売上は伸びている。現場も頑張っている。それなのに、会社がなぜか前に進んでいる実感がない。
そんな感覚を持つ経営者の方は、少なくありません。
その正体は、もしかすると「会社の背骨」である基幹システムの古さにあるのかもしれません。
この記事では、DXが進まない本当の理由を、基幹システムの視点から解き明かします。そして、止まったDXをもう一度動かすための、現実的な進め方をお伝えします。
なぜ今、DXが「進まない」のか
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタルの力で会社の仕組みや事業のあり方そのものを変えていく取り組みです。
ツールを導入することがDXだ、と思われがちですが、それは入り口にすぎません。
なぜ今、これほどDXが語られるのでしょうか。
背景の一つに、経済産業省が「2025年の崖」として鳴らした警鐘があります。
古く複雑になった既存システム(レガシーシステム)を放置すると、企業の競争力に大きな影響が出る、という指摘です。
さらに、古いシステムを知る世代の退職も進んでいます。今は、基幹システムを見直すべき大事な節目にあります。
それでも、多くの会社でDXは思うように進んでいません。
この記事では、その理由を構造から整理し、どこから手をつければよいかを一緒に考えていきます。
DXが止まる会社に共通する「3つの誤解」
DXが止まる会社には、共通する考え方のクセがあります。ここでは、特に多い3つの誤解を整理します。
誤解①:DX=ツール導入だと思っている
新しいツールを入れれば、それでDXが進むと考えてしまうケースです。
しかし、紙をデジタルにするだけでは、業務のやり方そのものは変わりません。これはデジタル化であって、変革にはまだ届いていません。
誤解②:DXは情シスの仕事だと思っている
「システムの話だから、情シスに任せておけばよい」と考えてしまうケースです。
ところがDXは、部門の壁を越えて業務を見直す取り組みです。経営が関わらなければ、全社の意思決定は進みません。
誤解③:一気に完璧を目指せばいいと思っている
最初からすべてを完璧にしようとして、かえって動けなくなるケースです。
大きく作り込むほど、現場は混乱し、定着しません。なお、導入そのものでつまずく典型的な失敗は、別の記事(ERP導入はなぜ失敗するのか)でも詳しく整理しています。
DXが「止まる会社」と「進む会社」の分かれ目
DXが止まる会社と進む会社の違いは、性格や根性ではありません。基幹システムをどう位置づけているか、という構造の違いです。
| 観点 | DXが止まる会社 | DXが進む会社 |
|---|---|---|
| 基幹システムの位置づけ | 古い土台のまま放置 | 「経営を支えるデータ基盤」へ見直す |
| 目的 | ツール導入が目的になっている | 経営の何を変えるかが先にある |
| データ | 部門ごとに分断(サイロ化) | 全社で一元化し、すぐ見える |
| 進め方 | 一気に完璧を目指す | 小さく回して磨いていく |
| 主体 | 情シス任せ | 経営が関わる「経営プロジェクト」 |
どちらが正解、という単純な話ではありません。
ただ、分岐点はいつも「基幹システムをどう位置づけるか」にあります。ここを見直せるかどうかで、DXが進む会社と止まる会社に分かれていきます。
DX推進でつまずく「4つの失敗パターン」
DX推進が止まるのは、担当者の頑張りが足りないからではありません。多くの場合、つまずき方には決まった型があります。
ここでお伝えする4つの失敗パターンは、NetSuite導入の現場で繰り返し見られるものです。
これは、システムを売り込みたいから書くのではありません。同じところでつまずいてほしくないから、共有します。
ベンチャーネットが大切にしているのは、対等な関係で一緒に考える伴走です。失敗のリスクも、正直にお伝えします。
目的が「DXすること」になっている
よくある現象
- 「AIで何かできないか」という発想から入っている
- ツールを導入すること自体がゴールになっている
- 「何が、どれだけ良くなれば成功か」が曖昧なまま進む
なぜ失敗するか
DXは手段であって、目的ではありません。
目的が曖昧だと、本当に必要な機能を見極められません。
その結果、使わない機能に投資し、現場には「余計な仕事が増えた」とだけ受け取られます。
どう回避するか
最初に「経営の何を変えたいのか」を言葉にすることが出発点です。
たとえば「月次決算を早める」「在庫の状況をすぐ見えるようにする」など、測れる目標に置き換えます。
ベンチャーネットでは、この問いの整理から一緒に始めます。
古い基幹システムを放置したまま、上にツールを乗せる
基幹システムとは、受注・在庫・会計など、会社の根幹の業務を支える仕組みのことです。
よくある現象
- 部門ごとにデータが分かれ、つながっていない(サイロ化)
- 数字は、月を締めてみないと見えない
- Excelでの手作業や二重入力が、当たり前になっている
なぜ失敗するか
基幹システムは、いわば会社の背骨です。
その土台が古いまま新しいツールだけ足しても、効果は半減します。
気づかないうちに、見えないひずみがたまっていきます。
どう回避するか
背骨である基幹システムの見直しを、DXの出発点にします。
「今のやり方で、あと何年戦えるか」。この問いを、経営者と一緒に考えます。
現行業務をそのまま新システムに移植する
よくある現象
- 「今のやり方を変えたくない」という声が強い
- 属人化した手順を、そのまま再現しようとする
- 元のシステムの仕様書が残っていない
なぜ失敗するか
非効率なやり方や属人的な運用を、新しいシステムにそのまま持ち込んでしまいます。
「なぜこの機能が必要か」を誰も説明できないまま、作り込みだけが増えていきます。
