経営ダッシュボードの作り方|KPI設計からNetSuiteでの実装まで

「ダッシュボードを作れば、数字で経営できるようになるのか」

システムの相談で、経営者からよく出る問いです。

答えは、画面だけでは変わらない、です。

売上も粗利も毎月集計しているのに、次の打ち手が見えない会社は少なくありません。

経営ダッシュボードとは、経営判断に要る指標を1つの画面にまとめ、次の打ち手を決めるための道具です。

NetSuiteのようなERP(基幹業務を1つにまとめる仕組み)では、この画面が基幹のデータとつながった形で組み込まれています。

使われる画面には、作り込みより先に決まっていることが3つあります。

  1. その画面で、何を判断したいか
  2. 誰が、いつ見るか
  3. 数字が動いたとき、誰が何をするか

では、この3つをどう決め、どの道具で形にするのか。

KPIの絞り方からNetSuiteでの配布まで、順に追います。

目次

この記事で分かること

  • 経営ダッシュボードを「見える化・わかる化・儲かる化」の3段階で設計する考え方
  • KPIを「ゴール」ではなく「行動指標」として決める方法
  • 誰が・いつ・何を見るかで画面を分ける方法
  • NetSuiteのダッシュボードの機能と、実装の手順
  • Excelで足りる段階と、システムが要る段階の見分け方

なぜ今、経営ダッシュボードが必要なのか

販売の実績、原価、在庫、人件費、キャッシュフロー。

数字はそろっているのに、経営判断にうまく活かせていない。

多くの会社に共通する課題です。

「数字はあるのに動けない」理由

月次決算の資料を受け取り、目を通し、会議で読み上げる。

それでも打ち手が決まらないのは、数字の見せ方と議論へのつなぎ方の設計が抜けているからです。

経営企画やIT部門に資料づくりを任せ、出てきた資料を会議で眺める。

これだけでは、数字が判断の起点になりません。

データドリブン経営の考え方は、データドリブン経営とはで扱っています。

ダッシュボードは会議の対話を変える

よくできたダッシュボードは、経営会議の対話そのものを変えます。

数字を眺めるだけの会議から、数字を起点に「なぜ」「次にどうするか」を話す会議へ。

経営者と部門長が同じ画面を見ながら、仮説を立て、打ち手を決めます。

経営ダッシュボードの3段階|見える化・わかる化・儲かる化

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、経営ダッシュボードを3つの段階で考えます。

段階ごとに、画面に求めるものと、経営者の関わり方が変わります。

経営ダッシュボードの3段階 見える化はデータを集めて並べる段階、わかる化は数字の意味を読み解く段階、儲かる化は数字を行動に変える段階。下に行くほど経営者の関わりが深くなる。 経営ダッシュボードの3段階 見える化|集めて並べる 経営者は資料を受け取る わかる化|意味を読み解く 経営者は数字の背景を質問する 儲かる化|行動に変える 経営者は数字をもとに打ち手を決める
経営ダッシュボードの3段階:見える化→わかる化→儲かる化

第1段階「見える化」:データを集めて並べる

売上・コスト・在庫などの指標を、1つの画面で一覧できる状態です。

各部門のExcelや別々のシステムの数字を集め、常に最新の数字が見えるようにします。

ただし、見える化は判断のスタート地点にすぎません。

数字が並んでいるだけでは、「だから何をすべきか」は見えてきません。

第2段階「わかる化」:数字の意味を読み解く

「なぜこの数字になっているか」を説明できる状態です。

売上が前月より10%下がったとします。

原因は主力商品の欠品か、特定の顧客の取引の停止か、新製品の立ち上がりの遅れか。

それを画面の上でたどれる状態です。

そのために、指標と指標のつながりと、前年・前月・計画との比較の軸を画面に組み込みます。

第3段階「儲かる化」:数字を行動に変える

画面を見れば、「次に何をするか」が会議で決まる状態です。

「主力商品の在庫を厚くする」「営業を既存顧客への提案に集中させる」。

こうした行動が、数字を見ながらその場で決まります。

3段階の比較

観点見える化わかる化儲かる化
典型的な状態売上・コスト・在庫が一覧できる「なぜこの数字か」を説明できる「次に何をするか」が会議で決まる
使う指標の例売上高、粗利率、在庫金額前年比、計画比、要因の分解行動のKPI、判断の基準
必要な仕組みデータの一元化指標のつながりと比較の軸行動への落とし込みと運用の設計
AIとの親和性中。集まったデータの要約を任せられる高。要因の候補を挙げさせやすい高。基準があれば知らせや提案を任せやすい

