経営会議で、社長が総務部長に聞きます。
「総務は、あと1人減らせないのか」
部長は、すぐには答えられません。
忙しいのは確かです。でも、何にどれだけ時間を使っているかを、数字で示せないのです。
間接部門とは、経理・人事・総務・法務・ITなど会社全体を支える部門のことです。
営業や製造のように、直接売上をつくる「直接部門」と対になります。
売上を生まないため、真っ先に削る対象にされがちです。
けれど、間接部門で効くのは「削減」ではありません。
価値を見える化したうえでの「適正化」です。
一律に削ると、現場が疲れ、ミスや退職が増えることがあります。
では、見える化はどこから始めればよいのか。
先の部長が答えられなかった理由も、そこにあります。
この記事で分かること
- 間接部門と直接部門の違い、「削減」と「適正化」の違い
- NetSuiteで間接部門の活動と費用を見える化する仕組み
- Excelで足りる段階と、システムが要る段階
- 間接部門を立て直す順番(見える化→整理整頓→1業務・1KPIの1周目)
- 今日から自社でできる、間接費の棚卸し
間接部門とは|直接部門との違い
| 観点 | 直接部門 | 間接部門 |
|---|---|---|
| 代表例 | 営業、製造 | 経理、人事、総務、情報システム |
| 呼び方 | プロフィットセンター(利益を生む部門) | コストセンター(費用が発生する部門) |
| 成果の見えやすさ | 売上高など数字で見えやすい | 貢献が見えづらく、評価が難しい |
| 陥りやすい落とし穴 | 自部門の数字を優先しがち | 見えないがゆえに、削減の対象にされやすい |
間接部門は「コストセンター」と呼ばれます。
しかし、コストセンターは削ってよい部門という意味ではありません。
経理が資金を正確に管理すれば、資金繰りと経営判断の質が上がる。
人事が良い人を採れば、事業の成長に直結する。
間接部門は会社の屋台骨です。
見えづらいだけで、価値を生んでいないわけではありません。
「削減」ではなく「適正化」で考える
人手不足とコスト増が同時に進み、間接部門のあり方を見直す会社が増えています。
少ない人数で、より大きな価値を出すことが求められているからです。
- 削減:とにかく費用を減らすこと
- 適正化:ムダを省き、必要なところには適切に配ること
消耗品費を一律に削れば、必要な備品まで足りなくなります。
研修費を削れば、人が育ちません。
何にどれだけ使っているかをつかみ、ムダだけを見極めて減らす。そのためには、活動と費用を見える化する仕組みが要ります。
ここでいう間接費は、特定の商品やサービスに直接ひも付かない費用です。
光熱費、通信費、消耗品費、間接部門の人件費などが当たります。
複数の部門にまたがって発生するため、実態がつかみにくい費用です。
適正化の3手順|分ける→比べる→決める
- 分ける:費目と部門を分け、「その他」にまとめない
- 比べる:前年や他の部門と比べ、増えた理由を聞く
- 決める:減らす費用と、むしろ増やす費用(研修など)を決める
3で「増やす」判断があることが、削減との違いです。
たとえば、部門ごとの消耗品費から過剰な在庫を見つける。出張旅費を分析して、出張のルールを見直す。
こうした判断は、1の「分ける」ができて初めて打てます。
NetSuiteで間接部門を見える化する
NetSuiteは、Oracleが提供するクラウド型のERPです。
ERPとは、会社全体の業務を1つのシステムでまとめて管理する仕組みを指します。
世界220地域・44,000社以上で利用されています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。
見える化に使う4つの仕組み
| 見たいこと | NetSuiteの仕組み |
|---|---|
| 費用を部門ごとに記録する | 部門・クラス・場所の分類を、従業員や取引に付ける。分類ごとに財務レポートを出せる |
| 共通の費用を部門に配る | 経費配賦。決めた日付と頻度で配賦の仕訳を自動で作る。統計勘定でPCの台数などを配る比率に使える |
| 申請・承認と発注から支払を追う | 承認の仕組み(基本の承認ルートとSuiteFlow)と、調達(発注書・受領・請求書の3方向の照合) |
| 数字を画面で見る | ダッシュボード。役割ごとのダッシュボードとKPI |
出典(いずれも2026年9月確認):
- Oracle NetSuiteのヘルプ(分類、経費配賦、統計勘定、承認の方法)
- Oracle NetSuite公式サイト(調達、SuiteAnalytics)
経費配賦と統計勘定は、有効にする設定が要る機能です。
使える機能は契約の内容でも変わるため、計画の最初に確かめます。
SuiteFlowは、承認などの流れを設定で組むワークフローの機能です。
仕組みが動き出すと、見えるものが変わります。
調達なら、承認で止まっている依頼や、発注と請求の差がすぐに分かる。
経費なら、部門別・用途別の支出が並ぶ。
工数を記録すれば、誰がどの業務にどれだけ時間を使っているかも見えてきます。
間接部門の成果を測る物差しの例
売上の代わりに、「どれだけ速く、正確に、会社を支えたか」を測ります。
