「その話、前の担当の方にもうお伝えしましたけど」。担当が変わった直後の訪問で、お客様からこう言われたことはないでしょうか。
お客様から見れば、同じ説明を二度させられたことになります。後任者の記憶力が悪いわけではありません。前任者の頭の中にあった情報が、会社に残っていなかっただけです。引継ぎトラブルの多くは、仕組みの側から生まれます。
防ぐには、2つを同じ案件にそろえておきます。顧客とのやりとりの履歴と、次に何をいつまでにするかという次回アクションです。片方だけでは引き継げません。OdooのCRMなら、どちらも同じ商談に置けます。
そろっていれば、引継ぎは担当の付け替えで済みます。後任を割り当てれば、経緯も未処理のアクションもそのまま移ります(OdooのCRMでの変わり方)。
たとえば、次のことが変わります。
- 担当が替わった初回の訪問でも、前回の話から切り出せる
- 「来月あらためて連絡する」が、期日が来れば手元に上がる
- 口頭の申し送りは、背景を補う程度で済む
- 探す時間と、報告の作り直しが減る
ただし、入力を個人の努力に任せると、書く人と書かない人が混ざります。記録を見ながら進める場もあわせて作ります。良い点と注意点は、引き継げる仕組みの良い点と、気をつけることに並べました。
では、なぜ引継ぎは口頭の申し送りで終わってしまうのでしょうか。原因は引継ぎトラブルが起きる3つの理由にあります。
CommunityとEnterpriseの区別について
顧客と商談の管理、活動の記録といったCRM(顧客との関係を管理する仕組み)の基本機能は、Community版でもEnterprise版でも使えます。ただし複数アプリを横断したダッシュボードで営業全体を見渡すには、Enterprise版のスプレッドシート機能が前提になります。
営業の引継ぎで、こんな場面はありませんか
「引継ぎ資料は用意しました」と渡されたのが、取引先の一覧表だった。連絡先と昨年の売上は載っているものの、いつ誰と何を話したかは一行も書かれていない。
その結果、去年断られた提案をもう一度持ち込んでしまう。あるいは「来月あらためてご連絡します」という約束を誰も知らず、半年後に電話をかけてしまう。
営業のタスクの忘れ防止も根は同じです。忘れたのではなく、はじめからどこにも書かれていなかった。そういう例が少なくありません。
自社に当てはまるかのチェックリスト
次のうち2つ以上当てはまれば、引継ぎは個人の記憶に頼っている状態です。
- □ 担当者が休むと、その顧客の直近の状況をだれも答えられない
- □ 引継ぎ資料が、取引先一覧と売上の表だけで終わっている
- □ 「次にいつ連絡するか」を知っているのは担当者本人だけ
- □ 商談の経緯は、担当者個人のメールを転送してもらわないと追えない
- □ 退職や異動のあと、連絡が途切れた取引先が出たことがある
営業の引継ぎトラブルが起きる、3つの理由
理由1:やりとりの記録が個人の持ち物になっている
商談の経緯は、担当者のメールボックスと手帳に入っています。どちらも本人しか開けません。会社として見に行ける場所が、そもそもないのです。
理由2:「次に何をするか」を書き残す習慣がない
次の一手は担当者の頭の中にあり、書き残すのは受注や失注といった結果だけ。だから、進行中の案件ほど引き継げません。
理由3:引継ぎが口頭の申し送りで終わっている
30分の打ち合わせで数十社を口頭で説明し、後任がメモを取る。抜けが出て当然です。忘れる人が悪いのではありません。忘れても止まらない置き場がないことが問題です。
OdooのCRMでは、引継ぎがこう変わる
やることは、やりとりを案件に紐づけて残すことと、次回アクションを同じ場所に置くことの2つです。
やりとりを案件ごとに集める
取引先と商談を登録し、訪問や電話の内容をその商談に紐づけて残します。記録の置き場は、担当者の受信箱ではなく案件です。
次回アクションを期日と担当者つきで残す
「来月あらためて連絡する」を、期日と担当者を付けた予定として同じ案件に置きます。期日が来れば手元に上がるので、思い出す作業が要りません。
引継ぎは担当の付け替えで済ませる
後任を割り当てれば、経緯も未処理のアクションもそのまま移ります。口頭の申し送りは、背景を補う程度で十分です。
AIで代替できる工程もあります。過去のやりとりを通して読み、引継ぎ用の要約を下書きする部分です。AIによる文章生成で人手を減らせる余地があります。属人化した仕事を「引き継げる型」に変える考え方は、会社は何を覚えているかで書いています。
OdooのCRMで使える範囲(Community版/Enterprise版)
| やりたいこと | Community版 | Enterprise版 |
|---|---|---|
| 顧客・商談の管理 | 使える | 使える |
| 訪問や電話の記録を案件に紐づける | 使える | 使える |
| 次回アクションを期日つきで残す | 使える | 使える |
| 担当者の付け替えによる引継ぎ | 使える | 使える |
| 複数アプリ横断のダッシュボードで俯瞰 | スプレッドシート機能が対象外 | 使える |
| サポート・ホスティング・バージョンアップ | 自社責任 | 含まれる |