自社の段階を見分ける3つの問い

問い「いいえ」なら「はい」なら
主な数字が、1つの画面か資料で一覧できるか見える化から始める次の問いへ
数字が動いた理由を、会議の場で説明できるかわかる化(比較の軸と内訳)を足す次の問いへ
会議で、数字をもとに次の行動が決まっているか儲かる化(行動のルール)を足す3段階を回せている

多くの会社は、1つ目か2つ目の問いで止まります。

止まった段階の仕組みを足すことが、次の一歩です。

KPIの設計|何を測ればよいか

画面の中身を決める土台は、KPIの設計です。

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、目標への進み具合を測る指標を指します。

KGIから逆算してKPIを決める

  • KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標):最終的に到達したい結果の指標。売上・利益など
  • KPI:KGIに到達するための行動の指標。日々の仕事で動かせる数字

売上や利益はKGI(ゴール)であってKPIではないという考え方があります。

「売上10億円」をKPIにすると、どう動けば売上が上がるかが曖昧なまま、数字を追うだけになります。

画面を開いて数字を眺め、それで終わる状態です。

KPIは、新規の商談数、既存顧客への提案数、製造ラインの稼働率、サポートの対応時間など、現場が日々動かせる数字に置きます。

KPIの選び方は、KPIマネジメントとはで詳しく扱っています。

経営者が見る指標と、現場が見る指標を分ける

見る人指標の数の目安中身
経営者5〜7個KGIと、全社の主要なKPI。事業全体の健康状態と次の打ち手を判断する
部門長担当領域に絞る部門のKPIの詳細。前月比・計画比・部門の比較
現場1〜3個日々の行動につながるKPI

同じ画面を全員で使うと、経営者には情報が多すぎ、現場には抽象的すぎるというすれ違いが起きます。

見る人ごとに指標を分ければ、それぞれの立場で判断が回ります。

KPI設計でやってはいけない3つのこと

  1. ゴールをそのままKPIにする:行動が曖昧になる。ゴールから逆算して行動の数字に落とす
  2. 現場のKPIを4つ以上に広げる:集中が分散し、どれも改善できなくなる
  3. 前年比だけを見る:便利だが、「次にどう動かすか」につながりにくい。参考の指標として持つ

管理会計の基本は、管理会計と財務会計の違いで扱っています。

画面の設計|誰が・いつ・何を見るか

同じKPIでも、誰が、いつ、どんな場面で見るかで、よい見せ方が変わります。

見る人ごとに画面を分ける

画面見る人見る頻度載せるもの
経営者用経営者・役員毎日〜週1回5〜7個の主要な指標を1画面に
部門長用部門長毎日担当領域の詳細。前月比・計画比・部門の比較
現場用担当者毎日行動につながる1〜3個のKPI

経営者が毎朝見る画面の決め方は、NetSuiteダッシュボード|経営者が毎朝見る5つの画面の決め方で扱っています。

1つの画面に詰め込まない

経営者用の画面は、詰め込まないことから設計します。

  • 画面を開いてまず目に入る場所に、いちばん大切な指標を大きく置く
  • 詳しい指標は、必要なときに開いて内訳まで見る
  • 「迷わず目に入る」と「必要なときに深く見られる」を両立させる

経営者用の画面の例(架空の卸売業)

架空の卸売業の会社で、経営者用の画面を7つの指標で作った例です。

置く場所・指標見せ方比較の軸動いたら
上段:今月の売上の見込みメーター月の計画計画の9割を下回ったら営業部長と話す
上段:粗利率メーター前年同月2ポイント下がったら商品別の原価を見る
上段:現預金の残高数字3か月後の支払の予定支払の予定を下回りそうなら資金の手当てを決める
中段:受注の残高推移のグラフ前月・前年2か月続けて減ったら営業の重点を見直す
中段:在庫の金額推移のグラフ前月売上の伸びより速く増えたら発注を見直す
下段:売掛金の滞留数字前月期日を過ぎた額が増えたら回収の担当を決める
下段:新規の商談数数字週の目標目標の8割を下回ったら訪問先を見直す