| 部門 | 物差しの例 | NetSuiteで見るもの |
|---|---|---|
| 経理 | 月次決算が締まるまでの日数 | 締めの作業の進み具合、仕訳の件数 |
| 総務・購買 | 購買依頼から発注までの日数 | 承認で止まっている依頼、発注と請求の差 |
| 人事 | 採用や手続きにかかる時間 | 工数の記録 |
| 情報システム | 問い合わせへの対応の時間 | 工数の記録、対応の件数 |
物差しは、部門ごとに2つか3つまで。
数を増やすと、測る作業そのものが間接部門の負担になるからです。
こうした物差しは、目標の設定と振り返りをくり返すPDCA(計画→実行→確認→改善)の土台になります。
「がんばっているのに評価されない」という悩みも、活動が数字で見えれば変わっていきます。
KPIの決め方は、KPIマネジメントとは?で扱っています。
判断の物差し|Excelで足りる段階と、システムが要る段階
間接費の扱い方は3つ
| 扱い方 | 中身 | 向く会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A. 全社で一括 | 間接費を部門に配らず、全社の費用として見る | 部門が少なく、社長が全体を見ている | 部門の本当の損益が見えない |
| B. Excelで配る | 会計の数字を書き出し、Excelで部門に配る | 部門が数個で、配り方が単純 | 計算が担当者のシートの中に埋もれる |
| C. ERPで記録し配賦 | 取引に部門を付け、配賦のルールで配る | 部門・拠点が増え、配り方が複雑 | 分類と配賦のルールの設計が先に要る |
どれが正しいかは、会社の段階で決まります。
Excelで足りる段階は、部門が2〜3つで、配り方が単純な会社です。
月末の数字が数日遅れても判断に困らず、経費の申請も月に数十件ほど。
この段階なら、いまはシステムを入れない判断も正しい選択です。
費目の分け方をそろえるだけで、見える範囲は広がります。
システムが要る段階は、次のような兆しが出たときです。
- 部門や拠点が増え、配賦の計算を担当者しか説明できない
- 経費や購買の承認が、どこで止まっているか分からない
- 間接部門の人数を議論したいが、業務量の根拠がない
冒頭の総務部長は、3つ目に当たります。
課題が経費精算だけなら、経費精算のSaaSと会計ソフトの組み合わせで足ります。
費用を抑えて小さく始めたいならOdoo、国内の商習慣を重視するなら国産ERPも候補です。
会計・購買・在庫・人の時間まで1か所で見たいとき、NetSuiteが合います。
経費精算のツールとの使い分けは、NetSuiteの経費精算とはで扱っています。
ここまでの判断を図にすると、次のとおりです。
これから選ぶ会社と、いまのシステムを見直す会社
これから選ぶ会社が最初に決めるのは、どの単位で費用を見たいかです。
部門別か、拠点別か、事業別か。
この分け方が、NetSuiteでは部門・クラス・場所の設計になります。
後から変えると過去と比べにくくなるので、3年後の組織の形も思い浮かべて決めます。
NetSuiteの価格は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。
いまのシステムを見直す会社は、取引に部門が付いているかを先に見ます。
付いていない取引が多ければ、入れ替えより先に入力のルールを直す番です。
配賦や承認をシステムの外で回していて、保守の期限や更新が近いなら、見直しの好機になります。
間接費の削り方と原価管理は、間接費を「見える化」して削減する方法にまとめています。
配賦の基準の決め方は、配賦とは?が詳しい記事です。
間接部門のコストでやりがちな3つの失敗
間接部門を責める話ではありません。
経営者がつい持ってしまう「見方のくせ」の話です。
失敗1:見えないまま、一律に削る
起きること:「間接部門は稼がないから」と、数字で見えない費用から一律に削る。
必要な費用まで削れ、現場が疲れ、削った額より大きな損失を招く。
原因:何にどれだけ使っているかが見えていない。
間接費を部門や用途で分けず、まとめて管理している。
避け方:削る前に、部門別・用途別に費用を見える化します。
ムダを見極めてから減らす、という順番を守ります。
失敗2:人を減らせば効率化できると考える
起きること:業務の量はそのままで、人だけを減らす。
残った人に負担が集まり、特定の人しか分からない業務(属人化)が増える。
その人が抜けると、業務が止まる。
原因:業務の量と中身を把握しないまま、人数だけで判断している。
避け方:人を減らす前に、業務の見える化と標準化を進めます。
「そもそも要らない作業」を減らせば、同じ人数でも余裕が生まれます。
属人化の解き方は、属人化とは?で扱っています。
失敗3:改善を「現場任せ・情シス任せ」にする
起きること:経営層が関わらず、システムの導入を情報システムの担当だけに任せる。
部門間の壁にぶつかり、調整が進まない。
原因:間接部門の最適化は、部門をまたぐ全社のテーマ。
一部門に任せると、配り方や承認の流れを決める権限が足りない。
避け方:経営層自身が関わります。
とくに共通の費用の配り方は、経営が決めて文書にします。
