開始30分前に、ようやく受付名簿が刷り上がる。「今日のセミナー、結局何人来るんでしたっけ」という会話が、開催日の朝に聞こえてくる会社は少なくありません。
もったいないのはその後です。ファイルを保存した時点で、その回の情報は動きを止めます。「この方は過去3回いらしている」という事実は、どこにも残りません。
変えるのは、記録の単位です。Odooでは、申込と参加を開催回ごとの名簿ではなく、顧客ごとの参加履歴として残します。申込者はCRMの顧客1件になり、2回目以降の申込はその顧客の履歴に積み上がります(参加履歴を顧客に紐づける)。
たとえば次のことが変わります。
- メールや電話の申込も同じ場所に登録し、名簿を後からつくらずに済む
- 受付で、常連かどうかがその場で分かる
- 「3回以上来ている人だけ」と対象を絞って、次の案内を出せる
- 何度も来ている人の履歴から、営業が接触する時期を判断できる
ただし、開催が年に数回で、顧客管理の仕組みがすでに社内で回っているなら、今の運用を整えるほうが合う場合もあります。集客の規模が大きく、販売のデータとつないだ配信まで仕組みにしたいなら、NetSuiteも比較に入れます。
仕組みにする意味が決まるのは、その履歴を次の集客にどう生かすかです。進め方は参加履歴を集客に生かすまでの進め方に、良い点と注意点は参加履歴を顧客ごとに残す良い点と、気をつけることにまとめました。
CommunityとEnterpriseの区別について
この記事の中心になるCRM(顧客・商談の管理)とメール配信の基本機能は、Community版(無料)とEnterprise版(有償)のどちらでも使えます。一方、シナリオに沿って自動でフォローの配信を行うマーケティングオートメーションは、Enterprise版が前提です。
セミナーの運営で、こんな場面はありませんか
セミナーの案内を出した翌日から、申込は3つの経路で入ります。Webの申込フォーム、営業担当あてのメール、そして代表電話です。集まる先が違うので、誰かが手で一覧に寄せる作業が発生します。
当日の受付では、名簿にない人が現れます。名刺を受け取り、あとで一覧に足す。お礼のメールの送り先も、その回の名簿だけです。
半年前に来てくれた人が今回も申し込んでいたことに、誰も気づきません。
セミナーの申込管理に手間がかかる3つの理由
理由1:申込の入口が複数あり、1か所に集まらない
フォーム、メール、電話。入口が3つあれば集約作業も3回発生し、手で寄せる限り、開催のたびに同じことが繰り返されます。
理由2:回ごとにファイルを作るので、同じ人が別人になる
人ではなく開催回を単位に記録するため、同じ人が何度も新規の行として増えます。名寄せ(同じ人の記録を1つにまとめる作業)は、誰かが気づいたときしか行われません。
理由3:終わったあとのフォローが、担当者の判断に委ねられる
お礼のメールを誰に送るかは、名簿を見た人が決めます。手が空いていれば手厚く、忙しければ一斉送信だけ。回ごとに対応の質が変わります。
自社は当てはまるか:会議で使える5つの確認
- □ 申込の経路が2つ以上あり、誰かが手で一覧にまとめている
- □ 受付名簿が完成するのは、開催の前日か当日になってからだ
- □ 「この方は前にも来ていますか」と聞かれても、すぐに答えられない
- □ お礼や次回案内の送り先は、その回の名簿だけで決めている
- □ セミナーの参加者と、その後の商談が結びついているか分からない
多く当てはまるほど、手間の原因は担当者ではなく、記録の単位のほうです。ほとんど当てはまらなければ、無理に変える理由はあまりありません。
Odooでセミナー・イベントの管理はこう変わる
Odooでは、記録の単位が「開催回ごとの名簿」から「顧客ごとの参加履歴」に置き換わります。
申込の受け口を1つにする
Webからの申込を受ける仕組みを1本用意し、メールや電話の分も同じ場所に登録します。名簿を後からつくる作業は要りません。詳しくはOdooのイベント管理で書いています。
参加履歴を顧客に紐づける
申込者の扱いは、新しい名簿の行ではなくCRM(顧客・商談の管理)の顧客1件です。2回目以降の申込は、その顧客の履歴に積み上がります。
次の案内を履歴から組み立てる
「前回参加した人だけ」「3回以上来ている人だけ」と対象を絞ってメール配信につなげ、案内の内容も相手に合わせて変えられます。
AIで代替できる工程:申込者リストの表記ゆれを照らし合わせ、既存の顧客と同一人物らしい候補を挙げる部分です。AIによる照合や下書き提示で、人手を減らせる余地があります。
Odooの対応範囲(Community版/Enterprise版)
| 機能 | Community版 | Enterprise版 |
|---|---|---|
| CRM(顧客・商談の管理) | 使える | 使える |
| メール配信の基本機能 | 使える | 使える |
| シナリオに沿った自動フォロー配信(マーケティングオートメーション) | 対象外 | 使える |
| 参加者一覧の集計表示 | 使える | 使える |
セミナーの申込と参加履歴そのものは、Odooで扱えます。表にない細かな機能の版ごとの線引きは、ここでは断定しません。
版ごとの対応範囲は改定されることがあります。導入を検討する段階で、Odoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。
