「MAを入れれば、集客は自動で回る」
そう考えて一斉配信を始めた会社から、半年後によく聞く言葉があります。
「配信はできる。問い合わせも来る。でも、営業にも経営にも何も残っていない」
NetSuiteのMAとは、クラウドERPのNetSuiteに組み込まれた、マーケティングオートメーションの機能です。
MA(マーケティングオートメーション)は、見込み客の獲得・育成を自動化する仕組みを指します。
NetSuiteで集客を回す価値は、一斉配信そのものにはありません。
その後の1対1の個別メールに残る顧客の声が、営業・在庫・経営の判断まで、同じ顧客の記録でつながることにあります。
では、その声を、現場に手間をかけずにどう残すのか。
入力の画面を増やせば、現場は続きません。
この記事で分かること
- NetSuiteのMAでできることと、SFA・CRMとの役割の違い
- 個別メールが「宝」になる理由と、NetSuiteに普段のメールが残る仕組み
- ERP統合型のMAと、MA単体ツールの違い、費用の比べ方
- NetSuiteのMAが向く会社・向かない会社と、最初の90日の進め方
- 残した声をAIで読み解き、PSI会議や両利きの経営に届ける流れ
NetSuiteのMAとは|ERP統合型のMA
NetSuiteは、ERP(基幹業務を統合して管理するシステム)です。
会計・販売・在庫・営業・顧客管理を、1つの基盤で管理します。
MAも、その機能の1つとして組み込まれています。
MA単体のツールでは、顧客の情報はMAのツールの中にあります。
受注や請求、在庫の情報は、別のシステムにあります。
NetSuiteでは、見込み客のときの反応から、受注・請求・追加の注文までが、同じ顧客の記録に並びます。
「どの案内に反応した顧客が、どれだけ買っているか」を1か所で追えるのは、このためです。
MA・SFA・CRMの役割の違い
| 機能 | 役割 | 主な対象 |
|---|---|---|
| MA(本記事) | 見込み客を集め、育てる。集客の入口 | まだ商談になっていない見込み客 |
| SFA | 商談・営業活動を見える化し、需給の判断につなげる | 商談中の顧客 |
| CRM | 受注後の関係を深め、顧客の全体像を経営判断に活かす | 取引のある顧客 |
SFAは営業支援、CRMは顧客関係管理のことです。
3つは、同じNetSuiteの上でつながります。
営業の見える化はNetSuite SFAとはで、受注後の顧客関係はNetSuiteのCRMとはで解説しています。
公式サイトで案内されている主な機能
Oracle NetSuiteの日本語の公式サイトでは、MAの機能として次が挙げられています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
- キャンペーンの管理:Eメール・ダイレクトメール・イベントなどのキャンペーンを、1つのアプリケーションで管理・追跡・分析する
- セグメンテーション:属性・購買の傾向・応答のパターン・サポートの履歴にもとづいて、個別化したキャンペーンを行う
- ウェブフォーム:見込み客がフォームに入力すると、リードの情報がリアルタイムでNetSuite CRMに入る
- ROIの分析:キャンペーンの開始から最終の注文までの統計と投資対効果を分析する
セグメンテーションは、顧客を条件でグループに分けることです。
リードは、見込み客の情報を指します。
MAとSFAが同じ基盤にあるため、集めた見込み客は転記なしで営業の商談に引き継げます。
「MA×個別メール」とは|顧客の声が最も濃く残る場所
MAというと、一斉配信を思い浮かべがちです。
この記事の軸は、MA×個別メールという考え方にあります。
一斉配信を入口にしつつ、その後の一人ひとりとの個別メールまでを、1つの流れとして捉えます。
一斉配信は入口、個別メールが本番
一斉配信の役割は、新しい見込み客に最初のきっかけを届けることです。
そこから先の「いつ・誰と・何を話したか」は、1対1の個別メールで進みます。
架空の例で流れを見てみます。
- 展示会で名刺を交換した見込み客に、新製品の案内を一斉配信する
- 見込み客から「自社の設備でも使えるか」と返信が来る
- 営業が個別に回答し、設備の条件や導入の時期を聞き取る
- 見積の相談に進み、社内の検討の事情も分かってくる
一斉配信が担ったのは1だけです。
2〜4に、次の商談や製品の改善に使える声が詰まっています。
なぜ個別メールが「宝」なのか
「こういう課題で困っている」「ここが不満だ」「導入はこの時期で考えている」。
こうした声は、アンケートや一斉配信では得られません。
