Odooの商品検索と売れ筋分析|型番を覚えない・月末に集計しない

「あの商品の型番、なんだったっけ」。事務所でそう声が上がり、倉庫歴の長い社員のところへ聞きに行く。中小の卸売や小売では、よく見かける光景です。

月末には、売れ筋を出すために販売と在庫の数字を表計算ソフトに貼り付けて見比べる。担当者が半日そこに座っている会社もあります。

どちらも、本来はやらなくていい作業です。Odoo(オドゥー)で商品台帳を整えれば、型番を覚える作業は検索の設計で消えます。集計する作業も、データが1か所にあれば消えます。

各アプリには、一覧を集計軸で組み替えたり、グラフで見たりする機能があります。商品を管理する在庫・販売の基本機能と、各アプリの中での集計は、無料のCommunity版でも使えます(商品検索・売れ筋分析の対応範囲)。

商品台帳が整うと、たとえば次のことが変わります。

  • うろ覚えの商品でも、カテゴリと属性の条件で絞り込める
  • 受注の電話を受けた新人が、通称のまま商品を引いて在庫まで答える
  • 誰も貼り付け作業をしないまま、前月の売れ筋と動かない在庫が並ぶ
  • 旧コードを検索の手がかりに残したまま、新しい分類を重ねられる

ただし、複数のアプリをまたぐ画面を表計算で自由に組むなら、有償のEnterprise版が要ります。分類を決めずに集計だけ整えても、数字は信用されません。

では、そもそも商品が検索で見つからなくなるのはなぜか。原因は件数の多さとは別のところにあり、手間が生まれる3つの理由で説明しています。

CommunityとEnterpriseの区別について

在庫と販売の基本機能、および各アプリの標準的な一覧・ピボット・グラフによる集計は、両版で使えます。あらかじめ用意された標準のダッシュボードも両版で見られます。複数のアプリをまたぐダッシュボードを表計算で自由に組むのは、Enterprise版のスプレッドシート機能が前提です。

目次

こんな場面はありませんか

受注の電話で、商品名をあいまいに聞き取る。似た名前が3つ出てきて、どれが正しいか分からない。結局、倉庫の社員に内線で確認します。その社員が休みの日は、確認そのものが止まってしまう。

月末はさらに重い作業が待っています。何が売れて何が動かなかったかを出すために、複数のファイルを開いて並べる。品番の表記が違えば手で直し、数字が合わなければ原因を探す。結果が出た頃には、もう翌月が始まっています。

「覚える」と「集計する」はどこへ消えるか 上は、型番をベテランの記憶に頼り、売上と在庫が別ファイルで、探す時間と月末の突き合わせが生じている状態。下は、分類と別名で誰でも引け、売上も在庫も同じ台帳の上にあり、探さない・貼り付けない状態。 「覚える」と「集計する」は どこへ消えるか いまの状態 型番はベテランの記憶が頼り 売上と在庫は別ファイル → 探す時間と月末の突き合わせ つながった状態 分類と別名で誰でも引ける 売上も在庫も同じ台帳の上 → 探さない・貼り付けない 記憶と転記に頼っている工程ほど、 置き換えの効果が大きい
「覚える」と「集計する」はどこへ消えるか

次の項目のうち、2つ以上に当てはまるなら、Odooでの3つの対策で手間が減りやすい状態です。会議でそのまま読み上げて使えます。

  • □ 特定の社員が休むと、商品の確認や受注が止まる
  • □ 同じ商品を、営業・倉庫・経理が別の名前で呼んでいる
  • □ 商品一覧に、廃番や重複した登録が残っている
  • □ 売れ筋を出すのに、毎月ファイルの貼り付けと突き合わせをしている
  • □ 月次の集計結果が出るのは、翌月に入ってからだ

なぜ商品が見つからず、集計の手間が生まれるのか

理由1:商品の呼び名が部署ごとに違う

営業は通称、倉庫は略号、経理は正式名称。同じ商品に三通りの言い方があると、誰の言葉で検索しても引っかかりません。「人に聞くのが早い」状態が、そのまま固まってしまいます。

理由2:分類を決める前に登録を始めた

カテゴリ(商品の大分類)や属性(色・サイズなどの特徴)を後回しにして、登録を始めてしまう。絞り込む手がかりが名前だけになり、件数が増えるほど探せなくなります。

理由3:売上と在庫が別の場所にある

受注の記録と在庫の記録が別ファイルだと、売れ筋を見るには両方を並べる必要があり、この見比べる作業が人の手に残ります。毎月、同じ手順の繰り返しです。

3つとも、件数の問題ではありません。商品に持たせる情報と、データの置き場所の問題です。

Odooの商品検索と集計ではこう変わる

やることは、探すための手がかりを商品に持たせること、登録のルールを決めること、集計をデータがある場所で行うことの3つです。

名前以外の手がかりで探せるようにする

商品を登録するとき、社内での呼び名や旧型番も一緒に持たせます。カテゴリと属性を決めておけば、うろ覚えでも条件で絞り込めます。誰の言葉で探しても、同じ商品にたどり着く状態が目標です。