結果として、新システムは前より複雑で使いにくくなります。これは、ブラックボックスの作り直しです。
どう回避するか
このタイミングで、「本当に必要な業務」と「惰性で続けている業務」を仕分けます。
標準の業務に自社を合わせていく、という発想への転換が鍵になります。
全部を一度に変える必要はありません。その判断に、ベンチャーネットが伴走します。
「本番稼働日」をゴールにしてしまう
よくある現象
- 切替後の計画が、用意されていない
- 「切戻し(元に戻す備え)」を、縁起が悪いと避ける
- 研修や定着に、予算も時間も割かない
なぜ失敗するか
本当のゴールは、稼働した日ではありません。現場になじみ、業務が正常に回り始めた日です。
受注・出荷・会計のどこかが止まれば、影響は会社全体に広がります。
定着しないまま進めると、「前のほうが早い」とExcelに逆戻りしてしまいます。
どう回避するか
並行稼働(新旧を一定期間併用して照合する進め方)と、切戻しの条件を、最初から決めておきます。
誰が、どの状態になったら戻すのか。ここを設計できている会社ほど、落ち着いて本番に臨めます。
そして、誰が何を担うのかという、人の役割設計も欠かせません。
4つに共通するのは、ある一つの認識のズレです。
それは、DXを「ITの仕事」として扱ってしまうこと。
本当は、業務を見直し、部門の壁を取り払い、会社の情報を一つにつなぐ取り組みです。だからこそ、経営の関与が欠かせません。
基幹システム刷新を「止めずに」進める現実解
基幹システムの入れ替えで一番怖いのは、切替の瞬間に業務が止まることです。
受注も、出荷も、請求も、どこかが止まれば会社全体に影響します。だからこそ、「止めない」ための備えを先に設計します。
ここでは、現場で重要になる3つの備えを整理します。
① 並行稼働と切戻しをセットで用意する
並行稼働は、新旧のシステムを一定期間あわせて使い、件数や金額を照合する進め方です。
ここで差異を早めに見つけられます。あわせて、どうなったら元に戻すかという切戻しの条件も決めておきます。
② 周辺システムとの役割分担を整理する
販売管理やEC、物流、決済など、周辺の仕組みとの接続も重要です。
何を一つにまとめ、何を連携でつなぐのか。ここを曖昧にすると、導入後に「思ったよりつながらない」が起こります。
③ 人の役割を設計する
専門知識も必要ですが、それ以上に大切なのが、誰が何を担うのかを明確にすることです。
基幹システムやERP(会社全体の業務を一つにまとめて見える化する仕組み)の各論は、別の記事(基幹システムとERPの違い)でも整理しています。
そして、すべてを一度に変える必要はありません。会計や販売管理など、軸になる業務から段階的に始めるのが現実的です。
あなたの会社は、どこから始めるべきか
DXの進め方に、唯一の正解はありません。まず、自社の課題が「モノ」なのか「ヒト」なのかを整理することから始めます。
NetSuiteのようなクラウドERP(インターネット経由で使うERP)と特に相性が良いのは、次の2タイプです。
- 「モノの管理」が中心の会社(販売・在庫の管理が課題)
- 「ヒトの管理」が中心の会社(プロジェクトの管理が課題)
一方で、「まず財務会計を完璧にしたい」という場合は、慎重な検討が必要です。
日本特有の会計の要件にはハードルがあり、財務をフェーズ2以降に回すことをお勧めする場合もあります。
焦らなくて大丈夫です。自社のボトルネックがどこにあるかを整理することから、一緒に始めましょう。
なお、数字を経営判断に生かすデータ活用を起点にDXを考えたい方は、別の記事(中小企業のデータドリブン経営)もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 中小企業でも、基幹システムの刷新は現実的ですか?
はい、現実的です。大切なのは規模よりも、進め方です。
軸になる業務から小さく始め、段階的に広げていけば、無理なく進められます。一気にすべてを変えようとしないことが、成功への近道です。
Q2. 移行中に業務が止まるのが不安です。どう備えればよいですか?
並行稼働と切戻しを、最初から計画に入れることで備えられます。
新旧を一定期間あわせて使い、差異を早めに見つけます。どうなったら元に戻すかも決めておけば、落ち着いて本番に臨めます。
Q3. まず、何から始めればよいですか?
自社の課題が「モノの管理」か「ヒトの管理」か、どこにあるかを整理することから始めます。
ボトルネックが見えると、最初に手をつけるべき業務が決まります。全体像の整理から、ベンチャーネットが一緒に進めます。
Q4. DXがうまくいくと、経営はどう変わりますか?
数字がすぐに見えるようになり、意思決定のスピードが上がります。
部門ごとに分かれていた情報が一つにつながると、現場の状況を踏まえた判断がしやすくなります。これは、単なる業務改善を超えた変化です。
まとめ:DXは「IT」ではなく「経営」の話
ここまで見てきたように、DXが止まる理由の多くは、技術そのものではありません。
DXを「ITの仕事」として捉えてしまうこと。そこに、根本の原因があります。
基幹システムの刷新は、単なる入れ替えではありません。これからの経営の土台を、どうつくるかを見直す機会です。
そして、完璧を目指して立ち止まるより、まず回しながら磨いていく。その姿勢が、会社を前に進めます。
ベンチャーネットは、システムを売る存在ではなく、経営の土台づくりに伴走するパートナーでありたいと考えています。
「うちのDXは、どこから手をつければいいだろう」。そう感じた方は、ぜひ一度、ご相談ください。一緒に、御社にとっての次の一歩を考えさせてください。
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