プロセスマイニングとは?ヒアリングでは見えない業務の実態を、データで掴む方法

「業務を改善したいが、どこから手をつければいいか分からない」

中堅・中小企業の経営者から、よく聞く言葉です。

その背景には、ある共通点があります。“現場が思っている業務”と“実際に動いている業務”が、ズレているのです。

ベテランに聞いても、出てくるのは「いつものやり方」。でも実際の処理には、隠れた手戻りや例外がたくさん潜んでいます。

この「実際の業務の流れ」を、人の記憶や勘ではなく、データから客観的に見える化する手法。それが、プロセスマイニングです。

ただし、ひとつだけ先にお伝えします。“見える化”は、ゴールではなくスタートです。見えた先に何をするかで、成果は大きく変わります。

この記事で分かること

  • プロセスマイニングとは何か、従来の業務可視化と何が違うのか
  • 中堅・中小企業にとっての、現実的な使いどころ
  • 業務の見える化でよくある失敗と、その避け方
  • NetSuiteなどのERP導入の“前段”で、どう活かせるか
目次

プロセスマイニングとは?

プロセスマイニングとは、システムに残る記録(ログ)から、実際の業務の流れを可視化・分析する手法です。人へのヒアリングではなく、“実際のデータ”を出発点にするのが特徴です。

ひとことでいうと

プロセスマイニング(Process Mining)とは、業務システムに蓄積されたイベントログ(「申請」「承認」などの操作記録)を読み取る技術です。これにより、業務プロセスを自動的に可視化できます。

「誰が・いつ・どの順番で処理したか」がデータとして残っているため、実際の業務の流れを、そのまま図として描き出せます。

従来の「ヒアリング型」可視化との違い

これまで、業務の見える化はヒアリングや観察で行うのが一般的でした。担当者に話を聞き、マニュアルを読み、フロー図を描く——という方法です。

この方法は、システム化されていない業務もカバーできる利点があります。一方で、説明する人の主観や記憶に左右され、抜けや偏りが出やすいという弱点もあります。

プロセスマイニングは、実際のログという“事実”から業務を描きます。そのため、ヒアリングでは見えにくい手戻りや例外も、客観的に浮かび上がります。

何が見えるのか

具体的には、次のようなことが分かります。

  • ボトルネック:どの工程で処理が滞っているか(ボトルネック=業務の流れが詰まる箇所)
  • 手戻り・例外:標準とは違う、回り道や差し戻しの発生
  • ばらつき:同じ業務でも、担当や案件によって流れが違っていないか

つまり、想像や説明の中の業務ではなく、実際に動いている現状の業務(As-Is=現状のありのままの姿)が見えるのです。

なぜ今、プロセスマイニングが注目されるのか

DXや業務改革が広がるなかで、その“出発点”としてプロセスマイニングへの関心が高まっています。

業務改善でも、ERP導入でも、最初にやるべきは「現状を正しく把握すること」です。ここが曖昧なまま進めると、的外れな改善や、使われないシステムにつながります。

ところが、従来の現状把握はヒアリング中心で、多くの時間と手間がかかりました。関係者に話を聞き、書類を集め、フロー図に起こす——この作業だけで数週間かかることも珍しくありません。

プロセスマイニングは、この現状把握を、データから素早く・客観的に行えるようにします。人手に頼っていた“業務の健康診断”を、効率よく進められる。そこに注目が集まっているのです。

ヒアリング型 vs プロセスマイニング型(手法の比較)

どちらが優れているかではなく、目的と状況で使い分けるのが現実的です。

比較軸従来のヒアリング・観察型プロセスマイニング(ログ型)
何を見るか関係者の説明・記憶(主観)実際の操作・処理ログ(実態)
客観性・網羅性主観的で抜けが出やすい客観的・網羅的で、例外や逸脱も見える
必要な前提システム化されていない業務もカバー可ログのある(システム化された)業務に限る
工数・スピードヒアリング工数が大きく時間がかかる大量データを短時間で可視化できる
コスト人手が中心ツールによっては費用が高くなる
向くケース小規模・ログがない業務・関係者が少ない取引量が多く、ログが豊富な基幹業務

