー機能で手順をそろえる | 分母(ムダな手順を減らす) |
| 定型業務の自動化 | 受発注・在庫・会計処理・レポート作成の手作業を減らす | 分母(作業時間を減らす) |
| リアルタイムの情報共有 | ダッシュボードで重要な指標をすぐ把握する | 分子(判断を速める) |
| 柔軟な働き方の支援 | クラウドで、場所や時間を問わず業務を進める | 分母(移動や待ちの時間を減らす) |
| データにもとづく判断 | 経営のデータをすぐ分析し、戦略に生かす | 分子(付加価値の高い施策を選ぶ) |
ワークフロー機能は、申請や承認などの流れを、決めた手順で自動的に進める仕組みです。
作り方は、NetSuiteの承認ワークフローで扱っています。

どの打ち手も、第4章の3つの失敗を避けてこそ効きます。
表の上から順に全部やる必要もありません。
読者の二つの立場
これから仕組みを選ぶ会社
道具より先に、測る単位と頻度を決めます。
「部門別の1人あたり付加価値を、毎月見る」。ここまで言えれば、道具の条件は自然に絞れます。
目標を中期の計画に落とす方法は、中期経営計画の策定・実行で扱っています。
いまERPを使っていて、生産性が上がらない会社
入れたのに上がらないなら、原因は道具より使い方にあることが多いものです。
導入前の業務をそのまま載せていないか。
システムの外に、Excelの集計や二重入力が残っていないか。
この2つに心当たりがあれば、まず「捨てる」からやり直します。
ベンチャーネットならこう見る
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、特定の製品に誘導しません。
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
生産性の相談で使う型は2つです。
型1:最初の90日は「1業務・1KPI」
全社の生産性を一度に上げようとすると、測る項目が増え、誰も見なくなります。
そこで、最短90日で1周目を回します。
対象は1つの業務、見る数字は1つのKPI(重要な業績指標)に絞ります。
- どの業務か:集計や転記に、毎月いちばん時間を取られている業務
- どの数字か:その業務の作業時間か、その部門の1人あたり付加価値
- 何を捨てるか:その業務の中で、惰性で続けている手順と帳票
1周目で数字が動けば、2周目は隣の業務へ広げます。
道具の選択は、この順番の最後です。
測る・捨てる・任せるが決まらないまま道具を入れると、ムダを速くするだけになります。
型2:守り→攻め→次へ
仕組みが定着した後の道のりは、3段で考えます。
守りは、業務が回る段階です。分母のムダが減り、毎月の集計が軽くなります。
攻めは、そろったデータで打つ段階です。売れ筋や在庫を分析し、分子を増やす手を選びます。
次へは、経営そのものが変わる段階です。KPIや管理会計で、部門ごとの生産性を見ながら判断します。
守りの段階で「生産性が上がった」と満足すると、そこで止まります。
分子が大きくなり始めるのは、攻めに入ってからです。
次に、作業時間そのものの測り方を知りたい方は、NetSuiteでの工数管理が参考になります。
今日できること|自社の労働生産性を計算する
1時間あれば、直近の決算書で計算できます。
| 項目 | 前期 | 今期 |
|---|---|---|
| 売上高 | ||
| 外部購入費用(原材料・外注など) | ||
| 付加価値額 | ||
| 従業員数 | ||
| 1人あたりの労働生産性 |
2期分を並べたら、動いた理由を分子と分母に分けて書きます。
あわせて、毎月の集計に何時間かかっているかも書き出してください。
その時間がいちばん長い業務が、90日の1周目の候補です。
よくある質問
Q1. 労働生産性と人時生産性は、何が違いますか
測る単位が違います。
労働生産性は「付加価値÷労働投入量」で測る総合的な指標です。
人時生産性は「1人1時間あたりの粗利」に絞った、現場に近い指標です。
Q2. ツールを導入すれば、労働生産性は上がりますか
導入だけでは上がりません。
非効率な業務を残したまま自動化しても、ムダが速くなるだけです。
業務の見直しとセットで、初めて効果が出ます。
Q3. 付加価値額はどう計算しますか
売上高から外部購入費用を引いて求めます。
外部購入費用は、原材料費や外注費など、外から買った費用です。
細かな範囲は社内で定義をそろえ、毎年同じ式で計算します。
Q4. 人手が足りない中小企業でも、取り組めますか
人手が足りないからこそ取り組む価値があります。
労働投入量を増やしにくい時代には、1人あたりの生産性を上げるしかありません。
全社で一度に始めず、1業務・1KPIに絞れば、少ない人数でも回せます。
Q5. Excelで測るのと、システムで測るのはどう違いますか
頻度と手間が違います。
年に1回の全社の計算ならExcelで足ります。
部門別に毎月見るなら、データが一つにそろうシステムのほうが手間は小さくなります。
Q6. 労働生産性が上がると、経営にどんな変化がありますか
利益率と人の使い方が変わります。
定型業務から離れた人が、付加価値の高い仕事に時間を使えるようになります。
従業員の満足度や、新しい取り組みの余地も生まれます。
まとめ
- 労働生産性は付加価値÷労働投入量で測る
- 同じ式でくり返し測り、分子と分母に分けて変化を見る
- 上がらない原因は、測っていない・捨てていない・生かせていないの3つ
- 始めるなら、最短90日で1業務・1KPIに絞った1周目から
- 道具の選択は、測る・捨てる・任せるを決めた後
人を減らすのでも、もっと働かせるのでもない。
まずは今日、決算書から自社の数字を1つ出してみてください。
もう少し詳しく知りたい方へ
「自社の生産性、どこから見直せばいいのか」を一緒に整理するところから、ご相談をお受けしています。

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