指標と基準の値は、どれも説明用に作った架空のものです。

見てほしいのは、どの指標にも「動いたら」の列が埋まっていることです。

会議で見る順番を決める

画面ができたら、経営会議で見る順番も決めておきます。

  1. 上段の3つに目を通す(1分)
  2. 基準を外れた指標だけ、中段・下段で理由を追う
  3. 理由が分かったら、誰が何をするかを決める
  4. 前回決めた行動の結果を振り返る
経営会議で画面を見る順番 上段の3つに1分で目を通し、基準を外れた指標だけ中段・下段で理由を追い、誰が何をするかを決め、前回決めた行動の結果を振り返る。 経営会議で画面を見る順番1. 上段の3つに目を通す1分で済ませる2. 基準を外れた指標だけ中段・下段で理由を追う3. 誰が何をするかを決める理由が分かったら4. 前回の行動を振り返る決めたことの結果を見る順番が決まれば、読み上げで終わらない
経営会議で画面を見る順番

順番が決まっていれば、会議は数字の読み上げで終わりません。

財務の指標の選び方は、財務分析指標とはが参考になります。

NetSuiteでのダッシュボードの実装

NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

ERPの中に、ダッシュボードが組み込まれています。

NetSuiteのダッシュボードの仕組み

Oracleのヘルプでは、ダッシュボードを次のように説明しています(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

  • ダッシュボードは、ポートレット(データを表示する小さな窓)の集まり
  • 利用者のロール(役割ごとの画面と権限の設定)によって、見える画面が変わる
  • KPI、スコアカード、トレンドグラフ、ワークブックのグラフ、レポートの要約などを表示できる
  • 管理者は画面を整え、利用者のグループに配布して、同じ画面を見せられる

主な機能と、使いどころ

機能できること(公式ヘルプより)使いどころAIとの親和性
KPI75以上の標準KPIを表示。別の期間と比べ、増減の割合を自動で出す。しきい値で強調する経営者用の主要な指標高い。基準が数字で決まり、知らせの自動化に向く
カスタムKPI保存検索にもとづいて独自のKPIを作る。1つのKPIポートレットに最大10個自社の行動のKPI高い。定義が保存検索として残る
KPIメーター半円のメーターで比較・期間・しきい値を示す。1つのダッシュボードに最大3ついちばん大切な1〜3個の指標中
トレンドグラフ選んだ期間の推移を示す。1つのグラフに最大3つのKPI。ポートレットは最大5つ前月比・前年比の推移中
KPIスコアカード複数のKPIを複数の期間で比べる。Excelのような計算式で比率や差を出す部門長用の比較の表高い。比較の結果をAIに要約させやすい

保存検索は、条件を保存して何度でも同じ抽出ができるNetSuiteの検索の機能です。

使い方は、NetSuite保存検索の作り方で扱っています。

上限の数は、「詰め込まない」設計の目安にもなります。

メーターが3つまでなら、何を3つに選ぶかを決めざるを得ません。

ERPの中にダッシュボードがあることの意味

ERPの中にあると、基幹のデータと画面が分かれません。

Excelで集めて転記する手間が減り、取引の入力にあわせて数字が更新されます。

一方で、NetSuiteの外にあるデータ(広告・ECのアクセスなど)を並べるには、連携の設計が別に要ります。

外部のBIツールとの比べ方は、NetSuite×BIツール比較で扱っています。

実装の段取り(4ステップ)

  1. データの整備:画面に出したいデータが、NetSuiteの中にそろっているかを見る。足りなければ入力の手順や連携を決める
  2. KPIの定義:第3章の考え方で、見る人ごとの指標を決める
  3. 画面の構築:KPI・メーター・トレンドグラフ・カスタムKPIを組み合わせ、ロールごとの画面を作る
  4. 配布と運用:画面をロールごとに配り、「いつ誰が見て、動いたら何をするか」を決める

配布は、Publish Dashboards(ダッシュボードの配布)の権限を持つ人が行います。

配布できるのは、画面を整えたのと同じセンター(ロールごとの画面のまとまり)のロールです(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

