従業員11〜30名の会社のOdoo活用モデル|部署の壁を、2部署ずつつなぐ

月次の数字を出すたびに、経理担当が営業に受注の一覧を聞きに行く。営業は在庫の残りを倉庫に電話で確かめる。社員が20名を超えたあたりから、こうした「聞きに行く仕事」が目立ち始めます。

11〜30名は、営業や経理の担当が専任になり始める規模です。部署ごとに別のツールが根づき、情報が部署の境目で止まります。

この「部署の壁」は、Odoo(オドゥー:販売・在庫・会計などのアプリを同じデータでつなぐERP)でつなぎ直せます。全部署を一度に載せる必要はありません。情報の分断がいちばん深刻な2部署をつなぎ、そこから広げます。

たとえば、営業と経理の間の見積・受注・請求を先につなぎます。在庫や製造の統合は、その後です(2部署から段階的に進める流れ)。

2部署をつなぐと、たとえば次のことが変わります。

  • 受注の一覧を見ながら請求書を手で作り直す作業を減らせる
  • 在庫の有無を、倉庫に電話する前に画面で確かめられる
  • どの部署からつなぐかを、症状の早見表から選べる

ただし、部署ごとの要望をすべて受け入れると、作り込みが費用と期間を押し上げます。人数や拠点が大きく増える見込みなら、NetSuiteも同じ土俵で比べる候補です。

では、自社はどの2部署から始めればよいのか。答えは最初につなぐ2部署の早見表にあります。

なお、Odooには無料・オープンソースのCommunity版と、有償サブスクリプションのEnterprise版があり、使える機能が異なります。

目次

11〜30名の会社で表面化する「部署の壁」

6〜10名では、2つ目の業務を検討する段階でした。11〜30名になると、新しい問題が出てきます。「部署ごとに別々のツールが定着してしまっている」ことです。

営業はExcel、経理は会計ソフト、製造や在庫は紙の管理表。部署の中では回っていても、部署をまたぐと情報がつながりません。

部署ごとのツールが、情報をつなげなくする 営業部門はExcelで商談管理、経理部門は会計ソフトで記帳、在庫・製造は紙の管理表を使っている。部署をまたぐ情報の受け渡しは手作業の転記に頼っており、部署をまたぐと情報がつながらない。 部署ごとのツールが、 情報をつなげなくする 営業部門 Excelで商談管理 ↓ 手作業で転記 経理部門 会計ソフトで記帳 ↓ 手作業で転記 在庫・製造 紙の管理表 ↓ 手作業で転記 部署をまたぐと、 情報がつながらない
部署ごとのツールが、情報をつなげなくする

この段階では「業務を1つ足す」という考え方だけでは足りません。複数の部署を同じデータの上でつなぐ、という視点が要ります。

11〜30名の会社のOdoo導入の進め方|2部署から段階的に

段階的な統合が基本

11〜30名だからといって、全部署を同時に導入する必要はありません。

もっとも情報の分断が深刻な2部署の間から着手し、そこがつながったら次の部署へ広げます。たとえば、営業と経理の間(見積・受注・請求)を先につなぎます。在庫や製造の統合は、その後です。

段階的に部署をつなげる 第1段階で営業と経理の間の見積・受注・請求をつなげ、第2段階で第1段階の基盤の上に在庫・製造を統合する。一度に全部署を統合せず、分断が深刻な部署から順に進める。 段階的に部署をつなげる 第1段階 営業と経理をつなげる (見積・受注・請求) 第2段階 在庫・製造を統合する (第1段階の基盤の上に) 一度に全部署を統合せず、 分断が深刻な部署から順に進める
段階的に部署をつなげる

導入全体の6つのステップは、Odoo導入の進め方と期間で解説しています。

「本当に必要な業務」を仕分ける

部署が増えると、どの部署も今のやり方を守りたがります。すべてを再現しようとすると膨らむのが、カスタマイズ(標準にない機能を追加で作ること)です。

標準機能に業務を合わせる方針を先に決めてください。作り込むのは、競争力に直結する部分だけに絞ります。

最初につなぐ2部署を見極める

どこから着手するか迷ったら、次の表で自社の症状に近い行を探してください。

いま起きていること先につなぐ部署最初に入れるアプリの例
受注の一覧を見ながら、経理が請求書を手で作り直している営業と経理販売、会計(請求書発行)
注文を受けてから、在庫の有無を倉庫に電話で確かめている営業と在庫販売、在庫
仕入先への発注と入荷の記録が、別々の表に分かれている購買と在庫購買、在庫
製造の予定と材料の手配を、ホワイトボードで調整している製造と購買製造、購買、在庫