両者は、組み合わせると力を発揮します。中堅・中小企業では、まずログの取れる基幹業務から実態を見て、足りない部分はヒアリングで補う——この進め方が現実的です。

プロセスマイニングでできること・メリット

プロセスマイニングの価値は、「業務の実態が、数字と図で分かる」ことにあります。主に3つのメリットがあります。

1. 改善すべき業務が、特定できる

どの工程に時間がかかり、どこで手戻りが起きているかが見えます。「なんとなく非効率」だった部分が、具体的な改善対象になります。

2. 隠れたボトルネックや例外が、見つかる

担当者も気づいていなかった回り道や、一部の案件だけで起きる例外。こうした“見えにくい問題”を、データが教えてくれます。

3. 改善の効果を、検証できる

施策の前後を比べることで、「本当に良くなったか」を確認できます。思い込みではなく、事実で改善を回せます。

ただし、ここで注意が必要です。これらはあくまで「見える」だけ。見えた事実をどう活かすかで、成果は大きく変わります。

次の章では、この“見える化”でつまずきやすい、4つの失敗パターンを見ていきます。

業務の“見える化”でつまずく、4つの失敗パターン

プロセスマイニングは強力な発想です。ですが、進め方を誤ると「見えただけ」で終わってしまいます。

ここでは、ベンチャーネットが業務改善やERP導入の現場で見てきた、業務可視化の典型的な失敗を4つお伝えします。

これは、ツールを売り込みたいから書くのではありません。「見える化したのに、何も変わらなかった」という事態を避けてほしいからです。

ベンチャーネットは、お客様と対等な関係で、一緒に業務の実態を見ていく伴走者でありたいと考えています。その立場から、現場の知見を共有します。

「可視化」をゴールにしてしまう

よくある現象

  • フロー図を作り上げた時点で、プロジェクトが満足して止まる
  • ダッシュボードは完成したが、現場では使われていない
  • 「見える化」が報告書づくりで終わってしまう

なぜ失敗するか

可視化は手段であって、目的ではありません。

「何を、どう良くしたいか」という仮説がないまま可視化だけ進めると、見えても次の一手が打てません。

業務改善で成果を出している企業ほど、可視化の前に「どの数字を、どこまで動かすか」を決めています。

どう回避するか

最初に「何を良くしたいか」を言葉にしましょう。

たとえば「受注処理の手戻りを減らす」「月次決算を数日早める」といった、具体的なゴールです。

ベンチャーネットでは、見える化そのものより、その先の「改善・標準化・定着」までを一緒に設計することを大切にしています。

ヒアリングと勘だけで、現状を決めつける

よくある現象

  • ベテラン社員の説明だけで、業務フローを描いてしまう
  • 部門ごとに「うちのやり方」が違い、話が噛み合わない
  • 書類上の手順と、実際の処理がズレている

なぜ失敗するか

ヒアリングは大切ですが、どうしても主観や記憶に頼ります。

「いつもこうしている」という説明と、実際のログが食い違うことは珍しくありません。

隠れた手戻りや例外処理は、人の説明からは抜け落ちがちです。

どう回避するか

「人の声」と「実データ」の両面から業務を見る発想に切り替えましょう。

プロセスマイニングは、この“実データ”の部分を補ってくれます。

ベンチャーネットは、現場のヒアリングと実際のデータを突き合わせながら、業務の実態をつかむ進め方を取ります。

見えた業務を、そのまま新システムに移してしまう

よくある現象

  • 「今のやり方を変えたくない」という声が強い
  • 可視化した現行フローを、そのままERPで再現しようとする
  • 「とにかく今と同じ動きを」とカスタマイズを重ねる

なぜ失敗するか

これは「ブラックボックスの再生産」です。

非効率なロジックや属人的な運用を、そのまま新しいシステムに持ち込んでしまいます。

結果として、新システムは前より複雑で使いにくくなり、本当の課題は手つかずのまま残ります。

どう回避するか

業務の実態が見えた今こそ、「本当に必要な業務」と「惰性で続けている業務」を仕分ける好機です。

見えたものを移植する前に、棚卸しをする。この順番が成否を分けます。

標準機能への合わせ方やERP選定の進め方は、別の記事で詳しく解説しています。

関連記事:業務標準化×ERPERP選定の進め方

身の丈に合わないツールに飛びつく/IT部門任せにする

よくある現象

  • 高機能で高価なツールを入れたが、中堅企業には重すぎた
  • 「ログ分析はIT部門の仕事」と、経営層が関与しない
  • 導入が目的化し、経営課題と結びつかない

なぜ失敗するか

高価なツールは、大規模な業務でないと投資に見合わないことがあります。

また、業務の実態把握は、本来は経営判断に直結するテーマです。

IT部門だけの話にしてしまうと、「見えた事実」が経営の意思決定につながりません。

どう回避するか

自社の規模に合った進め方を選びましょう。

まずはログの取れる基幹業務から、小さく始めるのが現実的です。

そして、経営者自身が「なぜ業務の実態を見るのか」を語れること。ベンチャーネットは、これを「ITプロジェクト」ではなく「経営プロジェクト」として、経営者と並走します。