一対一のやり取りの中にだけ、現れます。
この声を残して使えれば、次の価値が生まれます。
- アップセル・クロスセル:過去のやり取りから、次の提案が見えてくる
- 担当者の引き継ぎ:経緯がすべて残り、引き継ぎがスムーズになる
- 顧客の理解:一人ひとりの課題やニーズを、データとして把握できる
アップセルは上位の商品、クロスセルは関連の商品を提案することです。
個別メールが活きない、よくある状態
多くの会社では、個別メールが担当者のメールボックスに埋もれています。
中身を知っているのは本人だけ。異動や退職で、そのまま失われます。
集客はMAツール、営業は別のSFA、顧客管理はまた別のCRMという会社も少なくありません。
ツールがばらばらだと、やり取りはどこにも一元的に残りません。
- 同じ顧客に、別の担当者が同じ案内を送ってしまう
- 過去に断られた理由を知らないまま、同じ提案をしてしまう
- 経営会議で「顧客は何に困っているか」を聞かれても、担当者の記憶に頼るしかない
どれも、担当者の努力ではなく、仕組みで防ぐべき問題です。
業種ごとに、個別メールに現れる声の例
次は、よくある内容を並べた例です(特定の会社の事例ではありません)。
| 業種 | 個別メールに現れやすい声 | 活かし方の例 |
|---|---|---|
| 製造業 | 仕様の相談、納期の不安、試作の感想 | 仕様の要望を集め、次の製品の企画に回す |
| 卸売業・商社 | 価格の相談、欠品の問い合わせ、他社との比較 | 欠品の問い合わせを、仕入の判断の材料にする |
| 小売業(BtoBの取引) | 陳列や販促の相談、売れ行きの報告 | 売れ行きの声を、発注の量の見直しに使う |
どの業種でも、声は「次の判断の材料」になります。
一斉配信の開封率だけを見ていては、この材料は集まりません。
NetSuiteに、普段のメールが残る仕組み
冒頭の問いへの答えが、ここにあります。
NetSuiteの記録から送ったメールに顧客が返信すると、返信はいつものメールアドレスに届きます。
同時に、その返信は連絡先と顧客の記録に自動で残ります。
(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「Sending Email from Records」、2026年9月確認)
Outlookを使う会社は、追加の機能(NetSuite Connector for Outlook)も使えます。
受け取ったメールと添付ファイルを、顧客や商談の記録に加えられます。
(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「NetSuite Connector for Outlook Overview」、2026年9月確認)
| 仕組み | 何が残るか | 営業担当者の操作 |
|---|---|---|
| NetSuiteの記録から送る | 送ったメールへの顧客の返信 | 送るときにNetSuiteの記録から送る |
| Outlookの連携の機能 | 受け取ったメールと添付ファイル | Outlookから記録に加える |
返信の往復がどこまで自動で残るかは、使い方で変わります。
設定の方法や対象になるメールの範囲は、自社の環境で事前に試してください。
普段どおりだから、現場に負担がかからない
MAやSFAが使われなくなる最大の理由は、入力の手間です。
専用の画面を開いて転記する作業は、忙しい現場では続きません。
| 場面 | 専用の画面に入力する運用 | 普段のメールが残る運用 |
|---|---|---|
| 顧客に返信する | メーラーで返信し、後で要点を転記する | メーラーで返信するだけ |
| 上長に報告する | 報告のために内容をまとめ直す | 上長が記録を見て、要点だけ聞く |
| 担当を引き継ぐ | 引き継ぎの資料を作る | 後任が過去のやり取りを読む |
| 次の提案を考える | 自分の記憶とメールを探す | 記録をたどり、AIで要約する |
転記とまとめ直しの手間が減るほど、記録は続きます。
記録が続けば、宝のデータもたまっていきます。
残す前に決めておく社内のルール
メールが残る仕組みは、使い方のルールとセットで効果を出します。
- 残す範囲:取引先とのやり取りは残し、社内だけのやり取りは対象外にする、など
- 見られる人:営業全員が見るか、担当と上長だけにするか
- 個人情報の扱い:顧客の担当者の情報を、どの目的で使うかを社内の方針とそろえる
- 件名と宛先の付け方:誰との何のやり取りかが、後から探して分かるようにする
ルールがなければ、残ったメールを誰も探せません。