経営者用と部門長用でセンターが違う場合は、それぞれのロールで画面を整えます。

画面の数字を、AIに読ませる

画面の数字を生成AIに読ませ、要約や要因の候補を出させる使い方も広がっています。

NetSuiteには、外部のAIとつなぐAI Connector Serviceがあります。

MCP(AIが外部のシステムとやり取りするための共通の決まり)に対応したAIから、自然な言葉でデータを問い合わせ、レポートや保存検索を実行できます。

Oracleのヘルプでは、Claude ProとChatGPTに対応し、この機能自体は有料ではないと説明されています。

AI側は有料の契約が要る場合があります(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

AIは、つなぐときに使うロールの権限の範囲でデータを扱います。

管理者のロールは使えません(出典:同上)。

経営者用のロールで見せる範囲を決めれば、それがAIに任せる範囲にもなります。

詳しくは、NetSuite AI Connector Service(MCP)とはで扱っています。

判断の物差し|Excelで足りる段階と、システムが要る段階

経営ダッシュボードは、必ずしもERPで作る必要はありません。

手段ごとの向き・不向き

手段向いている会社注意点
Excel・スプレッドシート事業が1つ。指標が少なく、週1回の更新で間に合う集計の担当者に頼る。全社の統合は難しい
会計ソフト+BIツールいまのシステムは変えず、見える化だけ足したいデータをつなぐ設計と保守が要る
Odoo・国産ERP小さく始めたい、国内の帳票を重視するダッシュボードの自由度は製品で違う
AIスクラッチ開発見たい指標が独特で、既製の画面では合わない作った後の保守の体制が要る
NetSuite販売・在庫・会計を1つのデータで見たい。事業や拠点が複数NetSuiteの外のデータは連携が要る

いまは入れない、という判断

次に当てはまるなら、まずはExcelで画面を作り、運用を試すのが向いています。

  • 経営者が見たい指標が、まだ決まっていない
  • 数字の定義が、部門でそろっていない
  • 月次の締めが遅く、そもそも数字が出るのが遅い

この状態でシステムを入れても、画面は作れても使われにくくなります。

いまは入れないのも、正しい判断です。

システムを検討するサイン

  • 集計の手作業に、毎月数日かかっている
  • 担当者が休むと、会議の資料が出ない
  • 部門や拠点が増え、Excelの統合が追いつかない

Excelで試す段階と、システムを検討する段階を図にすると、次のとおりです。

Excelで試す段階と、システムを検討する段階 見たい指標が決まっていない、数字の定義がそろっていない、締めが遅いなら、いまは入れずにExcelで試す。集計に毎月数日かかる、担当者が休むと資料が出ない、Excelの統合が追いつかないなら、システムを検討する。 Excelで試すか、システムを検討するかいまは入れない|まずExcelで試す経営者が見たい指標が、まだ決まっていない数字の定義が、部門でそろっていない月次の締めが遅く、数字が出るのが遅いシステムを検討するサイン集計の手作業に、毎月数日かかっている担当者が休むと、会議の資料が出ない部門や拠点が増え、Excel統合が追いつかないダッシュボードだけでなく、基幹業務の見直しとあわせて判断する
Excelで試す段階と、システムを検討する段階

NetSuiteの価格は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。

ダッシュボードだけを目的に入れるより、基幹業務の見直しとあわせて判断するものです。

Excelから移るタイミングは、ExcelからNetSuiteへ移行すべきタイミングで扱っています。

読者の二つの立場

これからダッシュボードを作る会社

最初の1か月は、道具を決めずに次の3つを進めます。

  1. 経営者が判断したいことを、3つ書き出す
  2. その判断に要る指標を、5〜7個に絞る
  3. Excelで仮の画面を作り、経営会議で2〜3回使ってみる

使ってみると、「要らなかった指標」と「足りなかった比較の軸」が見えてきます。

道具を選ぶのは、その後です。

いまダッシュボードがあるが、使われていない会社

ERPやBIの画面があるのに使われていないなら、次の4点を見直します。

  1. 経営者用の画面に、指標がいくつ並んでいるか(7個を超えていないか)
  2. 数字の更新が、手作業の集計に頼っていないか
  3. 会議で、その画面を開いているか
  4. 数字が動いたとき、誰が何をするか決まっているか

