営業はSalesforce、会計や在庫はNetSuite。
この2つが別々に動いていると、同じ顧客情報を二度入力したり、最新の数字がすぐに見えなかったりします。
そこで出てくるのが「SalesforceとNetSuiteをどうつなぐか」という課題です。
ただ、つなぐ方法は一つではありません。そもそも「つなぐべきか、一本化すべきか」という選択もあります。
この記事では、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、どちらが自社に合うのかを判断できるよう、中立の立場で選び方を整理します。
結論から言えば、すでにSalesforceが営業に根付いているなら「連携」、これからCRMを導入するなら「一元化」が基本の判断軸です。本記事では、その見極め方を順に解説します。
📌 この記事で分かること
- SalesforceとNetSuiteを連携する3つの方式と、その選び方
- 「連携して両方使う」か「NetSuiteに一元化する」か、自社に合う判断軸
- 連携プロジェクトでよくある失敗パターンと、その避け方
読了目安:約12分
なぜ今、SalesforceとNetSuiteの連携が経営課題なのか
営業と会計が別々のシステムで動くと、会社全体の数字が一つにまとまりません。これは現場の手間だけでなく、経営判断の速さにも影響します。
多くの企業で、営業はSalesforce(CRM=顧客との関係を管理する仕組み)を使っています。
一方、会計・在庫・購買といった基幹業務は、NetSuiteのようなERP(基幹システム=会社のお金やモノの流れを管理する仕組み)が担います。
この2つが分断されていると、こんなことが起こります。
- 受注が決まっても、その情報を会計システムに手で入力し直す
- 在庫やキャッシュの最新状況が、営業側からは見えない
- 月次の数字を締めるまで、全体像がつかめない
一つひとつは小さな手間に見えます。
ですが、積み重なると「数字が見えるのが遅い」状態になります。これは、経営の意思決定が遅れることと同じです。
とくに事業が成長して取引が増えるほど、この分断のコストは大きくなります。手入力のミスも増えます。
だからこそ、SalesforceとNetSuiteをどうつなぐかは、単なるシステムの話ではなく、経営の課題になります。
「営業の情報」と「お金・モノの情報」を一本の流れにすること。これは、会社全体を見渡せるようにするための、全体最適の取り組みです。
なお、NetSuiteそのものの全体像を知りたい方は、NetSuiteのよくある質問30問もあわせてご覧ください。
そもそもNetSuiteにもCRMがある — 連携と一元化、2つの道
連携を考える前に、知っておきたい前提があります。NetSuiteには、もともとCRMの機能が組み込まれています。だから選択肢は「連携」だけではありません。
意外に思われることがありますが、NetSuiteはERP(基幹システム)でありながら、CRMやSFA(営業活動を支援する仕組み)の機能も統合されています。
つまり、見込み客の管理から商談、受注、請求、その後の会計までを、一つのシステムの中でつなげられます。
ここから、2つの道が見えてきます。
道その1:Salesforceを残して、NetSuiteと連携する
すでにSalesforceで営業活動が回っている場合、それを活かしながら、NetSuiteの会計・在庫とつなぐ考え方です。
営業はこれまでどおりSalesforceを使い、受注から先をNetSuiteに引き渡します。
道その2:NetSuiteのCRMに一元化する
これからCRMを導入する、あるいは構成をシンプルにしたい場合は、NetSuiteのCRM機能に寄せる考え方です。
営業から会計まで一つのシステムで完結するため、連携の手間そのものがなくなります。