細かくしすぎれば、現場の手間が増えて続きません。
最初は4つを1枚にまとめる程度で足ります。
展示会で集めた名刺から始める流れ
製造業・卸売業では、展示会が新しい見込み客の大きな入口です。
- 取り込む:名刺の情報を、展示会の名前と一緒にNetSuiteに登録する
- 分ける:関心のある製品や、会場で話した内容で、グループに分ける
- 配信する:グループごとに、お礼と次の案内を一斉配信する
- 拾う:返信が来た見込み客を、営業が個別にフォローする
- 振り返る:展示会ごとに、返信・商談・受注の件数を見る
展示会の後に、名刺が机に眠る。その状態を防ぐのが、この流れの目的です。
5つめの振り返りで、どの展示会が商談につながったかも見えてきます。
ベンチャーネットの公開事例では、キュリエ様の展示会後の作業が、約50時間からゼロになりました。
生成AIとの連携で、データ集計の手作業もほぼなくなっています。
展示会の後の手間は、時間で測ると効果が見えやすくなります。
ERP統合型のMAと、MA単体ツールの違い
| 比較軸 | NetSuite(ERP統合型のMA) | MA単体ツール(HubSpotなど) |
|---|---|---|
| MAの機能の単体の性能 | 標準的(必要十分) | 高機能。配信のシナリオの設計が豊富 |
| 顧客データの置き場所 | ERP本体(営業・顧客管理と同じ) | 別のシステム |
| 個別メールの蓄積 | 顧客の記録に返信が残る。Outlookからも加えられる | 専用ツール経由が基本 |
| SFA・CRMとの接続 | 同じ基盤でつながる | API連携が要る(費用・運用の手間) |
| AIとの親和性 | 高。残ったメールと取引のデータをまとめてAIに渡しやすい | 中。システムをまたいだデータの統合が要る |
| 初期の投資 | 中〜大(ERP全体への投資) | 小〜中(MAのライセンスのみ) |
| 他の機能への展開 | ERPの全機能に広げられる | そのつど連携の開発が要る |
MAの機能だけを比べれば、HubSpotなどの専用ツールが高機能な部分もあります。
一方、集めた声が営業・顧客管理・AI活用までつながる点では、ERP統合型に強みがあります。
「配信の機能の豊富さ」で選ぶか、「顧客の声が経営まで活きるか」で選ぶか。
どちらが正しいかではなく、自社の売り方に合うかどうかです。
個別の商談で売る会社ほど、声が経営まで活きるかの価値が大きくなります。
MA単体ツールとNetSuiteを併用する場合
すでにMA単体ツールを使っていて、NetSuiteをERPとして入れる会社もあります。
その場合は、次の3つを先に決めます。
- どちらを顧客情報の「正」とするか:取引のある顧客はNetSuite、見込み客はMAツール、など
- 何をどの向きに同期するか:見込み客が商談になった時点でNetSuiteに渡す、など
- 個別メールをどちらに残すか:両方に残すと、どちらが最新か分からなくなる
併用は、配信の機能を重視しつつ、取引のデータはERPにまとめたい会社には合理的です。
ただし、連携の開発と保守の手間がかかります。
連携の考え方は、NetSuiteとSalesforceは連携すべきか、一元化すべきかも参考になります。
費用は「MAの価格」ではなく「全体」で比べる
MA単体ツールは、MAのライセンスだけを見ると安く見えます。
| 費用の種類 | ERP統合型 | MA単体ツール+別の仕組み |
|---|---|---|
| MAのライセンス | ERPの費用に含まれる範囲がある | MAツールの費用 |
| SFA・CRM | 同じ基盤 | 別のツールの費用 |
| つなぐ費用 | 小さい | 連携の開発・ツールの費用 |
| 運用の手間 | 1つの基盤の管理 | 複数ツールの管理と、データの突き合わせ |
MAだけを使うなら単体ツールが有利なことが多く、営業・在庫までつなぐなら統合型が有利になりやすい。
これが大まかな傾向です。
NetSuiteを入れる場合は、導入の費用も見ておきます。
ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用には、大きな幅があります。
3名程度・1.5か月で150万円程度から、100名程度・1.5年で2億円程度(うち開発約7割)までです。
差を決めたのは、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数の4つでした。
MA単体ツールとの併用は、この「外部連携」を増やす選び方です。
事例の中身は、NetSuiteの料金・費用・ライセンス体系で扱っています。