登録のルールを先に決める

商品コードの付け方とカテゴリの階層を、最初に紙一枚で決めます。登録する人が複数いても表記が揺れにくくなり、あとからの整理が要りません。

集計は台帳の上で行う

受注も在庫も同じ仕組みに入っていれば、貼り付けは不要です。一覧を集計軸で組み替えたり、グラフで見たりする機能が各アプリにあります。詳しくはOdooの在庫管理でできることとOdooの販売管理(Sales)の解説もご覧ください。

探さない・集計しないための3ステップ ①呼び名を集める(通称・略号・旧型番を1つの商品にひもづける)、②分類を決める(カテゴリと属性を登録前に紙一枚で確定)、③その場で集計(売上と在庫を同じ台帳へ入れ、貼り付け作業をなくす)の順。①②を飛ばすと、③の集計結果が信用されなくなる。 探さない・集計しないための 3ステップ ①呼び名を集める 通称・略号・旧型番を 1つの商品にひもづける ②分類を決める カテゴリと属性を 登録前に紙一枚で確定 ③その場で集計 売上と在庫を同じ台帳へ 貼り付け作業をなくす ①②を飛ばすと、 ③の集計結果が信用されなくなる
探さない・集計しないための3ステップ

①と②を飛ばして③だけ整えても、集計の数字は信用されません。

AIで代替できる工程:表記の揺れた商品名を見比べ、名寄せ(同じものを1件にまとめること)の候補を挙げる部分です。AIによる文字列の照合で、人手を減らせる余地があります。卸売・小売でのAIの使いどころは、在庫が合わない、発注が後手に回る——卸売・小売業の「読めなさ」をAIで軽くするで扱っています。

商品検索・売れ筋分析の対応範囲(C/E別)

やりたいことCommunity版Enterprise版
在庫・販売の基本機能で商品を管理する○○
1つのアプリの中で一覧・ピボット・グラフで集計する○○
複数のアプリをまたぐダッシュボードを表計算で自由に組む-○(スプレッドシート機能が前提)

版ごとの対応範囲は改定されることがあります。導入を検討する段階で、Odoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。

1つのアプリの中で売れ筋を集計するだけなら、基本機能で足ります。ここはよく誤解される点です。アプリに応じて用意される標準のダッシュボードは、両版で見られます。販売と在庫を自社の形で1画面に組みたくなった段階で、初めてEnterprise版が視野に入ります。

Odooで商品検索と集計を整える良い点と、気をつけること

商品台帳をOdooで整えたときの良い点と注意点は、次のとおりです。使える版は、項目ごとに添えています。

良い点

  • 誰の言葉でも同じ商品にたどり着く:社内の呼び名や旧型番を商品に持たせ、カテゴリと属性で絞り込める。商品を管理する在庫・販売の基本機能は、両版で使える
  • 月末の貼り付けが要らない:受注も在庫も同じ仕組みに入っていれば、データがある場所でそのまま集計できる
  • アプリの中の集計は両版で使える:一覧・ピボット・グラフによる集計と、標準のダッシュボードは、Community版でも見られる
  • 今の商品コードを生かせる:旧コードを検索の手がかりとして残し、新しい分類を上から重ねる進め方もある

気をつけること

  • 横断の画面はEnterprise版が前提:複数のアプリをまたぐダッシュボードを表計算で自由に組むには、Enterprise版のスプレッドシート機能が要る
  • 登録のルールを先に決める手間がかかる:商品コードの付け方とカテゴリの階層を、登録を始める前に決めておく
  • 古い一覧をそのまま持ち込まない:廃番や重複が残ったままだと、探しにくさまで引き継ぐ
  • 属性を増やしすぎない:現場が入力しきれない項目は空欄が並び、集計に使えない