どちらが優れているという話ではありません。
会社の状況によって、向き不向きが変わります。この記事の後半(「連携 vs 一元化、自社に合うのはどちら?」)で、判断の軸を具体的に整理します。
まずは「連携ありき」で考えるのではなく、自社にとってどちらが自然かを一度立ち止まって考えることが大切です。
連携で何ができる? 同期される主なデータ
連携とは、SalesforceとNetSuiteの間で同じ情報を共有することです。営業で生まれた情報が、自動で会計や在庫に流れる状態をつくります。
具体的には、次のようなデータが両システムの間で同期されます。
- 顧客・取引先:会社名や担当者、連絡先などの基本情報
- 商談 → 受注:Salesforceで成立した商談を、NetSuiteの受注に引き継ぐ
- 見積・請求:見積から請求、入金までの情報をつなぐ
- 在庫・価格:NetSuite側の在庫状況や価格表を、営業が参照できる
たとえば、Salesforceで商談が「成約」になった瞬間に、NetSuiteへ受注として連携される。
すると、営業が会計システムに入力し直す必要がなくなります。二重入力が消えるわけです。
逆方向もあります。NetSuiteで管理している在庫や入金の状況を、営業がSalesforce上で確認できるようにする。
これにより、「在庫があるか分からないまま受注してしまう」といった行き違いを防げます。
ここで大切なのは、すべてを同期する必要はないということです。
何を・どちらの方向に・どのくらいの頻度でつなぐかは、業務の必要性に応じて決めます。この設計を誤ると、後で紹介する失敗パターンにつながります。
連携の3つの方式と選び方
SalesforceとNetSuiteをつなぐ方法は、大きく3つあります。導入のスピード・自由度・コストがそれぞれ異なるため、自社の要件に合わせて選びます。
連携の方式は、ざっくり次の3つに分けられます。
- コネクタ:既製のつなぎ込みツールを使う
- iPaaS(アイパース):システム同士をつなぐ仲介クラウドを使う
- API開発:NetSuiteの連携機能(SuiteTalk等)を使って個別に開発する
それぞれの特徴を比較すると、次のようになります。
| 比較軸 | コネクタ(既製) | iPaaS(仲介クラウド) | API開発(個別構築) |
|---|---|---|---|
| 概要 | 既製のつなぎ込みツール | Celigo・Boomi等が間を仲介 | SuiteTalk等で個別開発 |
| 導入スピード | 速い | 中 | 遅い |
| 自由度 | 低い | 中 | 高い |
| 初期コスト感 | 低〜中 | 中 | 高 |
| 運用・保守 | 提供元に依存 | 設定で柔軟に対応 | 自社/パートナーで保守 |
| 向くケース | 標準的な項目で十分 | 複数のSaaSを束ねたい | 独自要件が多い |
選び方の目安はこうです。
標準的なデータをシンプルにつなぎたいなら、コネクタが手早い選択です。
複数のクラウドサービスをまとめて連携したい、あるいは細かく制御したいなら、iPaaSが向きます。
独自の業務ルールが多く、自由に設計したいなら、API開発が選択肢になります。
なお、日本市場では、Salesforceとの標準コネクタの事情が英語圏と異なる場合があります。そのため、iPaaSやAPI開発が選ばれる場面も少なくありません。この点は後ほど「日本での現実」の章で触れます。
この3方式の考え方は、ほかのシステムとの連携にも共通します。あわせて検討したい方は、BtoB ECとNetSuiteの連携、ネクストエンジンとNetSuiteの連携、NetSuiteと物流システム・3PLの連携も参考になります。
連携 vs 一元化、自社に合うのはどちら?