判断の物差し|向いている会社・慎重に考える会社
| 評価軸 | 向いている会社 | 慎重に考える会社 |
|---|---|---|
| 業種 | 製造業・卸売業・小売業(BtoBの取引が中心) | BtoC専業で、大量配信のシナリオが事業の核 |
| 規模 | 年商20〜400億円規模の中堅・中小 | 業務がごく単純/大規模で複雑な要件 |
| 経営の課題 | 顧客の声を営業・経営判断まで活かしたい | メール配信の高度な自動化だけが目的 |
| 営業のやり方 | 個別メールでの商談・関係づくりが中心 | 個別の営業がほぼなく、Webで完結 |
| いまのシステム | 複数ツールの分断に困っている、Excelに限界 | 業界特化のMA・SaaSで完結している |
| 広げる意思 | ERP全体・AI活用を視野に入れている | MAの機能だけで十分 |
BtoC専業で、複雑な配信シナリオの自動化が目的なら、MA単体ツールが合います。
小さく始め、販売・CRMを低い費用でまとめたいなら、Odooも候補です。
比べ方はNetSuiteとOdooの販売・CRM・店舗で扱っています。
見込み客のリストが小さく、数人の営業で声を共有できているなら、いまはMAを入れずに共有のメールの運用を整えます。
目的ごとの選び方を図にすると、次のとおりです。
選ぶときの5つの軸
- 現場が無理なく使えるか:日々のメールを、普段の業務の中で続けられるか
- 小さく始めて広げられるか:必要な範囲から始め、定着してから広げられるか
- データを見える化・分析できるか:反応や履歴を、データで見て分析できるか
- 他の業務とデータがつながるか:同じ顧客の情報が、部門ごとに分かれないか
- 個別メールが残りAIに渡せるか:現場の負担なく残り、AIで読み解けるか
1〜4は、多くのMAツールで満たせます。
5つめは、製品の仕組みで差が出ます。
この記事が個別メールにこだわるのは、この差が経営に届く声の量を決めるからです。
デモでは、「普段のメールがどこに、どう残るか」を実際に見せてもらってください。
MAで見るべき指標
MAの成果は、配信の数ではなく、商談と受注までのつながりで見ます。
| 段階 | 指標の例 | 見るときの問い |
|---|---|---|
| 配信 | 開封・クリック | どの内容に反応があったか |
| 返信 | 返信の件数・返信までの日数 | 個別のやり取りが始まっているか |
| 商談 | 商談になった件数 | 返信から商談に進んだ割合はどうか |
| 受注 | 受注の件数と金額 | どのキャンペーンが売上につながったか |
| 継続 | 追加の注文・アップセル | 受注後も声を聞き続けているか |
開封率は、配信したメールが開かれた割合です。
NetSuiteでは、キャンペーンの開始から最終の注文までの統計を分析できると案内されています(1-2)。
最初から5段階すべてを追う必要はありません。
まずは「返信の件数」と「商談になった件数」の2つから始めると、現場の負担が小さく済みます。
情シスがいない会社の場合
情シス(社内の情報システムの担当)がいない会社でも、MAは始められます。
要になるのは、業務の担当者の中から、プロジェクトの窓口を1人決めることです。
- 窓口は、営業かマーケティングの実務が分かる人が向いている
- 設定の細部は、導入のパートナーに任せる
- 窓口の人は「何を残し、誰が何に使うか」を決めることに集中する
窓口の人が週に1回、残ったやり取りを見返すだけでも、使い道は見えてきます。
ERPの全体像は、NetSuiteとは?中堅・中小企業の経営者が知っておきたいクラウドERP入門をご覧ください。
これから選ぶ会社と、いまのMAを見直す会社
これからMAを選ぶ会社
最初に決めるのは、集めた声を「誰が・何に使うか」です。
営業の提案に使うのか、製品の企画に使うのかで、残す項目も見る人も変わります。
使い道が決まっていないと、MAを入れても配信の道具で終わりがちです。
あわせて、一斉配信のリストの件数と、商談で交わす個別メールの量を数えておきます。
営業とマーケティングが、同じ顧客の情報を見られる体制かどうかも見ておきます。
いまMAやExcelを使っていて、見直す会社
まず、個別メールがいまどこに残っているか(個人のメールボックスか)を調べます。
MA・SFA・CRMの間で、同じ顧客の情報が何か所にあるかも数えます。
データの移行はできます。
ただ、過去の分まですべて移す必要はありません。
これからのやり取りを確実に残すことを優先し、過去の分は重要な顧客に絞ります。