複数当てはまるなら、転記の時間がいちばん長い行を優先します。

Community版とEnterprise版、11〜30名ではどちらか

版ごとの向き・不向き

版11〜30名の会社にとって
Enterprise版(有償)複数部署にまたがるアプリを組み合わせやすく、会計を含む主要機能が標準で揃っている
Community版(無料・オープンソース)会計など一部機能が欠けるため、部署をまたぐ統合を目指す段階では制約になりやすい

部署をつなぐ要は、会計であることが多いものです。Community版では、その会計がフル機能ではありません。そのため、この規模からはEnterprise版を軸に検討するのが現実的です。

Community版とEnterprise版の違いはこちらの記事で詳しく整理しています。

11〜30名の会社でOdooを使う良い点と、気をつけること

11〜30名の会社から見た、Odooの良い点と気をつけることです。版で違う項目には版を添えています。

良い点

  • 部署の情報を同じデータでつなげる:販売・在庫・会計などのアプリが、同じデータの上で動く
  • 2部署ずつ段階的に広げられる:分断がいちばん深刻な2部署から始め、つながったら次の部署へ広げる
  • 会計を含む主要機能がそろう:Enterprise版なら、会計を含む主要機能が標準でそろっている
  • 標準に合わせれば作り込みを絞れる:標準機能に業務を合わせる方針を先に決めれば、作り込むのは競争力に直結する部分だけで済む

気をつけること

  • Community版は会計がフル機能でない:会計など一部機能が欠けるため、部署をまたぐ統合を目指す段階では制約になりやすい
  • 部署ごとの要望が作り込みを増やす:すべて受け入れると、費用と期間の両方が膨らむ
  • 操作する人数を先に数える:Enterprise版のライセンス費用は、ユーザー数に応じて決まる。全員が管理画面を操作するとは限らない
  • 統合には部署間ごとに時間がかかる:段階的に進める場合、1つの部署間の統合ごとに数か月単位で見込むのが一般的

両方を並べると、次の図のとおりです。

11〜30名でOdooを使う良い点と注意点 良い点は、部署の境目で止まっていた情報を同じデータでつなげる、分断が深刻な2部署から段階的に広げられる、Enterprise版なら会計を含む主要機能が標準でそろう、標準に合わせれば作り込みを絞れること。注意点は、Community版では会計がフル機能でない、部署ごとの要望が作り込みを増やす、Enterprise版のライセンスはユーザー数で決まるため操作する人数を先に数える、統合は部署間ごとに数か月単位で見込むこと。 11〜30名でOdooを使う良い点と注意点 良い点 部署の情報を同じデータでつなぐ 販売・在庫・会計などのアプリ 2部署ずつ段階的に広げられる 分断がいちばん深刻な所から 会計を含む主要機能がそろう Enterprise版なら標準で 標準に合わせれば作り込みを絞れる 作るのは競争力に直結する部分だけ 注意点 Community版は会計がフル機能でない 部署をまたぐ統合では制約になりやすい 部署ごとの要望が作り込みを増やす すべて受け入れると費用と期間が膨らむ 操作する人数を先に数える ライセンスはユーザー数で決まる(E版) 統合には部署間ごとに時間がかかる 1つの部署間ごとに数か月単位 E版=Enterprise版(有償)
11〜30名でOdooを使う良い点と注意点

要望の仕分け方は部署をつなぐ前に、ベンチャーネットが確かめることで、人数の数え方は導入費用で注意すべき点で扱っています。

Odooの導入費用で、この規模が注意すべき点

部署の数だけ「作り込みたい」要望が増える

11〜30名になると増えるのが、部署ごとの担当者からの「今のやり方に合わせてほしい」という要望です。

すべてを受け入れると、費用と期間の両方が膨らみます。総額をもっとも動かすのは、「カスタマイズの量」です。

費用の組み立ての全体像は、Odoo導入にかかる費用の構造で解説しています。

ユーザー数を正確に数える

Enterprise版のライセンス費用は、ユーザー数に応じて決まります。11〜30名の全員が、管理画面(バックエンド)を操作するとは限りません。実際に画面を操作する人数を先に整理してから、見積もりを相談してください。