両方を並べると、次の図のとおりです。

Odooで商品検索と集計を整える良い点と、気をつけること 良い点は、呼び名・旧型番・分類で誰でも同じ商品にたどり着く、月末の貼り付けが要らない、アプリの中の集計は両版で使える、今の商品コードを生かせること。気をつけることは、アプリをまたぐ画面を自由に組むのはEnterprise版が前提、登録のルールを先に決める手間、古い一覧をそのまま持ち込まない、属性を増やしすぎないこと。 商品検索と集計の良い点と注意点 良い点 誰の言葉でも同じ商品に届く 呼び名・旧型番・分類で絞り込む 月末の貼り付けが要らない 受注も在庫も同じ仕組みで集計 アプリの中の集計は両版で使える 一覧・ピボット・グラフ 今の商品コードを生かせる 旧コードを検索の手がかりに残す 気をつけること 横断の画面はEnterprise版が前提 表計算で自由に組むときに必要 登録のルールを先に決める コードの付け方とカテゴリの階層 古い一覧をそのまま持ち込まない 廃番や重複を除いてから移す 属性を増やしすぎない 空欄の多い項目は集計に使えない 注意点の多くは、始める順番で軽くなる
商品検索と集計を整える良い点と、気をつけること

注意点の多くは、始める順番で軽くなります。順番は商品台帳を整えるまでの進め方にまとめました。

商品マスタを「探せる・数えられる」状態にするまでの進め方

ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、製品ありきではなく商品台帳の中身から話を始めます。この場面で確かめる順番は、次のとおりです。

  1. いま生きている商品を数える:廃番や重複を除いて、実際に動いている商品だけを選びます。古い一覧をそのまま持ち込むと、探しにくさまで引き継がれるからです。
  2. 呼び名を1枚にまとめる:営業・倉庫・経理の呼び名を並べ、どれを正式名にし、どれを検索の手がかりに残すかを決めます。
  3. 分類は数項目から始める:属性を最初から増やすと、現場が入力しきれず空欄が並びます。空欄の多い項目は集計に使えないため、絞り込みで本当に使う項目だけにします。
  4. 標準の集計で足りるかを試す:まず各アプリ内の一覧・ピボット・グラフで月次の問いに答えられるかを見ます。Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)の順番です。
  5. 足りない部分だけを次の判断に回す:横断で見たい要件が残れば、Enterprise版を検討します。商品点数や拠点の規模から見てOdooが合わない場合は、その判断も率直にお伝えします。

見える化(数字が出る)の次に、わかる化(数字の意味が分かる)へ進む。この順を守れば、集計の仕組みが「作ったけれど見ない画面」になりにくい。考え方はOdooとFit to Standardでも解説しています。見える化した数字を判断に使う段階は、「わかる化」——見える化した数字を、意思決定に変えるが参考になります。

よくある質問

商品数が数万件でも検索できますか?

できるかどうかは、件数より分類と呼び名の整い方で決まります。まず分類の設計から始めるのが近道です。

Community版でも売れ筋の分析はできますか?

1つのアプリの中で見る範囲なら、できます。各アプリの標準的な一覧・ピボット・グラフによる集計は、両版に共通の機能です。

表計算ソフトでの集計は続けられますか?

必要な期間は併用できます。ただし同じ数字が二か所にある状態が長く続くと、どちらが正しいか分からなくなります。併用をやめる時期を、最初に決めておくのが安全です。

商品コードを付け直す必要がありますか?

必ずしも必要ではありません。旧コードを検索の手がかりとして残しつつ、新しい分類を上から重ねる進め方もあります。

Odooで商品検索と売れ筋分析を整えるメリットは何ですか?

商品を探す時間と月末の集計作業が減ることです。

呼び名や旧型番、カテゴリと属性を商品に持たせれば、誰の言葉で探しても同じ商品にたどり着けます。受注も在庫も同じ仕組みに入っていれば、貼り付けなしで集計できます。
一方で、複数のアプリをまたぐダッシュボードを自由に組むには、Enterprise版のスプレッドシート機能が前提です(良い点と気をつけること)。

まとめ:商品検索と売れ筋分析は「覚えない・見比べない」で軽くなる

商品検索と商品分析は、どちらも「人が覚える」「人が見比べる」をやめれば軽くなります。

  • 探せない原因は件数ではなく、呼び名と分類の設計にある
  • 集計が手作業なのは、売上と在庫が別の場所にあるから
  • 在庫・販売の基本機能と各アプリ内での集計は、Community版でも使える
  • 複数アプリをまたぐダッシュボードを自由に組むのは、Enterprise版のスプレッドシート機能が前提

冒頭の「型番、なんだったっけ」は、誰かの記憶力の問題ではありませんでした。商品に持たせる情報の問題です。

1年後、受注の電話を受けた新人が、通称のまま商品を引いて在庫まで答えている。月初の会議には、前月の売れ筋と動かない在庫が、誰も貼り付け作業をしないまま並んでいる。組織づくりの考え方はOdooとデータドリブン経営もご覧ください。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「商品台帳の整理と月末の集計、どちらから手をつけると効果が出やすいか」という整理から、ご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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