ばらばらだった集客・営業・顧客管理のデータを、1つの基盤に集め直す機会として使ってください。
| いまの状態 | 考えられる判断 |
|---|---|
| 配信の成果は出ているが、営業と情報がつながらない | MAは続け、ERPとの連携の範囲を決める |
| 配信もあまり使われていない | ツールより先に、配信の目的と担当を決め直す |
| MA・SFA・CRMが別々で、同じ顧客を何度も入力している | 基盤の統合を検討する |
| 基幹のERPの更新の時期が近い | MAも含めて、統合型を比べる好機 |
最初の90日|1業務・1つの指標に絞る
どちらの立場でも、最初の90日は1つの業務と1つの指標に絞ると進めやすくなります。
| 期間 | やること | 終わったときの状態 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 対象の顧客と営業担当を絞り、メールの起点とルールを決める | 数人の営業のやり取りが残り始める |
| 2か月目 | 残ったやり取りを週に1回見返し、使い道を試す | 引き継ぎや提案に使えた例が出る |
| 3か月目 | 見る指標を絞り、会議で使う | 経営会議で顧客の声が話題になる |
最初から全営業・全顧客に広げると、ルールの手直しが追いつきません。
一部で成果の例を作り、それを見せて広げるほうが定着します。
よくある3つの失敗
失敗1:「配信」で止まり、蓄積と活用まで設計しない
起きること:一斉配信はできるようになったが、個別のやり取りが残らない。データがたまっても、誰も使わず眠っている。
原因:MAを「配信を自動化するツール」と狭く捉えた。導入の計画に、活用の担当と予算が入っていない。
避け方:配信→個別メールの蓄積→AIでの読み解き→経営判断まで、最初に設計する。誰が、いつ、何のために見るかを、担当と会議の名前まで決める。
失敗2:MA・SFA・CRMを別々のツールで入れ、データが分断する
起きること:一人の顧客の情報がツールごとにばらばらで、全体像が誰にも見えない。
原因:データがそれぞれのツールに閉じ、つなぐには追加の費用と手間がかかる。結局つながらず、AIに渡せる形にもならない。
避け方:集客・営業・顧客管理を、同じ基盤の上でつなぐ。別々のツールを使い続けるなら、どれを「正」とするかを決め、連携の範囲を絞る。
失敗3:現場の入力と運用の負荷を軽く見る
起きること:営業が「専用ツールへの入力が面倒だ」と感じ、データがたまらない。いつの間にか使われなくなる。
原因:普段の業務に、専用の画面を開いて転記する作業を上乗せした。
避け方:現場の操作をできるだけ増やさない仕組みを選ぶ。NetSuiteなら、記録から送ったメールへの返信が自動で顧客の記録に残る(第3章)。
3つに共通するのは、MAの導入を「配信ツールを入れるITプロジェクト」として扱っていることです。
「なぜMAを入れるのか」を経営者が一言で言えれば、現場の優先順位もそろいます。
AI時代のMA|NetSuiteの生成AI連携
NetSuiteは「#1 AI Cloud ERP」を掲げ、AIの機能を強めています。
外部のAIをつなぐ「AI Connector Service」
AI Connector Serviceは、ClaudeやChatGPTなどのAIを、NetSuiteに直接つなぐ仕組みです。
MCP(Model Context Protocol、AIと外部のデータをつなぐ標準の仕組み)に対応しています。
使いたいAIを持ち込む「Bring your own AI」の考え方です。
利用者もAIも、ロールで設定された範囲のデータしか見られません(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
営業のメールを読ませる場合も、どのロールのAIに、どの顧客の記録を見せるかを先に決めます。
仕組みと始め方は、AI Connector Service(MCP対応)の仕組みと始め方で解説しています。
残したメールから「顧客のインサイト」を引き出す
NetSuiteに残った個別メールをAIに読ませると、課題やニーズ・不満の整理、やり取りの要約、次の提案の検討ができます。
問いかけは、たとえば次のような形です。
- 「この顧客との過去半年のやり取りを要約し、未解決の要望を挙げて」
- 「先月、納期について問い合わせてきた顧客を一覧にして」
- 「この展示会から商談に進んだ見込み客に共通する関心は何か」
どの問いも、メールと取引のデータが同じ基盤にあるから答えられます。
「AIを使いたい」の前に、「AIに渡せるデータがたまっているか」が分かれ目です。