3つに共通するのは、間接部門を「見えないまま削る対象」として扱うことです。
裏を返せば、見える化できれば、削るのではなく生かす道が開けます。
ベンチャーネットならこう見る|見える化→整理整頓→1業務・1KPIの1周目
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱います。
SAPからのリプレイスにも対応しています。
間接部門の立て直しでも、いきなりシステムの話はしません。
型1:見える化→整理整頓
最初に、いまの業務の流れを現場に聞いて描きます。
経理の締め、総務の購買、人事の手続き。誰が、何を、どの順で回しているかを書き出します。
描くと、要らない作業が浮かびます。
同じ数字を2つの表に入れている。誰も見ない帳票を毎月作っている。
次の整理整頓で、こうした業務を「やめる・まとめる・そろえる」に仕分けます。
人を減らすより先に、作業を減らす。失敗2を避ける順番です。
システムに載せるのは、整理整頓で残った業務だけです。
NetSuiteの標準機能と照らし合わせ、合わない業務は「標準に合わせる/開発する/残す」から選びます。
業務フローの描き方は、ERP導入前にやるべき業務フロー可視化で扱っています。
型2:最短90日で、1業務・1KPIの1周目
全部の間接部門を一度に変えようとすると、たいてい途中で息切れします。
そこで、1つの業務と1つの物差しに絞り、最短90日で1周目を回します。
たとえば「購買依頼から発注までの日数」だけを測り、承認の流れを直し、90日後に数字を比べる。
1周目で確かめたいのは、次の3つです。
- 共通の費用の配り方に、部門長が納得しているか
- 「その他」に入っている費用が、どれだけ減ったか
- システムを入れないと解けない課題が、本当に残ったか
3つ目で「残らなかった」なら、システムはおすすめしません。
間接部門の最適化は「人減らし」ではなく「価値の見える化」だと、ベンチャーネットは考えています。
今日できること|間接費の棚卸し
1時間で、次の表を埋めてみてください。
| 費目 | 先月の金額 | いまの配り方 | 部門長の納得 |
|---|---|---|---|
| (例)事務所の家賃 | 50万円 | 配っていない | 未確認 |
先月の経費から、どの部門のものとも言えない費用を書き出します。
「配っていない」が多ければ、部門の数字は実態より良く見えています。
「その他」の額が大きければ、費目の分け方から見直しましょう。
よくある質問
Q1. 間接費とは何ですか。どこまでが間接費ですか
特定の商品やサービスに直接ひも付かない費用です。
光熱費、通信費、消耗品費、間接部門の人件費などが当たります。
ある製品の材料費のように直接ひも付く費用は「直接費」と呼びます。
どこまでを間接費とするかは会社で線引きが違うため、まず自社の費用を分類します。
Q2. 間接費を削ると、現場に悪影響は出ませんか
やみくもに削ると出ることがあります。
必要な備品や研修まで削ると、長い目で損失になります。
何にどれだけ使っているかを見える化し、ムダだけを減らす「適正化」をおすすめします。
Q3. NetSuiteを入れると、間接部門の何が変わりますか
活動と費用が部門別・用途別に見えるようになります。
調達・経費・工数が数字で見え、活動を数字で示せる状態に変わります。
経営側も、どこにムダがあり、どこに投資すべきかを根拠を持って判断できます。
Q4. 共通の費用は、どうやって部門に配ればよいですか
人数・面積・売上など配る基準を決めて文書にします。
基準によって、部門の数字は大きく変わります。
NetSuiteでは、経費配賦のスケジュールで決めた基準を毎月同じように動かせます。
Q5. 間接部門の人数は、何を根拠に決めればよいですか
業務の量となくせる作業の量を先に測ります。
業務の一覧と、それぞれにかかる時間を出してから、人の配置を考えます。
見える化と整理整頓で作業を減らしてから決めるのが順番です(第6章)。
Q6. 小さな会社でも、間接費の見える化は必要ですか
費目を分けるところまでは必要です。
部門が少ないうちは、システムを入れずにExcelで十分なことも多いです。
ただし、「その他」にまとめず費目を分けておくと、会社が大きくなったときに比べられます。
まとめ
- 間接部門は会社を支える屋台骨。コストセンターは削ってよい部門という意味ではない
- 効くのは削減ではなく、見える化したうえでの適正化(分ける→比べる→決める)
- NetSuiteでは、部門・クラス・場所の分類、経費配賦、統計勘定、承認、調達の照合で活動と費用を見える化できる
- 部門が少なく配り方が単純なうちは、Excelで足りる。いまは入れない判断もある
- 立て直しは、見える化→整理整頓→最短90日で1業務・1KPIの1周目
「あと1人減らせないのか」と聞かれたとき、業務の一覧と数字で答えられるか。
その準備は、今日の棚卸しの表から始められます。
もう少し詳しく知りたい方へ
間接部門の見える化と、共通の費用の配り方の整理から、ご相談をお受けしています。
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