ここが、この記事でもっとも考えてほしいポイントです。「Salesforceを残して連携する」のと「NetSuiteに一元化する」のと、どちらが自社に合うかを見極めます。
先に挙げた2つの道。どちらを選ぶかは、会社の状況によって変わります。
判断のための軸を、表に整理しました。
| 判断軸 | Salesforceを残して連携 | NetSuite CRMに一元化 |
|---|---|---|
| 営業の定着度 | Salesforceが深く根付いている | これからCRMを導入する |
| 営業プロセス | 複雑・独自性が高い | 標準的でシンプル |
| 組織体制 | 営業と経理が別チーム | 一気通貫で運用したい |
| 重視する点 | 既存資産を活かしたい | 構成のシンプルさ・一元管理 |
| コスト構造 | Salesforce+連携の維持費 | ライセンスを一本化できる |
左の列に多く当てはまるなら、Salesforceを残して連携する道が自然です。
すでに営業がSalesforceを使いこなしていて、独自の営業プロセスがある。そんな会社は、無理に一本化するより、強みを活かして連携するほうが現実的です。
右の列に多く当てはまるなら、NetSuiteへの一元化を検討する価値があります。
これからCRMを入れる、構成をできるだけシンプルにしたい。そんな会社は、最初から一つのシステムにまとめたほうが、連携の手間も維持費も抑えられます。
大切なのは、「どちらが優れているか」ではなく「自社はどちらに当てはまるか」です。
ベンチャーネットがご相談を受けるときも、はじめから一元化や連携を勧めることはしません。会社の現状をうかがったうえで、どちらが自然かを一緒に考えます。
この判断を曖昧にしたまま進めると、両方のシステムに顧客情報が散らばる「二重運用」に陥りがちです。次の章で、こうした失敗パターンをくわしく見ていきます。
連携プロジェクトでよくある失敗パターン
SalesforceとNetSuiteの連携は、つなぐこと自体が目的ではありません。ここでは、現場で繰り返し見られる4つの失敗パターンと、その避け方を整理します。
CRMとERPの連携は、一度動き出せば大きな効果を生みます。
ですが、設計の段階でつまずくと、かえって業務が混乱することもあります。
ここでは、業種を問わず起こりがちな4つのパターンを見ていきます。「うちもこれかもしれない」と感じたら、それは設計を見直すサインです。
なお、連携にかぎらずERP導入そのものが頓挫する原因については、ERP導入が失敗する理由でも整理しています。
パターン1:マスターデータの設計を後回しにする
まず、こんな現象が起きます。
- 同じ取引先が、両方のシステムに二重登録される
- 会社名や住所の表記がバラバラになる
- どちらのデータが正しいのか、誰も分からなくなる
原因は、連携の前に「どちらを正(しょう)のデータとするか」を決めていないことです。
マスターデータ(顧客や商品の基準となる台帳)の主従と、項目の対応づけ(マッピング)を決めずにつなぐと、表記ゆれや重複が両システムで増幅します。
ベンチャーネットでは、連携を組む前に、どちらを主データにするかと項目の対応を一緒に整理してから着手します。
パターン2:「とりあえず全部・リアルタイムでつなぐ」
次は、同期する範囲が膨らんでいくパターンです。
- 同期する対象を絞れない
- すべての項目を双方向・リアルタイムにしようとする
- 要件が膨張し、プロジェクトが止まる
「つなぐこと」が目的になると、こうなりがちです。
本来は、何を・どの方向に・どの頻度で同期するかを、業務の必要性から決める必要があります。とくに双方向のリアルタイム同期は最も複雑で、コストも高くなります。
ベンチャーネットでは、「商談から受注への連携はリアルタイム、請求実績は1日1回」のように、業務の必要性から方式を切り分け、段階的に導入します。
パターン3:連携か一元化かの判断を先送りする
3つめは、CRMが二重運用になるパターンです。
- SalesforceとNetSuite CRMの両方に顧客情報がある
- 現場が、どちらを見ればいいのか混乱する
- 使われないCRMだけが残る
これは、「連携して両方使う」のか「どちらかに寄せる」のかを決めないまま走り出すことで起こります。
役割分担があいまいなまま連携だけ組んでも、現場は混乱します(この判断軸は、前の章で扱ったとおりです)。
ベンチャーネットでは、「営業の入り口はSalesforce、受注以降はNetSuite」のように、どちらが主かを先に合意してから連携を設計します。
パターン4:つないだ後の運用が抜ける
最後は、導入後に表面化するパターンです。