1・3・4は運用の見直しで直せます。

2が原因なら、データのつなぎ方から見直します。

基幹システムの保守の期限が近いなら、乗り換えと一緒に画面を設計し直す機会です。

判断の考え方は、基幹システムは「更新」か「乗り換え」かで扱っています。

ダッシュボードが使われない3つの失敗

3つの失敗と避け方を図にすると、次のとおりです。

ダッシュボードが使われない3つの失敗と避け方 作る人と見る人が分かれる、指標を詰め込みすぎる、データが古く定義がそろっていない。いちばん大きいのは、経営者が何を判断したいかを示さないまま作る失敗。 ダッシュボードが使われない3つの失敗1作る人と見る人が分かれる避け方:経営者と一緒に、何を判断したいかから始める2指標を詰め込みすぎる避け方:経営者が見る指標を5〜7個に絞り、ほかは必要なときに開く別の画面へ3データが古い、定義がそろわない避け方:手作業を挟まずに画面までつなぎ、指標ごとの定義を1行で書く
ダッシュボードが使われない3つの失敗と避け方

失敗1:作る人と見る人が分かれ、経営者が見ない

起きること:経営企画やIT部門が画面を作り、経営層に渡す。経営者は「この指標は何のためだったか」と感じ、月次の会議でしか見ない。結局、Excelの資料に戻る。

原因:ダッシュボードを「IT案件」として扱い、経営層が「何を判断したいか」を示さないまま、あったら便利な指標を寄せ集めている。

避け方:設計の最初に、経営者と一緒に「何を判断したいか」を言葉にします。

何を見たいかではなく、何を判断したいかから始める。

経営者用の画面を現場と分け、週に1回は経営者が自分で開く運用も決めます。

失敗2:指標を詰め込みすぎる

起きること:画面に20〜30個の指標が並ぶ。開いてもどこを見ればよいか分からず、見飛ばしてしまう。

原因:関係者の要望を聞くほど指標が増え、「捨てる」判断ができない。「全部並べることが見える化だ」という誤解もある。

避け方:最初に「捨てる」判断をします。

KGIから逆算し、経営者が見る指標を5〜7個に絞ります。

それ以外は、必要なときに開く別の画面に置きます。

失敗3:データが古い、定義がそろっていない

起きること:画面を開くと先月の数字しか出ていない。部門ごとにExcelで集めてから流し込むため、月初の数日は数字が古い。

原因:基幹システムと画面の間に、手作業の集計と転記が挟まっている。

部門ごとに数字の定義が違うことも、判断を狂わせます。

「売上」が受注の時点か出荷の時点かで、同じ月でも数字は変わります。

避け方:データの源である基幹システムから画面までを、手作業を挟まずにつなぐ設計にします。

ERPの中の画面なら転記は要りません。

外部のBIを使う場合も、自動でデータを取り込む設計にします。

指標ごとに「どの時点の、どの数字か」を1行で定義し、画面の近くに書いておきます。

ベンチャーネットならこう見る|1業務・1KPIで回す90日

ベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場をとります。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

ダッシュボードの相談では、画面の話の前に次の3つを伺います。

  1. 経営者が、画面を見て判断したいことは何か
  2. その判断に要る数字は、いま何日遅れで出ているか
  3. 数字が動いたとき、誰が何をするか決まっているか

型1:最短90日で、1業務・1KPIの1周目

最初から全社の画面を作ろうとすると、指標の議論だけで数か月が過ぎます。

ベンチャーネットは、1つの業務と1つのKPIに絞った1周目を、最短90日で回す形をとります。

  • 絞る:判断したいことのうち、いちばん困っているものを1つ選ぶ
  • つなぐ:そのKPIの数字が、手作業を挟まずに画面に出るようにする
  • 回す:会議で見て、動いたら誰が何をするかを決め、結果を振り返る