版ごとの対応範囲は改定されることがあるため、導入を検討する段階で、Odoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。
機能の詳細はOdooのCRM、考え方はSFAとは何かもご覧ください。
引き継げる仕組みの良い点と、気をつけること
得られることと、先に知っておきたい負担を並べます。版で違う点は、その版を書き添えました。
良い点は、次の5つです。
- 同じ説明を二度させない:やりとりが案件に紐づいて残り、後任がその日から動ける
- 思い出す作業が要らない:次回アクションに期日と担当者を付けておけば、期日が来れば手元に上がる
- 引継ぎが担当の付け替えで済む:後任を割り当てれば、経緯も未処理のアクションもそのまま移る
- 探す時間と作り直しが減る:記録を書く場所が1か所に決まる
- 基本機能は両版で使える:顧客・商談の管理、活動の記録、次回アクション、担当の付け替えは、Community版でも使える
気をつけることは、次の4つです。
- 書く場づくりが要る:入力を個人の努力に任せると、書く人と書かない人が混ざる
- 入力欄を増やしすぎない:網羅的に作ると現場は書かなくなるので、記録項目は2点に絞る
- 過去の経緯は拾う範囲を決める:個人のメールに埋もれた経緯は、どこまで拾うかを先に決める
- 横断の俯瞰はEnterprise版:複数アプリを横断したダッシュボードはスプレッドシート機能が前提で、Community版は対象外
両方を1枚の図に並べました。
書く場づくりと記録項目の絞り方は、引継ぎを口頭で終わらせないための進め方の2と4で扱います。
引継ぎを口頭で終わらせないための進め方
ベンチャーネットがこのテーマで支援するときは、ツールの設定より先に「何を残せば引き継げるか」を決めます。順番は次のとおりです。
- 直近の引継ぎを1件ふり返る:最近の異動や退職で、後任が困ったことを具体的に聞き取ります。欠けていたのが経緯なのか、次の約束なのかで、残す中身が決まります。
- 記録項目を2点に絞る:「いつ誰と何を話したか」と「次に何をいつまでに」だけにします。入力欄を網羅的に作ると、現場は書かなくなるためです。
- 標準機能のまま小さく試す:活動の記録と予定は、Odooの標準機能で足ります。業務を標準に合わせるFit to Standardの考え方で、まず1チームで回します。
- 書いてある前提の場を作る:週次の営業会議を、この記録を見ながら進めます。入力を個人の努力に任せると、書く人と書かない人が混ざるからです。
- 担当の付け替えで試験する:実際に1社の担当を替え、後任が記録だけで次の連絡をできるかを確かめます。
今の仕組みのまま続けたほうがよい部分が見つかれば、それもそのままお伝えします。残し方の考え方は情報共有の基本でも取り上げています。営業を人数ではなく仕組みで伸ばす話をまとめたのが、営業は、人数ではなく「仕組み」で伸ばすです。
よくある質問
記録を残す手間が増えて、営業の時間が減りませんか?
差し引きで、営業の時間が減るとは限りません。書く場所が1か所に決まると、探す時間と報告の作り直しが減るからです。
Community版だけでも引継ぎの仕組みは作れますか?
作れます。顧客・商談の管理と活動の記録は両版で使えます。全社を見渡したくなった段階で、Enterprise版を検討してください。
過去のやりとりは移行できますか?
取引先や商談の基本情報は、整えれば取り込めます。個人のメールに埋もれた経緯は、どこまで拾うかを先に決めてください。
少人数の会社でも意味はありますか?
あります。人数が少ないほど、1人の退職で失われる情報の割合は大きくなります。小さい組織のほうが効果を実感しやすい領域です。
営業のタスクの忘れを防ぐには、どうすればよいですか?
次回アクションを期日と担当者つきで案件に残します。
「来月あらためて連絡する」を、期日と担当者を付けた予定として同じ案件に置きます。期日が来れば手元に上がるので、思い出す作業が要りません。この使い方は、Community版でもEnterprise版でもできます(OdooのCRMでの変わり方)。
まとめ:営業の引継ぎトラブルは、置き場の設計で減らせる
営業の引継ぎトラブルは、人の注意力ではなく置き場の設計で減らせます。
- 履歴と次回アクションは別物で、両方そろって初めて引き継げる
- 記録の置き場は担当者の受信箱ではなく、案件そのものにする
- 次の一手は期日と担当者を付け、思い出さなくても上がる形にする
- 顧客・商談の管理はCommunity版でも使え、横断の俯瞰はEnterprise版が前提
人は必ず忘れます。忘れない人を探すより、忘れても止まらない仕組みを用意するほうが現実的です。
1年後、担当が替わった初回の訪問で、後任が「前回は〇月に、この件でお話しされていましたね」と切り出せる。お客様に同じ説明を二度させない営業は、記録の置き場を決めるところから始まります。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「営業の引継ぎで毎回困っているが、何から記録し始めればよいか」という整理から、ご相談を承っています。
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