- 一度動けば終わり、と思っている
- 連携エラーが起きても、誰も気づかない
- 項目を追加するたびに、連携が壊れる
連携は「作って終わり」ではありません。
項目の変更、障害の監視、改修は、運用が続くかぎり発生します。導入時点しか見ていないと、後から負担が表面化します。
ベンチャーネットでは、運用保守契約のなかで、連携の監視や改修まで継続して伴走します。「作って終わり」にしないことが、連携を生かし続けるポイントです。
日本での現実と、誰に相談すべきか
連携は技術だけの話ではありません。日本特有の業務事情と、誰と組むかが、成否を分けます。
海外では、SalesforceとNetSuiteをつなぐ既製のコネクタが豊富にそろっています。
ですが日本では、請求の締めや消費税、商習慣に合わせる必要があり、既製品をそのまま使えないことがあります。
そのため、日本の業務に合わせてiPaaSやAPI開発で調整する場面が、現実には多くなります。
では、自社の情シスだけで完結できるのでしょうか。
NetSuiteには連携用のAPIが用意されているため、小規模で標準的な連携なら、自社で対応できる場合もあります。
一方で、マスターデータの設計、項目のマッピング、稼働後の障害監視まで含めると、専門の知識と経験が必要になります。
現実的なのは、「どこまでを自社で担い、どこからパートナーと組むか」を最初に線引きすることです。
ベンチャーネットでは、NetSuiteとSalesforceをはじめ、各種システムとの連携開発に対応しています。連携の設計から開発、稼働後の運用保守まで、一貫して伴走できます。
よくある質問(FAQ)
SalesforceとNetSuiteの連携について、よく寄せられる質問をまとめました。
Q1. NetSuiteにもCRMがあるのに、なぜSalesforceと連携するのですか?
すでにSalesforceで営業活動が定着している企業では、その資産を活かしながらNetSuiteの会計・在庫とつなぐ選択が現実的だからです。
逆に、これからCRMを導入する企業なら、NetSuiteのCRMに一元化する道も有力です。どちらが向くかは、自社の状況によって変わります(本記事「連携 vs 一元化」の判断軸をご覧ください)。
Q2. 連携にはどれくらいの期間・費用がかかりますか?
連携の費用と期間は、選ぶ方式(コネクタ/iPaaS/API開発)と、同期する対象の広さで大きく変わります。
標準的な項目をコネクタでつなぐなら、比較的短期間・低コストに収まりやすいです。独自要件をAPI開発で実現する場合は、その分、期間も費用も大きくなります。
なお、NetSuite本体の利用料は連携費用とは別です。利用料の目安は月20万円〜(2026年時点)で、モジュールやユーザー数、オプションによって変わります。規模によっては数百万円規模になることもあります。最終的な金額は、Oracleの営業担当が提示します。
正確な見積もりは、要件をうかがったうえでお出しします。
Q3. 連携の構築は、自社(情シス)だけでできますか?
小規模で標準的な連携であれば、自社のリソースで対応できる場合もあります。NetSuiteには連携用のAPIが用意されているためです。
ただし、マスターデータの設計や項目マッピング、稼働後の障害監視まで含めると、専門知識が必要な領域が出てきます。「どこまで自社で、どこからパートナーと組むか」を見極めることをおすすめします。
Q4. 連携すると、具体的に何が変わりますか?
まず、営業から会計への二重入力がなくなります。
そして、在庫や売上の状況がリアルタイムで見えるようになり、月次の数字も早く締まります。
結果として、経営の意思決定を、より速く・確かな数字にもとづいて行えるようになります。
まとめ:自社に合う「つなぎ方」を見極める
SalesforceとNetSuiteの連携は、つなぐこと自体がゴールではありません。
大切なのは、次の3点を自社の状況に当てはめて見極めることです。
- 連携か、一元化か:Salesforceを活かすのか、NetSuiteにまとめるのか
- どの方式でつなぐか:コネクタ・iPaaS・API開発のどれが合うか
- どう失敗を避けるか:マスター設計・スコープ・運用まで見据える
この見極めができれば、連携は経営の武器になります。逆に曖昧なまま進めると、二重運用や運用負担といった失敗につながりやすくなります。
ベンチャーネットは、はじめから特定の答えを勧めることはしません。自社にとってどちらが自然かを、一緒に考えるところから伴走します。
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