1周目で「見える化→わかる化→儲かる化」を一度通しておけば、2つ目のKPIも同じ手順で広げられます。

最初に作り込むのは、画面ではなく、この一巡の型です。

型2:現場の勘とAIの提案を、同じ条件で比べる

画面ができると、生成AIに数字の変化を要約させ、打ち手を提案させる使い方が見えてきます。

そのとき、AIの提案をそのまま採るかどうかで迷う会社は少なくありません。

ベンチャーネットは、現場の勘とAIの提案を、同じ期間・同じ指標で比べる形を勧めています。

どちらが当たったかを数字で振り返れば、AIに任せる範囲を自社の実績で決められます。

その前提は、指標の定義と判断の基準が決まっていることです。

今日できること|1時間で「判断の棚卸し」をする

直近3回の経営会議を思い出し、次の表を埋めてみてください。

会議で決めたこと使った数字その数字はどこから来たか数字が出るまでの日数
(例)A商品の追加の発注A商品の在庫と受注在庫のExcel、販売管理5日

埋めたら、次の3つを数えます。

  1. 決めたことに使った数字は、全部でいくつあったか
  2. 数字が出るまで、いちばん時間がかかったのはどれか
  3. 数字がなくて決められなかったことはあったか

1の数字が、経営者用の画面に載せる指標の候補です。

2と3が、仕組みで解くべき課題です。

よくある質問

Q1. ダッシュボードはExcelでもよいのでは

指標が少なく事業が1つならExcelでも作れます。

全社の統合、数字の鮮度、担当者に頼らないことの3つでは限界があります。

経営者がいつでも最新の数字を見たい段階では、基幹システムと一体の画面が現実的です。

事業が複数になり、Excelの統合が追いつかないなら、規模によらず整える価値があります。

Q2. いくつくらいの指標を置けばよいですか

経営者用は5〜7個で現場のKPIは1〜3個が目安です。

指標を増やすほど、集中が分散します。

それ以外の参考の指標は、必要なときに開く別の画面に置きます。

Q3. 導入から定着まで、どのくらいかかりますか

1業務・1KPIに絞れば最短90日で1周目を回せます。

ベンチャーネットは、最初の1周を1つの業務と1つのKPIに絞って進めます(第9章)。

全社の画面に広げる期間は、基幹システムのデータの整い方で変わります。

経営者が見る習慣が定着するまでは、数か月の運用を見込みます。

Q4. ダッシュボードはどのくらいの頻度で見ればよいですか

経営者は少なくとも週1回が目安です。

月次の会議でしか見ないと、異変への対応が遅れます。

1分で目を通せるよう、見る指標を絞っておきます。

Q5. 売上や利益をKPIにするのは間違いですか

売上や利益はKPIよりKGIに向いています。

売上をKPIにすると、どう動けば上がるかが曖昧になります。

KPIは、新規の商談数や既存顧客への提案数のように、日々の行動で動かせる数字に置きます。

Q6. NetSuiteのダッシュボードで、NetSuiteの外のデータも見られますか

外のデータを並べるには連携の設計が要ります。

NetSuiteの中のデータは、そのまま画面に出せます。

広告やECのアクセスなど外のデータも並べたい場合は、取り込むか、外部のBIツールと組み合わせます(第5章5-3)。

Q7. 経営ダッシュボードの数字をAIに説明させることはできますか

できますが指標の定義と権限を先に決めておきます。

NetSuiteのAI Connector Serviceを使うと、対応するAIから自然な言葉でデータを問い合わせられます。

AIはつなぐロールの権限の範囲で動くため、見せる範囲を先に決めます(第5章5-5)。

指標の定義があいまいなままでは、AIの説明もあいまいになります。

まとめ|ダッシュボードは経営の対話を変える道具

  • 経営ダッシュボードは、見える化→わかる化→儲かる化の3段階で考える
  • 画面より先に、何を判断したいかを決める
  • KPIは行動の数字。経営者用は5〜7個、現場は1〜3個に絞る
  • 使われない原因は、分断・詰め込み・古いデータの3つ
  • NetSuiteでは、KPI・メーター・トレンドグラフ・カスタムKPIをロールごとに配布できる
  • 最初は1業務・1KPIに絞り、最短90日で1周目を回す

ダッシュボードを作れば数字で経営できるのか。

画面が変えるのは、会議で何を決めるかが決まっている会社だけです。

まず、次の会議で何を決めたいかを書き出してください。

もう少し詳しく知りたい方へ

判断したいことの整理や、経営者用の指標の絞り込みから、ご相談をお受けしています。

Excelで足りる段階であれば、そうお伝えします。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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