セミナーの参加履歴を集客に生かすまでの進め方
ベンチャーネットがセミナー管理のご相談で最初に聞くのは、機能のことではありません。何を残せば経営の判断に使えるかを、次の順で決めていきます。
ステップ1:参加履歴を何の判断に使うかを決める
新規の見込み客を集めたいのか、既存顧客との関係を保ちたいのかで、残すべき項目が変わります。まず履歴を見える状態にし、次に傾向が分かる状態にし、最後に売上につなげる。この順番を最初に共有します。
ステップ2:申込の入口と、手で寄せている人を洗い出す
調べるのは、フォーム、メール、電話のどこから何件入り、誰が一覧に寄せているかです。受け口を1つにしたとき、どの作業が消えるかがここで見えます。
ステップ3:過去の名簿は範囲を区切って取り込む
古いファイルを一度に流し込むと、重複した顧客が大量に生まれます。直近1年分など範囲を区切り、名寄せしてから入れるのが早道です。
ステップ4:申込項目を絞り、標準機能のまま1回開催する
聞きたいことを詰め込むと申込の途中で離脱されるので、運営に必要な項目だけに絞り、残りは参加後のアンケートに回します。Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で1回回し、足りない点を判断するのはそのあとです。
ステップ5:合わないなら、合わないとお伝えする
開催が年に数回で、顧客管理の仕組みがすでに社内で回っているなら、Odooを入れずに今の運用を整えるほうが合う場合もあります。判断の軸は製品ではなく、開催の規模と目的です。
反対に、集客の規模が大きく、販売のデータとつないだ配信まで仕組みにしたい会社なら、NetSuiteも比較に入れます。考え方はNetSuiteで集客を自動化するにはが詳しいです。
参加履歴を顧客ごとに残す良い点と、気をつけること
記録の単位を顧客に変えたときに得られることと、先に知っておきたい負担を並べます。
良い点は、次の4つです。
- 名簿を後からつくらない:申込の受け口を1つにし、メールや電話の分も同じ場所に登録する
- 常連かどうかがその場で分かる:2回目以降の申込は、その顧客の履歴に積み上がる
- 案内の対象を絞れる:「前回参加した人だけ」「3回以上来ている人だけ」と絞ってメール配信につなげる
- 営業の判断に使える:何度も来ている人ほど関心が高いと、履歴から読み取れる
気をつけることは、次の4つです。
- 自動フォロー配信はEnterprise版が前提:CRMとメール配信の基本機能は、Community版でも使える
- 過去の名簿を一度に流し込まない:重複した顧客が大量に生まれるので、範囲を区切って名寄せしてから入れる
- 申込項目を詰め込まない:聞きたいことを詰め込むと、申込の途中で離脱される
- 開催が少ないなら急がない:顧客管理の仕組みが社内で回っていれば、今の運用を整えるほうが合う場合もある
両方を1枚の図に並べました。
どの機能がどちらの版かは、Odooの対応範囲の表で確かめられます。
よくある質問
表計算ソフトでの管理から、すぐに切り替えられますか?
次の1回分から切り替えられます。新しい形で受け付け、過去分は後から整理する進め方が現実的です。全部を同時に移す必要はありません。
Community版だけでも参加履歴は残せますか?
残せます。顧客の情報とやり取りの記録は、Community版のCRMでも扱えます。シナリオ配信を自動で回す場合は、Enterprise版が前提です。
当日に飛び込みで来た人はどう扱いますか?
その場で申込者と同じ扱いで1件登録し、参加済みとして記録します。あとで名簿に書き足す必要はありません。
参加履歴は、営業の成果にどうつながりますか?
次回の案内先の絞り込みや、営業が接触する時期の判断に使えます。何度も来ている人ほど関心が高いと、履歴から読み取れるからです。考え方は「固客化」とはの記事でも触れています。
セミナーの参加履歴を顧客ごとに残すメリットは何ですか?
常連かどうかがその場で分かることです。2回目以降の申込は、その顧客の履歴に積み上がります。「前回参加した人だけ」と対象を絞って、次の案内をメール配信につなげることもできます。
一方で、シナリオに沿った自動フォロー配信はEnterprise版が前提です。詳しくは参加履歴を顧客ごとに残す良い点と、気をつけることにまとめました。
まとめ:セミナー管理は、記録の単位を顧客に変える
セミナー運営の負担は、記録の単位を変えるだけで小さくできます。
- 申込の入口を1か所にまとめると、名簿づくり自体がなくなる
- 参加履歴を顧客に紐づけると、常連かどうかがその場で分かる
- CRMとメール配信の基本機能は、Community版とEnterprise版のどちらでも使える
- シナリオに沿った自動フォロー配信は、Enterprise版が前提になる
1年後、12回目のセミナーの朝に、受付名簿を慌てて刷り直す人はいません。手元にあるのは12個のファイルではなく、誰が何回来て、どのテーマに反応したかが1本につながった参加履歴です。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「セミナーの参加履歴を顧客情報として残すには、どこから手をつけるべきか」という整理から、ご相談を承っています。
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