AIに読ませるときの注意
AIの要約や提案は、判断の材料であり、答えそのものではありません。
- 人が照らし合わせる:AIの要約は、元のメールと照らしてから使う
- 見せる範囲を絞る:AIに渡すデータの範囲を、ロールの権限で決める
- 使った結果を残す:AIの提案で動いた結果を記録し、次の判断に活かす
読ませる前の確認として図にすると、次のとおりです。
「この3か月で不満が多かった顧客を挙げて」と頼んだら、挙がった顧客は担当者が元のやり取りを読んでから対応を決めます。
AIは、人が読み切れない量のメールから、読むべきものを選ぶ道具として使います。
顧客の情報をAIで要約する機能は、Customer 360 Summariesで紹介しています。
集客から経営判断まで|MA→SFA→PSI会議
展示会のリードへの配信から、個別メールの商談、受注まで。
この流れは、「これからどれだけ売れそうか」という需要の見通しを生みます。
製造業・卸売業・小売業では、この見通しが生産・仕入・在庫の判断に直結します。
PSIは、Production(生産)・Sales(販売)・Inventory(在庫)の頭文字です。
卸売業・小売業では、生産の代わりに仕入(Purchasing)が中心になります。
3つを同時に計画し、需給を調整する会議をPSI会議と呼びます。
多くの会社では、マーケティングの需要の見込みと、生産・在庫の計画が別々に動いています。
引き合いが増えても、その情報が仕入の判断に届かない。
その結果、在庫が足りない、あるいは作りすぎることが起こります。
NetSuiteは、集客・営業・在庫・生産・仕入を1つの基盤で管理します。
集客で生まれた需要の芽が、商談を経て、PSI会議の判断材料になります。
卸売業で、ある商品への問い合わせが個別メールで増えているとします。
その声が商談として記録されていれば、仕入の担当は発注の量を早めに見直せます。
声がメールボックスに埋もれていれば、欠品が起きてから気づくことになります。
そのためには、商談の記録に「見込みの数量」と「時期」を入れておくことが要ります。
進め方はPSI会議とはで解説しています。
顧客の声を経営に届ける|両利きの経営の起点
これまで、顧客の声は経営に届く前に抜け落ちていました。
個人のメールボックスに埋もれ、届いても断片的な報告に変わってしまう。
残したメールをAIが読み解けば、現場の声が、判断に使える形で経営に届きます。
両利きの経営とは、既存の事業を深めること(深化)と、新しい挑戦をすること(探索)を両立させる考え方です。
- 深化の例:同じ不満が複数の顧客から出ていれば、既存の製品やサービスの改善につなげる
- 探索の例:いまの製品では応えられない相談が続けば、新しい事業の種として検討する
この仕組みは、時間をかけて深まります。
メールが残るほど、AIが読み解ける材料は増えます。
早く始めた会社ほど、データの蓄積で先行できます。
後から始めた会社は、過去のやり取りを取り戻せません。
探索の進め方は、「両利きの経営」で探索を仕組み化する方法で扱っています。
ベンチャーネットならこう見る
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、MAを配信のツールとして比べることをおすすめしていません。
最初に聞くのは、次の3つです。
- 顧客の声は、いまどこに、どれだけ残っているか
- その声を、誰が、どの判断に使いたいか
- MAだけで足りるか、販売・在庫・会計の見直しと重なるか
声がすでに共有のメールや日報で回っているなら、MAより先にその運用を整えるほうが早いこともあります。
MAだけのためにERPを入れる必要もありません。
MA単体ツールのほうが合う場合は、その理由も含めてお伝えします。
そのうえで、2つの枠組みで進めます。
定着の4手順|キュリエ様の導入から
キュリエ様の導入では、次の4つを定着の手順にしました。
- データ整理を最初に
- 段階的に導入
- 研修・サポートを徹底
- 操作はシンプルに:使わない機能を盛らない
3-3で見た展示会後の作業の変化も、同じキュリエ様の導入での数字です。
MAに置きかえれば、取り込む前に顧客の情報を整え、対象の営業と顧客を絞って始めることになります。
MAの配信シナリオを凝るより先に、声がたまる土台を整えます。
目標も小さく置きます。たとえば「3か月で、営業5人のやり取りが残り、引き継ぎに1回使えた」です。
守り→攻め→次へ
MAが定着した先は、3つの段階で考えます。
- 守り:業務が回る。顧客のやり取りが、担当者に頼らず残る
- 攻め:データで打つ。残った声で提案を変え、営業の作業を自動にする