部署をつなぐ前に、ベンチャーネットが確かめること

ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、11〜30名の会社のご相談では、アプリ選びより先に次の順で確かめます。ERPはITの導入ではなく、部署の役割を決め直す経営のプロジェクトだと考えているからです。

  1. 転記の経路を書き出す:どの数字が、誰の手で、どの表からどの表へ写されているかを一枚にまとめます。最初につなぐ2部署は、ここから決まります。
  2. 標準に合わせる範囲を経営が決める:各部署の要望を並べ、標準機能に業務を合わせるもの、作り込むものを仕分けます。最終判断は部署長ではなく経営者にお願いしています。
  3. 3〜5年後の人数と拠点から逆算する:人数が大きく増える、拠点や海外取引が増える見込みなら、NetSuiteも同じ土俵で比べます。Odooで収まるなら、Odooで進めます。
  4. 最初の2部署で、数字が合うかを確かめる:まず数字が同じ場所で見える状態をつくります。次に差の理由が分かる状態へ進みます。そこまで確かめてから、次の部署に広げます。

転記の経路の書き出し方は、業務フローの書き方——部署をまたぐモノと情報の流れを1枚にで手順を紹介しています。NetSuiteが候補に入る規模感は、NetSuiteは中小企業でも使える?が比べるときの材料になります。

業務が固有でパッケージに乗らないと分かれば、AIスクラッチ開発も選択肢です。ライセンス費用はかかりませんが、開発費と保守費が別途かかることも含めてお伝えします。

部署をつなぐときによくある2つの失敗

失敗1:部署ごとの要望をすべて聞いてしまう

各部署の意見を平等に扱うほど、標準機能から離れていきます。標準に合わせる範囲は、経営が先に決めてください。

失敗2:全部署を一度に統合しようとする

部署が多いほど、一度に進めるプロジェクトは複雑になります。2部署ずつ広げるほうが確実です。

よくある質問

11〜30名なら、専任のプロジェクト担当が必要ですか?

専任でなくて構いませんが、判断できる窓口は必要です。部署間の調整が生じるため、窓口には経営に近い立場の人が向いています。

どの部署から着手すべきですか?

手作業の転記がいちばん多い部署間から着手するのが基本です。最初につなぐ2部署を見極めるの表で、自社に近い症状を探してみてください。

全部署を統合するのに、どれくらいの期間がかかりますか?

業務範囲とカスタマイズの度合いで大きく変わります。段階的に進める場合、1つの部署間の統合ごとに数か月単位で見込むのが一般的です。

この規模でも、パーツ導入の考え方は当てはまりますか?

当てはまります。部署の数が増えても、一度にすべてを統合する必要はありません。もっとも詰まっている部分から順に統合していく進め方は変わりません。

11〜30名の会社でOdooを使うメリットとデメリットは何ですか?

部署の情報をつなげる一方で要望を聞きすぎると費用と期間が膨らみます。

販売・在庫・会計などのアプリが同じデータで動き、分断が深刻な2部署から段階的に広げられます。Enterprise版なら、会計を含む主要機能が標準でそろいます。

一方で、Community版は会計がフル機能ではありません。部署ごとの要望をすべて受け入れると、費用と期間が膨らみます(11〜30名の会社でOdooを使う良い点と、気をつけること)。

まとめ

11〜30名は、部署ごとの担当が専任化し、部署間の情報の壁が表に出る規模です。

  • 部署ごとに別のツールが定着し、情報がつながらなくなる
  • もっとも分断が深刻な2部署から、段階的に統合するのが現実的
  • 会計を含む複数機能が必要になるため、Enterprise版が軸になりやすい
  • 部署ごとの要望をすべて受け入れると、カスタマイズが費用と期間を押し上げる
  • 実際に操作する人数を数えてから、見積もりを相談する
  • Odooの良さは部署の情報を段階的につなげること。注意点は版の選び方と作り込みの量

1年後、月初の経理担当は営業に受注の一覧を聞きに行かず、同じ画面の数字から請求と締めを進めています。次にどの部署をつなぐかを、社内の会議で落ち着いて話し合えているはずです。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「うちの部署構成なら、どこから統合すべきか」という整理から、ご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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