4つの失敗に共通するのは、「見える化」をゴールだと思ってしまうことです。

本当のゴールは、見えた実態をもとに、業務をより良くしていくことです。

完璧を目指す必要はありません。まずは実態を客観的に見るところから。動かしながら、磨いていけばいいのです。

ERP(NetSuite)導入の“前段”として活かす

業務の実態が見えたら、次は「その先」です。プロセスマイニング的な実態把握は、ERP導入の精度を大きく左右します。

なぜ「導入前」に効くのか

ERP導入でよくある失敗が、現状の業務をそのまま新システムに移してしまうことです。実態を把握しないまま進めると、非効率や属人化ごと引き継いでしまいます。

逆に、導入前に実態を客観的に押さえておくと、「何を残し、何をやめ、何を標準に合わせるか」の判断ができます。これが、導入の手戻りとコストを抑えることにつながります。

関連記事:ERP導入はなぜ失敗するのか

「実態把握 → 棚卸し → 標準化 → 導入」という順番

おすすめの順番はシンプルです。

  1. 実態を見る(プロセスマイニング的な客観把握)
  2. 棚卸し(本当に必要な業務と、惰性の業務を仕分ける)
  3. 標準化(業務をシステムの標準機能に合わせていく)
  4. 導入(NetSuiteなどのERPで、新しい業務プロセスに移行する)

この順番を踏むことで、「見えた事実」が、そのまま導入の設計図になります。標準化やERP選定の進め方は、それぞれの記事で詳しく解説しています。

関連記事:業務標準化×ERPERP選定の進め方

導入後も“見える化”は続く

実態把握は、導入前だけの話ではありません。NetSuiteのようなクラウドERPは、日々の業務がデータとして残ります。

そのデータを使えば、導入後も継続的に業務を見える化し、改善を回し続けられます。「見える化 → 改善 → 定着」を、一度きりでなく繰り返せるのです。

関連記事:データドリブン経営入門

どんな企業に向いているか

特に効果を感じやすいのは、次のような企業です。

  • 取引量が多く、基幹業務がシステム化されている
  • 部門ごとに業務がバラバラで、全体像が見えにくい
  • ERP導入やリプレイスを、これから検討している

一方で、「完璧な状態を最初から目指す」必要はありません。

ベンチャーネットは、業務の実態把握を「ITプロジェクト」ではなく「経営プロジェクト」と捉え、経営者と並走します。まずは見えるところから、動かしながら磨いていく。その進め方を大切にしています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務フロー図を作るのと、プロセスマイニングは何が違うの?

フロー図は人の説明(主観)から描き、プロセスマイニングは実データ(ログ)から実態を描きます。

ヒアリング型は手早く作れる反面、説明する人の主観や記憶に左右され、抜けが出やすいのが弱点です。ログ型は、実際の処理データから業務を描くため、客観的で網羅的です。両者は対立するものではなく、組み合わせると力を発揮します。中堅・中小企業でも、「まず実態を見る」という発想は十分に役立ちます。

Q2. 専用ツールを買わないとできない?システム化されていない業務はどうなる?

高機能なツールもありますが、まずは“実態を客観的に見る”という発想から始められます。

ツールによっては費用が高くなることもあり、また、システム化されていない業務やログのない業務は、そもそも分析できません。だからこそ、すべてを一度にやろうとせず、ログの取れる基幹業務から始めるのが現実的です。NetSuiteのようなERPは、こうした業務ログの源になります。

Q3. 可視化したあと、どう改善につなげればいい?

可視化はゴールではなくスタートです。改善仮説 → 業務の棚卸し → 標準化 → 必要ならERP導入、と続けていきます。

実は、最も多いつまずきが「可視化しただけで止まってしまう」ことです。見える化を成果につなげるには、その先の道筋を最初から描いておくことが欠かせません。ベンチャーネットは、見える化の先(棚卸し・標準化・NetSuite導入)まで、一緒に設計し伴走します。

Q4. ERP(NetSuite)導入とは、どう関係するの?

業務の実態把握は、ERP導入の“前段”で効きます。現行業務の棚卸しが、導入の精度を上げるからです。

実態が見えないまま導入すると、現行のやり方をそのまま移植してしまい、複雑さを引き継ぎがちです。導入前に「実態 → 棚卸し → 標準機能への適合」の順を踏むと、無理のない移行ができます。導入後も、NetSuiteに残るデータで業務を継続的に見える化できます。

まとめ:見える化は、ゴールではなくスタート

ここまで、プロセスマイニングという「業務の実態を、データから客観的につかむ発想」を見てきました。

大切なのは、見えること自体ではありません。見えた実態をもとに、業務をより良くしていくことです。

そのためには、完璧を目指す必要はありません。まずは実態を客観的に見るところから。動かしながら、磨いていけばいいのです。

ERP導入を考えている企業にとって、この“実態把握”は、失敗を避けるための大きな一歩になります。

ご相談ください

  • 「自社の業務の実態を、どう把握すればいいか分からない」
  • 「ERP導入を考えているが、何から手をつければいいか迷っている」

そんな方は、お気軽にご相談ください。御社の業務の実態を、一緒に見るところから始めましょう。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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