- 次へ:経営が変わる。声がKPIやPSI会議の判断材料になる
MAの相談は、多くが「守り」の手前から始まります。
配信の前に、声が残る状態をつくる。
攻めと次へは、その土台の上でしか回りません。
今日できること|1人の顧客のやり取りをたどる
最近商談が進んだ顧客を1社選び、次の表を埋めてみてください。
| 時点 | やり取りの手段 | どこに残っているか | 他の人が見られるか |
|---|---|---|---|
| (例)展示会の後の最初の連絡 | 担当者のメール | 担当者のメールボックス | 見られない |
「見られない」が多いほど、顧客の声が会社の資産になっていません。
その担当者が明日いなくなったら何が失われるか。社内で話してみてください。
余裕があれば、同じ表を営業の担当者3人分つくります。
共有のアドレスや日報でうまく回っている部分があれば、その運用がMAの設計の手本になります。
よくある質問
Q1. NetSuiteのMAは、HubSpotなど専用のMAツールと何が違いますか
MAがERPの一部として組み込まれている点が最大の違いです。
専用のMAツールは、メールの配信や見込み客の育成に特化しています。
NetSuiteは、集客・営業・顧客管理・会計を1つの基盤で管理し、集めた声がそのまま営業や経営判断につながります。
配信のシナリオの豊富さでは、専用のツールが上回る部分もあります(第4章)。
Q2. 導入期間と費用感はどれくらいですか
ライセンスはミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
金額は、モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。
最終的な金額は、Oracle NetSuiteの担当営業が提示します(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
導入の費用と期間は、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数で決まります(4-2)。
Q3. 現場が本当に使ってくれるか不安です。定着のコツはありますか
現場の操作をできるだけ増やさないことです。
NetSuiteでは、記録から送ったメールへの返信が、自動で顧客の記録に残ります。
最初は対象の営業と顧客を絞り、使えた例を社内で見せながら広げると定着しやすくなります(6-3)。
Q4. 普段のメールがNetSuiteに残るとは、どういう仕組みですか
NetSuiteの記録から送ったメールが起点になります。
顧客の返信は、いつものメールアドレスに届き、同時に顧客の記録に残ります。
Outlookを使う会社は、受け取ったメールを連携の機能で記録に加えることもできます(第3章)。
Q5. 中堅・中小の製造業・卸売業・小売業に合いますか。情シスがいない会社でも導入できますか
BtoBで個別の商談が中心の中堅・中小企業に向いています。
情シスがいない会社でも、業務の担当者がプロジェクトの窓口を担えれば導入できます。
よくある疑問はNetSuite導入でよく受ける質問33問と回答もご覧ください。
Q6. 既存のMAツールやExcel管理から移行できますか
データの移行はできます。
ただ、そのまま引き写すのではなく、ばらばらのデータを1つの基盤につなぎ直す機会と考えるのがおすすめです(第6章)。
Q7. 残したメールをAIに読ませても、情報の管理は大丈夫ですか
AIも利用者のロールで設定された範囲しか見られません。
AI Connector Serviceは、NetSuiteの権限とロールにもとづいてデータにアクセスします(第8章)。
どのロールに、どこまで見せるかを先に決めておきます。
まとめ
- 顧客の声が最も濃く残るのは、一斉配信ではなく1対1の個別メール
- NetSuiteなら、記録から送ったメールへの返信が、顧客の記録に自動で残る
- ERP統合型のMAは、集客・営業・顧客管理・在庫が同じデータでつながる
- 配信の高度な自動化だけが目的なら、MA単体ツールが合うこともある
- 残した声をAIが読み解き、PSI会議と両利きの経営に活かす
「MAを入れれば、集客は自動で回る」。
回るのは配信までです。
その先の声を残せるかどうかは、今日の1枚の表から見えてきます。
もう少し詳しく知りたい方へ
顧客の声が残り始める運用の設計から、営業・在庫までつなぐ使い方まで、ご相談をお受けしています。

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